盛岡タイムス Web News   2018年   3月  10日 (土)

       

■ 歳月に内陸選ぶ決断 東日本大震災からあすで7年 盛岡初の災害公営 入居者の手に部屋の鍵 地域への溶け込みが課題



     
   県建築住宅センターの担当者から鍵を受け取る、備後第1アパート8号棟の入居者  
   県建築住宅センターの担当者から鍵を受け取る、備後第1アパート8号棟の入居者
 

 東日本大震災から11日で丸7年を迎える。県内初の内陸移住者向け災害公営住宅となる盛岡市月が丘2丁目の県営備後第1アパート8号棟が完成し9日、入居者への鍵の引き渡しが始まった。沿岸各地から集まった内陸避難者が新しい環境で生活を共にすることになり、周辺地域も巻き込んだ新たなコミュニティーづくりが欠かせない。もりおか復興支援センターや社会福祉協議会などは地元町内会と協力し、新たな関係づくりをサポートしていく。(5、7面に関連記事)
 完成した8号棟は鉄筋コンクリート造3階建ての24戸。21世帯が入居を予定している。この日は、13世帯が、県建築住宅センターの担当者から鍵を受け取り、早速、荷物の運び込みを始めた世帯もあった。

  入居者の女性(52)は釜石市から盛岡に移り、介護職員として働いている。「年配の方が多いので、草刈りなど自治会活動に参加できる人がどのぐらいいるか少し心配」。この春、中学に入学する長男、小学2年になる二男を含め一家4人で入居する陸前高田市出身の女性(45)は「子どもたちの学区が変わるので、それが一番、気がかり」と話した。

  備後第1アパート集会所では、もりおか復興支援センターの主催で、地元の月が丘二丁目町内会(橋幸雄会長)を交えた入居者の顔合わせ会も開催。橋会長(71)は「一緒に楽しくやっていきたい。町内会も少子高齢化が進むが、新しい皆さんを迎えて活動も変えていこうと思う。来て良かったと思える思い出の地にしていきたい」と歓迎した。

  ■県内に内陸災害公営住宅303戸
  県などは古里に帰りたくても帰れない内陸避難者の事情を考慮し、盛岡市や一関市など内陸6市に災害公営住宅303戸を整備する計画。盛岡市内には県営備後第1アパートの8号棟に続き、9号棟(鉄筋コンクリート造3階・18戸)、10号棟(木造2階・8戸)が2018年度内に、県営南青山アパート(鉄筋コンクリート造、118戸)が19年度に整備される予定だ。

  災害公営住宅の入居者に限らず、受け入れる周辺地域の町内会も高齢化は顕著。高齢世帯の孤立化や孤独死の問題も指摘される中、いかに安全で、暮らしやすいコミュニティーを作っていくか。超少子高齢化時代を先取りした取り組みは、他の地域にとっても、まちづくりの試金石になる。

  ■コミュニティーづくりの課題 沿岸では自治会交流会も
  先月11日、陸前高田市では沿岸5市町にある大型災害公営住宅の自治会交流会(岩手大学三陸復興・地域創生推進機構の主催)が開かれ、自治会関係者をはじめ、行政、大学、社会福祉協議会などの支援者70人余りが参加した。

  話し合いでは「高齢者が多く自治会の役員のなり手が見つからない」「個人情報の保護が壁になってコミュニティーづくりが進まない」など悩みを共有。自治会活動に若い世代の参加が少ないという共通課題に対しては「子どもがいる若い女性をターゲットにイベントを組んでいる。若いお母さんと役員が顔見知りになり協力してもらえるように働き掛けた」「若い世代を巻き込むという発想自体が高齢者目線。世代が違えば価値観も違う。金は出しても、口は出さない。任せられる部分は任せる姿勢が次の担い手を育てる」といった意見も出た。

  この日、会場となった、陸前高田市の県営栃ケ沢アパートは入居237世帯。昨年3月に自治会が発足し、納涼祭、芋煮会、恵方巻き作りなど住民の交流活動が活発に行われている。紺野和人会長は「絶対に孤独死を出さない意気込みでやっている。声掛けが一番重要」と力を込める。

  入居者が毎朝、集う、ラジオ体操は盆も元旦も休まない。お茶会などの行事も悪くはないが、毎朝10分間の活動の方が顔を合わせる頻度が高い。ラジオ体操がきっかけでマージャン、カラオケ、手芸など四つのサークルも誕生。自治会総務部の菅野礼子さん(69)は「初めから大人数での活動を目指さず、気の合う仲間を一人、二人と見つけていくと徐々に輪が広がる」と話す。

  最大の心配は一人暮らしの高齢者の急病や孤独死の問題。社会福祉協議会の担当者や民生児童委員が定期的に訪問する仕組みになっているが、それだけで大丈夫か。救急搬送の際にエレベーターの間口を広げる鍵を管理していた菅原教文さん(53)は「個人情報の保護も大事だが、持病のある人や一人暮らしの人の情報をアパート内の自治会でも最低限、把握する仕組みが必要では」と指摘した。

  交流会を企画した同機構地域コミュニティ再建支援班の船戸義和特任研究員は「焦らず、無理せず、諦めずがキーワード」と助言。「自治会の活動に関心のない人にも無理なく、諦めることなく、アプローチしていく必要がある。自治会の中だけで解決しようとせず、行政や社協、さまざまな支援団体の人と連携してくことが大事」と語った。

  ■地域づくりの新しいモデルに
  もりおか復興支援センターは、コミュニティーづくりを応援するため、昨年から月が丘二丁目町内会との意見交換、入居予定者向けの周辺地域散策会、お茶っこ会などを開いてきた。今後も町内会などと連携した支援活動を続ける他、大規模災害公営住宅となる南青山アパートの完成に向け、入居予定者を対象にしたコミュニティーづくりワークショップにも着手する。
  金野万里センター長は「高齢化や若い世代の不参加は災害公営住宅に限らず、どの自治会や町内会にとっても課題。自分が住んでいるところ以外にも目を向け、大胆な手法も取り入れながら、世代交代をうまく進めていく工夫がいる。災害公営住宅に関わる自治会運営がうまくいけば、地域づくりの新しいモデルになる」と話した。
(馬場恵)

     
   先月11日に陸前高田市で開かれた、県大型災害公営住宅自治会交流会  
   先月11日に陸前高田市で開かれた、県大型災害公営住宅自治会交流会
 

 


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