盛岡タイムス Web News   2018年   2月  27日 (火)

       

■  滝沢市で社会実験 高齢世帯の通院送迎 県立大・こんのクリニック・ヤマト 買い物支援と組み合わせ


     
   ヤマト・スタッフ・サプライのスタッフが運転する県立大のワゴン車で、こんの神経内科・脳神経外科クリニックに到着した社会実験の協力者  
   ヤマト・スタッフ・サプライのスタッフが運転する県立大のワゴン車で、こんの神経内科・脳神経外科クリニックに到着した社会実験の協力者
 

 地域の診療所への車での送迎に、買い物支援などを組み合わせた高齢者支援事業の社会実験が25日、滝沢市で始まった。県立大社会福祉学部の小川晃子教授、同市牧野林のこんの神経内科・脳神経外科クリニック(紺野敏昭院長)、運送・物流業界向け人材派遣のヤマト・スタッフ・サプライ(本社東京)が連携。高齢者のみの世帯にニーズが高い通院送迎をモデルとして課題を抽出し、官民の地域資源を生かした支援の在り方を探る。

  社会実験初日の25日は、同クリニックに通院する2世帯3人が協力。県立大のワゴン車をヤマト・スタッフ・サプライのドライバーが運転し、自宅とクリニック間を送迎した。

  実験に参加した同市湯舟沢の近谷正さん(78)は神経系の病でクリニックには月1回程度通院。歩行が不安定で転倒しやすく、外出には介助が欠かせない。4年前に運転免許を返納。妻の妙子さん(74)も運転はしない。

  免許返納後は妙子さんが付き添い、タクシーで通院しているが、診察を終え、薬をもらって帰るのに、ほぼ半日がかり。クリニックとの往復にタクシー代が3〜4千円かかるため治療費より交通費の負担が大きい。妙子さんは同居する90代の母親の昼食も気にしながら毎回、正さんに寄り添っている。

  「すたすた歩ける状況ではないので、夫一人では車の乗り降りも、院外処方で薬をもらうのも難しい。付き添いなしで通院できる送迎サービスがあればありがたい」と話す。

  一家を切り盛りする妙子さんも間もなく後期高齢者。「この先、どうなるのか、予想できない。私たちのような高齢者世帯は増えていると思う。こうした家族の状況を理解してほしい」と願った。

  滝沢市内は郊外に住宅団地が点在。自家用車の運転ができなくなると、とたんに移動手段に苦慮する世帯が目立つ。特に昨年の道路交通法の改正で、認知症と診断された人の運転免許返納が義務づけられ、免許返納後の交通支援が喫緊の課題だ。

  「高齢の夫婦二人や一人暮らしの患者が増えている。免許返上後のバックアップ体制は、タクシーの割り引きやコミュニティーバスの運行程度で、まだ整っているとは言えない。社会実験を通して問題を抽出し、ニーズを明らかにしていきたい」と紺野院長。小川教授らは、同市の川前地区で、自家用車がない高齢者の「いきいきサロン茶話会」への送迎実験にも取り組んでおり、一緒に方向性を探る。

  クリニックへ送迎する社会実験は3月まで計5回実施する計画。この中で、通院送迎のついでにスーパーに立ち寄る買い物支援の実験にも取り組む。患者が複数乗り合わせて通院する交通支援に、買い物などの生活支援も加われば、高齢者世帯の利便性や安心感は高まり、経済負担も軽減されるとみている。ただ、道路運送法など法規制との整合性や介護タクシーなど既存事業者との兼ね合いなども検討する必要があるという。

  「通院の送迎を請け負う仕組みはあるが、これに生活支援も加われば、より便利になる。地域資源を柔軟に組み合わせ、地域福祉の向上につなげていきたい」と小川教授。ヤマト・スタッフ・サプライ事業推進部の松本まゆみマネージャーは「運送業のノウハウを生かし、社会課題の解決に貢献できれば。地元のタクシーやバス会社にも配慮しながら、一緒にできる仕組みを考えていきたい」と話した。


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