2009年 5月の天窓


▼ 2009年 5月 31日 ―一番厳しいのがサラリーマン―
 多く支給されているわけではないけれども、年金が偶数月に支給されるので、それをもとにして預貯金などを少しずつ取り崩して生活している方が多い。
▼多額のたんす預金を所持している方は何不自由することもないだろうが、大方の人は年金から医療費や薬代を支払うのが大変になっている。
▼病院を一つ増やすと服用する薬が増えていくので居間には薬袋が幅を利かせている。それでも戦後の医療や年金制度が確立されていない時代に比べると、国民年金であっても高齢者にとってはありがたい制度だ。
▼農家をやりながら、近くの誘致工場や建設会社などに勤められた方もあって、厚生年金の受給者となっている高齢者も結構多い。従って兼業で農家を続けている家庭では大いに助かっているのではないか。▼今、一番厳しいのがサラリーマンではないだろうか。年金生活者とは比較にならない厳しさだ。部屋を借りているが、給与が上がらず、手当てもカットされ、子供の養育費にはこれまで以上にかかる。この先の景気上昇の見通しも開かれていない。
▼経済の物差しになっている完全失業率が5月末、前月比0・2〓悪化して5・0%となった。失業率が5%以上になったのは2003年11月の5・1%以来5年5カ月ぶりだという。住宅着工率も30%も落ち込んでいるように消費が慎重になっている。新型インフルエンザで旅行客の動きが止まっている。あすから6月に入るが、何か明るい話題がほしい。

▼ 2009年 5月 30日 ―アラサー世代女性作家の受賞―
 今年前半の文壇ではいわゆるアラサー(30歳前後)世代の女性2人も注目されている
▼「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞した津村記久子さん、31歳(文藝春秋3月号詳報)。イラン人女性で10年前に来日し神戸大大学院を修了。会社勤務の傍ら日本語で書いた「白い紙」が第108回「文学界」新人賞を射止めたシリン・ネザマフィさん、29歳(今月8日受賞式)の両名だ
▼20歳前後の女性作家の若やいだ文体が評判になった時期もあったが、今度はそれより幾分落ち着いた書き手の登場だ。津村作品も物語そのものが地味。題名のポトスライムも観葉植物だが百円のコップに差しても生き生きと育つ
▼主人公は29歳の独身女性で契約社員。彼女らのちまちましたたくましい日常をポトスにダブらせて描く。年収予算で世界一周客船旅行も夢見るが次第にかすんでいく。子連れで助けを求める旧友や職場の先輩らへの気遣いも活写。こつこつ貯金する場面もある
▼著者は生き方の細部こそかけがえのない営為であることを伝えている。一方「白い紙」はイラン・イラク戦争下の青春物語。医師志望の級友に恋する女子高生の「私」。軍が若者に配る「白い紙」。そこに署名した者は勇士とされ戦場に向かう
▼彼は医師を断念し兵士を選ぶ。恋心は裂かれて未来を意味する「白い紙」を彼は半ば戦闘色に染め去って行く。非日常下の価値観の揺れや父母らの悲哀も淡々と書く。いずれも次作が楽しみなアラサー作家である。

▼ 2009年 5月 29日 ―国民が求めているのは―
 麻生太郎首相と民主党の鳩山由紀夫代表による初めての党首討論が27日開催された。テレビ・新聞などを通じて知るところだが、はたから見る限りでは揚げ足取りと非難に終わったように思われた。
▼肝心の議論がかみ合わなかったばかりか、参院第1委員会室は、与野党の野次による喧騒(けんそう)で双方の声が聞こえない場面があったようだ。
▼世界同時恐慌といった状況の中、緊急経済対策や政治とカネに関する問題、北朝鮮問題、行財政改革等のビジョンについて、党首同士がしっかりとした議論をしてほしいと望む国民も多かったのではないか。
▼秋までの衆院の任期が近づいていることから、衆院選を意識した党首討論になっているのだろうが、麻生首相は西松建設の巨額献金事件で小沢氏の公設秘書が逮捕・起訴された事件を取り上げて鳩山代表が十分な説明責任を果たしていないことを追及していた。
▼鳩山代表は小沢氏と同じように西松建設のダミーの政治団体から資金の提供を受けている自民党議員が多くいるにもかかわらず、検察の捜査を受けていないのはおかしいと検察官僚のやり方を批判した。
▼鳩山氏は3年後に企業・団体献金を全面的に禁止する考えを示したが、麻生首相は理論のすり替えだとしてかみ合うことがなかった。
▼残念ながら、緊急経済対策については中身のある議論には入らなかった。多弁な2人の党首だが、国民が求めているような実りのある討論にしなければならない。

▼ 2009年 5月 28日 ―党首討論のレベル―
 脳障害で意思表示もできず、寝たきりになった妻。受け入れてくれる施設もない
▼塗装会社勤務の55歳の夫は苦悩する。自分が介護をする以外ない。苦渋の決断で退職。食事、おむつ交換、車いすでの散歩と、常に妻に寄り添う生活が続く。離職したので雇用保険をもらえるものと申請に行くと、ハローワークでは介護のための退職では雇用保険が適用されないと突き放される
▼収入はなくこれまでの貯金を取り崩しながらの日々。昨日午前の民放テレビが夫のやり場のない悲憤を伝えていたが氷山の一角だろう。病院の無床化で入院患者が退院や遠方への転院を強いられる現実もある
▼寝たきりの人を受け入れる施設はなくても、国営マンガ喫茶とやゆされる施設を117億円もかけて造ろうとするこの国。国民が望むレベルに視線が届いていない。それを訴えるようなテレビ映像に触発されて居合わせた友人と、午後の党首討論の予測をした
▼麻生総理と鳩山民主党代表の初の党首討論。北朝鮮対応や政治と金などが論議されるのは当然として、医療や介護の現場で「難民」と呼ばれる人たちが増えている事実に両党首が即反応するかどうか。細かな各論とみなされ悲しみや怒りを救い上げる度量はないなと
▼討論の実際はほぼ想定通り。目指す国家像や理念。目線の位置など国のトップとしての心構えを両党首が確認し合ったという程度だ。国民が「ああ、分かってくれている」と安心できるような討議は期待しない方がいいか。

▼ 2009年 5月 27日 ―南部利文当主が初のお勤め―
 盛岡城跡公園内にある桜山神社(坂本広行宮司)の例大祭が25日から27日まで開かれている。桜山神社正面入り口には「五穀豊穣」「領民安堵」の大きな幟(のぼり)旗が立てられているが、さすが南部家ゆかりの神社であると思わされるものがある。
▼25日午前11時から、伝統の由緒祭が開始され、神社本殿で南部家や役員総代、武者行列参加者らが参列して清め払いの儀が行われた。引き続いて晴天の中午後1時から古式ゆかしい武者行列が、桜山神社を発着点に市内繁華街を行進した。
▼御雇鳶組という南部藩の消防頭を先頭に早乙女、御神輿、そして南部の殿様、桜山神社宮司、南部藩家老、武士らがあでやかな陣羽織、袴、烏帽子姿でにぎにぎしく内丸、本町通、大通、菜園から下の橋を経て肴町、紺屋町から上の橋を通って内丸に至る盛岡城を約2時間かけて一周。盛岡城本丸跡で由緒祭りの神儀が厳かに執り行われた。
▼今年の祭礼に南部の殿様、桜山神社宮司とともに参加させていただいた。陣羽織、袴、烏帽子を身につけ、騎馬にまたがって武者行列に加わった。馬上から盛岡城のあたりを眺め、五穀豊穣と市民生活の安寧を祈らせて頂いた。
▼桜山神社本殿で祭儀が執り行われたが、直会の席で坂本宮司から、南部家第46代当主に南部利文氏(39)が就任されたと報告があった。2001年から名代を務められている。今年の祭礼から南部家当主として最初のお勤めをいただいたことになる。

▼ 2009年 5月 26日 ―木々の命 自然の律動―
 若葉・青葉の季節だから木々にまつわる話題も全国から聞こえてくる
▼枝も栄え葉も茂る時節に意外だったのは、九州から届いた老木枯死伐採の便り。東国原知事の登場で観光コースにも加わった宮崎県庁。その正面に立ち続けた樹齢99年のフェニックスのことだ。「県庁の木」として親しまれてきたが邦訳の不死鳥にはなり得ず葬られた
▼一方、「ナンジャモンジャ」という愉快な名前の木は、時のリズム通りに葉を茂らせて別名のスノーツリーそのままに、雪が舞い降りたような白い花を咲かせた。先月末にも佐賀や愛知など各地から開花が伝えられ、今月中旬には盛岡の岩手大学構内でも例年より早く花開いた
▼緑の葉が雪片に覆われたような花景色は心が和む。ユニークな名前は古人が珍しい木を見て「これはなんじゃ。何というもんじゃ」と問うた言葉に由来するという(他説もある)。学名はモクセイ科のヒトツバタゴとされるが、千葉のクスノキ、伊豆のカツラにも「ナンジャモンジャ」と呼ばれるものがある
▼私事になるが見たい巨木があって先日、神奈川・丹沢湖を訪ねた。それは樹齢2千年といわれる杉の巨樹(国の天然記念物)だ。湖畔近くの急坂の上に泰然と立っていた。樹高45b、根周り18b、幹周り12b。枝葉を伸ばす樹形が箒(ほうき)に似ていることなどから箒杉とも呼ばれる
▼ウグイスの響き渡る声を耳に2千歳の大樹を仰ぐ。万物の寿命の長短の不思議。すべてを包含する自然の律動には圧倒される。

▼ 2009年 5月 25日 ―NHKドラマ「天地人」を見て―
 NHK大河ドラマ「天地人」も中盤に入ってきた。織田信長が本能寺の変で亡くなった場面が大きな山場であったと思う。その後は、秀吉、家康の時代に入っていくのだろうが、番組では上杉謙信、景勝、そして直江兼継がメーンになっているから場面は越後や会津が舞台になっていくのだろうか。
▼先日の本能寺の変の場面ではこたつに入って居眠りしていたために肝心の場面を見逃してしまった。後日、土曜日の再放送を見ていたところ、来客があってそのときも見ることができなかった。
▼「天地人」は、信長あり、秀吉あり、家康あり、そして信玄、謙信ありで、時代構成の幅がかなり広く歴史感覚を取り戻すのが大変である。
▼今風に言うならば「乱世」の中を生き抜いた武将を主人公にしているように思う。今日の世も乱世だという人も多いが、織田信長は武将であり、また思想家であったのでなかったか。
▼昨秋の金融危機以来、戦後最大の低成長になって世界同時恐慌になっているが、社会主義も資本主義も崩壊しているのだと見ている学者もあるようだ。
▼そのようなことであれば、回復までにはかなりの年数を要するのであろう。これまで、そのようなことを予言も予測をした人も見受けられなかった。
▼経済理論の根幹のところで、現実世界が理論を追い越してしまっているのかもしれない。それをうまく説明づけて解決に導く新たな思想が出てきていない。なんとも難しい時世になってしまったようだ。

▼ 2009年 5月 24日 ―暮らしの安全保障という視点―
 「安全保障」という言葉は普通は、他国からの攻撃などに対し自国の安全をどう確保するかという軍事用語として使う
▼それが最近は「人間の安全保障」「生活の安全保障」というように、軍事の枠を超えて貧困や飢餓などに脅かされ、命をも奪われる恐れのある人たちの生活を防衛する意味にも用いられる。1976年度ノーベル平和賞受賞者のメイリード・コリガン・マグアイア女史にもその意味の発言がある
▼今月17日、世界のノーベル平和賞受賞者17人が連名で、すべての国の指導者や市民に核兵器廃絶への行動を起こすよう訴える「ヒロシマ・ナガサキ宣言」を発表した。世界に共感を広げているが、この「宣言」作成を推進した中心者がマグアイアさんだ
▼オバマ米大統領が先月、米国指導者として初めて唯一の原爆使用国としての責任に触れ「核兵器のない世界を目指す」と決意を述べたことに呼応。核不拡散と廃絶へ弾みを付けようと立ち上がったのだ。女史は「宣言」に際してコメントしている
▼そこでは核廃絶の重要性とともに、次のように具体的な視点を示している。「中国やロシアも核兵器にお金をかける代わりに、教育、住居、医療、環境保全など『真の安全保障』にお金をかけるべきです」と。世界で毎分14人の子供が餓えなどで命を落としていることも指摘した
▼軍事優先を国是とする北朝鮮は最悪例だが、民の暮らしの安全保障を省みない国家指導者はまだまだ多い。日本政府だって合格点には程遠い。

▼ 2009年 5月 23日 ―経営の神様は言っているが―
 経営の神様と言われた松下幸之助氏が亡くなってから何年になるのだろうか。今日のようなデフレというか、戦後最悪のDGP、世界同時恐慌の状況に松下幸之助氏が健在であったならばどんなことを言っていたのであろうか。
▼松下氏が健在の時には「好況よし、不況さらによし」の言葉を述べていたように思う。ピンチをチャンスに生かしていくのが経営のコツであるという。
▼そのことが凡人には分かりにくい。どんな時でも隙間というものがあるのだから、その隙間を狙った事業をやれば良い。けれども、私どもには隙間が読めないからそれを生かす知恵がわいてこない。
▼2008年度末決算では、わが国の大手企業や金融機関などの大半が大幅な欠損を計上している。前年度は空前の黒字計上であったのが、1年後の今期は大赤字に転じた。株安や円高等による金融商品の目減りを帳簿上に計上しただけのことなのだろうか。
▼数百から数千億単位の赤字が来期で黒字に転換できるものなのかと不思議に思っている。ともかく多くの企業が来期の決算では黒字を予測している。
▼近年、社員の帰属意識が薄らいできていると言われている。会社の存亡と自分の生活設計とは別のこととしている者が多くなってきている。従って会社の合併を進めて組織の強化を進めている。中小企業経営者の悩みは耐えることがない。企業があって自分があるのだという考えは古いかも知れぬが、その意識の高揚を期待している。

▼ 2009年 5月 22日 ―刑事裁判への市民参入―
 盛岡地方裁判所にも仙台高裁にも取材や傍聴で何度も足を運んでいる
▼そのたびに民事・刑事ともに被告(人)席に座る人の緊張はいかばかりだろうと思う。訴える側の原告席にも独特の緊迫感が漂う。さらに双方の言い分を聞き分け裁定を下す裁判官の威容ぶりには、こちらが仰ぎ見る位置にへりくだってしまうこともしばしばである
▼5年間の啓発と準備を経て、昨日から司法に一般市民が参画する裁判員制度がスタートした。重大犯罪の刑事裁判で、あの重々しく粛然と見える裁判官と同じ裁く側に市民が加わる制度だ。無作為抽出で裁判員候補に選ばれた人たちの中から、辞退を申し出る人が少なくないというのもうなずける
▼とはいえ開かれた司法を目指すこの制度。おどおどするよりおおらかに、常識的意見を反映できればいいのだと割り切って臨むのがいいだろう。近寄りがたいと裁判官を敬遠する向きもあるが、同じ人間、人情もあろうと肩を組んで審理をすればいいのではないか
▼司法ジャーナリストの長嶺超輝さんが裁判官人情発言集を相次いで出版している(幻冬舎)。そこには極刑言い渡しの際「死刑はやむを得ないが〜君には出来るだけ長く生きてもらいたい」と一言添えた例。覚せい剤常習犯の被告人に対して、彼の妻子を法廷に入れ「この場で子供を抱きなさい」と温情を示し諭した姿などが満載されている
▼先入観より垣根は低いかもしれない。市民の参入で裁きに観察の厚みと深みが加わるといい。

▼ 2009年 5月 21日 ―中小企業団体中央会への期待―
 岩手県中小企業団体中央会の総会が先日、盛岡市内のホテルで開催された。世界同時恐慌と言われるような、戦後で最も経営環境の厳しい中での開催でもあり、本県の企業経営者の関心が高かったのではなかろうか。中小企業団体中央会はそんな経営者の要請に応えていかなければならないと思った。
▼本県では、ものづくり中小企業の試作品などの開発支援を行ってきているが、新年度から新たに「ものづくり中小企業の試作品開発から販路開拓等への支援」と「ものづくり中小企業の製品実証等への支援」が事業に盛り込まれた。後押しを受けて新たな製品が岩手から市場に出されることを期待したい。
▼ものづくり基盤技術は金型、鍛造、鋳造、金属プレス加工、組み込みソフトウエア、電子部品・デバイスの実装、プラスチック成形加工などのほかに、溶接、めっき、部材の結合、織染加工、発酵など20分野からなっている。
▼こういった分野は専門性が高いために、一般の県民にはあまり知られていないが、製造業を支える基礎的な技術として本県がこれから伸ばしていかなければならない分野であろう。県内の実業高校などでの基礎的な教育が実践の場につながるような施策を積極的に推し進めてほしい。それがまた実業高校などの進路開拓にもつながるのではないか。
▼融資は商工中央金庫や地場の金融機関となっており、このような分野には国の予算を大いに活用し、技術者の育成に力こぶを入れるべきだ。

▼ 2009年 5月 20日 ―鳩山民主へ世論の期待―
 功を奏した「小鳩戦略」という声も耳にする。小沢一郎民主党前代表が「小」で、「鳩」はもちろん鳩山由紀夫新代表を指す
▼昨秋来、麻生政権を追い詰め上げ潮の勢いにあった民主党が、献金疑惑で小沢陣営に捜査のメスが入り暗転。国民は政権交代への願望はあるものの金権を嫌う。急落する党支持率を眼前に小沢・鳩山両首脳は苦悩し、起死回生の戦略を練る
▼連休明けに小沢代表電撃辞任。間髪入れず後継代表選挙を組み鳩山が立つ。そんな流れの推測から「小鳩戦略」という言葉も生まれたのだろう。金権の影が退いたと見て好感したのか、鳩山代表就任直後に実施された各種世論調査の数値は、いずれも政党支持率で民主が自民を逆転している
▼次期首相適任の問いでも鳩山代表が麻生首相を大きく引き離している。「小鳩戦略」の有無はともかく民主首脳の決断が功を奏したことは確かだろう。小沢前代表との二重権力とか、かいらいとかが声高に叫ばれていたさなかの調査だけに、変革を望む世論のぎりぎりの意思表示と見るべきだろう
▼鳩山さんも批判と期待の重圧を感じてか、ほとんど笑顔を見せない。かつてやゆされたお坊ちゃん育ちのひ弱さも一皮むけたのか、表情も締まり目力もきつくなっている。「猛獣使いにはなれないかもしれないがリーダーシップを見てほしい」ときわどい決意も述べている
▼小沢代表代行(選挙担当)、岡田幹事長の挙党布陣で出発した鳩山民主がどう国民に応えるか注目したい。

▼ 2009年 5月 19日 ―企業の火を消すな―
 岩手県北自動車が、民事再生法の適用を14日に申請したニュースを聞いたとき、多くの県民が驚いたのではなかったか。
▼少子高齢化、過疎化が進んで地域の公共交通を利用する人が極端に少なくなっている。マイカーの普及で列車・バス・タクシーなどの利用者がめっきり減っている。地域の交通を維持していくためにはどんな方法があるのか。
▼先日、JT盛岡工場や一関市千厩のソニー関連子会社の閉鎖計画が連続して発表された。日本一の葉タバコ産地の岩手県からタバコ加工工場が姿を消すというのは理解に苦しむ。本県の企業立地条件の利点というのは何なのだろうか。
▼プラス、マイナスがある中で生産拠点を消してしまうようなマイナスになっているのはどのような事項か。また、それはなぜか。そのようなマイナスを埋め合わせるためにはどんな努力をしなければならないのか。
▼由緒ある企業や誘致した工場などが次々に撤退していくことを放置しておくことはできない。達増知事が先頭に立って存置運動に立ち上がることはもちろんのこと、県民としてはどんなことをやらなければならないのか。
▼企業立地のスタイルが今大きく変化しているのだろうと思う。これまでのスタイルでは企業が持たなくなってきているのか。ただ生産するだけではなく、販路や流通にいたるまで再調査しなければならない。人任せにしておけないところまできている。せめても予備軍を引き留める対策を急がなければならない。

▼ 2009年 5月 18日 ―国際チャレンジデー2009―
 野山の風景が新緑から深緑に移りつつあるさわやかな季節である
▼歩いたり走ったり体を動かしても薫風がすがすがしい。「スポーツの秋」という決まり文句があるが、初夏の時節もそれに勝るとも劣らない。毎年5月の最終水曜日には自治体や地域間で、住民の運動参加率を競い合う世界同時進行のイベントも行われる
▼1983年にカナダで始められた生涯スポーツ振興行事で世界各地に普及。「国際チャレンジデー」と命名され国ごとに開催される。参加を申し込んだ自治体や地域は、人口規模などが同程度のグループごとに対戦相手を抽選で決める。当日は午前0時から午後9時までに何らかの運動を15分以上行った住民数を集計。人口比の参加率で勝負する
▼日本では笹川スポーツ財団が主催。今年は27日がその日だが全国で102の自治体・地域が参加する。すでに対戦相手も決まり関係者は呼び掛けや運営準備などに大わらわだ。本県からは15回目となる葛巻町、11回目の陸前高田市のほか奥州、一戸、大槌、軽米、藤沢の計2市5町が挑戦する
▼率で敗れると相手自治体の旗を自庁舎に1週間掲揚する楽しいルールもあり、どこも参加啓発に躍起。運動種目は自由で例えば佐賀県基山町と対戦する陸前高田ではラジオ体操、野球、幼児体操、ゴルフ、水中歩行、ダンス、テニス、ママさんバレー等々、全市民向けメニューも用意。万全を期している
▼不参加地域でもさつきの空気を吸いながら、大いに体を動かしたい。

▼ 2009年 5月 17日 ―主党新代表に鳩山氏―
 民主党の小沢一郎代表辞任に伴う党代表選が16日、都内のホテルで行われ、鳩山由紀夫幹事長(62)が岡田克也副代表(55)を破って党代表に選出された。
▼代表選は午前9時に告示され、岡田、鳩山の2氏が届け出た。両院議員総会で候補者による政見演説、公開討論の後、衆参両院議員による投票が行われた。開票の結果は鳩山氏124票、岡田氏95票だった。
▼小沢氏の辞任に伴っての代表選で、党内外では「親小沢VS非小沢の対立軸」と揶揄(やゆ)されたが、両候補は「終わったらノーサイド」のしこりを残さない意識をしていた。
▼スタート直後から鳩山氏は参院で約6割の支持を固めて優位に戦いを進めていたが、終局で小沢氏グループが鳩山氏支持を表明したことなどで、最終的には76・6%強の支持を得て圧勝した。民主党は鳩山体制で次の選挙に臨むことになったが、勝たなければ政権交代の悲願が実現しない。
▼鳩山氏は政見演説で、長く続いた自民党政治、官僚による中央集権や腐敗政治を改め、挙党体制で政権交代を図ると公約した。景気対策では無駄をなくして「家計の懐具合を2割アップさせる戦略を考えたい」としている。また予算のバラマキを廃して、内需拡大に重点を置く考えのようだ。
▼アメリカでオバマ大統領を育てたのは若者であったが、米国でできたものが日本でできないわけがないとして若者へ期待を込めている。鳩山代表の下で小沢氏はどのような役割を果たすのだろうか。

▼ 2009年 5月 16日 ―辞任続き締まりがない麻生内閣―
 麻生内閣が発足し新閣僚が記念撮影をしたのは、昨年9月25日午前0時40分だ
▼真夜中に大変だなと敬意を表したことを思い出す。大臣なら寝ずに職務に当たることも起こる。深夜撮影にはその心意気も込められていたのだろうか。全閣僚は「私」を捨てる覚悟で任に着いたのだろうと期待もしたが、それはあっさり裏切られる
▼任命から5日後、中山成彬国交大臣が成田空港反対派住民は「ごね得」などと発言して辞任。今年2月には中川昭一財務・金融相が、ローマの国際会議後に泥酔会見し辞任。国民の多くが麻生総理の失言乱発や漢字誤読とも併せ、内閣への不信を強めていく
▼世界に醜態をさらした中川大臣の一行6人がチャーターした飛行機代は1人約7百万円だったという(財務省報告)。血税が羞恥行脚に浪費されたのだから泣きたくなる。加えて今度は週刊誌に愛人と2泊3日の温泉旅行を暴露され鴻池祥肇官房副長官が辞任した
▼大臣ではないが政府高官の身。議員も辞すべきレベルだ。日程は国が新型インフルエンザ対応に追われていた時期。新幹線往復には公務用無料パスを使っている。3氏の辞任理由となった習癖は常態化していたといわれる。麻生さんも承知の上で登用したのだろうか。実に締まりがない
▼こう辞任が重なると任命責任回避は許されないだろう。とにかく私心のない真剣な政治家がほしい。小沢代表の辞意を受けきょう代表選びを行う民主党も未知数で、無党派層が増えるばかりである。

▼ 2009年 5月 15日 ―東北銀行が黒字決算―
 東北銀行の平成21年3月期通期の業績予想が12日発表されたが、当期純利益が5千万円の黒字計上となっている。前回2月6日の公表では約4億円の純損失になることが見込まれていたが、業容が改善し黒字決算に転じる見込みとなっている。これによって連結業績予想も修正され経常利益および当期純利益も黒字を確保できる見込みとなった。
▼単体業績予想修正の理由は、3月末の日経平均株価が当初予想を上回る水準に回復したことで、株式の処理費用が当初予想を下回ったことが主因となっている。3月末決算では多くの金融機関や保険会社などが赤字計上を余儀なくされている中で、黒字計上できたことは評価できる。
▼東北の金融機関で黒字計上したのは3行程度であるとの情報もある。地域貢献に主眼をおき、中小企業への融資に力点を置いて、企業側と一体になって改善を進めるといった堅実な経営姿勢に徹してきたことが報われたのであろう。
▼岩手は農林水産県、第1次産業の活性化が大事だとして、同行は早くからアグリビジネスのテコ入れを打ち出し、農林水産品の付加価値をつけるような施策を農林漁業と一体になって推進している。
▼昨秋から世界同時恐慌に陥って、産業経済の低迷や金融不安のために先の見通しが見えないような情勢になっているが、企業が生き残っていくためには全社を挙げて業績向上に取り組んでいくことに尽きるわけで、企業経営者にとって地方銀行の健全な経営は力強い。

▼ 2009年 5月 14日 ―DNA鑑定の進歩と怖さ―
 夏目漱石が小説「行人」を朝日新聞に書き始めたのは1912年だ
▼ほぼ1世紀前だが漱石は主人公に「人間の不安は科学の発展から来る」と語らせている。人力車から飛行機に至る移動手段の進歩を例に、どこまでも休ませてくれず「実に恐ろしい」とも言う。独特の文明批評なのだろう
▼現代でも科学の進歩は歓迎される一方、不安や恐怖をもたらすことがある。最近も犯罪捜査におけるDNA鑑定の精度差問題が浮上している。90年に栃木で4歳女児が殺害され、犯人として無期懲役の判決を受け服役中の男性の場合も深刻だ
▼この受刑者が逮捕されたのは91年。女児の着衣に付着した犯人のものとされる体液とDNA型が一致したというのが逮捕理由だ。再審を求める受刑者側の要請で東京高裁がDNA再鑑定を決めたのが昨年12月。検察・弁護双方が推薦したそれぞれの鑑定人により再鑑定が実現する
▼同高裁は今月8日、検察・弁護双方ともに再鑑定結果は女児着衣付着体液と受刑者のDNA型が不一致であったことを明らかにした。最新科学が往時の科学捜査の稚拙さを浮き彫りにし、誤認逮捕、真犯人放置の疑いさえ示したことになる
▼鑑定で同じDNAの発現確率は現在は4兆7千億人に1人と超高精度だ。それが91年逮捕当時の確率は千人に1人程度という。1万人のうち10人は犯人扱いされるような鑑定能力だったわけだ。海外でも高精度鑑定で死刑囚らが無罪になる事例も相次ぐ
▼漱石とは別の怖さを覚える。

▼ 2009年 5月 13日 ―小沢氏の代表辞任―
 小沢一郎氏が11日夕刻、民主党代表の座を降りると表明した。特定の政党を支持しているわけではないのだが、虚脱感のようなものを感じてしまった。もしかしたら、今年の秋には本県出身の総理大臣が誕生するのではないかと期待をこめていたからである。
▼自公による政権も長くなってきた。世界同時恐慌といわれる中で、本県の産業経済も同様に盛り上がりを欠き何らかの変化や活力を求めている。
▼小沢氏は2006年4月に民主党代表に選出されてから2007年夏の参院選で党を大勝に導き、与野党逆転を実現させた。2009年秋までに行われる次の衆院選では政権交代の可能性が高まっていたから、代表に就任して4年目に入った小沢氏が総理大臣に一番近い人であったと思う。
▼小沢神話を最大の求心力にして寄り合い所帯をまとめてきたが、総理に近づいていたのだから秘書や取り巻きの者も含めて身支度をもっと慎重に進めておくべきであった。
▼今回は西松建設の巨額献金事件に絡む政治資金規正法違反で公設第一秘書が逮捕・起訴されたことが命取りになったのだろう。政治とカネに批判が集まり身内から「小沢氏では選挙を戦えない」といった不満が日増しに高まった。「敵失」で麻生氏の支持率は回復基調になり、中央紙の調査では4月末に7〓アップ、32%にまで上げている。
▼歴史をさかのぼってみると、本県出身の総理大臣経験者や大人物は必ずしも県民の強い支援で昇進できたとは言えない。

▼ 2009年 5月 12日 ―小沢氏、民主代表辞任へ―
 本県選出の国会議員の中で、最も総理に近いといわれていた小沢一郎民主党代表。県民ファンのそんな夢も打ち消すように昨夕、小沢氏は党代表の辞意を表明した
▼陣頭指揮した07年夏の参院選では民主党を圧勝に導き、参院の与野党逆転を実現。福田政権時代に大連立構想で挫折はあったものの党首として指導力を発揮し続け、押せ押せの勢いで政府自民党を追い詰めてきたことは周知の通り
▼麻生政権も昨秋発足以来、今春に至るまで支持率は低落傾向が止まらないまま。解散総選挙を射程に入れ政権交代、民主政権確実との声が高まっていた矢先、まるで演出でもされたように3月3日にどんでん返しの事件が起こる
▼小沢代表の公設秘書が西松建設絡みの政治資金規正法違反容疑で逮捕されたのだ。形勢逆転を狙う国策捜査か等の懸念も取りざたされたが、小沢氏が古巣の自民党的金権体質を引きずっているとの世論の方が勝っていく。次の総理を選ばせる世論調査でも麻生総理を上回っていた小沢人気はたちまち急落
▼民主支持層も背を向け始め党内に党首交代の声も上がる。昨夕の会見で小沢氏はそうした事情を連休中に熟慮。政権交代実現に向け挙党一致を強固にするため代表を辞することにしたと述べた。知る人ぞ知るで小沢氏は総理職そのものに執着などない人だ
▼政権交代し国民生活第一の政治を実現することが自身の本懐と語ったが、それが本音だろう。さて後継代表に照準は移る。世論の潮目にも注目したい。

▼ 2009年 5月 11日 ―不況の原因は―
 長谷川慶太郎氏は、今日の金融不安や不況の原因は、米国に端を発したサブプライムローンの影響によるものではなく、デフレによるものだとした経済理論を展開している。著書の「それでも平成恐慌はありません」による。さまざまな原因が輻輳(ふくそう)して今日の不況が生じているのであろう。
▼昨年までは中小企業が赤字で苦しんできたが、地方銀行を含めて金融機関は大きな利益を生み出していた。おかしな状況であったと思う。それが今年は金融機関や保険会社も赤字に転じている。経済の急激な転換や実態は理解しにくい。
▼戦争特需といったものが数十年間なくなって、自由主義経済の帰結としてデフレに至る。買い控えや消費の停滞によって行き着くところが「物余り」による経済停滞であるのだろうか。
▼輸出産業やその下請けの部品製造会社なども急激な発注の縮小で人員整理に励んでいる。契約社員など非正規社員の解約である。サブプライムは土地・住宅など形のあるものであるから問題はあるが救いようがあるという。問題は投資信託などの金融商品という。実態が把握できないため手がつけられない。
▼アメリカなどのカードローン購入の実態はどのようになっているのか。購入の規制は日本のそれとは異なっている。購入が先で支払いが後というのが慣例であっても、経済の流れが止まってしまっては大混乱に陥る。
▼今の日本に大事なことは地方からよみがえらせる施策ではないかと思われる。

▼ 2009年 5月 10日 ―勢いある東北楽天―
 皮肉もぐちもあり、クスッと笑いも誘う東北楽天・野村克也監督の「ぼやき」
▼今季当初には「勝った、勝った、また勝った」とぼやきというより珍しくはしゃぐ姿も見せている。先月29日には本拠地仙台で史上5人目となる監督通算1500勝を達成。選手代表の岩隈久志投手から花束を贈られ、2万の大観衆からも祝福を受け相好を崩す
▼監督に大記録を贈った立役者は開幕4試合連続完投勝利の田中将大投手。記念球を手渡す孝行息子に監督も笑顔を向ける。連休明けの7日夜にはテレビのインタビュー番組にも出演。ここでも野村節を聞かせた
▼楽天はこの日現在で18勝10敗。パ・リーグ首位の座を維持している心境を問われて「これは春の珍事。この春が長く続くといい」と、ぬか喜びはしないと自戒しつつ、勝ち続けて見せたいという意欲もにじませた
▼「初めの勝ちはうその勝ち」という有名な野村語録がある。秋までの長い戦いを展望すれば、初期の勝ち星など幻だというのが経験から導き出した訓戒なのだろう。確かに昨季の苦い記憶もよみがえる。「破竹の7連勝。球団創設以来初の首位」と沸きに沸いたのは昨年4月初旬のこと
▼それも瞬間風速的にしぼみ、08年の結果は5位。でも今年は違う。厚みが加わった投打もかみ合って勢いがある、とファンは口々に言う。パの投手部門で田中が4月の月間最優秀選手(MVP)に選ばれたのも勢いの象徴だろう。最長老監督の胴上げも夢見ながら声援を送り続けよう。

▼ 2009年 5月 9日 ―原敬が密書を託した男―
 先日、紫波町の平井邸を見学させて頂いた。岩手経済同友会観光産業部会が主催したものであったが、初めてであった。れんがの塀に囲まれて、建坪180坪ほどの豪華な木造建築で、中には閑静な庭が造られている。2階には大広間があって、お祝い事はその2階にお膳や料理が運ばれてにぎやかに催されたという。
▼菊の司酒造の平井烈現会長のご祝儀、披露宴はその邸宅で執り行われたという。仄(そく)聞も入っているが、披露宴は政界、企業経営者、地域の有力者、縁故親戚など3番座敷まで入れ替わりでにぎやかなものだったという。調理人やお手伝いさん、子供たちなども招待され数日間もかけたとか。
▼そもそも平井邸の落成祝いには当時の原敬総理大臣が列席し、大正10年夏に執り行われた。今から88年前のことだが、その3カ月後、大正10年の秋には東京駅のホームで暴漢に襲われるという悲劇が起きている。紫波町平井邸は原敬を見届けた最後の建物のように思われる。
▼原敬のことを長年書き続けてきた元記念館長田屋清氏がこのほど「原敬が密書を託した男・東洋のビール王」という著書を出版した。恵比寿ビールというか三井ビールの社長にあたるわけだが、馬越恭平という人物と原敬の関係である。
▼当方はその関係を存じていなかった。大正7年8月19日の原敬が総理大臣に推挙される前夜、政敵の寺内、山縣などの動きや政治の駆け引きなどが書き下ろされている。田屋さんもまだまだ健在である。

▼ 2009年 5月 8日 ―庶民革命掲げ名古屋新市長始動―
 昔なら井戸端会議。主婦らが水くみ場に集まっておしゃべりをする。井戸の消えた現代でも場を移し女性軍の議論は健在だ
▼わが家の前の路地も道端会議場となり、しばしば声高な会話が聞こえてくる。最近は政治をめぐる話題が多い。「麻生さんは軽いし小沢さんは重いし、どちらもいまいちね」とこれは両氏の「口」のことらしい。「軽い重いより国民のことを真剣に考えているのかどうかよね」という声もある
▼世襲にもかみつく。「麻生さんは何かとじいさんの吉田茂を持ち出すけれど、血筋をひけらかすのは力がない証拠よ」「世襲議員には言葉も庶民に響かない人が多いわね」。発散が続いて「むしろ地方の知事とかに本気の人が出てきたわね。名古屋市長に初当選した河村たかしさんも面白そう」と話題が飛ぶ
▼「庶民革命」を掲げ何かやりそうと期待が膨らむという。市長就任後も公用車は使わずバスで出勤している。そんな姿だけでなく主婦らは、公約である市民税10%減税(250億円)への取り組みにも関心を寄せる。河村市長は裏付けとしてむだ経費排除のほか総人件費10%削減を挙げる
▼退職者を不補充、職員の各種手当てや退職金、ボーナスも節減するという。率先し市長の現行給与年間2500万円を800万円に減らすことも明言。一方年収500万円以下を「庶民公務員」と呼びこの層は対象外にすると配慮もした
▼連休も返上。庶民の視線で始動した個性派市長に全国の道端からも目が注がれる。

▼ 2009年 5月 6日 ―子供の数を増やしたい―
 親から見ると、還暦や古希を迎えても子供は子供なのだろう。結構な高齢になっても親から名前を呼び捨てにされる。内心ではいつまでも子供ではないのですよ、と思いつつも親には逆らえないから親の言うことを聞いている。
▼今の親御さんたちは子供を呼び捨てにすることがまれになっている。学校の教師らも生徒を呼び捨てにすることがなくなったのではないか。
▼むしろ呼び捨てで教え子を呼ぶのに愛情を感じるように思うときさえもあるのは、当方がクラブ活動などで下の部員を呼び捨てていた時代に育ってきたためか。同窓会などでも呼び捨てに出会うときがある。
▼きのうは「こどもの日」であった。集落には老夫婦の家庭が多くなって、子供の姿が極端に少なくなっている。昨年1年間で生まれた日本人は109万2千人であるという。そして、死亡された方が114万3千人というから、差し引きで5万1千人の自然減となっている。
▼まさに少子化・高齢化の同時加速期に入っているのだが、人口問題研究所などの推計では20年、30年先の年齢構成の状況はもっと厳しくなると読んでいるようだ。
▼75歳以上の年齢構成が30年先では27%を占め、15歳未満が8%程度に下がると予測している。日本の社会保障制度の仕組みが崩れ、消費者、生産者や納税者が減って日本の成長力を阻害する。夫婦の理想の子供の数は2・48人と言われているが、まずは1・6人に回復させることが急がれているようだ。

▼ 2009年 5月 5日 ―子を尊重、母に感謝のこどもの日―
 葉桜、薫風の季節。きょうの「こどもの日」にちなんで、さつきの空を乱舞するこいのぼりも子供たちのたくましい成長を象徴していて頼もしい
▼「みづからの竿(さお)強打して鯉幟(こいのぼり)」(鷹羽狩行)の歌のように、支柱を暴れ打ちしているような光景を見ると元気すぎる坊やの顔も浮かんでくる。あるお母さんは小学5年の息子から「給付金いつ出るの?ぼくの分2万円をこっそり使わないでよ」とくぎを刺されたと笑う
▼何かと話題の定額給付金。すでに支給が進んでいる自治体もあるが大半はこれからだ。ゴールデンウイーク前から子供たちの間でも給付金は大きな関心事になっていた。子供1人分で2万円ももらえるとのビッグ情報は口から口へと流布
▼小学生でも給付の仕組みや、麻生総理の「さもしい」から「受け取る」のぶれまで熟知している子もいる。彼らがスピーカーとなり母にくぎ刺す風潮も生まれたのだろう。「こどもの人格を重んじ〜幸福をはかるとともに、母に感謝する」というのが、1948年の施行以来変わらぬ「こどもの日」の理念だ
▼だが結びの「母」はしばしば見落とされる。趣旨は不変でも世の動きは年々変化の連続。給付金で子が母をたしなめるひとこまも09年の一実相なのだろう。一方、経済危機のあおりで家計に苦しむ母に「子供の分もママが自由に使っていいよ」と、優しく理解を示す子も少なくない
▼尊重と感謝が響き合うかどうかは家庭の事情によるのだろう。

▼ 2009年 5月 4日 ―大型連休の楽しみ―
 大型連休真っ盛りである。ほとんどの人が2日から6日まで5日間の連続休暇を満喫しているのだろうが、客商売に従事しているところでは書き入れ時で体を休める暇もないぐらい多忙だろう。
▼観光地のホテルや飲食店、レジャー施設、交通機関などは休暇返上のところが多い。特に今年は高速道路の片道1千円乗り放題という割引制度が出来たから高速道利用の旅客流動が急激に増えるのではなかろうか。逆に、メキシコで発生した豚インフルエンザが世界の国々までまん延しているので、海外への脱出や大都市への旅行を差し控える傾向も一部には出たようだ。
▼景気の方もいまいちだから、自然豊かな山岳・温泉地や名所旧跡などが主力になるものと予測される。大勢としては経済的で無難な「安・近・短」というスタイルが目玉になるように思われるが、近場にもいいところがいっぱいある。意外に身近なところを訪れてみる機会は少ないものだ。
▼せっかく連続休暇がとれるので遠出する方や郷里に家族で帰るという方もあろう。連続休暇のことだけが頭にあって憲法記念日やみどりの日、こどもの日といった国民の祝日の意義が薄くなってしまうのだが、この機会に読書や趣味の方にたっぷり時間をかけてみようと思っている方もあろう。
▼連休の序盤を消化して、行楽地の客足に何か変化のようなものも感じる。年末年始やお盆休暇とは異なって自由な企画で初夏の休暇を満喫しようとしているのかもしれない。

▼ 2009年 5月 3日 ―深めたい憲法論議―
 このところ広く浅く雑読に流されているが結構楽しい。「憲法記念日」といえばその種の著作にのめり込む。こちらは雑然と読んでいても、著者が思いを込めて書いているのは伝わってくる
▼例えば憲法を人格のようにとらえて、「私は日本国憲法です」(島村力著・グラフ社)と告げられるとなるほどと思う。生まれは1946年11月3日。半年後の47年5月3日に歩み始め(施行)、それからの年数を見ても「憲法さん」はすでに還暦を超えたおじいさんだ
▼故障も出てきたから主治医である国民に診断してほしいと呼び掛ける著者の思いには、それもそうだなと納得もする。「よくわかる平成憲法講座」(西修著・TBSブリタニカ刊)を読むと、憲法は国家が身に着ける衣服に例えられるとのカール・レーベンシュタインという憲法学者の説が紹介されている
▼この場合は人格扱いされているのは憲法でなく国家の側だ。成長したり病んだり変化する日本国という身体。取り巻く環境も変容していく。「日本国さん」という人が身にまとう憲法という衣服が今の身の丈に合っていますかという視点だ
▼前者は老化を例に憲法の課題を教え、後者は国家レベルに合わせて装いを改めるよう述べ、改正草案まで添えている。07年5月に憲法改正へ向けた国民投票法が成立したまま、是非の論議は詰まっていない。前掲書は古い本だが例話などで指摘する課題は新鮮だ
▼金融危機、感染病と慌しいが憲法論議も忘れず深めていきたい。

▼ 2009年 5月 2日 ―新型インフルに十分な備えを―
 メキシコを中心に新型インフルエンザが世界各地に広がっている。4月30日現在でメキシコの死者数が176人にのぼる一方、アメリカでも犠牲者が出始めている。
▼感染者はメキシコで2498人、そのほかアメリカ91人、カナダ19人、ニュージーランド14人、スペイン10人、イギリス、ドイツ、イスラエル、コスタリカなど13カ国から出ている。世界保健機関(WHO)は29日、世界的大流行(パンデミック)が差し迫っているとして警戒水準、フェーズを現行4から最悪6の手前の「5」に引き上げた。
▼今回の新型インフルエンザは「豚インフルエンザ」とされている。風邪は万病のもとと昔から言われるが、動物から人間に感染するインフルエンザは怖い。
▼人間そのものが同根の動物であることを考えれば何も不思議ではないが、人間であれ、動物であれ、疫病にかかることを避けなければならない。4世紀に欧州で発生したペスト、いわゆる黒死病では人口の約30%が死亡したというからただごとではない。交通事故や戦争による死者を上回ってしまうのだが、今やグローバル化の時代とあって水際で防ごうとしても、疫病の方もグローバル化している。
▼医学がいかに発達してきているとはいえ、新型では瞬く間に感染してしまう。戦中戦後は法定伝染病対策に国も国民も熱心に取り組んだ記憶があるが、近年は薄れてきているように思われる。油断大敵、ここでしっかりと衛生思想を高めるようにしたい。

▼ 2009年 5月 1日 ―家読(うちどく)の勧め―

 東京郊外の親類宅に泊まったら、トイレの壁に「雨ニモマケズ」が張ってある
▼感心して話題にしたら、小学1年生になったばかりの男児が暗唱を始めたのには驚いた。岩手から嫁いだ母親が宮沢賢治ファンで、詩の全編を子守り歌替わりに聞かせているうち、1字1句も違わず覚えてしまったのだという
▼門前の小僧は習わぬ経典を読むというが、幼児の吸収力には目を見張るものがある。笑い話もあって彼が4歳の夏。母子で暗唱していたら裏山でカラスが大きな声で鳴き、同時にウグイスの鳴き声が響き渡った。詩が「野原の松の林の陰の」に差し掛かったときで、何を連想したのか男児は「カアカアカアー、ホーホケキョー」と続けてしまったという
▼以来、鳴き声挿入パターンが気に入ってしまい、母親は取り除くのに苦労したらしい。幼児は意味に関係なくリズムを好んで吸収するのだろうか。読み聞かせに熱心なこの一家は今春から父親も加わり、全国的に勧められている「家読(うちどく)」運動も始めた
▼童話でも小説でも親子が家で同じ本を回し読みし感想を語り合う試みだ。住宅の個室化で夫婦だけでなく子供の家庭内別居スタイルも指摘される昨今。同じ本をお父さんもお母さんも読み、子供を中心に語り合う姿はその対極になろう
▼この習慣を持続していく過程で子供の成長も確かめられるし課題も見えてこよう。「こどもの読書週間」(先月23日〜5月12日)を機に親子で相談し、スタートするのもいい。

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