盛岡タイムス Web News   2018年  2月 13日 (火)

       

■  県立大と岩手医大の研究班 心臓を3Dモデル化 カテーテル治療に援軍 地元企業と連携し製品化へ


     
   新しい3Dシステムについて意見を交わす県立大の土井章男教授(前列左から2番目)、岩手医大の朴澤医師、森野教授  
   新しい3Dシステムについて意見を交わす県立大の土井章男教授(前列左から2番目)、岩手医大の朴澤医師、森野教授
 

 岩手県立大ソフトウエア情報学部の土井章男教授、岩手医科大学内科学講座循環器内科分野の森野禎浩教授、朴澤麻衣子医師らの研究グループとCG・医療システム開発企業のジェーエフピー(盛岡市、漆原憲博社長)は、CT画像から患者個々の心臓をコンピュター上に立体的に再現し、立体画像を見ながら治療計画が立てられる3Dシステム(ソフトウエア)の開発に取り組んでいる。構造物の正確な計測やカテーテル手術のシミュレーションを可能にし、医師の負担を軽減。治療の成功率を高め、患者のQOL向上を図る。今年秋ごろの公開を予定しており、改良を重ねて製品販売につなげる。(馬場恵)

  ■心臓3D化、カテーテル手術を強力サポート

  足の静脈など体の外側からカテーテルを挿入して治療を行うカテーテル手術は、侵襲性が低く、心臓疾患の治療にも広く用いられている。開胸せずに施術するため、術前の治療計画が重要で、その精度の高さが治療成績にも直結する。

  そこで、カテーテルを使った心疾患の治療を専門とする森野教授ら岩手医大の研究チームと3D画像処理や医療ソフトウエアの研究を得意とする土井教授らの研究チームが連携。既存の3次元可視化システムを基盤ソフトに、2015年秋から新システムの開発を始めた。

  今回、開発モデルとしたのは、カテーテルで閉鎖デバイス(傘上の器具)を心臓内部に運び、血栓(血液の塊)ができやすい「左心耳(さしんじ)」を閉鎖するカテーテル手術(経皮的左心耳閉鎖術)。近年、欧米で普及し、日本でも臨床治験が行われている。

     
   心臓の「左心耳」の3D画像モデル(岩手医大提供)。新システムでは、内部の形状把握や計測もできるようになる  
   心臓の「左心耳」の3D画像モデル(岩手医大提供)。新システムでは、内部の形状把握や計測もできるようになる
 


  左心耳は、心臓の左心房の外側にある突起物。心臓でできる血栓の9割が、ここに血液が滞留することで生じる。血栓は血流に乗って移動し、脳梗塞など致命的な病を引き起こすリスクが高い。このため、心房細動など血栓を作りやすい持病のある患者には、血液をさらさらにする抗凝固薬を処方し血栓を防ぐのが一般的だ。ただ、全身が出血しやすくなる副作用がある上、加齢や他の持病などで服薬が適さない患者もいて、左心耳を直接、ふさいでしまう新しい治療が開発された。

  ■個人差が大きい左心耳も3Dで、より分かりやすく

  左心耳は構造が複雑で個人差が大きい。経皮的左心耳閉鎖術を行う際は、数種ある閉鎖デバイスの中から患者に最も適した器具を選び、カテーテルの挿入角度を慎重に検討する必要がある。現在は、CT画像や心臓の超音波検査の情報を頼りに行われているが、優れた3Dシステムが開発されれば、医師のニーズは高いとみられる。

  また、左心耳など心臓の左房を観察する場合、経食道超音波検査(経食道心エコー)が行われるが、胃カメラのような管を飲み込む必要があり、患者によっては負担が大きい。CT画像だけで、心臓全体を正確に把握できるようになれば、この検査も回避できる。研究チームには閉鎖デバイスを用いた左心耳閉鎖の指導医の資格を持つ医師もおり、臨床経験を生かして、システムの改良を進める。

  心房細動の患者は日本で100万人以上。森野教授は「心臓で作られる血栓が原因の重い脳梗塞を防ぐのであれば、左心耳の閉鎖が本質的な治療。将来、ニーズが増えると予想される新しい治療法を先取りしたシステム開発は、大きな意義がある」と話す。

  研究は県の地域イノベーション創出研究開発支援事業や公益財団法人JKA機械振興補助事業の支援を得た。土井教授は「医師の負担軽減や安全性の向上に大きなメリットがある。医療現場の声を積極的に取り入れながら改良を重ね、臨床現場の医師に役立つシステムを研究開発したい」と意欲を燃やす。


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