2017年 5月の天窓


 2017年  5月  27日 ― 文春と新潮のけんか ―
 新聞とテレビが互いの紙面や画面を見て、「これは取材に行こう」と動くことはままある。既に公表済みのものを通してだから問題ない。他社の後追いで、ちときまり悪いことはあるが。
▼昔、昼のニュースで、珍しい花が咲いたとの放送に、「午後は時間が空いている」と滝沢の農家に急行したら、何やら見覚えが。ご主人が出てきて、「あんた去年も取材に来たっけじぇ。テレビ局あの時の記事見て来たった」と。自分でわれの後追いをするそこつぶりに、脂汗をかいたものだ。
▼し烈な報道合戦をやりあう「週刊新潮」と「週刊文春」で、えらいけんかだ。新潮の電車の中つり広告を、文春が手練手管で公表前に入手し、ライバルの先ダネをカンニングでパクっていたという。
▼新潮社には昨年、取材で行った。伝統ある出版社だけに静かで、あのすごい見出しの誌面を作っているとは、なかなか思えなかった。文春だって盛岡の作家、鈴木彦次郎に縁のある日本を代表する出版社。文壇においては、それぞれ本丸と天守閣のような存在なのだから、ペンの士道は守らねば。
▼文春は「言いがかり」と反論しているが、「春秋の筆法」の例えあり、本質的な不正でないと言い切れるか。こういうことではいつも他人をやり玉に挙げている分、しゅんとならぬよう慎重に。

 2017年  5月  26日 ― 一関のシイタケも復興 ―
 あの3・11大震災で福島第一原発事故が発生して以降、放射性物質の飛散は福島県境を越え岩手をはじめ東北全域に及ぶ
▼濃度は高く野山の山菜やキノコも汚染。一部の農作物や原乳なども基準を超え出荷停止となり、農家や酪農家が悲鳴を上げたことが忘れられない。原発事故から既に6年が過ぎ多くは過去形で停止は解除されているが、厳密にはまだ油断できない
▼今もなお、第一原発を起点に北へ350`超も離れた青森県から、同じく南西へ300`超離れた静岡県に至る広大な地域の市町村で、何らかの食品の出荷が制限されているのだ。そんな状況下で原木シイタケ栽培の「王国」とまで言われる本県の一関市では朗報が続く
▼政府は原発事故後は食品から1`当たり100ベクレル超の放射性物質が検出された場合は、関係自治体に出荷制限を指示している。原発から150`も離れた一関でも、発災1年後のシイタケの濃度は基準に抵触。全戸が出荷停止となる
▼それが長引き廃業者が出る一方、素材を汚染のない遠方から購入したり独自の除染を試みるなど努力が実り数値も改善。出荷再開者が相次ぐ。一昨年春の2戸をはじめ今春までに計28戸が出荷を可能にしている。県内他地域でも同様の動きが見られる
▼これも大震災からのうれしい復興の姿であろう。

 2017年  5月  25日 ― 川のあるまちの風景 ―
 この前の週末前後は盛岡も日中は真夏のような暑さだった。朝夕は春の名残を感じ、盛岡の川近くを通ると光る風に乗って柳絮(りゅうじょ)が舞うというのに
▼柳絮は柳の綿毛の付いた種子で春のもので外出から戻ると衣服に付いていることも。黄砂に閉口させられ次は柳絮と、春に咲く花の色と符合するかのよう
▼「春はあけぼの」が突出して有名な「枕草子」。清少納言は夏は夜がいいという。月やホタルの明かりも当時は明るいと感じたのだろう。とはいえ同時代の誰もが四季をそのように感じたとはいえまい。「枕草子」に情景と心象を風雅に表した清少納言は柳絮の才の一人だ
▼杜と水の都とも呼ぶ盛岡は三つの川が合流するそばに盛岡城の築城以来、川に寄り添って城下町が築かれた。盛岡のまちの重心は今日まで大差ない。市街地が拡大する中で緑を享受できるのは川のおかげもある。この時期、大きな川の川岸を見れば帯状に緑が連なり緑のカーテンと形容するのもうなづける。近年は外来種ハリエンジュ(ニセアカシア)の侵食が著しいが柳絮を見るとシロヤナギ健在なりと安心する
▼河川を見下ろす景観を見慣れているが川面からの景観は新鮮。6月の北上川に親しむイベントに向け市民組織の準備が進むと聞く。川面から風雅に盛岡を再発見しては。

 2017年  5月  24日 ― 机の中のはがきたち ―
 昔から幅も奥行きもあるスチール製の机を使っている。小引き出しのほか横幅の長い引き出しもあり重宝している
▼ただ事務用品のほか郵便物も含む種々の文書も、一時的置き場として入れるからたちまち雑然としてしまう。3カ月に1度は整理整頓をしているがその時点では、大半を不要品として処分する。保管が必要なものは小引き出しに置く
▼3日前の日曜日は整理整頓の日で同じく大半を処分したが、保管品の中で存在感を誇示しているように見えたのは「はがき」と「切手」だ。来月1日から現在52円のはがきを62円に値上げするという報道は知っていたが、該当はがきが引き出しの奥に控えていたことはその時まで失念していた
▼気付いた途端にはがきたちが「早く10円切手を貼って使ってぇ!」と、訴えているように感じてしまい取り出して机上に置く。確認するとはがきは17枚。切手は7円ものから80円ものまで各種あり10円切手は20枚あったから17枚をはがきに貼った
▼今月末までは52円のままでも使えるが、6月に新しい62円はがきを必要数購入。17枚と合わせ手書きの暑中見舞いに使うことにする。今回の値上げはメールなどの影響ではがき利用者が減少し人件費も増加。悪化した収支を改善する狙いがあるという。なお年賀はがきは52円に据え置かれる。

 2017年  5月  23日 ― 龍は昇っているのか ―
 「沈む太陽、昇る龍」。太陽は日本、龍は中国。この10年ほど欧米の論調は、アジアの日中逆転をそう表してきた。沈む太陽はその通り、今のわが国は午後の斜陽のもとにある。しかし昇る龍の方は、はたして本当か。
▼「一帯一路」で中国の盟主ぶりを示そうとしたAIIBの初日、北朝鮮のミサイルが空に昇り、習近平のメンツは丸つぶれ。唯一の衛星国なのに、もう平壌は北京に一目置いていないのだ。おとといもまただ。
▼もとは北朝鮮にとり中国は親、ソ連は祖父。赤い屋根のもと暮らしながら、いがみ合いばかりの家系で困りものだったが、中国にはソ連をしのぐ、あるステータスがあった。ぼろは着てても何とやら、偉大な東洋史が背景をなす思想、文化への世界の知識人の敬意だ。英語でソフトパワーと言う。
▼今の中国はどうか。内に拝金主義、外に軍国主義、歴史のマジックはもう消えた。だから金正恩にも親の威信が通じない。岩手から長年、日中友好に努めてきた側として残念だが、超大国化を目指すうち中国の失ったものは大きい。百階の超高層さえ建てれば、それでいいのか。
▼人権抑圧し、外国で強引に商売し、軍艦で東南アジアを脅し、実は龍は昇らず、もがいているのでは。だから世界の尊敬をぶちこわしにするような流儀は、やめちゃいなって。

 2017年  5月  22日 ― 深刻な沖縄の基地問題 ―
 沖縄は大戦末期には本土防衛を強いられ、上陸した米軍によって約9万4千人の県民が犠牲になる
▼戦後は米側の施政権下に置かれ道路も車両は右側通行と米国方式になり、日本本土は外国扱いで東京などに飛行機で行く時はパスポートが必要になる。青春時代に東京の同じ寮で暮らした沖縄出身の親友がいて、彼も那覇との往復のたびに怒りを募らせていた
▼その上に東西冷戦が過熱し米軍は旧ソ連や北朝鮮、中国などへの抑止力として、沖縄の軍事基地化を強めた。今やそれが日米安保下で反トランプ砲弾の標的になりかねないのだから残酷だ
▼顧みれば45年前の5月15日に日本復帰が実現。車は左側通行に戻り日本国内の旅行にパスポートは不要になる。あの時は友も高揚していた。だが基地は縮小も移転もままならない。米軍兵士らによる事件や事故も続発する
▼昨年4月28日夜には元米海兵隊員の男が、うるま市在住でウオーキング中の20歳の女性を暴行し殺害。恩納村の山林に遺棄する事件が起きた。一年後の先月29日には現場の山林で両親らが一周忌の法要を営む。父は娘の名を何度も呼び語り掛けた。「お父さんお母さんと一緒に帰ろうね」と。母は涙を拭い続けたという
▼現役引退で那覇に住む親友は「沖縄は今も深刻。政府は無慈悲すぎる」と電話をくれた。

 2017年  5月  21日 ― 政治トップとマスコミ ―
 日米両国の政治トップの発言に考えさせられる。安倍首相は憲法改正について「自民党総裁として」の見解を読売新聞のインタビューで紙上発表。トランプ大統領は記者会見の取りやめ可能性をツイッターでつぶやき、今度は不公平と不満を語った
▼安倍首相に関しては与党総裁イコール首相の立場で使い分けを世論が認めるのか。首相と党総裁の頭の中が違うとは思えず、国会答弁は逃げ口上に取られてもしかたがない。トランプ大統領に関しては気に入らないものを黙殺や全否定したがる偏執さで、国民第一ではなく自分第一の思考とも映る
▼明治維新以後から戦前の大政翼賛以前の新聞は特に三面記事など今でも読み物として面白い。講談調のテンポの良さや現代なら人権問題になるゴシップが多い。取り上げられた市井の人は気の毒だが、権力を持つ政治家らのスキャンダルはチェック機能として報道の使命だろう。黒岩涙香の「萬朝報」はプライバシーに及び人気を博した。売り上げのためもあったが政治家の資質は公私ともにかかわり、公人だ私人だという言い訳は通用しないということだろう
▼「萬朝報」は非戦論を唱えていたが転向した。トランプ大統領のつぶやきにホワイトハウス記者会は異議の声明を出した。国民の知る権利と権力の監視は譲れぬとの宣言だ。
  

 2017年  5月  20日 ― 眞子さま婚約内定のにぎわい ―
 秋篠宮さまが学習院大学の同窓で一歳下の川嶋紀子さまと結婚したのは、平成2年6月で24歳の時。婚約内定が報道されたのは前年8月で、朗報は列島を包み平成という新しい年号の日々に、明るい話題を広げたことを思い起こす
▼今、眼前ではご両親に習うように長女眞子さま婚約内定の報がにぎやかである。眞子さまはご両親を範としながらも自立の信念を持ち、大学も学習院女子高等科卒業を前に国際基督教大学の入試を受験。合格して高卒後に同大学に皇族としては初めて入学している
▼内定レベルで報道が駆け巡っている婚約のお相手は、法律事務所に勤務する小室圭さん(25)だ。彼は眞子さまが自らの意志で選んだ大学の同級生だという。互いに引き合うご縁なのだろう。公式発表を待ちこれから始まるお二人の人生が、幾久しくお幸せであるようお祈り申し上げたい
▼あの3・11大震災下ではご両親が被災3県各地を何度も慰問。惨状に合掌し被災者を励まされたことはよく知られている。当時学生だった眞子さまは夏休み期間に、身分を伏せボランティアとして被災地入りし特に子どもの世話をしている
▼発災年には本県の山田町と大槌町でも活動。子どもたちから親しく「お姉ちゃん」と呼ばれたという。同年秋の20歳誕生日会見ではその体験も語っている。

 2017年  5月  19日 ― ハリウッド俳優で特殊詐欺対策 ―
 特殊詐欺の被害が後を絶たない。ろくでない連中に対して積極的な対抗策を講じ、詐欺撃退の「特殊部隊」を編成してはどうか。
▼前期高齢者なら、まだ盛んな人が多い。公務員や警察のOB、金融や福祉の関係者、演劇経験者などを隊員に集める。オレオレ詐欺の電話が来たら、だまされたふりの黒子になって犯人をおびき出し、当局とタッグで取り締まる。ちとニュアンスは違うが、「サギをカラスと言いくるめる作戦」だ。
▼受話器の向こうにそんな部隊の影がちらつき、実効を上げれば、相当な抑止効果があるのでは。「爺メン75歳」なんて題名でテレビドラマ化し、詐欺の手口を紹介するとともに、カッコいいお年寄りの活劇として見せれば、高齢化社会の元気になる。
▼特殊部隊と言えば映画「ランボー」が思い浮かぶ。主演のスタローンも今年71歳の立派な高齢者。近年は米国でも特殊詐欺の件数と被害額が急増し、社会問題化しているという。この際、彼に一肌脱いで三枚目に徹してもらい、日米合作のキャンペーン映像ができないか。初めコミカルに、しめは詐欺の犯人たちに、しっかり報復する。
▼特殊詐欺はアジアまで広がりつつあるから、きっと世界で役に立つ。盛岡弁の吹き替えで、「詐欺の手口を知るべすちゃ」と、スタローンに言わせたら。

 2017年  5月  18日 ― 笠井元岩手県知事と民生委員制度 ―
 民生委員は半官半民で特に弱者のために、てきぱきと対応してくれる。この民生委員制度の淵源となる「済世顧問制度」は1917(大正6)年に岡山県で、当時の笠井信一県知事によって創設された。今年は100周年の佳節となる
▼知事が住民の選挙で選ばれるのは昭和22年からで、それ以前は旧内務省が選んだ官僚が出向の形で赴任していた。いわゆる官選知事で知事の転任もある。先の制度を岡山で具体化した笠井知事は岩手とも縁がある
▼若手官僚時代に岩手県警察部長に赴任。その後各地転任を経て1907(明治40)年に今度は岩手県知事に就任。6年余の在任中に民の暮らしの向上に尽力する。遺著「済世顧問制度乃精神」の中で岩手県知事時代に明治天皇から賜ったお歌を披露している
▼「県守(あがたもり)こゝろにかけよしづ(賤)かやのかまどの烟(けむり)たつやたゝずや」と詠まれたお歌は、貧しい民家のかまどの煙りの有無で、暮らしぶりを判断した仁徳天皇の故事に習い、県知事も心掛けるようにと諭されたのだろう
▼笠井は岡山知事時代にも大正天皇から貧民状況などを問われている。済世顧問制度着想の起点をこの時とする説もあるが、やはり当人の問題意識の推移からも、明治天皇のお歌を拝した岩手県知事時代と見るのが自然であろう。

 2017年  5月  17日 ― 田植えシーズン ―
 大型連休のにぎわいの中に二十四節気の「立夏」が過ぎ、五月晴れも増えて盛岡地方も田植えシーズンを迎えている
▼「みちのくの田植は寒し旅衣」は山口青邨の一句。青邨の田植えの句はいくつかあり、夏ではなく春も感じさせるものが他にも見られる。盛岡出身の青邨には、田植え期の故郷は田の水や風にまだ夏を感じられなかったのかもしれない。手植えの時代はかがんだ姿勢だけでなく気温や水温の低さも農家を疲れさせた
▼岩手のオリジナルブランド米として開発された「銀河のしずく」は昨年本格流通が始まり、食味ランキングで特A評価を得た。今年は作付けが拡大されるが、2年目は昨年の真新しさという宣伝効果が薄らぐため、真価が問われる勝負の年になるかもしれない。米の国内消費量が減る中、米どころでの新品種開発は続いており、うまい米のブランドとして定着させていくためにも重要な一年になろう
▼銀河のしずくは盛岡から北上までの辺りが好適地とされるが、今年は県南に最高級米品種のブランド米「金色の風」のデビューが控えている。岩手から2年続けて新ブランドが出るのは喜ばしいが、市場を奪い合わない戦略も必要だろう
▼どんなに自信のある品種でも天候に左右されるのが作物。日照時間、岩手なら気温に恵まれ冷夏は避けたい。

 2017年  5月  16日 ― 大船渡など東北に火力発電所建設 ―
 福島原発事故は原子力による発電の怖さを人々に焼き付けた
▼国は稼働基準を厳格にし国内原発の大半は動いていない。基準を満たす努力を重ね稼働を急ぐ動きもあるが、脱原発を期す試みもある。この場合は地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CО2)発生素材を、極力排除した手法で発電に挑んでいる
▼今や電気社会。電力の需要を満たす供給は容易ではないが木々の枝葉や間伐材、おがくずなど植物由来のエネルギー資源であるバイオマスを用いた発電も注目されている。植物は燃焼時にCO2を発生するが成長期には、ほぼ同量を吸収するというから無害とされる
▼清水建設が参画し森林資源活用事業を進める群馬県川場村ではこのほど、中核施設となる木質バイオマス発電所「森林(もり)の発電所」が完成。地元民有林で発生する間伐材などを燃料に発電を始めた
▼発電量は45キロワット時で村はこれを、相互協力協定を結ぶ東京都世田谷区の一般家庭40世帯へ送電している。小規模だが地方創生の輝かしい先駆例だろう
▼一方、政府は全国各地にバイオ燃料のほか石炭も使う火力発電所設置を決めた。東北では首都圏への売電も視野に、岩手の大船渡市をはじめ宮城・福島・秋田の4県に計14基が新設される。こちらはCO2削減という重荷を背負う事業となろう。

 2017年  5月  15日 ― 盛岡空襲と現代の危機 ―
 終戦の年の盛岡空襲の焼け跡の全貌を写真で初めて見た。焼夷弾と言えば何やらかび臭いが、別名ナパーム弾。
▼かつて圧倒的なB29に竹やりで立ち向かった式のこちらの話と、米国側の戦記では、かなり違う。B29は故障ばかりで爆弾の命中率は低く、日本は新型機で迎撃し、体当たりまでして撃墜にかかった。「空の要塞」といえど、荒天には木の葉のように墜落した。当時の米国は日本同様、空軍を持たず陸海軍の航空隊に分かれ、ライバルの空母機との激しい先陣争いもあった。
▼乏しい戦果に焦り、日本を効率よく焼き払おうとしたのがナパームだった。ベトナム戦争では米国の残虐性を際立たせ、世界の反戦運動を燃え立たせてしまったが。
▼またミサイルで米朝の緊張が高まっている。かつて米国は日本にわざと真珠湾をやらせて引きずり込んだとの陰謀論がある。もう真実は分からない。しかし相手に先に手を出させるたくらみに米国の教訓がもしあるなら、今度も早まるなかれ。北朝鮮も憎らしい日本軍だろうが、先に撃ったら負けとの戦訓は容れて、暴発するな。
▼そんな殺伐なリアリズムによる平和は悲しいが、互いに核を手に火ぶたを切ればナパームの比ではない。戦後72年。空襲なんて、やんたがったナハンと、やっと昔語りになったのだから。

 2017年  5月  14日 ― 大谷選手の復帰に期待 ―
 今季のパ・リーグは昨年日本一の日本ハムが下位。トップをいく楽天との差がどちらも好きというファンを悩ませている
▼当方も東北楽天と奥州市出身の大谷翔平選手が頑張る日本ハムの熱いファンだから、楽天をたたえハムに同情している。特に大谷選手が昨年の日本シリーズで右足首を痛め、治療が続いていることがチームに響いているので、彼の復活を待ちわびている
▼でも当座は責任感の強い彼の心の内を察したい。長引く欠場にどれほど心を痛め苦しんでいることか、と。大谷選手は今季初頭にも2度目のけがをしている。前のけがの治癒度合いから、打者出場が許可され4月8日のオリックス戦で打席に立ちゴロを打ってダッシュ。一塁ベースは踏んだが足に痛みを覚え途中交代
▼検査を受け「左脚肉離れ」と診断されたのだ。今は痛みも和らぎ球団の2軍施設でリハビリに励む。今月7日には戦線離脱後初のランニングをした。トレーナーと共に球場外野を往復したのだ。復帰の日を引き寄せているような気迫が伝わってくる
▼11日には7月に実施する「オールスター戦2017」の大綱が発表された。大綱にはけがなどで投手・野手の一方なら出場できる場合は、それを認めるという「大谷の二刀流」を想定した新規約が加えられている。今夏復帰に期待したい。
  

 2017年  5月  13日 ― 閉鎖統制国家の怖さ ―
 冷戦中にインドシナ半島の独立運動が続く頃、カンボジアの王国は米ソから支援されていたが、米国支援の軍部によるクーデターを契機に、内戦状態になった。その内乱で勢力を拡大し実権を握ったのがポル・ポト率いる左翼のクメール・ルージュだった
▼共産国家の中ソも対立して勢力図は複雑化。当時は各国ジャーナリストがベトナム戦争を取材していたが、混乱のカンボジアに渡った。ところが、カンボジアの不穏で不気味な雰囲気がジャーナリストの中にも伝わり、現実に何人も殉職や行方不明になった
▼青森県出身のカメラマン沢田教一さんも取材に入ったプノンペンの郊外で取材活動中に殺害された。沢田さんも不気味さを感じていたようで、その取材を最後に出国するつもりだったようだ
▼北朝鮮がミサイル試射などを繰り返す昨今、中ソの影響力が注目されている。偵察衛星などである程度の情報をつかめるようになったが権力者の本心や水面下の外交までは分からず、いまだ閉ざされた国だ
▼75年のポル・ポト政権樹立後、排他主義もあってカンボジアが世界の報道から消えた間の大虐殺が後年に事実と分かった。北朝鮮の国民生活も断片的、間接的にしか知り得ない。想像は及び安全保障へ不安も募る。事実を確認できないことが外交を難しくしている。

 2017年  5月  12日 ― 第1回働くパパママ川柳 ―
 近年は幼児を保育園に預け、家庭と職場と育児に神経を使いながら、懸命に頑張る若夫婦が増えている
▼オリックスグループはそんな世情を視野に入れ初の試みとして、今年年頭に第1回「働くパパママ川柳」を公募。1カ月という短い応募期間にもかかわらず、関心の高さの反映なのだろうが、全国から4万9623句が寄せられたという。先ごろは入賞作品を発表している
▼最高賞の大賞には「カバンにはパソコンスマホ紙おむつ」(女性・神奈川)と、働くママの慌ただしさを詠んだ句が選ばれた。わが子を保育園に送り出勤した際、通園バッグに入れるべき紙おむつを出勤用カバンに入れていたことに気付いた場面かもしれない
▼以下、県名などは省略し数句を紹介したい。「パパ育児一度は試す父の乳」は膨らみのない乳首で試すしぐさが笑いを誘うが、本人は真面目に試みたのであろうか。「パパ目線賞」を受けた句である
▼「欲しいのは子供と主婦をもう一人」と、働く母の条件付き願望を詠んだこの句は「ママ目線賞」を射止めている。2人目の主婦付きでという表現が面白い。それは本心なのだろう。疲れ果てる日常を詠む「すべりこむ会社に園にお布団に」も同賞を受けた
▼「駅に着き深呼吸してママになる」は優秀賞を受賞。結びの5文字に胸を打たれる。

 2017年  5月  11日 ― フランス大統領に贈る ―
 盛岡を訪れた著名なフランス人に、アラン・ドロンがいる。今はのれんを畳んだ料亭にお忍びで来て驚かせ、さっと姿を消したと言うから、名にし負う。もうひとりはカルロス・ゴーン。こちらは日産の経営者として、トップセールスに堂々乗り込んだ。
▼2004年のその時の紙面をめくれば、石割桜を見たがり、日産の再建について、「成功するかどうかは従業員のモチベーション。教育を受けているか、将来に明るい自信を持ち再建に参画しているか」ときっぱり。
▼日産が危機に瀕して仏ルノーと手を組んだ際、「そんなとこに助けてもらってどうするの」と経済界は不安がった。ルノーも欧州メーカーの弱者とみられていたから。しかしゴーン氏は外資の力で手腕を振るい、日産復活にご恩の人となった。転んでもただで起きぬのがフランス人。ライバル英独に何度かひざを屈し、植民地を失って今なお、主要国であり続ける。
▼歴代最年少の仏大統領となったエマニュエル・マクロン氏。中道路線で離脱派を下し、英国抜きのEU再建のためにも各国を安堵(あんど)させた。先日のコラムでは、30代で無理やり指導者になってうんぬんと某国をくさしたが、歴史あるフランスなら39歳の大統領はすごい。
▼まあ苦労は買ってでも。若きマクロン氏に日本の格言を贈ろう。

 2017年  5月  10日 ― 大型連休廃止論浮上 ―
 大型連休も終わったが、今年も浮上した「ゴールデンウイーク」廃止論が気になる
▼英国人で日本在留27年の文化財補修会社社長デービッド・アトキンソン氏が、15年6月に刊行した「新・観光立国論」(東洋経済新報社)が火を付けた視点だ。外国人観光客対応など日本の観光事業の課題を浮き彫りにし、外国人が喜び日本の観光業界も潤う改善策を提唱している
▼著者は移民政策もままならない日本にも秘策があるとし、それは外国人観光客という名の「短期移民」だと指摘。彼らを招き満足させお金を落としてもらうことに力を入れるべきと言う
▼さらに日本は観光立国に欠かせない気候・自然・文化・食事の4条件を満たしているが、訪日客数が1300万人程度(2014年)とは何と少ないことかと驚く。「おもてなし」アピールも誘客につながらず的外れと見る。日本が潜在的には8200万人の外人観光客招致力を持っていることも解説
▼それを2030年までに実現するための多くの手法を提示する。その一つである大型連休廃止の理由を著者は《大渋滞や割高料金など利用者目線が欠落。祝日が多く有休取得率を低くする。業者側にも閑散期との差異の大きさという課題がある》と述べている
▼その趣旨は分かるのだが、経験した大型連休の味は捨てがたい。

 2017年  5月  9日 ― スルメイカも高級魚になるのか ―
 久しぶりに青森県八戸市に行き、昨年から話題となっているスルメイカの不漁を実感した
▼八戸はイカの水揚げ日本一で、行けば必ず刺し身を楽しむか土産に大量買うことが常だったが、今回は諦めた。料理屋にも市場にもあるにはある。高級魚に比べれば値段は下がるものの、過去の相場を思うといかんともしがたい
▼イワシの脂が少ない時期の5月、手頃でしかもうまい刺し身といえばイカとなるが、古い横町の止まり木に座って、おかみさんに尋ねるとイカがさっぱり獲れないと嘆き節も聞かれた
▼全国の水揚げは昨年4万dほど、数年前は20万d前後あったのが4分の1になった。この水揚げ減少はいくつもの要因が重なって深刻度を増しているようだ。東シナ海での海水温下降傾向、日本海側での外国船籍の違法操業による乱獲などが要因として推測されている
▼イカの不漁は初めてではなく、海水温の上昇と下降の周期に符合しているといわれる。待てば海路の日和ありと変動によって日本沿岸のイカも増えると期待もするが、少ない中で違法操業と乱獲により根絶やしにされてはかなわない
▼阿久悠さんが作詞し八代亜紀さんが歌った不朽の名曲「舟歌」の一節「肴(さかな)はあぶったイカでいい」の機微が伝わらぬ、高級魚になる時代が来るのではと心配になる。

 2017年  5月  7日 ― 作家・山下澄人氏の破天荒 ―
 劇作家で俳優の山下澄人さんは、昨年下半期の第156回芥川賞を受賞した
▼この人は倉本聰さんが脚本家や俳優の養成のため、1984年に開設した富良野塾の2期生でもある。2年間、仲間と共同生活をしながら倉本さんの指導を受けたのだ。受賞作「しんせかい」はその塾生活をモデルにしている
▼破天荒な性分らしく小説を書くときも事前に題名も内容も決めず、ひらめいた言葉を1行目に書きそこから物語を展開していくという。受賞作は年頭に読んだがテンポのいい会話も多く、筋の通った面白さがある。富良野塾は10年4月に閉塾したが「しんせかい」は今後もこの塾をリアルに伝えていくことだろう
▼先日、この人が月刊「潮」5月号に載せたエッセーを読んだ。重篤な人が見せる不可思議な命の位置を描く実話だ。自身に書くことを勧めてくれ、芥川賞受賞も喜んでくれた恩人が脳出血で倒れ入院。見舞いに行く。機器につながれ横たわるその人に顔を近づけて、大きな声で話し掛ける
▼反応かどうかは分からないがかすかに目があく。近くにいた霊感のある人が「彼はもうここにはいない。この星と月との間ぐらいにいる」と言ったという。自身はそれを眼前の寝姿から説得力のある本当の話と受け止める
▼短いエッセーで深い文学的テーマを提示している。

 2017年  5月  6日 ― ミサイルより北にこいのぼり ―
 北朝鮮のミサイルがいつも騒ぎになり、また秋田や岩手の方に飛んでこないか不安だ。米ロ中の核大国も廃絶してほしいけど、北朝鮮の怖さは、金一族が原爆やミサイルを私物化していること。日本と違った意味で「核家族化」しているのかもしれないが、危機解決のカギも、案外そこにあるのでは。
▼一族の初代の金日成は、レーニンや毛沢東ら20世紀を動かした巨魁にあらず、ソ連が担いで抗日の英雄に祭り上げた一将校というのが、現代史の定説だ。30代で北朝鮮を率いて独裁者になり、いわゆる「赤い貴族」の暮らしぶりで、世襲の息子や孫はあんなやからに。
▼だから3代続きで周囲にまともな年長者がおらぬ家なのだろう。金正恩にも、「やめよ」と、祖父の威厳で言い聞かせる人がいればなあと思えば、適任者はいる。ゴルバチョフ元ソ連大統領だ。
▼イデオロギーの虚実をのみ込み、ロシア人として欧米と気脈を通じ、知日家で、中国も敬意を払うノーベル平和賞の人。厳重な護衛付きで平壌に赴き、愚行を戒める説教をしてくれたなら、世界がゴルビーに感謝するだろう。
▼北朝鮮の思想的な本家筋の国がなぜ行き詰まり、崩壊したか教われば将軍サマも改心しよう。やっぱり「ソ父」の言いつけには逆らえぬと。北の空にミサイルより、こいのぼりを贈ろう。
  

 2017年  5月  5日 ― 「こどもの日」と端午 ―
 「こどもの日」を迎えると、わが家が居住する地域は年配者が多いせいか、感覚が昔風だなあと思う
▼祝日法によるとこの日は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる日」とされ、男子も女子も全てのこどもを対象にした祝日である。ところが当地では3月の女児向け「桃の節句」のように、きょう5日は男児対象の「端午の節句」と呼ぶ人が多い
▼3月にはひな人形を飾り「あかりをつけましょ」と「うれしいひなまつり」を歌い、5月にはかぶとを飾り、掲げた「こいのぼり」を「屋根より高い」と歌う。もちろん「こどもの日」も承知で祖父として孫にプレゼントするときなどは「こどもの日のお祝いだよ」と言って渡す
▼それでも「端午の節句」が自身の幼少期の思い出とともに、脳に刻まれているのだろう。中学生以上ぐらいの孫には端午の節句の由来などを語り聞かせたりする。移転してきたよそ者の当方でも世代が近いせいか、地元古老の心情はよく分かる
▼日本古代には「五月忌み」と呼ぶ身を清める風習があり、これが5月節句を意味する端午にショウブを門に掛けるなどして、邪気払いをする中国伝来の行事と結合。長い歴史を経て男子の健やかな成長を願う端午の節句として現在に至っている
▼「こどもの日」の裏面に端午は伏せているのだろう。
  

 2017年  5月  4日 ― 「みどりの日」に森への関心を ―
 おとぎ話の桃太郎でおじいさんが山に行ったのは柴刈りで芝ではありません、とは岩手大農学部の山本信次准教授が、森林教室など森案内の際によく語る一節
▼柴とは低木の木のことで、たき付けにも使われる燃料として古くから人の生活の身近にあった。柴は里山から調達される。樹齢100年近くの木々ではなく、短いサイクルで更新される雑木林の恵み。雑木林の里山から恵みを授かっているのは人だけではない。里山は人の手が適度に入り大小動物や昆虫、微生物など、多様な生態系が構成される。原生林とは異なる命の豊かさを持っている
▼適度に人の手が入った雑木林を散策するのは心地よい。春の林間には白や黄の花が多く咲く。しかし、放置された雑木林は日差しも注ぎにくくて薄暗く、生息できる野草も減って、すがすがしさとは縁遠い
▼林業のための人工林も含め森林管理が後退したことは、クマの出没範囲やニホンジカの増加や生息拡大とも無縁には思えない。輸入木材から始まったマツクイムシ、広葉樹を襲うナラ枯れは森林県岩手でも被害が深刻。公費を投じた防止対策は重要だが、多くの人々の森林資源の活用など森への理解も欠かせない
▼心身の健康に訪れる人の増えている山が病気では恵みも望めない。「みどりの日」に森の健康を考えたい。

 2017年  5月  3日 ― 70年の平和さらに維持を ―
 歴史を顧みると明治から昭和に至る大日本帝国憲法の時代は、日本が絡む戦争が相次いでいる
▼同憲法は1890(明治23)年の施行で敗戦後の1947(昭和22年)5月3日に、新しい日本国憲法が施行されるまで57年間、国の最高法規として役目を果たす。その57年間に日清・日露戦争から第2次世界大戦に至るまで6度も大戦争が起きているのだ
▼最後の大戦では原爆投下をはじめ空襲などで、多くの国民が地獄を味わう。戦場となったアジア諸国などでは日本軍が現地住民に癒えぬ苦痛を与えてしまう。そんな経緯から日本人の誰もが《戦争ほど恐ろしいものはない》と痛感したことだろう
▼敗戦後に日本政府は連合国首脳の素案を参考にしつつも、日本らしく新憲法の理念と大綱を練り上げ「戦争放棄」条項も織り込んだ日本国憲法を、70年前のきょう5・3に施行させた
▼70歳の人ならあちこち故障も出るが憲法にも「ここは治療を」と改正を急ぐ党派もある。環境条項を加える程度なら異論はないだろう。だが戦争放棄を誓う9条を改変し軍隊という強い備えを持つ案は憲法の魂を抜くことになろう
▼「70年の平和」をさらに持続させたい。そのために安倍政権は北朝鮮のごう慢なトップなど感服させてしまう対話外交の達人をそろえ、平和維持の道を開いてほしい。

 2017年  5月  2日 ― 失言の構造を探る ―
 自民党の今村雅弘氏が、東日本大震災を「東北で良かった」と失言して復興大臣を辞任した。岩泉町の台風10号長靴問題で復興政務官を辞めた務台俊介氏といい、かかる舌禍は今に始まったことではないが、なぜ起こるのか。
▼まず政治家である以上、原稿棒読みでない、含蓄ある話をせねばと思うのだろう。次に人間的な幅を見せようと、気の利いたつもりの警句やジョークを混ぜたがる。ところが書き言葉で考えた内容は、話し言葉にうまく出てこない。論法が乱れたり、決めぜりふを忘れたりしているうち、思わず不用意な単語がポロリ。
▼その場にはマスコミや一般の聴衆がいる。彼らは演説のその部分を差別的、高圧的な文脈で聞き取り、話の後で追及する。本人は初めて失言に気付き、「本意でない」「誤解」などと弁解しても遅い。党へのダメージを恐れる周囲の圧力に、辞任する羽目になる。
▼これまでも今村氏は記者を怒鳴ったり、原発被害に苦しむ福島県をいじめるような発言をして、感情的に本音をぶちまける性格なのかもしれない。すると、何でそういう人にそんなポストを与えたのか、安倍総理の任命責任と自民党の体質が問われる。
▼今村氏も務台氏も、復興と名の付く役回りにしては不都合な発言が、被災地に不幸だった。後任に期待する。

 2017年  5月  1日 ― 「♯東北でよかった」ネット投稿 ―
 葉桜が5月の薫風にそよぐさわやかなシーズンの到来である。先月下旬からツイッター(つぶやき)と呼ぶネット上の短文投稿コーナーが、前復興大臣の暴言を逆手に取ったつぶやきでにぎわい、心までさわやかにしてくれる
▼岩手関連の投稿では「北上展勝地、2qに約1万本の桜並木見事です。おいでよ岩手!♯東北でよかった」が桜並木の写真を添えて目を引く。前大臣は震災発生が「東北でよかった」と放言したが、このコーナーでは本来の意味で用い「♯」を付けて検索語にしている
▼久慈の北三陸「あまちゃん」観光推進協議会は「みんなでがんばっぺ!」と書いた鉄道枕木の写真を投稿。「東北はみんな同じ気持ちでいます。それは今でもこれからも」と書き添えている。「私が生まれ育った場所が♯東北でよかった」と投稿したのは、一関市出身の女優小松彩夏さん
▼一方、昨年大地震があった熊本からの投稿者は、以前は「東北被災者かわいそう」と思っていたが、今度は私たちがまさかの被災者だと痛感。東北からの救援車両に「5年前の恩返し」とあり涙が出たよと書き「♯東北でよかった♯熊本でよかった」と結んでいる
▼達増県知事も投稿し一連のつぶやきへの所感を述べ、「♯東北でよかった」に日本社会の豊かな可能性を実感すると総括している。

2017年 4月の天窓へ