盛岡タイムス Web News   2018年   2月  25日 (日)

       

■  賢治の岩手に受賞報告 銀河鉄道の父 直木賞の門井さん講演


     
  トークショーで執筆時の思いなどを語った門井慶喜さん  
  トークショーで執筆時の思いなどを語った門井慶喜さん
 

 「銀河鉄道の父」(講談社)で第158回直木賞を受賞した作家の門井慶喜さん(46)=大阪府寝屋川市=のミニトークショーが23日、盛岡市盛岡駅前通のさわや書店ORIORI(オリオリ)店で開かれた。市民ら約60人が集い、作者の語る執筆の裏話などを楽しんだ。トークショー後にはサイン会も開かれた。

  受賞作は、花巻市出身の詩人で童話作家の宮澤賢治の生涯を父・政次郎の視点から描いた小説。門井さんは同日、盛岡市の前に花巻市を訪ね、賢治の弟の孫である宮澤和樹さん(林風舎代表取締役)と面会した。「小説とはいえ、宮澤賢治という人を、父に迷惑をかける、社会的に能力のある方ではない書き方をしている。それを直系の子孫が見たときどう見られるか」と不安もあったというが、「とても温かく迎えてくれてほっとした。伝えられてきた賢治、政次郎像とは違うが、現代人に届く形で父と子の関係を書きたいということはご理解いただき、評価してくれた」と振り返った。

  門井さんと賢治作品との最初の出合いは、小学校の教科書だった。そのため子どものころは積極的に読もうと思わなかったが、大学時代に改めて読み、賢治との「再会」を果たしたという。「このとき僕は宮澤賢治はすごいと思い、学校教育的なイメージは払拭(ふっしょく)できた。できれば僕以外の人にもそういう経験をしてほしいとも思う」と語った。

  関連して、受賞後、出版元の講談社ではない出版社の人からも感謝されたエピソードを紹介。受賞作を読んだ人がその出版社の宮澤賢治詩集を買い求めたためといい、「中高生以上の大人の方が読んで、改めて宮澤賢治に魅力を感じて詩集を手に取ってくれる。これは僕にとって最高のご褒美」とほほ笑んだ。

  門井さん自身も3人の息子を持つ父親。受賞作を書いたきっかけには、息子に買い与えた学習漫画「宮澤賢治」がある。幼い賢治が赤痢で入院した際、政次郎が泊まり込んで看病したという史実に衝撃を受けた。「これは明治の男としては極めて例外的。この父親っぷりはすごいなと。すごいけれど…言葉は悪いが、この人はこの人でねじが一本飛んでるなと。そこに僕はすごく魅力を感じた」と振り返った。そこから政次郎に興味を持ち、本県を訪れ、賢治関連書籍から父親についての記述を集めるなどして取材を進めたという。

  執筆に当たり、門井さんは宮澤賢治の全集にも触れた。今回花巻市を訪問して和樹さんの話を聞き、全集出版に奔走した賢治の弟・清六氏の力にも改めて感動したという。「花巻、盛岡の方々は、宮澤賢治記念館や図書館の郷土史コーナーを作ったり、郷土史の本を出したり、いろいろな活動をされている。それら全てが混然一体となって今日の国民文学・宮沢賢治という偉大な人間を作っていると痛感した」としみじみ。「その流れの最末端にあるのが私の本。歴史の末端に立ち、こうして話ができるのは何よりの喜び」と語った。


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