2007年 12月の天窓


▼ 2007年 12月 31日 ―マンネリから脱却を―
 大みそかを迎えた。越年の支度を整えて来年のカレンダーに張り替えるのだが、特に気付かされるのは、カレンダーや手帳をちょうだいする数がめっきり少なくなったことだ。日本列島、特に本県においては景気が停滞してきていることを現している。
▼この数年来、小さな政府をつくるとして三位一体の改革や規制緩和策、そして公共事業の抑制策などが実施されてきているが、「こんなときにこんな施策をやっていいものか」とか、「このような現状を打破してくれるような人物が現れてほしい」と思っているのは天窓子のみではあるまい。
▼今年の出来事を年初から整理してみると、とかく暗いことが多い。政治とカネの問題噴出、政治の混乱。防衛省など幹部職員の不祥事、無責任な年金問題。民間企業においては食品業界の偽装問題が多発。スポーツ界でも高校野球のスカウト問題、麻薬使用問題、大相撲の不祥事などが起きて日本列島の世直しが大きな課題として持ち越されてしまった。
▼戦後日本の教育の反省、その中で利益優先主義があまりにも長い間幅を利かせて自由奔放に放置されてきている。経済、福祉大国としてのし上がってはいるが、自らの背丈を超えた国債残高を抱えてしまった。少子高齢化社会に入って過去のツケを消していくには、経済の成長拡大を図ることに尽きるのではないか。そのためにはそれぞれがスタンスを変えてマンネリから脱却することだろう。意識を改めていい年を迎えてほしい。

▼ 2007年 12月 30日 ―最後締めくくる遊び心―
 わが人生が幕を閉じる死を前に、遊び心のある人が少なからずいる
▼米オレゴン州で、2カ月前に88歳で亡くなった男性から今月25日ごろ、友人たちにクリスマスカードが届いて話題になっている。生前もジョークが好きだったようで、死後にも友達を驚かせ笑わせてやろうと、天国を住所にしたカード発送を仕掛けてから旅立ったらしい
▼文面には天国で神様の許可を受け投かんしたことをつづり、ごぶさたをしているが「多分、また会える。メリークリスマス」と結んでいたという。もらった方はニヤッとしたり薄気味悪がったりしたことだろう。遊び心で不安を紛らわしたのかもしれないが、死を前に仕掛ける余裕には恐れ入る
▼次元は違うが年の最後にも遊び心のアイデアがもてはやされる。こちらの国では今年を表す漢字や創作4字熟語、流行語・新語など文字遊びが恒例になっている。格差や老後不安、偽装の横行など問題山積ではあるが、遊び企画が共感を誘うのもある種の余裕であり、平和のあかしなのかもしれない
▼とはいえ、死者の冗句と同様に不安や不信を紛らわして、最後を締めくくるという側面も多分にある。創作熟語でも重要局面で政権を投げ出した安倍前首相を「突然返位」。農相4人が不祥事で入れ替わる情けなさを「四農降昇」などとやゆし、うっ憤を晴らす向きは多かろう
▼暗が目立ち、明は出生率6年ぶり上昇を表す「産声多数」などがあるが、一過性の不安は残る。こうして07年が閉じていく。

▼ 2007年 12月 29日 ―道路特定財源の維持を―
 国土交通省岩手河川国道事務所の山本聡所長が来社し、道路特定財源の活用による本県の道路整備計画について説明していった。特に今問題になっているのは暫定税率の廃止による影響であろう。
▼天窓子としても関心を持ち11月16日の本欄でも財源の仕組みなどについて触れたが、近年、道路特定財源の一部を一般財源に振り向けるべきとする論調が強くなってきた。道路整備の必要性がなくなったので財源を他に振り向けるというのであれば分かるのだが、整備が遅れている地方はそのままでいいという考えが理解できない。
▼暫定税率が廃止されると本県の税収が約半分に減少するという。岩手河川国道事務所の試算では本県の減収率が全国1位とのことであった。経油取引税、自動車取得税、地方道路譲与税など合わせて230億円のうち約104億円もの県民の税金が道路整備以外の予算に回ってしまえば、地方切り捨ての予算編成になることは目に見える。除雪費用も確保できなくなるほか、途中までできている道路も完成できなくなってしまう。
▼達増知事は12日の定例記者会見で「道路特定財源維持」を堅持していかなければならないという方針を示しているが、民主党税制調査会(藤井裕久会長)は20日に至って暫定税率について撤廃する方針を固めている。都市出身の議員が多い中で環境や社会福祉優先の考えで税制改正を進めれば、本県の医療搬送ネットワークの確保すらも逆にできなくなってしまう。

▼ 2007年 12月 28日 ―矢祭町議員日当制の試み―
 行政改革という言葉が今年も飛び交ったが、実行が伴わないからまるで新鮮味がない
▼そう悲観的に受け止めていたが、あの福島県矢祭町が今も本気で挑んでいることを知り、救われる思いがする。官公庁が仕事納めで年末年始の休みに入るきょう28日、年中無休で住民サービスに徹するこの町は臨時議会を開く。全国初の議員報酬日当制を審議、成立させるためだ
▼これまではほかと同じく報酬は月額制。これを実質的に議会活動、議員活動をした日に絞って日割りで支給するよう変更。額面は町の課長職を基準に勘案。「1日当たり3万円」とする方向。ボーナスに当たる期末手当も廃止される
▼この案が25日の特別委員会で賛成多数で可決。きょうの議会で成立の見込みという。日当対象の日数は過去のデータから年間およそ30日とされ、議員1人の支給額は年間90万円程度となる。これは従来の3分の1以下の額。節約分は住民福祉に回すというから、並々ならぬ覚悟が伝わってくる
▼財政ひっ迫の自治体は矢祭から身の削り方を学ぶといい。この方式の採用は至難としても、政治家と報酬のあり方を問う意味も大きい。公と私の境界、議員活動とは何かという線引きも鮮明になる。26日に川崎市で、議員の私的流用分など政務調査費の不正受取分4億7千万円の返還請求訴訟が起こされた。同様の不正行為は本県を含め列島中に横行している
▼全国初の矢祭の試みは、そうした公私混同の暗部にも一石を投じることになろう。

▼ 2007年 12月 27日 ―年末年始、薬の手配を忘れずに―
 年末が近くなってきたので、26日には県立中央病院に行って50日分の薬を手配していただいた。何せ10数年前から持病の「頚椎ヘルニア」を抱えているものだから、飲み薬と塗り薬は欠かせない。また痛風の予防薬も欠かさないようにしている。神経系統にかかわることなので、手術をしないでさまざまな治療を続けてきている。また飲酒量を減らし、食事療法を重ねるなどして症状を悪化させないように努めてきている。
▼県立病院の営業は28日で終わり、29日から年末年始休暇に入って来年は4日からとのこと。上田の院外薬局もいつもとは違って混雑している。
▼何しろ医院に行って診察を受けなければ医薬品を出してもらえないから大変である。今のところ、県立病院のほかに2カ所の開業医に通っているが、糖尿病対策の薬、耳鼻科の薬などは既に準備を終えているので、これで年末年始はよほどのことがない限りは大丈夫だ。
▼新聞社稼業は年末年始が繁忙期で、既に僚紙では新年号の一部が印刷に入っている。本紙はまだこれからが作業の本番だ。特集紙面では岩手のIT産業をテーマにしている。IT抜きに将来の産業が成り立たないのは明らか。では岩手にそのための戦略はあるのか。取材は進んでいるようだ。
▼さて来年は明るいニュースの多い年であってほしい。その前提になるのが、自分はもちろんのこと、家族や社員の健康であろう。わが家とわが社に何事もなければよいと祈りつつ新年を待っている。

▼ 2007年 12月 26日 ―温かく悲しき湯たんぽ―
 「ゆたんぽに 足あたたかく 悲しかり」(三浦ふみ)。足元はほかほか温かいのに、心の悲しみは募る
▼この作者の場合、どんな事情で「悲しかり」なのかは知らないが、この句が醸し出す雰囲気に似た体験なら、当方も味わったことがある。その一つ。子供のころ、母が大病をして生死をさまよっていた冬。戦後間もないころで空調設備などはない。寝床には毎夜、祖母が湯たんぽを用意してくれた
▼だが、乗せた足に熱は伝わってきても、体の中を不気味な風が吹き抜けて、底の知れない悲しみに襲われたのだった。幸い母は病を克服して今も90代で健在だが、「足温かく悲しかり」の幼少期の光景は、時折、懐かしくよみがえる
▼ひるがえって厳しい冷え込みが続くこの冬は、別の意味でこの句が描く情景が現出している。あれもこれもの値上げラッシュ。原油高騰のあおりを受けて、暖を取るべき灯油はガソリンとともに超の付く高値で推移。物置から探し出したり、慌てて買い求めたり「湯たんぽ」を寝床に導入する家庭が多いらしい
▼電気や油を使わないから、値上げへの自衛策だけでなく、温暖化防止の環境配慮器具としても脚光を浴びている。売れ行き好調なのは北国だけではない。首都圏はじめ全国的に人気が急上昇。今冬は「湯たんぽフェア」を開催する大型店も増えている。売り上げが昨年比で倍増した店も出ている
▼ただ湯たんぽに足を乗せる消費者の心には、諸物価の高値推移で「悲しかり」が去来する。

▼ 2007年 12月 25日 ―農地を有効に活用するには―
 東北農政局岩手農政事務所が発表した平成18年度の岩手県農業生産額によると、鶏(鶏卵を含む)が660億円で前年比3・1%増、米が639億円で前年比7・1%減、野菜が267億円で4・3%増、乳用牛が228億円で5・0%増、豚が222億円で5・2%増となっている。
▼農業県といわれる本県の5大品目の生産額は合わせて2016億円となっている。
▼本県の農業生産高は概ね2500億円と言われているから、約80%がこの5大品目によって占められているが、平成18年度は初めて米が第1位の座を鶏に明け渡した。米は昨年度、作付面積が減ったことと米価の低落で減収を余儀なくされた。作柄は平年作であったが、米の消費が伸び悩んでいるため古古米を抱え、減反政策や農地の転用などが進んで米作りが元気をなくしてきている。
▼米が首位の座から転落したのは冷害による不作だった1993年から13年ぶりと言われている。これに対して畜産関係は価格、生産量ともに好調であった。本県の農産品産出額は全体で2544億円と言われ、これをいかにして大きくしていくのかということと、収益率を上げていくことが課題であろう。養鶏などの飼料は8、9割方が輸入に頼っている現状であると聞いている。
▼休耕田になっている農地を有効に活用するにはどんな作物が適しているのか。そして作物の流通先の開拓、農産品の加工による付加価値をつけることや、県産品の愛用が課題だと思う。

▼ 2007年 12月 24日 ―すがすがしく有終の美を―
 盛岡市内の病院で21日に催された一足早いクリスマス会。同じ日に行われた中尊寺安置の仏像のすす払い
▼その報道を見ながら「ああ、今年も」と歳末気分が高揚。年賀状書きの遅れなども気になってくる。宗教感覚もおおらかなこの国。日ごろは無信心な身も、きょうのクリスマス・イブから行く年の除夜の鐘、来る年の初もうでにかけては、恒例として内外の神様や仏様に心を向けることにもなる
▼殊勝な心掛けで、年末年始ぐらいは心身を清めて臨もうかな、とつぶやいたら、家人から「そんな精神論より、まず家の中の汚れを清めてちょうだい」と、大掃除作業を督励されてしまった。昔に比べ洗剤は豊富。便利な掃除機もあるが、掃除はしょせん手作業だ。やる気を起こして取り掛かるほかない
▼ダスキンが公募した「大掃除川柳」入賞作品が発表されたが、励まされたり、考えさせられる句が並ぶ。「いつもなら邪魔な旦那が主人公」は「手抜き主婦」を名乗る人の作。持ち上げられて張り切る旦那。「大掃除母のエプロン似合う父」と、いでたちもかいがいしい
▼分担をくじで決める家族もある。「くじ引きでパパ大当たり換気扇」と。「父さんが圏外へ行く大掃除」は、優秀賞に輝いた岩手の千田十菊さんの句。要領が悪くて邪魔にされたのか逃亡なのか。敗残兵のような姿を見逃さない。さて自分はどのタイプか
▼年に1度の清めの主役としてわが家を磨き上げ、慌ただしい中にもすがすがしく有終の美を飾りたい。

▼ 2007年 12月 23日 ―韓国大統領の李明博氏―
 19日に行われた韓国大統領選で、前ソウル市長で野党ハンナラ党の李明博(イ・ミヨンバク)氏(66)が当選した。10年ぶりの政権交代で来年2月には保守政権が誕生する。
▼慮現大統領は中道・左派といわれているから李政権で政策が大きく変わってくるのではないかと思う。経済政策、拉致問題、対日関係修復などが図られるのではないかと期待されている。
▼李氏のプロフィールを拝見すると、日本の植民地時代に渡った両親の下、7人兄弟の5番目として大阪府に生まれた。太平洋戦争後に韓国に帰国して、南東部の浦項で少年時代を過ごした。少年時代は母親を助けてクズ拾い、果物・マッチ・のり巻きなどを売り歩き、高校の夜間部を卒業してからアルバイトによる学費稼ぎで名門の高麗大学経営学科を卒業した。一時学生運動などにも参加したが、経済的に苦しかったこともあって現代建設に入社する。
▼それからがすごい。現代建設を韓国の一流企業に育て上げたのは、同氏の実行力があったからという。30代半ばで社長に就任し、会長を経て1992年には国会議員になった。2期目に選挙違反で辞職したあと、2002年にソウル市長として政界に復帰。道路を壊して川を取り戻すという清渓川の復旧事業などに実績を挙げた。
▼「クズ拾いから頂点へ」という成功神話の体現者といわれ、韓国経済の復興にも期待がかけられている。2世議員とは異なり現場の第一線で苦学した体験が生かされているようだ。

▼ 2007年 12月 22日 ―民間が生んだ年賀はがき―
 年配の皆さんなら戦時中に親しい友人らとの手紙のやり取りもままならなかったことを記憶されていよう
▼戦争によって途絶えてしまった人と人との便り。終戦を迎えても夢も希望もなく荒涼とした世情。肉親や知人の消息を求め、ラジオからは尋ね人の放送が流れていた。お年玉付き年賀はがきはそうした時代を生きる人々の欲求に応えるように、1949年(昭和24年)に誕生した
▼それも郵政官僚が編み出した企画ではなく、京都在住の一民間人(林正治氏。当時42歳)のアイデアであったというから興味をそそられる。年始に書状を送り合う風習は遠く平安のころからあり、戦前にも官製はがきによる新春あいさつは行われていた
▼林氏はそれをただ復活させるのでなく、賞品の当たるくじを付け、料金には寄付金を付加し社会福祉に役立てることを提唱。自ら見本を作製して郵政当局へ持ち込んだという。くじ付きに一部官僚らから反対もあったというが、実現したのは明るさや夢が買われたからであろう
▼それから58年。10月に民営化した日本郵便は初の年賀はがき販売事業も大詰めだ。全国で約40億枚(県内は3221万枚)完売を目指している。鉄道駅頭の一隅に販売コーナーを設け、行き交う人に声を掛ける光景も見掛ける。今秋近所に住む郵便社員が注文取りにみえたが、これも国営時代にはなかったこと。意気込みが伝わってくる。年賀はがき誕生に込められた民間の知恵を思うと、民営化の初動は感慨深い。

▼ 2007年 12月 21日 ―電気の話―
 東北電力の岡信慎一盛岡営業所長が「東北電力NOW」の説明に来社された。東北電力の業務内容のダイジェスト版である。石油類の値上げで、電力料金に影響するのではないかと心配していたのだがそのようなことではなかった。
▼近年は「オール電化住宅」などが普及してきているので、電気のことについてもっと知識を深めなければならなくなっている。地域社会と電力の関係について、より信頼を高める為に東北電力では「地域社会」を「みなさま」と読んでいる。
▼戦中戦後は裸電球の光が「ぽかぽか」と点灯したり弱くなったりしたことを覚えている。また電力不足で「ていでん」という時間を我慢していた時代があった。今の社会は発電送電がしっかりしているから、自然災害でもなければ停電といったようなことがなくなった。
▼逆に電気がなくなったならどうするのかというようなことを考えることもなくなった。だが電気が普及していても電気の原理を知っているものは少ない。
▼東北電力の電源構成は石炭29%,ガス25%、原子力20%、水力16%、石油7%、地熱・風力・太陽熱などの新エネルギー3%となっている。原子力、石炭、ガスが3大電源というわけだ。本県の風力発電による東北電力の買電が日本一ということであった。日本はロシア、カナダ、アメリカ、フランス、オーストラリア、中近東、東南アジアなどから石炭、ガス、原油、濃縮ウランなどの燃料の供給を受けている。

▼ 2007年 12月 20日 ―ホッピー人気浮上―
 忘年会シーズンだ。「とりあえずビール」で始まるのがどの宴席でも定番だろうか
▼やがて日本酒の熱かんを所望する声が飛び、洋酒や焼酎にこだわる向きもある。昔も今も変わらぬ光景だが、変化といえば肥満を気にするメタボ派が目立つことだろうか。蓄積した内臓脂肪。すでに高血糖とか糖尿境界型とかの診断を受けた人たちがお酒に臆病になっている
▼禁酒や節酒を課す人も増えている。そんな人たちに喜ばれているのが「ホッピー」だ。低カロリーで低糖質。尿酸値を上げ病変を招くプリン体はゼロ。ホップなどを原材料とする清涼飲料水である。ビール風味でありながらノンアルコールだから、禁酒派も安心して飲める
▼これで割った焼酎を好む節酒派もいる。ホッピー焼酎割りを「ホッピー」という商品名にし、「当店お勧め」と大書している店もある。メタボ派の中高年だけでなく若い女性の間でも、風味のあるカクテルとして人気が急浮上。このところテレビや雑誌などが相次いで伝えている
▼通によるとおいしく飲むコツは、焼酎とホッピーとグラスの三つをよく冷やす(3冷)ことだという。誕生は戦後間もない48年だ。低迷期もあったが近年、健康意識や車事情などを背景に需要が伸びている。広くアピールしたのは99年に創業者の孫娘がネット上に「ホッピーサイト」を開設してからだ
▼原料のホップといえば岩手は日本一の生産高を誇る。だがホッピーの製造元は、主にドイツ産を使うというから惜しい。

▼ 2007年 12月 19日 ―県の総合計画―
 岩手建設工業新聞社主催の岩手地域開発研究会12月例会は、県地域振興部長の藤尾善一氏による「新しい地域経営計画」と題しての講演であった。現在進められている県総合計画は、平成11年度を初年度としたもので22年度までの12カ年の計画になっている。残り期間は3年。達増知事に代わり、このほど新しい地域経営計画案も公表され、現在県民からの意見を募っている。
▼計画作成に当たっては、世の中の流れをどう認識し、課題は何かを掘り下げて掲げている目標が妥当なのかどうか、そして戦略が効率的、かつ実効性があるのかといった視点を重視したという。
▼本県でも、グローバル化の進展と少子高齢化、人口減少などに象徴される社会情勢の変化が顕著だ。とりわけ人口減少は地域に重大な影響を及ぼしつつある。本県には約3600の集落があるそうだが、人口減、高齢化、若年者の不足などで町内会や自治会が維持できない所も出てきている。地域コミュニティーが崩壊すれば、とても住みにくい地域になるだろう。
▼若年者の減少は労働力人口の減少、土地利用の減少、地域消費の減少につながっていく。その根っこには就職難があるわけで特に県北・沿岸地区など全国との格差が拡大しているところに問題を抱えている。県民所得、雇用情勢、医師不足、地域交通、IT化、定住対策などをいかにして回復させていくのか。実態の把握はよくできたがこれから「希望の持てる岩手県」建設の具体策が欲しい。

▼ 2007年 12月 18日 ―吾亦紅(われもこう)―
 仕事にかこつけ、親不孝を重ねた男たちを泣かせてしまう歌がヒットしている
▼「お久しぶりね」などの作曲家として知られる杉本眞人さんが、歌手・すぎもとまさととして熱唱する「吾亦紅(われもこう)」だ。大みそかのNHK紅白歌合戦にも出場が決まっている。友人の作詞家・ちあき哲也さんから贈られた詩に曲を付け、自ら歌っている
▼お盆に帰れず秋の山辺に吾亦紅という名の花が揺れるころ墓参した息子が、亡き母に独白する歌だ。「仕事に名を借りたご無沙汰 あなたに あなたに謝りたくて〜ひとり逢(あ)いに来た」と、心に去来する母への思慕を切々と歌う
▼「親のことなど気遣う暇に 後で恥じない自分を生きろ」という形見の言葉。「髪に白髪が混じり始めても 俺 死ぬまであなたの子供」という結び。それらのセリフが還暦前後の男たちの胸を切なく打つのだ
▼杉本さんが母を亡くし落ち込んでいたとき、ちあきさんから「お母様にささげてください」と、この詩を託されたという背景がある。親交のあったちあきさんが、母上は秋の野に静かに咲く吾亦紅のような人柄だったと、それを題名にしたという
▼赤黒く見える花の色。人々がこの花は何色だ。赤か紫か茶かと騒いでいたとき、花自身が「われは断じて紅です」と告げたという言い伝えもある。高浜虚子は「吾も亦(また)紅なりとひそやかに」と詠んでいる。花言葉は愛慕、感謝など
▼親不孝をわびつつ、亡き母を慕う歌にふさわしい花だ。

▼ 2007年 12月 17日 ―年納めそば寄席―
 土曜日の午後、大手先にある東家の「創業100周年記念シリーズ第5弾、年納めそば寄席柳家さん喬独演会」に参加させていただいた。約20年ぶり2回目の参加だった。少し早めに行って1階のそば処で順番を待った。更科そば「かきあげ天そば」で腹ごしらえをして午後2時からの寄席に備えた。
▼2階はこれまでにないほどの入込みとかで広間はほぼ満員。奥に金びょうぶをバックに高座が用意され、金色の座布団が置かれて準備万端であった。開会に先立って馬場洋子社長があいさつされた。東家は明治40年創業で古い歴史を有しているが、馬場勝彦前社長が亡くなって12月13日で3回忌を終えられた。このそば寄席は永六輔さんと馬場勝彦さんの対談がきっかけとなって昭和56年にスタートした。つまりは「そば交流」の一環であったが、今では「いきいき牧場」など福祉バンクの支援活動として開催されているという。
▼さん喬師匠は「寄席の起源はそば屋から」として江戸落語の古典「時そば」を演目に組んだ。盛岡での寄席でも吟味していることが分かる。現社長の洋子さんが東家に嫁ついでから既に30年以上経ている。洋子さんの腕で繁盛しているといってもよかろう。
▼葺手町の本店、盛岡駅前店など特色のある店舗が増え、生き生きとしてサービスが隅々まで行き届いているように思われる。そしてわんこそばのみならず、じっくり食べるそばが一層おいしさを増してきている。年の瀬が近づいている。

▼ 2007年 12月 16日 ―答える人のいる温かさ―
 猛暑の反動なのか。今年は早々と襲来した冬将軍。冷え込みもことのほか厳しい
▼背を丸めながらふと、俵万智さんのあの傑作が口を突いて出ることがある。「『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ」(歌集「サラダ記念日」所収。河出書房新社)。日常のひとこまを、さらっと会話調の31文字で歌い上げる歌風にファンが多い
▼「寒いね」と声を交わし合うのが、夫婦でも親子でも、友人同士でもこの歌の情景は成り立つ。問えば答える人のいる温かさ。気候の寒さも、心通う人と人との言葉のぬくもりでいやされる。俵さんは互いに恋する人の寸景を詠んだという。恋愛を背景にすると温かさはひときわ味わいが深くなる
▼「愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人」。誰にかかわろうとしょせんは一人と、冷徹に他を突き離す孤高を詠むこの歌も同じ歌集にある。人の暮らしの中には孤独感に沈むときもある。それだけに心が通う人とのきずなが尊いのだろう
▼先日、軽装で朝から行方不明になっていた認知症の女性が、氷点下の一夜を犬に寄り添われ公園ですごし、翌日昼すぎ発見されたという報道があった。体温で老女を守ったのは近くで飼われていた老犬だったという。美談ではあろうが、特に夜に入っても声を掛ける人がいなかったというのは寂しい
▼今は一人暮らしの方も多い。それぞれに「答える人のいる温かさ」があるといい。心通うぬくもりで冬に立ち向かいたい。

▼ 2007年 12月 15日 ―効率化と地方振興―
 今年最後の岩手経済同友会例会(永野勝美、小川惇代表幹事)が先日、市内のホテルで開かれた。今回は達増拓也知事が「新しい地域経営の計画案について」と題して講演した。平成19年度から22年度までの県の経営計画の方針についてであった。
▼表題は「危機を希望にかえるために」としているが、知事は平成3年ころに米国ジョンズ・ホプキンス大学国際研究高等大学院に留学されたときの体験を生かそうとしているようだ。
▼アメリカはいつの時代にも危機を希望に変えて、さまざまなことにチャレンジしてきているのかと思わされた。
▼政府の方針として三位一体の改革を進めているわが国では「格差」の開きが大きくなってきている。地方や中小企業は「効率が悪い」と置き去りにされることも多くなってきた。世の中をすべてにおいて効率や経済の物差しで計ることができるのだろうか。自然や環境を守ることは、効率化と相反することにはならないか。
▼自然環境を守っているのは地方である。その地方の社会基盤整備に対して「無駄な道路を造るべきではない」という批判が近年聞かれる。地方と都市の役割や相関関係はどのように評価されているのか。地方の医療や地方の基幹産業である農林水産業はもう十分なほど向上したのか。達増知事の本県に軸足を置いた視点には共鳴できるものがある。ただ、本県を4つのブロックに分けて対策を立てるのが適正なのかはもっと議論すべきではないかと思わされた。

▼ 2007年 12月 14日 ―年金対応 国の欺まん―
 「日本人の一人として恥ずかしい。悲憤に堪えない」と清水寺の森貫主は嘆く
▼今年の世相を表す漢字「偽」を大書した後の言葉だ。多くの国民も同じ思いであろう。民間に横行する偽りの所業に怒っているだけではない。巨額の血税を犯罪的手法で偽り浪費する省庁への憤まんも、抑えることができない
▼宙に浮いた年金問題対応の欺まんにも、我慢がならないと不信を募らせる人は少なくないだろう。誰のものか定かでない5千万件の照合を進めてきた社会保険庁は、このほどそのおよそ4割の特定に難航していることを報告した。しかもその内約945万件については、特定できないまま終わりそうだという
▼今夏の参院選で安倍前首相が断言した公約は何だったのか。「最後の一人まですべての記録をチェックし、年金を払うようにします」と叫ぶ安倍さんの映像を再放映したテレビ局もある。自民党議員も「来年3月までに5千万件の名寄せ照合終了」を公約とし叫んでいたことを皆が覚えている
▼政府首脳の反応も不信をあおる。「公約違反というほど大げさなものなのかどうかね」ととぼける福田首相。町村官房長官は「選挙中で簡素化して言った」と受け狙いの空手形であったことを認める形。舛添厚労大臣は「すべて片付けるとは言っていない」「作業はエンドレス(終わりがない)」と開き直る
▼もう頼れないお国。心配な人は自分で役所に足を運び解明を急ぐしかない。政治の偽りに悲憤しつつ07年が暮れていく。

▼ 2007年 12月 13日 ―公務員のボーナス―
 公務員には慣例によって10日にボーナスが支給された。2、3カ月を超える高額な支給率となっているようだが、地方自治体の財政立て直しが大きな課題となっているときに全国レベルの支給率でよいものかと疑念を抱く方も多かろう。
▼地方は自主財源が不足している市町村が多いわけだが、地方の公務員も全国のレベルに合わせた処遇を受けるべきものなのか、各市町村の財政規模などによって異なっていてはいけないものなのか。自主財源が30%、40%といったようなところでも全国と肩を並べなければならないものなのか。冬、夏のボーナスや退職手当などは黒字決算の上で支給するのが基本であろうと思われる。
▼規定や協約で決められ、議会などを経て条例で決められたこととして黙認されているが、税制の見直しや格差是正のためにふるさと税を新設する動きなどもある中では、税収など照らし合わせ背丈に合った支給が適正ではないかと思う。
▼例えば小中高など公立学校教員などの給与は国と地方で差があってしかるべきものか。都市手当などの若干の差はあっても、全国同レベルを確保しなければならないものなのか。
▼優秀な人材を求めるためには相応の処遇が必要だとする理由もあろう。地方といわず、大きな企業が存在しないところでは学校や役場職員などの消費が地域の経済に大きく貢献している。だからといって公機関が貧しているのに職員だけが全国レベルの処遇でいいはずがない。

▼ 2007年 12月 12日 ―役場職員の改ざん発覚―
 何かのはずみに、つい、ごまかしてしまうということが人にはある
▼突発的にうそをついてしまったという場面なら、「しようがないなあ」と小言をいう程度でも済ませられる。そうではなく意図的で継続的に偽り続ける場合は、相当に悪質だから許せなくなる。この1年もその種のたちの悪い偽装、偽造、ねつ造などの不祥事が各界にあきれるほど噴出した
▼関係者らが、申し開きや謝罪を繰り返す姿は日常化している。テレビを見る子供たちからも、「あれ、また謝っているよ」といった声が挙がるほどだ。しつけや教育の面からも好ましくない事態が、正月から年末まで続発している
▼それにしても、当方も住民としてしばしば足を運ぶ滝沢村役場で、上下水道部の職員が長期滞納者の収納率を上げるため、未納金の納付が済んだように装う改ざんをしていたという報道には驚く。職員大半がまじめに精励していても、一人の悪事が全体の信頼を失墜させてしまう
▼偽装工作が行われたのは、03年7月から本年9月までとされる。現在までに水道料金815件、下水道使用料413件、合計およそ438万8千円の改ざんが明らかになっている。再調査も進めるという。同職員は他部署へ異動した後も、発覚を恐れ水道部局へ忍び込み工作を続けたらしい
▼後任の担当者がリストの矛盾に気付き改ざんが判明した。人は悪巧みをする生き物という性悪説に立ち、管理を強めるほかない。役場にも厳格なチェック体制が欠かせない。

▼ 2007年 12月 11日 ―戦争遺族の記憶―
 12月8日は太平洋戦争開戦の日であった。真珠湾攻撃から66年を迎えたことになる。12月9日と10日の2日間、NHKラジオの深夜放送で盛岡市の駒井修さんが2夜連続して戦争体験の話をしていた。
▼昭和19年に外地で戦死された父親の足取りをたどってイギリスまで出かけられた苦心談や親無し子で育った自分の回顧談を述べられていた。何せ早朝4時過ぎから40分近い放送だったから、目覚まし時計をかけておいて何とか間に合わせることができた。布団の中でラジオを耳に寄せて痛々しいお話をお伺いした。
▼戦地に赴いて実戦を潜り抜けた方たちはとかく戦争のことには触れたがらないものである。生き残って帰還された方から聞けないからこそ知りたいのである。
▼70歳前後の方たちには父や兄などを戦争で失った方が多い。終戦当時、国民学校に入った直後かあるいは入る直前の年代層である。旧満州などから戦後引き揚げてこられた方たちでもある。
▼太平洋戦争に関する著書は書店などに行けば多く陳列されているが、そうした年代の人たちは直接に自分の親や兄弟の動向を知りたいのである。中国大陸やフィリピン、ニューギニアなど南方海戦に散った肉親のことやシベリア大陸に捕虜になって亡くなった肉親について、現地の地名や親や兄の名前が載っている活字を追い求める。
▼終戦後既に62年を経ているが、遺族には、幼かったころの記憶が消え失せるどころか、さらに強まってきているように思える。

▼ 2007年 12月 9日 ―シクラメンのかほり―
 歳末のにぎわいに色彩を添えるシクラメン。この花にはソロモン王にまつわる伝承がある
▼自分の王冠のデザインに似合う花を求め、王は花たちと直接交渉。だが次々断られる。ようやく「いいですよ」と言ってくれたのがシクラメンだったという物語だ。王が感謝するとシクラメンは、恥じらいからうつむいてしまったという
▼ピンク系シクラメンの花言葉は「はにかみ。内気」と聞くと、そんな言い伝えを思い出す。色により赤は「きずな。しっと」。白には「思いやり」などの花言葉がある。こよなくめでた先人たちが感じ取ったメッセージなのだろう
▼この季節になると往年のヒット曲「シクラメンのかほり」(小椋佳作詞・作曲)も思い浮かぶ。布施明が歌い75年の日本レコード大賞を受賞したが小椋自身も歌う。6日朝の民放テレビに生出演。あの切なげに歌う小椋調「シクラメン〜」を久しぶりに聞いたが、やはり味わいがある
▼歌詞にはすがしい真綿色、まぶしい薄紅色、寂しい薄紫が叙情的な恋の情景として描かれている。題名の「かほり」は小学生のとき以来の幼なじみで、やがて小椋夫人となった佳穂里さんが下地になっている。往時、シクラメンには一部野生種を除くと香りがなかった
▼現在は一関の園芸農家など全国各地で芳香種が栽培されている。この歌の大ヒットで品種改良が促され、「香り」種が生まれたという。そんな逸話も思いながら歳末の慌しいひととき、シクラメンに心和ませるのもいい。

▼ 2007年 12月 8日 ―国家の埋蔵金?―
 6日の夜、テレビを見ていたら自民党元幹事長の中川秀直氏がわが国には40兆円あまりの埋蔵金があるという趣旨の発言をしていた。国会議員の口から突如としてそんなことが飛び出したものだから驚くのは当方のみではあるまい。そんな大金がどこに隠されているのだろうと疑問を持ちながら聞いていた。話の経過からすると、中身は財政融資資金特別会計(財融特会)の積立金のことを言っているようであった。
▼国の特別会計の積立金を霞ヶ関の埋蔵金と呼んでいるのだそうだが、搾り出せば本当にそんな大金が出てくるものなのかが分からない。国の金庫番として非常時に備えてそれぐらいの「へそくり」をためていたとするならば大助かりである。
▼国の財源は国債に頼っているが、いずれは返さなければならない借金といえる。福田総理は同夜「埋蔵金の確認をしたい」といったようなことをしゃべっている。いよいよ来年の予算編成に向かって大詰めを迎えているが、消費税値上げについて、自民党内でも賛成と反対の二つに分かれている。
▼なにしろ国会は延長しその会期も終わりに近づいてきているが、新テロ法案などの審議も遅遅として進まず情勢は厳しい。年内に法案が通らなければ再延長にするのか、また衆院の解散が早まるのではないかとした議論が出てきている。選挙目当てのような「奥の手」が突如飛び出してきて国民を揺さぶろうとするようでは困る。しっかりとした財務管理をしてもらいたい。

▼ 2007年 12月 7日 ―化石感覚からの脱皮―
 高校生の孫息子が帰宅。留守番役の祖母がリビングでテレビを見ている
▼人のいない祖母の部屋も玄関も昼間から電灯を付けたまま。トイレを開けるとそこも電気が消し忘れ。「おばあちゃん、消さなきゃだめって、いつも言っているでしょ」と孫の説教が始まる。近所の友人宅のひとこまである。子息は地球温暖化防止に意識が高い
▼「地球の未来を救うにはわが家の努力が第一歩」と家族にも口やかましい。会社勤めの父親も車通勤を改めるよう迫られている。母親にも厳しい。薄着で暖房を30度近くまで上げ編み物をしていたときなど、設定を20度に下げられてしまった
▼温暖化に警鐘を鳴らす今年のノーベル平和賞受賞者になぞらえ、友人は息子に「わが家のゴア副大統領」とニックネームを付けた。反射的に、「そんなの関係ねえ」といわんばかりに、温暖化防止の流れに背を向けひんしゅくを買ってきたブッシュ大統領を思い出す
▼各家庭や職場にもゴアさん役もいれば、石頭タイプのブッシュさん役もいるのではないか。民間団体の世界的ネットワーク(CAN)が99年に始めた気候関連会議の消極国に「化石賞」(1位〜3位)を贈る皮肉も興味深い
▼バリ島で14日まで開催中の気候変動枠組み条約第13回締約国会議でも毎日受賞国を発表。4日の会議では日本が京都議定書後の対応が後ろ向きなどと不評。「化石賞」を1位から3位まで独占する不名誉を味わっている。国も個人も化石感覚からの脱皮が急務である。

▼ 2007年 12月 6日 ―観光産業―
 「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」11月号の表紙は秋田県の鶴の湯温泉の雪景色になっている。それもただの温泉ではなくて「Hitou・秘湯」として詳しく紹介されている。先日の日本経済新聞でも紹介されているが、こうした特集はこれからの観光振興の方向付けを意味していると思う
▼観光産業は24兆円産業といわれ、国内総生産・GDPの約5%に当たる大きな産業だ。観光産業の重要性はみな認識しながらも、持てる資源を生かしきれずに伸び悩んでいるのが実態ではなかろうか。国際化や代替わりが進んだが観光施策の転換ができないでいる。もちろんのこと簡単に変えられるものではないけれども、史跡名所地、リゾートやスキー場などの入り込み人員は毎年減少している
▼当然に常に観光力を高めることでスキルを磨かなければ顧客に飽きられてしまう。かといって背丈を超えた設備に無謀な投資によって債務を抱え苦しんではなんにもならない。数十年前に立てた構想が今の世の中に合っているのか、当時のコンサルなどの提言に乗っかった構想が、今も顧客をひきつけているのか疑問だろう。とりわけ装置産業と呼ばれる種類のものは厳しい見通しも必要だ
▼公営であろうと民営であろうと事業の健全性は求められる。せっかく開業したものを途中でまずいからといって撤退するとなれば大変な決断をしなければならなくなる。観光地は常に競争にさらされている。その自覚がまず何よりも求められる。

▼ 2007年 12月 5日 ―07年流行語年間大賞―
 今年を振り返ると、都道府県の中で話題性、注目度の筆頭格はやはり宮崎県だろうか
▼県のセールスマンを自任する東国原英夫知事の奮闘がもたらしたものだが、昨年の今ごろは前知事の官製談合疑惑で暗雲に覆われていた宮崎県。その知事が逮捕されたのが12月8日だった。それを受けて行われた1月の知事選に名乗りを上げたときから、東国原さんの話題性は始まっている
▼元芸能タレント。経歴には幾つかの不祥事もあったが、政治家への志の本気さがダメージを振り払ったのだろう。地元弁で「宮崎をどげんかせんといかん」と訴えて初当選を果たした。県産品のセールスだけでなく、裏金のあぶり出しなど県行政のうみも出す
▼1年生知事及第ということだろうか。07年「ユーキャン新語・流行語大賞」年間大賞に「どげんか〜」が選ばれ3日、表彰を受けた。「お国言葉のそのフレーズが、宮崎だけでなく日本中の老若男女の琴線に触れた」というのが主催者側の授賞理由だ
▼地方自治を熱心に勉強するひたむきさ。県民に尽くそうという一生懸命さ。県のPRにどこへでも飛んでいく行動力。単なるパフォーマンスではないその振る舞いは、知事職のイメージを変えつつある。格差に苦悩する地方が壁を破るにはこういう個性も必要なのだろう
▼年間大賞には高校生ゴルファー・石川遼選手の愛称「ハニカミ王子」も選ばれている。恥じらいが脚光を浴びるほど、厚顔無恥の人が目立つ07年でもあったことに思い当たる。

▼ 2007年 12月 4日 ―12月―
 12月は1年の締めくくりの月であり、年間を通じて最も日中の短い月である。裏を返してみれば夜が一番長い月でもある。別名では師走の呼称が通例になっているが「極め月」とも言われている。
▼一般には師匠までもが走り出す月と言われ、行事が多くなってせわしい月である。大事な事柄が夜に決められるといってもよいだろう。小心のせいかいろいろと危ぐしているところだ。政治や社会問題にしてもさまざまなことが起こっているが、最近は明るいニュースが少なくなってきている。
▼先日、平成20年神宮館運勢暦を買ってきて、来年の干支(えと)戌子(つちのね)、つまりは、ねずみ年の運勢を占ってみた。昔から「こまめに、まめに」努力することでよい年になれると言われているが、本当にそうあってほしい。
▼現実は石油類の値上げに始まって、関連の物価の値上げや食品類の偽造や偽装が社会問題化してきている。商取引など関係者の倫理観の確立を望むのであるが、手段を選ばずに利益中心の考えが優先されてきたのは残念だった。
▼地球の温暖化が進んだと思わされた「いのしし」の年は苦しいことが多かった。1年を振り返りながらそんなことを思っていたら里にも雪がやってきた。来年のことよりも、残された1カ月をしっかりと締めくくらなければだめですよと、お天道様がしかっている。びちょびちょ雪の上を歩きながら、そうしなければ来年の吉にもつながっていかないだろうと思わされた。

▼ 2007年 12月 3日 ―みちのく猫物語―
 インターネットからは何が飛び出すか分からない。今、岩手発の「猫なべ」動画が全国で評判になっている
▼「〜なべ」といっても、これからが旬の料理のことではない。雪やこんこと歌う童謡「雪」にも猫はこたつで丸くなるとあるが、土なべを並べて置くと、猫はその中にすっぽりと入って丸くなる習性があるという。その姿を「猫なべ」と名付けたのだ
▼発信者は奥森すがりさん(投稿用の名前はエレファント)。本県中央部の田園地帯で14代続く農家のお嬢さんだ。今夏、河原で4匹の子猫を拾い、今まで飼っていた2匹(名は1号とモンペ)と共に育てている。7月、名前を募集するため4匹の写真を動画サイトに投稿。多数の候補名が寄せられる
▼祖母と相談し「ニャンゴロー」「まんず」「ましゅまろ大仏」「ニコ坊」と命名。ある日、縁側に置いた土なべに猫が入って丸くなっているのを発見。ときには一つのなべに2匹、3匹と重なって丸くなる。4匹が入り込むこともある。1号とモンペもまねをする
▼その愛くるしい寝姿やあくびのしぐさなども撮影。「猫なべ」として投稿。かわいい。いやされるなど反響が一挙に広がる
▼なべ姿も1匹が並、2匹入りが大盛、3匹は特盛、4匹重なったのをもり盛と冗句的に表現。NHKや民放テレビも紹介。DVDや写真集も発売された。奥森さんが岩手弁で書いた「ねこ鍋〜みちのく猫ものがたり」(二見書房)もよく売れている。この大ヒット。ネットの威力に驚く。

▼ 2007年 12月 2日 ―新幹線八戸駅開業から5年―
 東北新幹線八戸駅が平成14年12月1日開業から5年。盛岡〜八戸間が最速29分、各駅停車が37分で結ばれている。月末に所要があったので八戸に行ってきた。八戸駅から産直センターまで100円バスが運行されていた。また八戸市中心街の屋台村「みろく横丁」が年間35万人の入込みで約5億6千万円を記録しているという。
▼八戸までの新幹線の利用者は過去最高の465万人を記録し、開業前利用者より65%も多くなり、1日平均利用者数でも前年比3%増の1万2500人の過去最高を記録した。JR関係やホテルなどの施設は新幹線開業を機に整備が整った。
▼しかし、八戸駅から5分もかからない駅裏などには空き地が目立ち、街並みも開発から遅れてしまって整備されていないところが多い。建設関係業者などは業務量が8〜10%も落ちていると悲鳴を挙げていた。
▼あと4年で新青森開業、そしてさらにその4年先には新函館開業が待ち構えている。盛岡圏にとっても同じことだが、新幹線効果を生かし観光や産業振興などを進めるような工夫が求められている。
▼八戸商工会議所では、十和田湖などは5年で観光客が一巡したと見ており、次は下北や久慈・三陸、その先の函館と組み合わせた商品を考えている。慎重な県民性もあってせっかくの輸送機能を生かしきれないでいる面もある。IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道も開業から5年。販売戦略の造成と、持てる経営資源の発掘に知恵を絞ってほしい。

▼ 2007年 12月 1日 ―荘厳な有終 悲劇の死―
 菊薫る季節の峠はすぎたが、師走の鉢に凛(りん)として咲く残菊がある
▼そんな光景を目にすると「一輪の残菊ながら薫るなり」の句が浮かぶ。永六輔さんの母が、夫が90歳で他界した時に詠んだものだ。残り菊のような自分も凛として薫るように生きていく、との決意がうかがえる。「身にしみて晩年の計たたぬまま」もその時の句だが、取り残された戸惑いの中の覚悟だけに粛然とさせられる
▼老いや死などが抱える重いテーマを、永さんが面白おかしく掘り下げた「大往生」(94年・岩波新書)の中で紹介している。江戸時代の僧・良寛が臨終のまくら辺で、「散る桜残る桜も散る桜」と付き添う貞心尼につぶやいたという言い伝えもある
▼それは自作でなく別人の名句を吐露したものとの異説もあるが、誰にも死が訪れることを平易に教えている。今でも弔辞などによく引用される由縁であろう。「形見とて何か残さん春は花 山ほととぎす秋はもみぢ葉」も良寛辞世の歌という
▼春の桜、冥界の鳥ともいう夏のホトトギス、秋の紅葉を形見に残すから、見聞きしたら思い出してほしいとの遺言なのだろう。老いや死には厳しさ悲しさが付きまとう。でも残菊に晩年の襟を正し、桜や冥鳥、紅葉に臨終を重ねる姿には有終の荘厳さがある
▼「有終」は辞書に「終わりを全うすること」とある。昨今は事件や事故で人生を絶たれる残酷な死が多い。幼児の悲劇も目立つ。有終の美を飾れるように生き抜く権利は誰にもあるのに。

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