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| ▼ 2008年 4月 30日 ―入学式出席拒否の屈辱― |
| 時の流れが速い。新入生や新入社員が初々しくスタートした4月も終わる ▼顧みて心に刺さっている事の一つに、千葉、長崎の高校入学金未納者「入学式出席拒否」問題がある。刺さっているのは、一斉に起こった教育的配慮を欠く学校側の冷たさという論調のことではない。逆に規則に従った学校側の判断は正しいという論理でもない ▼一番の当事者である生徒の日々を思うとやりきれなくなるのだ。千葉は全日制普通高校の2人。長崎は工業高校定時制の2人。4人は受験に合格して迎えた入学式の出席を拒否され待機。それぞれの保護者が式終了後に納金し、入学を許可されている ▼入学式という晴れの思い出を奪った嵐。波乱に巻き込まれ複雑に心を痛め、この4月は、出席拒否の賛否が渦巻く中の登下校でもあったろう。大人のだれかがもう少し早くイエローカード、黄信号を振って対処すれば、これほどの騒ぎにはならなかったのではないか ▼保護者の責任も重い。事情はあろうが式後に納金できたのだから、式前の工面も可能だったのではないか。学校側も未納への注意を事前説明していたようだが、わずか2件の家庭だ。直前に念を押す親切があってもいいだろう。入学式を拒まれる生徒の屈辱を思えば、回避の手はあったはずだ ▼本県では入学拒否はないが、高校の授業料滞納は増えている(06年度県立高未納率0・17%は02年以降最悪)。ここでも助成制度活用も含め、学校と保護者との血の通う連携が望まれる。 |
| ▼ 2008年 4月 29日 ―攻防の月末― |
| きょう29日は「昭和の日」の祝日。激動・多難の時代を歩まれ、太平の礎を切り開かれた昭和天皇の誕生日である。26日から始まっている連休の前半は飛び石になっているため、カレンダー通りに勤めるサラリーマンにとっては遠出ができない。近場の観光地などに出かけて休日を楽しんでいる方が多い。 ▼国会議員はこの連休の間も霞ヶ関周辺での待機命令が出されているようた。ガソリン税の暫定税率維持などの扱いをめぐって29日の夜に大きな判断が迫られているからである。税制改正法案をめぐる与野党の修正協議がまとまらない場合は、30日に衆院で再議決して成立させる方針を与党の自民党では既に固めている。 ▼再議決による暫定税率が復活した場合には、5月12日以降の道路整備財源特例法改正案の決議案提出がなされるわけであるが、これに対して再議決による暫定税率復活に反対の民主党など野党の抗戦が予測されている。 ▼27日投票の衆院山口2区の補選の一騎打ちでは民主党前職が当選し、野党側には勢いがついてきている。福田政権になってから初の国政選挙で、後期高齢者医療制度が事実上の争点になり自民党候補が敗れた。福田政権の総体的な政権担当能力に「ノー」を突きつけられたともとれる。人気の低下に追い討ちをかけている。 ▼与野党とも連休を挟んで国会戦術の探り合いを続けているわけだが、決議案再提出を即刻やるかやらないかで「世論」の動きをにらんでいるところだろう。 |
| ▼ 2008年 4月 28日 ―産科不在 遠野の遠隔健診― |
| 危険度の高い出産に対応する国立成育医療センター(東京)を、先ごろ福田総理が訪問した ▼内閣メールマガジン(4月17日)ではその所感を述べている。それによると、本来は緊急性のある妊婦さんが利用するこのセンターに、最近は近隣で産科をやめたため、出産を間近にした一般女性の予約が殺到しているという ▼首都圏でさえ産科不足が深刻であることを物語っている。まして地方は医師に見放されたような地域が多い。総理は安心して産み育てられる政策を早急に具体化したいと決意をつづっているが、本県などの事情も深刻そのものである ▼若いご夫婦にとって、赤ちゃんを授かることは心弾む喜び事なのに、医師不在で不安を募らせるカップルが少なくない。国の施策実現など待てない地域では知恵を絞るしかない。試みが注目される遠野市の場合。02年に県立遠野病院から産科医が去って以来、今も出産できる病院がない ▼妊婦は花巻、釜石、盛岡などへ定期健診に通い、離れた病院で出産している。特に遠隔地に通う健診は負担が大きい。そこで市が導入したのが、産科医師と地元助産師がネットで妊婦のデータをやり取りするモバイル遠隔健診システムだ ▼06年に県立釜石病院と提携して始動(現在盛岡赤十字・岩手医大、大船渡県立など9病院が協力)。昨年12月には全国初の市公設助産院も開設。今月から常勤助産師2人体制も整って、妊婦にとって安心の拠点になっている。それでも産科常設は待ち遠しい。 |
| ▼ 2008年 4月 27日 ―聖火リレー― |
| 北京オリンピックの聖火リレーをめぐる世界中の混乱が新聞やテレビのトップニュースになっている。 ▼スポーツの祭典が政治問題化したのは過去にもあった。1980年のモスクワ五輪は冷戦下、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して西側諸国がボイコットした。その前の1968年メキシコ五輪は人種問題が表面化して、米国黒人陸上男子200メートルの金・銅のメダリストが表彰台で黒手袋をはめた手を掲げて黒人差別に抗議した。2人の選手は米ナショナルチームからの除名を受けている。 ▼今回の北京五輪聖火リレーをめぐる混乱はチベット問題や人権問題とされているが、五輪が国威発揚の場であることをとらえ、それを逆手にとった抗議行動が聖火リレーへの妨害だろう。厳戒態勢が敷かれている中で、反中国、親中国の間でけが人が出るほどの混乱が起きている。 ▼25日は所要で上京していた。羽田空港に着いた聖火を長野市へ届けるのは厳重な警備によって無事に進んで何よりであった。26日の長野市での聖火リレーも大勢の警察官を動員し物々しい警備だった。道中、抗議行動があって緊迫した場面もあったが、ほぼ所定どおりの時間で終え次の韓国へ聖火が渡される。中継を見ていて、冬季五輪が盛岡で開かれていれば、これは岩手路だったろうと思った。出発点は平泉中尊寺だろうか。 ▼春のGWに突入した。11日間連続して休暇を取る人もいるようで、帰りの東京発東北新幹線「はやて」は満席であった。 |
| ▼ 2008年 4月 26日 ―真に必要かという視点― |
| 道路特定財源をめぐる与野党の論議の中で、「真に必要な」という言葉が飛び交う ▼必要でないものにも税金を使う体質が背景にあるからだろうが、大事な視点だ。多くの国民は血のにじむような思いで納めた税金でも、それが国や地域のため、子や孫たちのために「真に必要な」使い方がされれば文句は言わないだろう ▼徴収されるガソリン税も「真に必要な」道路造りや、その補修などに使われるなら、出費がつらくても協力する冷静さはあろう。この課税が地球環境の劣化防止に役立つというなら、それも甘受しよう ▼暫定税率が失効し安くなったガソリン。それを政府与党が30日にも「再議決」という手法で元に戻す構えだが、反対の声は高い。与野党の意地の張り合いが招く価格の乱高下への不満。それとともに「必要でないこと」に血税が浪費されることへの不信が大きい ▼無駄な箱物だけでなく、アロマ器具や電動マッサージ器の購入。職員旅行費用。ミュージカル制作と、どれも不適切使途だ。職員が帰宅に使うタクシー代も異様。一人で年間190回。490万円も使った者もいる。年間に8千万円超の契約でお抱え運転手を雇い、クラウン級の高級公用車で道路点検などをしていた事例もある ▼道路に特定したはずの財源が、程遠い科目に節操もなく使われている。その不信感が徴税への反発を生む。賭(か)けのような再議決をするなら、強いメッセージで世論の不信を晴らさないと、福田丸は沈没しかねない。 |
| ▼ 2008年 4月 25日 ―イオン渋民オープンへ― |
| 25日にイオン盛岡渋民店がオープンする。啄木記念館の北側に隣接する国道沿いだから立地条件がよい。盛岡市北部、玉山地区、八幡平市、岩手町、葛巻町、滝沢村などが商圏エリアに入るのだろう。これで盛岡市には前潟、本宮、渋民とイオン系列の三つの大型店舗が創業した。 ▼消費者にとってはショッピングが楽しめることや、便利でよい商品を購入できることはありがたいことだが、大通商店街などでは客が奪われてさらに厳しくなろう。また玉山地区など地元の商店街も少なからず影響を受け、競争が厳しくなってくることは間違いない。 ▼いつものことだが、地元商店会が組合を結成するなどして大規模なショッピングセンターを建設できないものかと思う。資本金や商品の流通・仕入れなどで難しいことがあるのだろうと思う。 ▼大通や中央通はロータリーやたまり場などがなく通行路になってしまって、立ち止まって楽しむことやショッピングをする場所ではなくなってしまった。なんとかならないものかと思う。 ▼24日付の本紙によると、10月に全国朝市サミットが盛岡城跡公園などを会場に開催されるという。神子田の朝市、材木町のよ市や盛岡駅前の北の民謡市場などが集合するのであろう。 ▼滝沢の朝市や雫石の軽トラ市なども品物が豊富で盛り上がりを見せてきているときだけにその成功が期待されている。八戸の産直センターや今回のサミットを見習うなどして今後の展望を切り開いてほしい。 |
| ▼ 2008年 4月 24日 ―上野の聚楽台が閉店― |
| 東北の特に中高年世代にとっては、上野は懐かしい心の駅だろう ▼先週末に所用で常磐線水戸行きの電車に乗るため、久し振りにこの駅を利用した。乗り換えに時間があったから、不忍(しのばず)口改札を出て商店街周辺を散策。ランチを取ろうと、これまた懐かしい「聚(じゅ)楽台」に入った ▼驚いたのは目に飛び込んできた閉店の「お知らせ」。店舗が入っているビル建て替えのため、4月21日で閉めるというのだ。文面には1959年の開業以来、半世紀にわたる利用への感謝がつづられ「2010年秋に新ビル内に新規オープン予定」の文字もあった ▼ビル老朽化のためと分かり、「閉店」の暗いイメージは薄らいだが不安もよぎる。かつては集団就職列車などの終着駅。里帰り客の始発駅でもあった上野も、91年の東北・上越新幹線東京駅乗り入れ以来、駅の性格が様変わりしている。東北本線などと東海道線との直通列車「東北縦貫線」も5年後の運行を目指している ▼駅周辺に流れる客足も、すでに大きく減少しているというが、加速しそうだ。聚楽台も「元祖ファミレス」として親しまれてきたが、定番コースにしていたなじみ客たちも、おのずと遠のいている。当方も今回訪ねるまでに長い空白がある ▼2年後新装との告知には安どしたが、駅前にデンと構えた昭和レトロ風の聚楽台は見納めになる。同規模の再現はなかろうと、客同士もささやく。閉店直前のその日は、惜別の情をかみしめるランチとなった。 |
| ▼ 2008年 4月 23日 ―春の山菜― |
| 拓本家の沢尻弘志さんが考案し自らが焼いた「バッケせんべい」を土産に持参された。さまざまなせんべいが出回ってきているが、フキノトウを小麦粉に混ぜて1枚1枚手で焼いたせんべいは初めてのこと。口に入れてかむとバッケの香りをプーンと感じる。お好み焼きにしてもよいのではと思った。 ▼沢尻さんは長年にわたって石川啄木や宮沢賢治などの歌碑を拓本にしてきている。個展も開いているからご存知の方が多いと思われるのだが、その技法も沢尻流独特の一流のもので、中でも使っている墨が「SLの煤煙」なのだからただものではない。 ▼初春の味としてバッケみそやバッケのてんぷら料理は格別であるが、今はバッケも伸びてきて花が咲いている。先日、庭師さんから伺ったことだが、フキノトウは大きくなったほうがおいしいとのことであった。新芽の頃のフキノトウはほろ苦さがあるのが特徴だが、背伸びしたフキノトウを「バッケ料理」に使うのだそうだ。ほろ苦さがなくバッケの香りが味わえるし、量も多く使えるから楽だ。 ▼日曜日に相ノ沢温泉「お山の湯」に行ってきたが、広場の産直市場では「行者にんにく」「シドケ」などの山菜が販売されていた。この季節は「ウド」や「タラボ」なども出回る季節だが、なかなか自分で収穫できるチャンスはなくなってきている。春の新鮮な空気を味わいながらお山の湯や網張温泉などにつかった後に広場の売店をのぞいてみるのも楽しみの一つになっている。 |
| ▼ 2008年 4月 22日 ―年間変漢賞― |
| パソコンもインターネットも60の手習いで始め、何とか初級程度をこなしている ▼このコラム原稿をはじめ各種文書もパソコンで作成。ネットメール送信も使う。「書く」のでなくキーボードを「打つ」ことで文章ができる。添削も簡単。紙に手で書いていた当時に比べ作業も楽だ。半面、何かを手書きする際、漢字を思い出せないことが多くなり、脳が衰えていることにも思い当たる ▼それでも打った文が即漢字、平仮名混じりで表れるシステムは便利で、手書きには戻れない。ただし相手は機械。漢字、平仮名に変換するときに、誤変換をやらかすことがある。打ち込む文節によっては、奇妙な変換ミスを目にすることもある ▼面白さに着目した日本漢字能力検定協会は携帯メールも含む誤変換例を公募。「変漢ミスコンテスト」を実施している。15日には07年度の「年間変漢賞」を発表した。受賞作は「馬食い家内が象サイズになった」というもの。「うまくいかない画像サイズになった」の誤変換だ。奥さんが馬のように食べ象の大きさになったと解釈できる ▼上位作品にも珍変換が並ぶ。「講習会の出欠を確認してください」が「口臭か胃の出血を確認してください」と、精密検査のコメントみたいに化けたものもある。「今日居ないもんね。ゴメン〜」が「胸囲ないもんね。ゴメン〜」は相手を傷付けかねない ▼当方の経験でもミスに気付かず送信してしまうこともある。誤変換には笑ってばかりもいられない怖さもある。 |
| ▼ 2008年 4月 21日 ―電気の話― |
| 東北電力盛岡営業所の岡信慎一所長が、平成20年度の経営計画を説明に企業訪問している。オール電化住宅の建築も多くなり、風力発電や太陽光発電などのエコエネルギーにも関心が高まってきているという。 ▼水力発電、火力発電、原子力発電が3大設備になっているが、これから10年先にはどのような形になっているのか興味がある。例えば、火力発電は石油を燃料にするものから天然ガスに変わっていく傾向があり、石炭の輸入先は中国からオーストラリアやインドネシアなどに変わってきているという。地熱などの新エネルギーは10年先も3%程度という見込みになっている。 ▼電力を安定的に供給するためには夏季の冷房用の消費や厳冬期の暖房需要に応えられる体制になっていないといけない。そのため高圧線や変電所の建設が必要になる。 ▼10年先の最大電力は1543万キロワットと予測され、約110%程度と見込まれている。電力は蓄えておくことができないからそのつど需要に応じなければならない。地震などの災害時に広域での大規模な応援供給が可能な体制になっているかという課題もある。 ▼今は「電気がついて当たり前」の世の中になっているが、戦中戦後はしょっちゅう停電があった。ブレーカーのヒューズもよく切れたものだが、電力容量のアップともに安定した供給になっている。エネルギーの大切さを思うには、電気を豊富に使える豊かさというものを自覚する必要があるかもしれない。 |
| ▼ 2008年 4月 20日 ―矢祭 首長の不祥事― |
| 七重に八重に、さらに九重にも高く積み重ねてきた九仞(じん)の功も、一つの過失で崩れてしまう ▼行政改革への涙ぐましい努力を重ね、全国先駆の模範事例として注目されてきた福島県矢祭町でも、先ごろ一つの不祥事が発覚。改革の流れを減速させるのではないかと懸念されている。当欄もこれまで期待の目で、褒め言葉も交えながら何度か紹介してきたから、この問題にも触れておきたい ▼深刻なのは公職選挙法にも抵触するような不祥事を起こしたのが、現職町長だということ。6期24年間、身を削り陣頭に立って改革を進めてきた前町長が昨年4月に勇退。後継として無投票当選したのが現町長だ。その人が先月実施された町議選の当選議員4人に祝儀として現金を渡したという ▼2人が拒否。残る2人は受け取ったと、町長自身が語っているのだから驚く。罪の意識はないのだろう。昨年春の町長初当選の際、もらった祝いのお礼として、慣習の範囲と思っていると釈明もしている。前町長が住民奉仕を第一に築き上げてきた清貧、高潔の町のイメージに泥を塗るその所業 ▼それが平然と行われていることに、町民からも不信の声が上がっている。期待の視線を注いできた全国の矢祭ファンからも、町の土壌には金銭授受で当選を祝い合うような前時代的悪習がまだ根付いていたのかと、疑念が寄せられている ▼改革に程遠い人がトップに立つことの不運が町を覆う。託した後継に裏切られた前町長の苦渋の顔が浮かぶ。 |
| ▼ 2008年 4月 19日 ―三春のキュウリ― |
| 通勤の途上で青山町の桜並木や前九年公園の枝垂(しだれ)桜、夕顔瀬橋付近、岩手大学の構内などの桜が目に飛び込んでくる。桜のほかにモクレンやボケなども満開になっている。ところによっては桃や梅、八重桜、山桜までも一斉に競うように色とりどりの花を開いている。まさに郷土は百花繚乱(りょうらん)といったところだ。 ▼今朝のNHKテレビではニューヨーク郊外でも桜が満開になって、花見客が見かけられることを伝えていた。アメリカのお花見会は酒を持ち込まないのが常識になっているようだが、やはり車社会であることと、風紀の関係からそのように自粛しているのだろうか。 ▼先日、福島の三春滝桜の見物に出かけたが、やはり酒を控えているように見受けられた。まず観光バスの中でビールや酒をたしなむ客が見受けられなかった。 ▼福島市の花見山公園では茶店が多く出されていたが、そこで目を引いたのはキュウリの塩漬けを一本丸ごと竹のくしに刺して100円で販売していることだった。それが飛ぶように売れている。また丸いコンニャクを3個くしに刺してワサビをつけて販売している。 ▼コンニャクのくし刺しおでんは前からあるがキュウリの塩漬けをまるごとくしに刺して販売するのは新しいアイデアであろう。生では一本30円程度だが、それが100円になって飛ぶように売れている。農産品の付加価値のつけ方がちょっとした工夫で高まっていく。花見山公園の特許であったろうか。 |
| ▼ 2008年 4月 18日 ―それぞれのお花見― |
| 途中で花に嵐の光景も見せながら、桜前線は駆け足で北上している ▼盛岡も先週土曜日に平年より11日も早く開花宣言。北上の展勝地さくらまつりもきょう開幕する。雨の妨げもありそうだが、この週末あたりから県内各地も観桜でにぎわうことだろう。道沿いの一本桜にも、きれいだ、まあ美しい、と称賛の声が飛び交う。公園などでは、樹下に酒食の宴を楽しむグループもあろう ▼古来、この花に魅了された文人たちも、その感動や感傷を詩歌や物語に書き残している。開花に気をもみ散るはかなさに憂いを誘う桜などなければ、春はのどかであろうにと逆説的に歌うのは平安の歌人・在原業平だ。「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」と ▼「桜の樹の下で」(1927年作)という短編で、桜があまりにも美しいので不安になる主人公を描いたのは、31歳で病没した梶井基次郎。「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と想像し、ホッとする心理をつづっている。死体の液を根から吸い上げているから、あんなに美しいのだという論理だ ▼これも醜悪との対比で美しさを際立たせる逆説だろうか。三島由紀夫著「金閣寺」にも美しい金閣寺が、人々の死体と血をえさにして一層輝いていくという記述がある。いずれも鋭敏すぎる感受性。奇抜な美学に驚く ▼圧倒されるような美しさが、文士の想念を呼び覚ますのだろう。桜花らんまんの春。われら庶民はそれぞれに、それぞれの感性でお花見を大いに楽しみたい。 |
| ▼ 2008年 4月 17日 ―屋根の無いアトリエ作家― |
| いつからか「屋根の無いアトリエ作家」と呼ばれるようになった。毎日のように海や山を歩き続けて指で絵を描き続けている画家が菊池如水さんである。 ▼菊池さんは15歳で中国にわたり、約6年間を過ごした。戦後、日本に帰国してから公職に就き1981年に退官。それからが屋根の無いアトリエ作家として歩みが始まった。 ▼中国などの海外はもちろんのこと、国内では北アルプスや三陸、安比高原などによく出かけている。絵は携帯に便利な四角い絵の具、オイルステックを用いているのが特色である。筆は使わず指で直接カンバスをなぞる。大胆なタッチが繊細さを生むのが不思議である。 ▼先日、菊池さんからお手紙をちょうだいした。86歳になられた今でも岩泉や宮古方面に出かけて自然の風景を描き、個展を開催するなどして元気に活躍されているとのことであった。 ▼菊池さんには10年以上前に、三陸鉄道を利用した写生会の講師を引き受けていただいて、沿岸の方々と三陸のお絵かき列車の運行に協力していただいたことがあった。 ▼今回は「ギャラリー彩園子30周年」を迎えるにあたり、記念事業実行委員会から作品出展の要請があったとのこと。そういえば菊池さんは毎年のように彩園子で個展を開催してこられた。彩園子と共に歩んでこられ、それがまた自分史のようにもなっている。 ▼今年で20回展。10月27日から11月1日まで予定されている。多くの作品が出来上がっているものと期待をしている。 |
| ▼ 2008年 4月 16日 ―見ごたえあるねじれ土俵― |
| 国会のねじれ土俵の取り組みをさじき席で見ていると、さまざまな感慨が浮かぶ ▼先日の党首討論のように与党側の横綱である総理が、もう一方の野党横綱に泣きを入れる場面なども目にする。お相撲さんの綱同士がちんこ対決なら、手に汗を握り緊迫するのにそれもない。一国の総理が自分のことを「かわいそうなくらい」苦労していると嘆く。助けを請うような声も漏らしたのだから失笑するほかない ▼確かに政府案人事もすんなりとは通らない。与党が年度を越え延長したかったガソリンなどの暫定税率も失効。国政が機能不全に陥っているとの指摘もある。これで大丈夫なのだろうか、という素朴な感懐もわく。一方で、ねじれの発端をたどると政治が成熟するには、今は必要な過程とも思えてくる ▼国民が与党を上回る議席数を野党に与えた先の参院選。あのとき自公与党の勝利だったら、これほどの変化や波乱はなかっただろう。ドライバーはそれをもろに感じている。暫定税率が効力を失い、全国どこでもガソリン価格は安くなっている ▼善しあしはともかく、衆参が与党多数のままだったら、起こらなかったことが現実に起きている。身内に異論反論もある道路特定財源の一般財源化方針も、政府与党は合意した。これも自民党中心の長期政権時代には、あり得なかった動きだ ▼国政をより成熟させるための好機でもある。与野党がそれをどう生かし昇華させるか。期待を寄せる目には、ねじれ土俵も見ごたえがある。 |
| ▼ 2008年 4月 15日 ―福島県へ桜見物に― |
| きのうは休日を利用して福島県の三春滝桜見物のバスツアーに参加した。朝6時30分に盛岡駅西口を発って東北自動車道の紫波、花巻、北上からの参加者も加わり往復約14時間の長旅であった。写真などで見る日本一の滝桜は、さすがに満開のときは滝が流れているような景観で有名だが、その満開の姿をじかに見たいと思って応募したのである。 ▼盛岡市の石割桜が10日に開花したとの報道があったので、南の福島県では既に満開になっているのではないかとして期待した。 ▼約5時間かけてようやく目的地の三春町の滝桜に着いたが、肝心の桜はまだつぼみに薄く色をつけた程度で開花していなかった。 ▼樹齢数百年といわれる枝垂れ桜の見事な太い古木であったが、残念ながら花を開いてくれなかった。お弁当と団子とお茶をいただいて滝桜の周りを1周して、高台のベンチで昼食を食べ、滝桜が満開になった姿を想像するなどして次の会場に引き揚げた。 ▼次の会場は福島市の花見山公園であった。ここは、今から50年ほど前から生け花の切花用に育ててきた桜山である。満開の絶頂期で大変な交通渋滞であった。シーズン中には約20万人が訪れる桜の名所になっているが、盛岡市で言うならば、岩山の中腹まで一面に桜を植えたような風景で、段々畑や田んぼは土産店や駐車場に変わっている。 ▼今の時代は「歩いて楽しむ観光」が目玉で、年間を通じての観光地化にさまざまな手が打たれているようだった。 |
| ▼ 2008年 4月 13日 ―パバロッティの口パク― |
| 映画やテレビドラマなどで、撮影時には俳優のせりふを録音せずに、後で録音することがある ▼アフター・レコーディング(アフレコ)という手法だ。洋画などの吹き替えも原理は同じだから、それをもじってアテレコといわれたりする。映像の口の動きと発声を寸秒たがわず合わせるのは、それ自体が芸の術でもあろう ▼役者のせりふだけでなく、歌手が以前の出来栄えのいい録音に合わせ、口だけ動かし「歌唱」を演じることもある。後から声を入れるアフレコの逆で、録音の音声に合わせて、口だけパクパク動かすことから「口パク」といわれる ▼体調不良などのときには、テレビなどの生出演でもこの方法で「歌う」ことは珍しくないのだそうだ。特に新人の場合など調子が安定しないときに、この口パクが用いられるという。途中でマイクを落としばれてしまったという笑えぬ失敗談もある ▼06年のトリノ冬季オリンピック開会式で、昨年他界した世界的テノール歌手ルチアーノ・パバロッティが歌った「誰も寝てはならぬ」は口パクであったと、当時の指揮者が打ち明けたことを先日の外電が伝えている。あの声に世界中が酔ったのにと、波紋が広がっている ▼トリノ直後にはすい臓がんを病み、開幕式当時も不調だったという。しかも厳寒の2月の夜だ。彼は92年夏の公演でも事前録音の口パクが発覚。厳しい非難を浴びた経緯がある。それも承知で、健康不安から出演も口パクも、やむにやまれぬ選択だったのだろう。 |
| ▼ 2008年 4月 12日 ―後期高齢者医療制度― |
| 1日から「後期高齢者医療制度」というものがスタートしている。正直なところ制度の中身がよく分からないでいたが、1日夜のテレビで「長寿者医療制度」といったような見出しで放映されていたので、ますます分からなくなってしまった。 ▼後期高齢者とは画一的に「75歳以上のすべての人」が該当することになっている。1日以降、75歳以上の人、および75歳になる人に後期高齢者医療被保険者証が交付される。確かに年齢的には間違いなく毎年歳をとっていくわけであり、また、その人によって健康などの度合いや障害の程度なども異なっているが、まずは後期高齢者と呼ばれるのが気に食わない。多くの人たちがそのように思っているのではなかろうか。 ▼いくつになっても生きる望みは持ち続けなければならない。今ごろになって政府広報「あしたのニッポン」を取り寄せて制度の中身を読んでいるのであるが、制度の趣旨や保険料のことなどについてさえ無頓着だったと気づく。 ▼年金制度の問題がいまだに解決のめどが立っていない中で、後期高齢者医療制度をトラブルなく運用できるものかと不安もふとよぎる。 ▼高齢者の急増に伴って今後は都道府県ごとに設置された広域連合が保険料とその使い道に対処していくことになっている。国民健康保険との関係はどうなるものか、支給される年金から掛け金はどれぐらい差し引かれるのか、医療サービスはどうなるのかなど、もっと分かりやすく説明すべきだろう。 |
| ▼ 2008年 4月 11日 ―川内康範さん逝く― |
| 野武士然としたお顔のイメージ。森進一さんを突き放した言動の激しさから、頑固そう、と評する声も少なからずあった川内康範さん ▼6日に88歳で他界。晩年のかたくなさが浮かぶ半面、作詞家として世に送ったヒット曲の数々も懐かしく思い出される。森さんの歌詞改変でもめた「おふくろさん」(猪俣公章作曲)は代表曲。多くの母たちが泣き、息子や娘たちに発意を促した名曲だ ▼「お前もいつかは世の中の 傘になれよと教えてくれた〜」。森さんのあの震えるような声もよみがえってくる。遺書の意を込め書いたという自著「おふくろさんよ」(マガジンハウス。07年12月刊)に、この歌で伝えたかった思いをつづっている ▼歌詞には母から教えられた生き方、人の情けの大切さ、見返りを求めない無償の愛の尊さなどを織り込んだという。頑迷に映るほど筋を曲げるのを嫌ったが、根は柔らかくロマンに満ちていたのだろう。「誰よりも君を愛す」(日本レコード大賞受賞)や「伊勢佐木町ブルース」もこの人の作品だ ▼1958年(昭和33年)にテレビに登場。少年少女をくぎ付けにした「月光仮面」も川内さんの原作。「どこの誰かは知らないけれど 誰もがみんな知っている」と歌う主題歌も作詞。白マスク、白マント姿。正義の味方の月光仮面は、仏教の月光菩薩からの着想。悪と戦うがあまり傷付けることをしない ▼生家は寺院。剛に見えて柔を内包した生涯は、仏教的信念に裏打ちされていたのであろう。 |
| ▼ 2008年 4月 10日 ―盛岡大学の入学式― |
| 小学校から大学まで入学シーズンを迎えた。小学生は黄色い帽子をかぶって親御さんと一緒に校門をくぐっていく姿が見られる。ほほ笑ましく、健やかに成長してほしいと思った。県内の大学でも既に入学式を終えている。県立大学はマリオスで、岩手大学は県民会館で行われた。 ▼4日には盛岡大学の入学式が同校体育館で行われ、招かれて出席させていただいた。後列の父兄席に一緒に座って臨んだ。吹奏楽部の演奏や女子大生による讃美歌の唱和などがあり会場のムードは盛り上がっていた。 ▼昨年、就任された望月善次学長の式辞を期待していた。新学長は、キャンパスからは西に岩手山、東には姫神山が望むことができ、北上川も流れていて最良の環境に置かれていることを強調された。石川啄木が「ふるさとの山」として慣れ親しんだ山と川である。天候によっては、この二つの山が見えないこともあり得る。また、この二つの山に気付かなかった人もあろうとして、松尾芭蕉の「野ざらし紀行」の一節の「霧しぐれ富士を見ぬ日ぞおもしろき」の例を思い出してもいいですね、と語りかけている。 ▼つまりは見える世界、見えない世界、そして想像力を働かせること、心豊かに読み取ることを学生たちに訴えていた。キャンパスが学生たちの成長と共に実力を身につけ「心の故郷」となってくれることを望んでいる。そして皆さんは何によって社会に貢献しようとしていますか、と問いかけて締めくくった。 |
| ▼ 2008年 4月 9日 ―悲鳴つづるマネー川柳― |
| 不満やうっ憤、人情の機微などを、風刺や機知を利かせ5・7・5に詠む川柳 ▼作句を楽しむ人の輪が広がり、さながら庶民の文芸として、柳壇には普通のおじさん、おばさんらの鋭い作品があふれている。表現が時代を映すのは当然だが、同じ素材でも時の推移で問題意識も変化し、それが作風にも微妙に反映するらしい ▼先月、オリックスが主催する第4回「マネー川柳」の結果が公式サイトで発表されたが、選者総評もそれを指摘する。マネー(お金)にまつわる句を公募するこの企画。応募数は1回、2回は約5万。06年度の第3回が8万。それが07年度の今回は12万8614句と急増している ▼総評は関心の高まりを実感するとし、表現も応募全句に流れる傾向は、前回まではお金を冗談に仕立てて、貧しさも笑い飛ばす気分が見られたが、今回はより切迫した悲鳴に変わってきていると分析している。「しめすぎた財布の紐(ひも)がほどけない」(優秀賞)も確かに悲痛だ ▼「社保庁は未納者だけを覚えてる」(大賞)も怒りの叫びだろう。保険料を納めた人の記録は消え、足を運んでもらちがあかない。未納催促だけは熱心。この転倒が許せない。天引きが増え手取りだけは年ごとに減る年金にも腹が立つ。「サクラ咲くたびに年金目減りする」(優秀賞) ▼「お尻より怖い年金かじり虫」(同)も年金原資浪費への糾弾か。「きんにくつう変換したら『金に苦痛』」(同)は笑わせるが、今のご時世を象徴している。 |
| ▼ 2008年 4月 8日 ―春の交通安全運動始まる― |
| 春の全国交通安全運動が6日から始まった。今年のスローガンは「点滅だ、一度止まって、次の青」となっている。子供と高齢者の交通事故防止、全ての座席のシートーベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底、自転車の安全利用の推進、飲酒運転の根絶が運動の重点に掲げられている。 ▼盛岡交通安全協会の千葉正会長の長年にわたる交通安全の取り組みには頭が下がるが、ドライバー全員が千葉正会長のような心構えになってほしいものだ。昨年の交通事故死者は全国で5744人となっているが、本県では98人が犠牲になっている。人身事故は夕刻から18時頃までが最も多く、仕事や学校が終わって帰宅途中に起きている。死亡事故は横断道路を横断中の高齢者や子供が多く犠牲になっている。 ▼一番悪質なのは飲酒事故とスピード違反であるが、それらは常日頃から一時不停止や交差点安全運転義務違反などの安全不確認が常態化しているからではないかと思っている。やはり、日ごろから違反行為は絶対にやらないとした固い決意を持つことが無事故の原点でもあろう。運転していれば偶然は避けられない。だからこそそれが重ならないような心構えが必要になる。 ▼今年から後部座席でのシートベルト着用が義務付けられ、また75歳以上の運転者は高齢運転者・紅葉マークの表示が義務付けられた。そのほかにも子供の自転車乗車時のヘルメット着用が保護者の努力義務になるなどの改正がなされている。 |
| ▼ 2008年 4月 7日 ―楽天初首位の快挙― |
| 3日夜のテレビ。4日朝の新聞。そのスポーツ報道を多くのファンが感慨深く見詰めたことだろう ▼「7連勝楽天首位」「楽天球団創設初の首位 破竹の7連勝」。そんな活字が画面や紙面に躍った。開幕4連敗。その後勝ち続けても野村克也監督は、辛口ぼやきで渋面を見せていたが7連勝で破顔一笑。「すみません。また勝っちゃって」と冗句を飛ばした ▼39歳の山崎武司は昨季が本塁打と打点の2冠王。今季もチームを引っ張る。この試合でも3回にはフェルナンデスのアーチに続く300号の祝砲。5回に左翼席に運んだ301号は3ランと大活躍。舞台は仙台の根拠地・クリネックススタジアム。山崎も「地元で打ててホッとした」と、いかにもうれしそう ▼戦力外になった過去がうそのような、プロ22年目の大台到達はナインを力付ける。7回を2安打無失点で抑えた岩隈久志投手の復調も心強い。2年目の期待の星・田中将大も、不安はあるが鍛えられて成長するだろう。連勝は西武に阻まれたが、楽天の今年の勢いは頼もしい ▼創設の05年以来低迷が続いたから、「初の単独首位」の快挙には《石の上にも3年》で、08年は我慢の修業が花開くと、勝手な想定もしてしまう。現実は甘くないし、浮沈が付きまとうだろう ▼かつて、「初めの勝ちはうその勝ち」(92年)「戦いに勝つはやすし。勝ちを守るはかたし」(93年)と名言を吐き、勝負の厳しさを熟知する野村監督。そのさい配が果実を結ぶか。目が離せない。 |
| ▼ 2008年 4月 6日 ―新聞を読む日― |
| 4月6日は「新聞を読む日」となっている。新聞販売店を始めてから108年になる老舗が盛岡市肴町の東北堂であるが、1900年という区切りのいい明治33年の創業である。 ▼会長の川村登氏も新聞販売業55年を迎え、朝日会会長を31歳から70歳までの39年もの長い間務めた。全国ナンバーワンという。体力的にはまだまだできたのだが「サンキュー、39年」で後進にバトンを託した。日経会会長は34年間を務め上げ、こちらは「サヨウナラ」で座を譲った。 ▼その社団法人日本新聞販売協会が推進母体となって盛岡市内の全中学校に新聞を提供している。「中学生のときから新聞を読む習慣を持とう」という願いからである。県内では、盛岡、奥州、遠野、久慈、二戸の各市と一戸町の6市町が対象となっているが、各新聞社が月ごとに交替で毎日学校へ新聞を届けている。 ▼各クラスに新聞がつづられていて時事問題などの学習にも使われているようだ。盛岡市は今年で3年目、その他の市町村は2年目に入るが、こうした取り組みは全国でもまれである。 ▼携帯電話の普及などで新聞を読まなくなっている傾向があり、こうした新聞販売店の地道な取り組みは今後大事である。川村さんはこれからの時代、新聞の普及は「狩猟販売」の時代から「農耕販売」の時代に入っていると力説している。つまりは購読者を確保するのに育てる時代に入っているとか。新聞が果たしている大きな役割に気づいてもらいたい。 |
| ▼ 2008年 4月 5日 ―平成日本村の高齢医療― |
| 老父母らを山奥へ捨てる棄老物語が、昔話にはよく登場する ▼柳田國男の「遠野物語」にも「六十を超えたる老人はすべて此(この)蓮台野へ追ひ遣(や)るの習ありき」という説話が収められている。この話を素材に村田喜代子さんが書いたのが「蕨(わらび)野行」(文藝春秋社)だ ▼口減らしのため村人は60歳になると、この世とあの世の境界とされる橋を渡り蕨野に入る。居合わせた数人でひとときを暮らし、やがて吹雪の中で次々と息絶えていく。悲話だが短期間ながら昨今のグループホーム的集団生活があるのが救いだ ▼棄老物語でも深沢七郎著「楢(なら)山節考」(新潮社)はより寒々しい。こちらは70歳の冬に楢山に捨て置かれ一人で死を待つ。泣きながら逃げ帰り送り返される老人もいるが、多くは時がくれば覚悟して死地に向かう ▼時代は変わり文化水準も高いから、現代の高齢者は手厚い保護を受けているかというとそうでもない。遇され方は1日から始まった「後期高齢者医療制度」に端的に表れている。長寿時代。余命が長い。医療費もかさむ。だから年齢で区切り75歳からは「後期」とする ▼自己責任、自己負担も鮮明になり在宅ケアが推進される。医療を受けにくくする側面がある。制度の意図を知った人たちから、これは平成日本村の蕨野行、楢山節考だと非難が噴出。慌てた福田総理が施行初日に「長寿医療制度」と名称変更を指示したがそれも不評。オブラートに包んでも棄老の苦味はにじむ。 |
| ▼ 2008年 4月 4日 ―新入社員とベテラン社員― |
| 新年度に入って官庁や企業などでは新入社員の入社式が挙行された。県内においても県庁をはじめ、岩手銀行、北日本銀行、東北銀行や各企業などの入社式が行われ、一人ひとりに辞令が交付された。入社された方々は社会人としての気持ちを新たにして職責の重さをかみしめていたようである。 ▼東北銀行の浅沼頭取が訓示の中で「借りに来た客には頭を下げること」というあいさつをされたのが記憶に残った。銀行はサービス業であり、絶えず疑問を持ちながら地元中小企業を元気にするように努めてほしい、とエールをおくっている。 ▼企業側でも景気がいまだ回復していないときに、今こそ経営力の向上を図らなければならない。そうしたときに新入社員や新規転入者の活躍には期待するものがある。 ▼とかく年配者はマンネリに陥りやすく、変化を嫌う場合が見受けられる。パソコンや携帯電話などの機能が多様化して新しい情報機器にはついていけない場合があるからだが、そうしたためか、実績が年々減少しているときに何の手も打たないで過ごそうとする。 ▼見ぬふりをせず、需要のあるところにかじを向けて新たなチャレンジを始めてほしい。日々刻々と情勢が変化することは、ベテランにとって弱みを突かれることでもある。情勢の変化や実績が下がり続けていることに鈍感であるとすれば問題になる。この春、全く経験を持たずに入社してくる新人社員に、ベテラン社員は勇気をみせなければならないだろう。 |
| ▼ 2008年 4月 3日 ―悲しい女性自爆テロ― |
| 体に弾薬を巻き付け、人の密集するところで爆破させ人命を奪い傷付ける自爆テロ ▼自らも犠牲になる実行犯は、覚悟を定めるまでどのような葛藤を繰り返すのだろうか。神なる存在に応えようとする聖戦の選ばれた戦士として、教育され洗脳されていくのであろうが、自爆の現場は崇高さなどとは程遠い。陰惨な地獄絵図と化す ▼米英軍などによる武力侵攻から先月20日で5年が経過したイラクでも、今なおその惨劇が続発している。特に目立つのは《女性聖戦士》と呼ばれる女性テロリストによる犯行だ。先月17日には、イラク中部の聖地に向かう通りで女性が自爆。50人を超える巡礼者らが犠牲になっている ▼その2日後にもバグダッドで、警官隊に近付いた女性が自爆。数人が殺害されている。イラク多国籍軍のまとめでは、開戦5年までの女性自爆は24件。その内07年が8件、今年は3カ月足らずで9件も発生している。テログループ側が最近、検問などで警戒されにくい女性を意図的に用いているとの見方もある ▼命の尊さに男女差はないが、女性が厚く保護されるイスラム圏で、女性戦士が自爆を実行する事態は、異様というほかない。夫や息子を米軍などの攻撃で失った妻や母が、自爆戦士に育成されている節もあるといわれる。彼女たちこそ、あまりにも悲しい犠牲者といってよかろう ▼命を産みはぐくむ性として、平和を愛する妻や母が自爆を選ぶ不幸。大義なき開戦を決めた国家指導者の罪の重さを改めて思う。 |
| ▼ 2008年 4月 2日 ―ゴルフ客に照準を― |
| 日本のゴルフ人口が1千万人を超え、巨大スポーツにのし上がったという。つまりは野球、サッカーと同程度の手堅い分野になってきた。若手女子プロやハニカミ王子などの活躍で脚光を浴びている。 ▼本県にはゴルフ場が多いが、観光やスポーツといった分野の中でゴルフ産業を盛り上げていく方法があろう。スキー場の入り込み客は十数年来減少しているが、雪国の特徴を考えた場合にスキー場と併設したゴルフ場の経営というのも一方法ではなかろうか。 ▼今後、新幹線駅や花巻空港とゴルフ場を結びつけた商品造成をすべきであろう。近年は韓国や台湾などから秋田空港や青森空港経由で雫石、安比などへゴルフツアーに多くの客が訪れている。 ▼ゴルフ産業はスポーツ用品、衣料品、宿泊や飲食などの幅の広い産業と関わりを持っている。そして、新聞やテレビなどでの報道の柱にもなっている。ゴルフ本は実用書コーナーでも野球やサッカーに次ぐ規模の市場になっているようだ。 ▼団塊の世代が退職する時代に入って、ゴルフをやる年齢層が高くなっていくだろうから、ゴルフと健康といった関係も強くなっていくだろう。広い自然の中で高齢者が安い料金でプレーを楽しめるように環境を再整備したいものである。 ▼賞品として農産品や果実などの地場のものを提供してほしい。遠来の客には宅配の手配をすれば喜ばれる。グランドゴルフも人気の的だが、経費が安ければセルフで楽しめるゴルフ人気が高まろう。 |
| ▼ 2008年 4月 1日 ―値上げ続く憂いの4月― |
| 春は「張る」に由来するともいう。4月。木の芽も人の希望もはち切れるように膨らむ ▼新年度のスタート。入学、進級、入社と胸を張り浮き浮きしてもいい季節だが、憂い顔の人が少なくない。春愁と書きたいところだが、これはそこはかとない物悲しさだから似つかわしくない。現実の暮らしには、感傷など吹き払う値上げの嵐が襲う ▼総務省が先月末に発表した2月の物価指数上昇率は、07年同月比で1・0%。近年では、消費税率引き上げのあおりを受けた98年3月の1・8%という異常値があるが、これを除くと94年5月の1・0%に並ぶ。14年ぶりの高水準だ ▼ラッシュは続く。きょう1日から牛乳は30年ぶりの値上げ(5%前後)。輸入小麦粉の引渡し価格は30%も上げる。パンやめん類の値上げも必至。しょうゆも食用油もジャムも上がる。ビールでは値上げ済みのキリン、アサヒに次いでサッポロ、サントリー(缶を除く)も4%前後上がる ▼大田経財相は28日、「賃金も上がっていない中での物価上昇は、いい上昇ではない」と懸念を表明した。電気料も年金保険料も上がる。新たな負担者拡大など不評の後期高齢者医療制度も始まる。ひょうたん国会からこまが出たように暫定税率が消え、ガソリンが1リットルで25・1円安くなるのが唯一の慰めか ▼それも与党には奥の手を使った税率復元の動きもあるから、一過性に終わる恐れもある。急な税収減で頭を痛める地方自治体も多い。希望薄く憂いの深い春になりそうだ。 |