2008年 2月の天窓


▼ 2008年 2月 29日 ―楽天に挑むヤクルト佐藤―
 感傷論になるが、ああ、彼が東北楽天に入団していたらと、多くのファンが思ったことだろう
▼高校生で150キロ前後の速い球をびゅんびゅん投げている期待の星。仙台育英高校の佐藤由規投手のことである。地元・楽天入団も夢見たが、有能選手を公平に登用するドラフト制に運命をゆだねた彼。涙を見せながらもヤクルト入団を決意したときの光景がよみがえる
▼25日に沖縄・浦添球場で行われた練習試合の相手は東北楽天だった。佐藤投手もこの対外試合で先発初登板。プロ1年生としてのキャンプ生活で、ヤクルト魂を吸収したのだろう。負けん気をみなぎらせて、楽天打者に立ち向かう姿がテレビに映し出されていた
▼2回を投げて無安打、2奪三振、無失点と好投。最速154キロも記録して鮮烈デビュー。この日は楽天が1対4で負けた。みちのく人としては複雑さもあるが、今年は上げ潮基調の東北楽天の働きぶりとともに、ヤクルト佐藤由規からも目が離せない
▼もし佐藤が起用され今回のように楽天に挑む場面があれば見応えがあろう。楽天が最下位から4位に浮上した昨年。そのけん引力にもなり、パ・リーグ新人王にも輝いた田中将大投手(通称マー君)との対決も楽しみだ。佐藤も投げ合いたいと明言している
▼野村克也監督が「マー君、神の子、不思議な子」と評した田中投手が、どんな投げ技で応じるか。ドラフトの計らいが生んだ有能選手の配置の妙が、郷土意識をバックに面白さを多彩にしそうである。

▼ 2008年 2月 28日 ―元気をもらう言葉―
 2月は1カ月最少日の特異月だが、今年は4年に1度のうるう日がある。その2月もあすで終わって3月に入る。そして卒業式シーズンを迎える。企業などでも年度末で退職される方もあり、それに伴う人事異動も発令される。
▼まだまだ寒い日々が続いているが、日中に差し込む光にはなんとなく明るく温かみがあるように感じられ春の装いが見られてきた。
▼年度末決算のところではあと1カ月の営業成績が勝負になっている。本県では景気の上昇はいまひとつの状態が続いていて、前年実績を上回るのにも苦戦を強いられているところが多いようだ。来年度の事業計画を立てて新年度に取り組むべき重点事項などを今盛んに練っているところもあろう。市場に受けるのか、価値を生むのかをしっかりと詰めなければならない。
▼盛岡西警察署向かいにある写真屋さんの奥さんが、店頭の黒板に毎日チョークで書き続けている。先日は「春は出逢いと別れの季節」といったことを書いていた。今朝は「生きているだけで100%」とあった。なかなかいいことを書いているなと感心する。
▼毎日書き続けるのはたいへんだろうと思うのだが、通勤路になっている人や地域の人たちもすっかり分かっていて楽しみにしているようだ。信号待ちの合間に読まなければならないので、時には気付かずに通過してしまうときもある。そんなときは少し損をした気分だが、前方不注意にならないように安全運転で通りたいと心がけている。

▼ 2008年 2月 27日 ―小泉節が復活―
 長期政権を務め上げ総理の座を去ってからは、久しく静かだった小泉純一郎氏が、あの元気節を復活させている
▼22日にもあるセミナーで講演。衆参ねじれで出口不透明な道路特定財源の国会審議にも触れ、大胆な発言をしている。「自民党の中にも、本音は一般財源化でもいいという議員がいる。わたしみたいにね」と。「野党の主張にも、多々もっともだと思わせる点がある」と野党への理解も示す
▼かつて「自民党をぶっ壊す」と党内野党の立場にわが身を置き、抵抗する勢力を右往左往させた変幻自在な小泉節は健在らしい。講演では「福田総理が譲るべきところは譲り、『一般財源化を前提にして、いい案をまとめよう』と言えば修正の話が出てくる時期になった」と現政権にも注文を付ける
▼本県のように複数の車を持つ家が多く、一方で道路の未整備も目立つ地方では、税率は抑えガソリンは少しでも安く、かといって道路整備も遅滞なく進めてほしいという矛盾した願いを持つ。地方の財源も脅かさず、対立する願望の双方に満願ではなくとも、最大限の努力で肉薄させるのが政治の役割であろう
▼小泉後継の安倍政権は挫折。その後を継いだ福田内閣も不人気で支持率も低迷。政治力の発揮もおぼつかない。小泉節復活は「もう見ておれない」というこの人の意思表示なのだろうか。がむしゃら路線は心配だが、国民が願う方向へ与野党が心を開く契機となるなら、刺激の多い発言もどしどし披歴してくれるといい。

▼ 2008年 2月 26日 ―平泉と盛岡の関係を―
 多年にわたって調理師業界に功績を挙げ、叙勲を受けられた山本積さんの受章祝賀会が過日つなぎ温泉で開かれた。宴会にお招きをいただく機会は多いが、調理師さんの集いにお招きをいただくのは年に1度あるかないかである。
▼調理師さんは常に調理場でお客のために努力をなさっているのだが、祝賀会の日は県調理師会会長を始め多くの会員がお客として出席されていた。
▼調理師会は本県の大きな業界なわけで食材を預かっている鮮魚類からお菓子、そしてホテル・旅館・酒屋さんに至るまで多くの業種がかかわっている。
▼また内部では料理長をトップに師弟関係の絆も深いようである。近年はフリーペーパー、旅行誌や食に関する情報誌などを通じて旅行客などの入り込みも多くなっている。
▼わんこそば、冷麺(めん)、ジャジャ麺などの麺料理や豆腐料理のほかに懐石料理などが人気の的になっているようだ。宴会ではやはり「平泉年」の話題が多い。
▼問題はつなぎ温泉と平泉の関連性を強めていくことにある。どのようにして平泉のお客を盛岡・つなぎに誘客するのかである。松尾芭蕉も平泉で引き返しているし、義経も盛岡方面にはあまり来なかったという歴史がある。そうした歴史認識を変えて、「平泉と盛岡」の関連を強めていくことが営業戦略で重要になっている。
▼歴史を変えるのは大変なことだが、今年が千載一遇のチャンスとして強力に打ち出していきたいものである。

▼ 2008年 2月 25日 ―思い出ベンチが好評―
 公園には人それぞれに思い出があるだろう。青春の日の恋人との散策。逆に失恋の痛手をいやしたひとときなど
▼心弾むときも失望のときも、そこにあるベンチはありがたい。座って足を休め、噴水や樹木や草花などの風景を眺めくつろぐ。気軽に利用できる腰掛けとして役目は果たしているのだが、東京都では行政主導でもう一つの活用法を推奨している
▼「思い出ベンチ」と名付けたもので、希望者を募り、その人の思い出のメッセージと名前をプレートに刻み、ベンチの背もたれに装着する試みだ。応募する人は、自分のプレート付きベンチを寄付するという形を取る。タイプにより15万円か20万円の寄付金を添え、公園名を指定して都に申し込む
▼公園整備費用捻出も兼ねた手法として、日比谷公園開園百周年を記念し03年度から事業化。初年度の募集公園は日比谷のほか井の頭公園も対象。このアイデアは好評で、都内のほか他府県からも申し込みが相次ぎ、両公園の募集数200基すべてが設置完了
▼次年度以降は募集公園を拡大。霊園、動物園なども対象に加えている。来月(07年度末)までの設置総数は600基を超えるという。「ここで愛を育み結婚して35年たちました」「いつまでも 元気で仲良く 嫁ぐ娘より」「私たちの路(みち)、ここで決めました」など、寄付者のメッセージが刻まれている
▼ふと目にしてほほ笑む人もいよう。この東京方式に啓発されて導入した県もあり、全国に普及しそうな気配である。

▼ 2008年 2月 24日 ―日本一の農林水産物―
 県産の農林水産物の中で日本一のものが6品種あるというのは、中小企業診断士の宮健氏で、それを大いに伸ばしていかなければならないとしている。それは当然のことと思うのだが、どんなものが日本一になっているのか。
▼まずはシェアの高いほうから並べると、リンドウ、生漆、ワカメ、ホップ、木炭、アワビの順になっている。意外な品物もあろう。
▼日本一とは言ってもシェアが高いほうで69%、低いほうで17・1%とばらつきがある。それでは、この品目を量産化するなどして本県の基幹となる産業にのし上げることができるのかが課題となる。つまりは需要を高めて生産の拡大を図るのが可能なのかである。
▼そのほかにシェアが高いものに、雑穀や短角牛、ウニ、ナマコ、シイタケ、ピーマン、ホウレンソウなどもあり、中でも雑穀はヒエ、アワ、アマランサスなどは日本一であるが、ソバ、キビなどは日本一ではない。木炭はシェアが25・4%でも日本一だが、大半が輸入品で占められているのが現状だ。炭焼きの窯は高齢化で年々消えているのが実態で、森林王国でありながら実態としてはあまり伸びていない。
▼今、中国から輸入されている冷凍食品に農薬などが含まれていることで大きな問題になっている。それに食糧供給基地として本県はどう応えるのか。厳しい価格競争の中で、安心、安全の付加価値は今後も大きくなるのは必至だ。本県農産物の目指すブランドイメージはそこにこそあるだろう。

▼ 2008年 2月 23日 ―悪口コンテスト―
 常に顔を合わせている大切な人にも、気になるしぐさや、不満を感じる振る舞いはある
▼そんなとき、皮肉めいたざれ言などをぶつけて気晴らしをする向きもあろう。面と向かって言えない人はこちらへどうぞというように、全国に呼び掛けているところがある。主催しているのは東海道の宿場町として栄えた静岡県・島田の「愛するあなたへの悪口コンテスト実行委員会」
▼当地が島田宿といわれた江戸時代に、所轄の代官が情報収集のため、町民に役人批判を込めた川柳を届けさせたという来歴にちなむ。05年から始めたユニークなコンテストである。50字以内の短文でだれでも応募でき、入賞者には賞金などが贈られる
▼15日には第4回の入賞作品が発表された。「無駄だとは言わぬ美容師言う鏡」がトップ賞。鏡は化粧もほどほどにと言う。少々きつすぎる。「お兄ちゃんへ 新聞に思い切りクシャミするのは止めてください 妹より」は入賞作品。新聞は共有だ。兄妹でも気遣いがほしい
▼ジュニア賞の少女は父親のさもしさを突く。「お父さん、お寿司屋さんに行く前に『お菓子をたくさん食べな』っていわないで!」と。過去3回にも面白い作品が多い。「ペ・ヨンジュン 好きでもいいからメシ作れ」(第3回)。「あなた その一言が足りないの 妻よ その一言が多いのだ」(第2回)
▼やはり夫婦間の苦言が目立つ。「来てやった もらってやった で銀婚式」(第1回)。ここまで連れ添えばまずはめでたい。

▼ 2008年 2月 22日 ―北上に東芝の半導体工場―
 北上市に東芝の半導体製造工場が進出することになった。本県にとって年初からはなはだ明るいニュースでよかった。斎藤五郎市長の時代から築いてきた50年来の積み重ねが今日になって開花したといってよいのだろう。一朝一夕にはできるものではなく、現在の伊藤彬市長をはじめ関係者の地道な努力が実ったものであろう。
▼今回の立地についてはだいぶ前から情報はあったが、正式決定ではなくて気にかかっていた。高度な技術のものづくり産業の振興の上から、雇用、経済、建設などさまざまな分野に波及効果があるものとして期待されている。
▼東芝はHD−DVD規格による次世代DVD事業からの撤退を表明した。その場で同時に、半導体、NAND型フラッシュメモリー工場として四日市市と共に北上工場を増備してシェア世界一を狙うという内容の記者発表だった。
▼今回の工場誘致では東海、北九州などと競争になったと聞く。5ヘクタールの土地を保有していることや人材確保、水資源など総合評価で決定されたと伺っている。
▼北九州市では250億円の助成金を用意して誘致要請を進めていたようだが、補助金を狙うより、人、環境、姿勢のほうが決め手になるようだ。北上市は「企業誘致に頑張る市」として有名だが、盛岡圏域にもそのような工場がほしいものだ。スケールの大きい工業団地を形成するにはどこの地域が立地条件に恵まれているのか。しかし、調査よりまずやる気と展望が必要だろう。

▼ 2008年 2月 21日 ―マンモス愛ちゃん―
 永久凍土という4字熟語がある。辞書には「地中温度が常に0度以下で凍結している土地」などの説明がある
▼今月初めに上京した際、都内丸ビルで開催されていた「奇跡のマンモス・リューバ展」を見学。解説などを読んでいるうちに、先の熟語のうち永久の2文字が揺らぎ始めていることを知らされた。零下18度のケースに収められていたマンモスの赤ちゃんは、推定で3万7千年前に死んだとされる
▼そのままロシア・西シベリアの永久凍土の中で眠り続け、トナカイ放牧中の猟師によって発見されたのは昨年5月。永久に解けることはないはずの凍結土壌の一部が溶解。生後およそ半年と推測されるメスのマンモスの遺体が、ほぼ無傷のままで姿を現したのだ
▼リューバは愛称だ。発見者の奥さんの名前をもらったものだが、日本名にすると「愛ちゃん」になるらしい。凍土の圧迫のせいか平たく見えるが体重50キロ、体長約120センチのほぼ全身が残っている。専門家も「こんな良好な個体は前例がない。奇跡に近い」とし、保存にも細心の注意を払っているという
▼太古のマンモスそのものの解析にも期待が集まる。一方、マンモス・愛ちゃんの出現に現代へのメッセージ性を読み取る声も高い。個体解析を担う慈恵医大の鈴木直樹教授は、大規模な氷山、氷河、永久凍土の融解が起きている現状を指摘
▼リューバは温暖化に伴う異変を皆に知らせ、地球を壊してしまう過ちをくい止めるために現代にやってきたと語っている。

▼ 2008年 2月 20日 ―中の橋下の観光名物―
 盛岡市の中心街を流れている中津川に今年の1月から観光の目玉が一つ増えている。それは、中の橋付近に8羽の白鳥が居ついていることだ。中の橋を通る人たちが下流で泳いでいる白鳥を眺め、時にはパンくずなどを橋の上から与えたりしてかわいがっている。白鳥にお気に入りの場所になったらしい。
▼NPO法人もりおか中津川の会会長の川村登氏によると、白鳥が中の橋の下流に飛来してきて居ついたのは初めてのことという。そして縁起のよい8羽ということになるからおめでたいことになった。既に1カ月以上になるから、これからも餌を与えるなどして来年もぜひ飛来してくるように大事にしたいと話している。
▼中津川では先日まで雪灯りが催されていたが、冬の風物詩として白鳥が加わった。春になると河鹿(かじか)が子供たちの人気となり、夏には鮎(あゆ)かけでにぎわい、秋にはサケの遡(そ)上が橋の上からも見られる。
▼盛岡市と盛岡商工会議所の08年度観光重点施策の一つに「歩いて楽しめるルートの作成」があって、中津川の四季は大きな観光資源になる。開運橋の下にも今年は3羽ほどの白鳥が飛来しているようで、ここも市民の憩いの場になってきた。市街地の真ん中を流れる北上川や中津川にはさまざまな見どころがあるが、橋の上から川を眺めることが楽しみになるというのは街歩きを勧めるうえで実にいい。自然の財産を大切にしながら盛岡の観光を盛り上げていきたいものだ。

▼ 2008年 2月 19日 ―「ふるさと主義」に遠野登場―
 ゲストの中村メイコさんが語る。「遠野は『あ、あそこがふるさとよ』とだれもが思うところ」と
▼NHK衛星放送の人気番組「絶対!ふるさと主義」。17日は遠野が舞台。2時間生中継の冒頭に、炭火のいろりを囲んだメイコさんが、その言葉を感じ入ったような表情で漏らす。《ふるさとの原風景》が遠野にはあるということなのだろう
▼番組では当地の風土が@海と山を結ぶ宿場町A馬産地B民話の3点を軸に形成されてきたことを紹介していた。行き交う人々へのもてなし。農耕をはじめ移動、運搬手段としての馬の産地。旅人が語った物語。それに啓発されはぐくんだ特有の民話
▼確かに遠野にはそれらが一体になった文化がある。映像は馬を大切にする曲がり屋の構造や、馬用の湯を沸かす馬釜もアップ。一方、どぶろくやひっつみ。山菜の塩漬けなど、メイコさんたち数人のゲストが「うまい!」と声を上げたごちそうにももてなしの心がにじむ
▼「遠野物語」(柳田國男著)で全国区になった民話は、人を遠い昔にいざなう。この日は語り部の正部家ミヤさんが出演。父親譲りという言い回しで、馬の嫁になった美しい娘が生家を守る「オシラサマ」と「カッパ渕」由来談を語った
▼民話の話す、聞くに「見る」を加えたいと青森から移住。「切り絵」で物語を表現している岩舘尚文さんも登場。遠野の深さを述べた。カメラは神楽やわら細工の習得に挑む若い世代の姿もとらえる。ふるさと伝承の歩みも確からしい。

▼ 2008年 2月 18日 ―国土形成計画―
 国土審議会は13日に総会を開き、中期的な国土作りの指針となる「国土形成計画の全国計画」を了承した。これまでは全国総合開発計画が1962年から98年まで36年間にわたって、いわゆる「全総」として第5次までの長期の施策であった。
▼今度の国土形成計画は、国土総合開発法を抜本的に改正して、計画の目的から「開発」の言葉を消すなど従来の開発路線を改めている。そして全国計画と全国8つの広域圏に分割した各地方圏とに分けている。東北は東北6県と新潟県を含めた7県で構成される。今度は目指すべき国土像として、各圏がそれぞれ高度成長を続けるアジア地域と直接交流しながら自立発展する姿を描いている。
▼計画策定は2008年度。今後10年間の国土づくりの基本をなすもので、従来の日本列島改造論とは異なるものの、従来と同じように「国土の均衡のある発展」という開発路線が残されている。
▼従来の「全総」は東京中心の一極一軸型の国の構造を生んでしまったという反省の声が高まっているため、新たな計画では都道府県をまたぐ広域地方圏ごとに自立的な発展を目指すべきだとしている。
▼だが、4全総に盛り込んだ「全国1万4千キロの高規格道路網の整備」や「整備新幹線」の未着工区間の事業推進は是認している
▼今後広域圏ごとの地方計画づくりが本格化するが、少子高齢化や財政がひっ迫している地方での東アジアとの交流拡大などをうまく進められるのか課題であろう。

▼ 2008年 2月 17日 ―市川崑監督逝く―
 一昨日のこと。番組表も見ずにチャンネルを回していたら、民放で名画「ビルマの竪琴(たてごと)」が放映されていた
▼テレビの即応性はありがたい。13日に市川崑監督が92歳で死去。日本映画界の巨星落つと報じられたばかり。これまで何度も見た映画だが、追悼企画と銘打たれた画面に引き込まれ最後まで見てしまった。原作は竹山道雄が児童誌に連載した小説だ
▼舞台は大戦末期のビルマ(現ミャンマー)。敗色濃い異国の地を転戦する日本軍の小隊。音楽の好きな隊長が「埴生(はにゅう)の宿」「荒城の月」などを教え、隊員たちは折々に合唱しながら故国をしのび、心をいやす。楽器の才がある水島上等兵はビルマの竪琴で伴奏する
▼敵の英軍に包囲されたときも、水島がイギリス生まれの曲である「埴生の宿」を演奏。合唱の声は英兵の心を打ち、やがて敵味方双方の大合唱となる。終戦となって隊員一同が帰国する前日。水島は「仰げば尊し」を奏で惜別の思いを音色に託し、皆に背を向け立ち去る。僧となってビルマで散った同胞を弔う覚悟を決めたのだ
▼市川監督はこの物語を1956年と85年の2度映画化した。それだけ思い入れが深かったのだろう。今回の追悼番組は中井貴一が水島役を熱演した85年版。年配者なら56年版を学校推薦で先生の引率で鑑賞した人も多かろう。市川作品では芸術的映像とも評された「東京オリンピック」や、テレビドラマ「木枯らし紋次郎」も懐かしい。冥福をお祈りしたい。

▼ 2008年 2月 16日 ―副知事退任―
 18日で任期が切れる竹内重徳副知事の後任がまだ発表されていない。通例であれば後任者が決まった後に退任のあいさつをして回るのであるが、仕事を切り上げる15日の時点では公になっていない。あれこれ名前は取りざたされるが、18日になれば達増知事から後任人事が発表されると思う。何せ県議会に諮らなければならないから慎重を期しているのだろう。
▼今から5年前を振り返ってみると、増田知事の時代であったが、小泉政権の三位一体の改革、郵政民営化などの懸案を抱えていた。地方としては平成の大合併、財政再建、岩手競馬問題、雇用や経済対策など速やかに処理しなければならない問題を抱え込んでいた。
▼財政は落ちるところまで落ち込んでしまって腹をくくった形で再建策を打ち出している。岩手競馬については荒療法を施して何とかつないでいく道筋が見つかってきた。雇用については十分ではないにしても自動車や電子関係などの分野で好調を取り戻しつつ、一部の分野で上昇に転じてきた。厳しい状況の中にも一応は地ならしを終えて前進していく方向が見えてきたというところであろう。
▼これからの4年、5年先を考えると新しい体制がふさわしいのだろう。本県は広い土地に恵まれているし人材もいる。歴史資源が豊かで自然環境にも恵まれている。安心安全な食料の供給も十分にできる。そうした資源を抱えているのだから、県民が一体になって夢と希望のもとに県土を築いていきたい。

▼ 2008年 2月 15日 ―源氏物語千年紀―
 紫式部は1001年に夫と死別。その数年後に大著「源氏物語」を書き始めたと推定されている
▼式部自身の日記などから今年は「源氏物語千年紀」とされ、記念行事などが多彩に催される。世界に誇れる名高い古典なのに、長編で難解な古文だから、原文読みを挫折した人は多い。
当方も挫折組で昭和30年代に、与謝野晶子の現代語訳上下2巻を買いそろえたことを思い出す
▼学生時代に原文解釈に難渋した向きも少なくなかろう。今はやさしい解説本もたくさん出ている。千年紀に触発され図書館で手ごろなものを探していたら、瀬戸内寂聴さんの少年少女向け現代語訳「源氏物語」(講談社)が目に止まり、借りて一気に読んだ
▼小学校高学年から中学生を念頭に置いたというだけあって、筋を追いながら平易につづられ、天台寺の説法などで県民にもなじみのある語り口を連想させる。頻出する和歌の詠み替えも巧みだ。「あとがき」「解説」も勉強になる。物語のあらすじや平安期の一夫多妻の結婚形態なども説明している
▼主人公の光源氏はスーパーマンでハンサム。次々と恋をしますが、だらしない人間ではないのです、というように書いている。かわいい、教養のある、しっと深いなどいろいろな女性が出てきますが、あなたのお母さんはどの人に似ていますか、との問い掛けもある
▼光源氏を軸に4代70余年。登場人物四百数十人の歩みと心理を活写し、人間の普遍の業を描いた式部の筆は千年後もなお新鮮である。

▼ 2008年 2月 14日 ―達増知事初の予算編成―
 春の山が動き出してきたような感じになった。その一つは県の竹内副知事と上村出納長の2人の退任が発表されたことだ。いろいろな場面で大変お世話になった。達増知事が誕生してからまだ1年を経ないのだが、2月21日に開会する県議会からは新しい体制で県政のかじ取りを始めることになるのだろう。
▼また12日には達増知事にとって初の当初予算となる2008年度当初予算案が発表された。一般会計が6583億5200万円で、7年連続で前年度を下回った。厳しい財政事情と何かの語呂合わせでもしたのか、大変な緊縮型予算となっている。
▼道路特定財源の行方がまだはっきりしていないから多少の動きはあるのだろうが、時節柄増えるようなことはあまり期待できない。
▼達増知事は「希望創造予算」と名づけて「いわて希望創造プラン」の着実な推進を図る第一歩としている。知事自らがゼロベースから事務事業の見直しを進め、必要な事業を重点的に予算化するなど選択と集中を徹底したそうだ。
▼歳入の構成比を見ると自主財源が38・8%で、依存財源が61・2%である。本来はこれが逆でなければならないのだろう。地方交付税が2300億7500万円で歳入の34・9%を占めている。もう一つは県債発行が872億9千万円で県債依存度が13・3%と前年度を上回ったことだ。極めて厳しい財政状況の中で組まれたのが分かるが、減った予算は職員のやる気でカバーする前向きな姿勢がほしい。

▼ 2008年 2月 13日 ―生活保護の奇怪な運用―
 常識では考えられないようなひどいことを「べらぼう」という。それをまじめ顔でやってのけるのがお役所なのだろうか
▼「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を保障する生活保護制度。その運用をめぐり奇怪でべらぼうな事例が相次いでいる。北海道滝川市は、受給者夫婦から遠隔地病院への介護タクシーによる通院費用を請求され、約1年間で総額2億円余を支払っていた
▼あまりにも法外なタクシー料金。通院が事実としても役所としては、初期段階で究明するのがイロハだが、請求額をそのまま指定口座に振り込んでいたという。しかも実際は受給者夫婦とタクシー会社が共謀。通院を装う詐欺であったことが判明。9日に夫婦ら4人が逮捕されているのだから絶句する
▼10日に報じられた大阪岸和田市の場合は、受給中の男性が治療のため妻を同伴。福岡、東京などの病院へ飛行機や新幹線、タクシーで往復。通院費として10カ月間に約438万円を支払っている。「最低限」どころか「高水準」だが、市は「適正な支出と考えている」とコメント
▼悪用も許せないがお役所の能天気も罪深い。一方で財政悪化を背景に国は社会保障費を圧縮する方向。生保受給審査も厳しくなっている。昨年7月、保護を打ち切られた男性が「おにぎりが食べたい」と書き残し、餓死していた北九州のケースも記憶に新しい
▼ずさんな支給と過度な審査のアンバランス。制度の精神を逸脱した運用で困窮層の安全網はズタズタだ。

▼ 2008年 2月 11日 ―地産地消の問題点―
 先日、盛岡ロイヤルホテルで開かれた「いわて地産地消を楽しむ会」に参加してのことだが、「地産地消とは何か」が改めて議論になった。農産品や魚肉などの消費は極力地元産のものを使おうという狙いは理解できるのだが、それでは消費者の要望にこたえられるような流通手段が確立されているのかといったら、どうやらそうではないようだ。
▼地場産品でおいしいものが安く手に入るのかということも議論になった。地場産品は高くつく上に品物がそろわないときがあるといった声がある。常に一定量を確保しなければならない小売店が、複数の生産者を直接回って確保するというのは難しい。流通形態は効率的に高度化することでコストダウンが図られており、小売りの側が直接集荷するのでは金額どころか商品確保すらおぼつかなくなる恐れがある。地産地消の弱点と言っていいだろう。
▼市民の生活必需品のことであるから、安全でいい物をできるだけ安く供給してほしいが、高くてもおいしくてよい物は売れる場合もある。ただ、安心でうまい地場産は高いというのであれば、地産地消も途中でブレーキがかかるだろう。やはり、安いまま流通に乗せる必要があるだろう。
▼地産地消で地元の生産者などを潤わせようとする運動が掛け声だけで流通の仕組みが追いつかないのでは、お金の地域内循環という、大事な経済的効果もそがれてしまう。地産地消の基本は流通にあるとまずは銘記すべきではないか。

▼ 2008年 2月 10日 ―フランスの結婚事情―
 人柄、土地柄のように、国家には国柄があるのだろう
▼フランスで顕著な結婚観の軽やかさや開放ぶりは、倫理を重んじる日本人の感覚からは品格が欠けるようにも映る。が、それはこちらのお国柄。かの国では指導者でも一般市民でも、法的な結婚手続きをしない非婚カップルが、赤ちゃんを産むことは珍しくない
▼日本でも若い恋人同士がいわゆる「できちゃった婚」を、恥じらいながら打ち明ける光景をよく見掛ける。手前みそ風にいえば、その初々しい雰囲気には、苦言を解かしてしまうような華やぎがある。一方、伝えられるフランスの非婚出産は恥じらいなどを超え、堂々としているように見える
▼環境大臣や子供担当相などを歴任。昨春の大統領選では女性候補として健闘したロワイヤルさんも、非婚で4人の子の母
▼経済閣僚として来日したこともあるゲマールさんは、同じく8児の母だ。結婚形式はどうあれ、子を産むことを誇る気風の表れだろう。妊娠・出産、育児それぞれに、厚い手当てが講じられているのも、そんな土壌が生んだ成果なのだろう
▼非婚カップルが目立つだけでなく、離婚、再婚の踏ん切りのよさにも驚かされる。サルコジ現大統領も2人の子をもうけた元妻と離婚。夫も子もいるセシリア夫人と不倫を経て再婚。1人の子をもうけた彼女とも昨年10月に離婚。今月2日に13歳下の女性と3度目の結婚をした。一部に批判もあるようだが、胸を張って大統領職を務めているのもお国柄だろうか。

▼ 2008年 2月 9日 ―親の品格―
 最近のベストセラーに坂東真理子の「親の品格」という本が入っている。また「女性の品格」といったものも話題のベストセラーだが、タイトルは「親から子に伝えておきたい66のこと」となっている。今ごろになってこんなものを読んでもしょうがないなと思いつつも買って読んでいる。
▼親の品格といっても母親の視点で書き上げているものだから当然に「父親の品格」みたいになっているわけだが、第1章から第7章まで家庭の中での父親像から、親子関係、学校との関係、教育や人間性などが中心となる。そして最後には「新しい親子関係へ」として結ばれている。
▼わたしどもの時代は働くことと、生きることでそんなことは考えたこともなかったが、先日、東京圏のテレビを見てのことだが、母親が子供の弁当を作るに当たり、朝の登校前に子供に弁当を見せて了解を得て持参させていた。
▼戦中戦後に育った者は食べることさえも満たせなかった。それが今日では弁当の中身について子供に了解を得てから与えるとはいかがなものか。とんでもないことだと思うのがわたしどもの年代であろう。
▼それが時代の変化というものだろうか。母親がそのように対応しているのに、父親が昭和初期のような気持ちで子供のしつけをやろうとしてもうまくいかない。
▼人生が終盤に近づいてきて何かをやらなければならないとした意識を持ち続けている。親の品格を磨くことも努力しなければ自分が孤立してしまいかねない。

▼ 2008年 2月 8日 ―毒味が川柳になる世相―
 映画「武士の一分」の主人公は、藩主が食事をする前に毒味をする役
▼彼は貝毒にやられ失明する。07年を表す漢字は「偽」だったが、08年は早くも「毒」の様相を見せている。北上の病院では、入院患者の点滴液に殺虫剤成分が混入。千葉、福島などでは中国産ギョーザから毒性の強い殺虫剤成分が検出され、同種商品回収など列島が騒然となっている
▼県内にも毒味のような警戒感が漂う。第一生命主催の第21回サラリーマン川柳入選作100句が4日に発表されたが、偽や毒の世相も詠まれている。「箸(はし)つけたオレを見てから食べる妻」は、自称〈武士の何分?〉氏の作。夫が毒味役を担わされる姿だ
▼母の臭覚もいや応なくさえてくる。「『まだ平気』表示頼らぬ母の鼻」。こちらは〈戌(いぬ)年生まれ〉と名乗っている。ブランドを偽る衣装類があり、マンションから食品まで偽装の勢ぞろい。〈オールマイティ〉と号する作者は「衣食住すべてそろった偽装品」と嘆く
▼毒、偽だけでなく原油高などのあおり。値上げラッシュも世情を波立たせる。「歳の瀬に値上げ値上げで音を上げる」「安い値のガソリン探し遠出する」と庶民は悲鳴を上げ右往左往している。存続が危ぶまれる年金への不安もある。「年金は賭(か)けるつもりで掛けている」とギャンブル化さえしている
▼入選作品は3月14日までの投票で絞られ、優秀10句が5月に発表される。季節も春暖に向かうが、毒味が川柳になる世相は寒々しい。

▼ 2008年 2月 7日 ―商店街にチャンス到来―
 先日、盛岡市内のデパートやスーパーなどを回ってみたが、陳列商品が著しく少なくなっているところがあった。中国製冷凍ギョーザの中毒事件が発覚してから約1週間になるわけで、消費者の冷凍食品の買い控えが原因になっているようだ。
▼都市圏のスーパーや生協などでは冷凍食品の売り上げが約40%も落ち込んでいるようで、販売店では大変な事態になっているという。消費者も戸惑いを見せているようだ。中でもJTの冷凍食品の販売量が76%減とはひどいものだ。
▼盛岡市内では冷凍食品の影響もさることながら郊外の大型店の影響もあるのだろうと思う。生鮮食料品売り場などの店構えが大きく変わってきているが、今こそ県産品や三陸の魚介類などの売り上げを伸ばせるチャンスではないかと思っている。
▼市内の老舗魚屋さんでは魚介類のほかに野菜・肉類や総菜なども陳列して、マンション居住者や高齢ショッピング客の利便を高めているところがあった。1カ所で用足しができて、よい品物が買えるのはありがたいことだ。
▼市内の繁華街の持ち味を生かした商法を考えて実験をしているようだが、大通の商店街などでもそのようにきめ細かい店舗展開をしてほしい。客のほうでもそういった店の積極的な取り組み姿勢を理解して利用を高め、品ぞろえも積極的に要求するというのはどうだろう。商店街が寂れてしまえば今度は市民が困るわけで、より一層、互恵の関係を高めていきたいものである。

▼ 2008年 2月 6日 ―失恋休暇制の背景―
 寮のある就職先を決めるとき、若い人たちの多くはその部屋の質を気にするらしい
▼就職支援に携わっている友人の話では、採用が決まり初出社した青年が、その日から寝泊まりすることになる寮を見た途端、「この会社は自分に合わないので辞めます」と、助言も励ましも聞かず帰ってしまうことがあるという。採用6人のうち2人が即日辞めてしまうという現場にも立ち会った
▼求職者を応援する側にいる彼の方が、自信喪失に陥り涙が出たそうだ。確かに少子化が進んで家庭でも過保護に育てられ、異なる環境に順応できない若者が増えているのであろう。かつて若いころに数人の相部屋で文句も言わずに、自分を周囲に合わせながら頑張った年配の経験者には隔世の感があろう
▼寮の事例が象徴しているように、昨今は男女を問わず若年世代が、健康管理や休暇制度など福利厚生面の内容に敏感になってきている。雇用する側が積極的に要望に応える流れも出始めている。東京のある企業の場合はユニークで、女性社員が年に1度「失恋休暇」を取れる制度を設けている
▼同社が一般女性を対象に、「会社を休みたくなる事例」についてアンケート調査。「失恋したとき」という回答が多かったことに注目し導入したものだ
▼自己申告制だから、利用しにくい制度なのだが評判はいい。そこまで考えてくれるのかと、社への信頼が高まっているからだ。無給の残業など酷使から配慮へと、雇用理念の転換を求める背景が見える。

▼ 2008年 2月 5日 ―きょうはスーパーチューズデー―
 きのう4日は「立春」。春迎え、春たつ、春来るなど季語が使われる。2月は1カ月最少日の特異月だが、今年は閏(うるう)年だから4年に1度の閏日がある。だが旧暦の正月は7日だからまだまだ寒い日が続く。
▼アメリカでは、きょう5日が「スーパーチューズデー」。米大統領選の予備選・党員集会が20州以上で実施されるという。共和党はマケイン上院議員を軸に展開されているが、民主党のほうはヒラリー・クリントン氏とオバマ氏の混戦が続いているようだ。
▼アメリカに初の女性の大統領が誕生するのか、また初の黒人大統領が誕生するのかで注目されているが、1月3日にアイオア州党員集会で始まった予備選ではこれまで2勝2敗で両氏の勢いは天王山を前にほぼきっ抗している模様である。
▼アメリカの大統領選は各州で実施する予備選・党員集会で得票数に応じて代議員を獲得する比例配分方式を採用している。一方、州ごとの予備選結果に縛られず独自の1票を持つ「特別代議員」獲得競争でもしのぎを削っているようだ。上下両院議員、正副大統領経験者、州知事、党全国委員幹部など代議員の2割に相当する796人に割り当てられている。
▼ケネディ上院議員がオバマ氏を、モンディール元副大統領はクリントン氏の支持を既に表明しているというから、民主党の2候補の2強が激突していてまだまだ分からない。米大統領選国民投票日は11月4日。関心をさらに高めながらお祭り騒ぎはまだまだ続く。

▼ 2008年 2月 4日 ―潮路が運ぶロマン―
 八重の潮路に運ばれたような、明るい話題が二つも続いて心も和む
▼川崎市の小学校で、創立120周年を記念し児童が風船に手紙を付け飛ばしたのは93年11月。空に舞いそのうちの1通が海に落ちたのか。経緯は不明だが水深1千bの底引き網に掛かったサメガレイに付着。引き揚げられて先月、千葉の漁港で発見された
▼「このおてがみをひろったかたはおへんじをください」の文字も氏名も校名も鮮明。手紙の主は当時小学1年生の少女で今は大学2年生。カレイに拾われた手紙は彼女の元へ。時を同じくして青森・東通村の海岸には、29年前に鳥取の中学生らが海流調査のため、下関沖で放流したはがきを入れた小瓶が漂着
▼これも鳥取の発信元中学校に戻った。こちらは波に揺られ、1千数百`の海路の旅をしたのだろうか。2例ともまるでおとぎ話のようだ。ゆったりとした時空の流れに癒やされる。島崎藤村作詞の「椰子(やし)の実」を口ずさみたくなる
▼「♪故郷の岸を離れて汝(なれ)はそも波に幾月〜思いやる八重の汐々(しおじお)〜」と。親友の柳田國男から愛知・伊良湖岬で椰子の実を拾った話を聞いた藤村が、一つの実が流れ寄るイメージを膨らませ美しい抒情詩にしたものだ
▼伊良湖の観光協会はその詩情を再現しようと、沖縄石垣島の海で椰子の実投入を続けている。20年前に始めて現在までに90個を超える実が全国の浜辺に漂着している。空も海も魚も自然は楽しいロマンを演出してくれる。

▼ 2008年 2月 3日 ―ギョーザ問題―
 ギョーザを初めて食べたのは終戦後であった。旧満州から引き揚げてきた家族が近くの食事会で振る舞ってくれた。今では週に1度くらい食べているが、冷凍かどうかは確認したことがなかった。そのギョーザが今大変な事態になっている。
▼千葉市稲毛区の女性宅に残されていた未調理のギョーザから検出された有機リン系殺虫剤「メタミドホス』は、130ppmと基準の約100〜400倍の高濃度だったという。同じ製造日なのに薬物が発見されないものもあれば、袋に穴が開いていたという報告もある。1カ月以上も前から問題が発生していたにもかかわらず、保健所の検査の立ち遅れや厚生労働省など国への報告が遅れたことなどで対策が後手に回り、何が原因なのかさっぱり分からないでいる。
▼本県の冷凍食品の約3分の2は中国産と言われているが、県の調査によるとこの1年間の出荷量が約22万6千個で、現在は約2万8千個の在庫が確認されているという。うち約3500個が回収された。
▼「天洋食品」以外のものは大丈夫なのかとだれしも思う。実際、中国製の冷凍食品をすべて一時撤去したというスーパーもある。天洋食品以外で製造されたものについても十分な安全確認をしてほしいと思うのが消費者だ。舛添厚生労働大臣は1日午後、場合によっては輸入禁止措置の発動もあり得るとの認識を示したが、冷凍加工食品について検査対象外になっている食品衛生法などの見直しも必要ではないか。

▼ 2008年 2月 2日 ―矢祭が全国へ宣言発信―
 ときには何百億という単位の血税の無駄遣い。放心してしまうほどその実例が相次ぎ報道される
▼国も多くの地方自治体も、改革がなかなか進まない。そんな背景があるから目立つのだろうか。行政改革の一方向を示しながら先駆するあの福島県矢祭町が、今度は全国に向け警鐘を鳴らす「宣言」を発信。注目されている
▼昨年末の当欄で、同町が議員報酬を月額制から1日当たり3万円の日当制に切り替える動きを見せていたことに触れたが、この事案が町議会で成立し08年度から導入される。これに伴い同議会が全国初の試みに臨む信条を、「町民とともに立たん」と題し「決意宣言」にまとめ発表したのだ
▼議員1人当たり年間およそ340万円の報酬を90万円に圧縮する日当制。異論も反論もあろうが、宣言の文言に込められた精神論だけでも、政治家諸氏にはかみしめてほしい。まず宣言は有権者から議員に対し、厳しい目が向けられている現状を指摘
▼日当制の決断によって、議員のあるべき姿を問い直し警鐘を乱打すると述べる。同町は議員定数18を8人減らし10にしたが、住民サービスを落とすことなく、議会運営も支障がないとの経過もつづる。報酬については「町民が汗を流してかせいだ税金であることを忘れてはならない」と戒める
▼住民の目の届かないところで、お手盛りを重ねてきたのが現在の報酬ではないかとも問い掛ける。矢祭が地方自治本来の姿を体現。全国に範を垂れ風穴を開けると宣言している。

▼ 2008年 2月 1日 ―つなぎ法案取り下げ―
 いまさらながら道路特定財源がどういう意味を持つのか真剣な論議が始まることになった。
▼国会は30日、ガソリンなどにかかる暫定税率の「つなぎ法案」をめぐって緊迫し、結局は与党の法案取り下げで決着した。与党は衆院財務金融、総務両委員会で自民、公明両党が賛成多数で法案を通したものの、民主党など野党の反対で国会が空白化する恐れが生じた。事態を収拾するため衆参両院議長のあっせんが計られ与野党の合意が得られた。
▼衆参両院議長のあっせん案は「2008年度予算案と揮発油税などの暫定税率維持を盛り込んだ税制改革法案などの予算関連法案について年度内に一定の結論を得る」という内容になっている。
▼このあっせん案には各党の幹事長らが署名している。与党は暫定税率を5月末まで延長する「つなぎ法案」の取り下げ手続きを取り、法案をめぐる混乱はとりあえず収束した。
▼31日からは2007年度補正予算案審議の参院予算委員会などが開かれ全閣僚が出席。これで国会は正常化なったと喜んでいるのだが、玉虫色決着となった道路特定財源についての各党の認識の違いは依然としてある。
▼双方が筋論まで変えるのではなかろうが、地方としては時限爆弾でも抱えているような気持ちで事態の推移を見守っている。2008年度予算案などの審議を進めながら、暫定税率は当面継続させることで年度内収束を図ることになるのだろうか。年度末にもう一度大きな山場が控えていそうだ。

2008年1月の天窓へ             トップへ