盛岡タイムス Web News   2018年   7月  17日 (火)

       

■  登山者とトレラン 山を敬い共存なるか ブーム受けあつれき生じ マナー、ルールの順守啓発を


     
  登山者とランナーの共存について語る橋会長  
  登山者とランナーの共存について語る橋会長
 

 山道や林道を駆け抜けてタイムを競うスポーツ、トレイルランニング(通称トレラン)がブームになりつつある。若年層を中心とするランナーの増加を受けて、地域おこしとして大会を開く自治体も多い。一方で、「接触すると危険」「自然が荒らされる」といった声が登山者などから上がっている。山道の一本道をランナーと登山者で共有し、山の環境を守るには、大会運営者がマナーの順守、山への敬意を、ランナーに啓発する必要がある。(飯森歩)

 ■トレランとは

  Tシャツなどの軽装なスポーツウエアで、山野などの未舗装路を走る「トレラン」は欧米で始まり、日本では10年前から徐々に広がり始めた。日本能率総合研究所によると、国内の参加人口は約20万人、潜在人口は70万人に上る(2014年調査)。自然を走る爽快感や、コース・天候から計画を立てて挑む楽しさが魅力で、20〜40代を中心に人気が広がっている。

  盛岡周辺では、鞍掛山(滝沢市)、七時雨山(八幡平市)で大会が開催されており、山をトレランスポットにして交流人口増加を図ろうとする自治体も増えている。

■トレランと登山者のあつれきと対策

  近年は、健康志向で登山を楽しむ中高年の増加から、狭い山道で登山者とランナー混在するケースが増えているという。新しいスポーツゆえに山のルールが浸透しておらず、猛スピードで登山者を追い越したり、山道を外れて走るランナーが目立ち、数年前から滑落・転倒の危険性、山道の荒廃を危惧する声が上がり始めた。

  そこで環境省は16年度に、国立公園で開催するトレラン大会についてガイドラインを設け「大会参加者は歩行者を優先すること」と明記。参加数の制限、環境への配慮などの指標を盛り込み、公園管理者や自治体にも対応を求めた。しかし、国立公園以外での規制や指導はいまだ図られていない。

  こうした課題を受けて、岩手県山岳協会の橋時夫会長(69)は「登山者とのあつれきを避けるためにも、一定のルールが必要」と強調。ランナーに対して▽他の登山者へのあいさつの徹底▽追い越し・すれ違い時のスピードダウン▽山道を外れてない▽ごみは持ち帰る―などの順守を求めている。

     
  秋田駒ケ岳の登山用山道  
 
秋田駒ケ岳の登山用山道
 


  ■トレランを観光に活用

  その上で「登山者だけが登山者ではない。自然を楽しみたいのはランナーも同じ。トレランの広がりは、高齢化が進む登山界の活性化、地域の経済効果につながる」とトレランの普及を肯定。両者が山を楽しむには、トレランを推奨する自治体、大会運営者側が自主ルールやマナーを作り、徹底させる策を講じるべきとした。

  さらに「観光化に邁進(まいしん)するのでなく、自分たちの山を守る意識をもってほしい」とし、▽希少植物の生息域を避けたコースの限定▽注意を促す看板の設置▽大会後の傷んだ登山道の修繕など―を薦めた。

■登山者、トレラン走者の声

  岩手山や早池峰山のガイドを30年続けている安比高原在住の山田孝男さんは「東北地区はまだトレラン人口が少ない印象。マナーも良い」と話す。ただランナーの軽装、大会などでのランナーの大挙には、プロの登山家として懸念を抱いている。「肌の露出が多い軽装での山登りは、けがのリスクを高める。登山は自己責任。食料と水、救急セット、ライト、専用シューズは必ず身に付けてほしい」と呼び掛け、「大勢で山道を走ることは環境の荒廃につながる」と警告した。

  年5〜6回の登山を楽しんで10年目となる会社員男性(51)は「四季折々で変わる高山植物の花を見るのが楽しみ。早いスピードで駆け上ると小さな花や株が痛む。山はゆっくりと歩いて楽しむところでは」と語る。

  トレイルランニング大会で上位の成績を収め、登山家でもある盛岡市永井の橋本久さん(65)は「山を痛めているのは、硬いシューズやストックで歩く登山者も同じ。両者に入山する権利があり、どちらが良い悪いはない。ルールを守って安全を確保し、互いに環境への配慮を持つことが大切」と話していた。


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