盛岡タイムス Web News   2018年   8月  25日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 藤澤則子 表面をなぞるのでは…


 本県から、書を通して環境を考えようという「みちのく発進全国書道展」(岩手席書連盟主催)が今年8月で20回を迎えた。同連盟初代会長の故・宮部北流さんが1998年に創設。「環境」にちなんだ書が並ぶ公募展は、今でも全国にあまり例がないだろう。

  会場の県民会館で、同連盟会長の宮部北空さん(71)=東京都=に話を聞くことができた。応募作品のレベルが向上して評価が拮抗(きっこう)するといい、本展の充実ぶりを感じさせた。

  宮部さんは審査について、点画などを正しく書く(許容範囲はあり)ことが基本だが、「字をうまく書くことだけが書道の目的ではない」とも。基本的な書き方を身に付けた上でのことかもしれないが、「書は、人間の素養としてのいろいろな知識が集まったもの。そういったものが、文字に転化される」と言及した。

  宮部さんの話を聞きながら、合点がいく出来事が過去にあった。今でも覚えている大学時代の恩師のひと言。「リンゴをかけと言っているのに、あなたはミカンをかいている」。絵画ではなく、書の話だ。

  私が専攻している課程で「書道」は必修だったため、高校の書道部員でなければ名前が読めないような中国の書家の臨書に取り組んだ。最初は楷書(かいしょ)。手本を見ながら正確に書いたつもりでも、いっこうに級(評価)は上がらない。

  単位修得が危ぶまれる人を集めての「朝練」にも(強制的に)参加。「ミカン、ミカン」と言われ続けたが、何とか単位は取ることができた。

  自分に欠けていたのは、本質を感じ取ろうとする姿勢。字面(じづら)だけを見て書き写しても、見る人の心には響かない。

  このことは今の仕事、日々の取材にも通じている。特に美術など芸術関係の取材では、表面をなぞるような取材、記事になっていないか。AI(人工知能)ではなく生身の人間が生み出したものだからこそ思案するが、生きた感性に触れることで心をほっとさせている。


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