2019年2月の天窓


 2019年  2月 18日  ― 画家堀文子さんの死生観 ―
 「わたしの一生も、いよいよ終わりに近づいて参りまして…」。先ごろ100歳で亡くなられた画家堀文子さんの99年の画文集「時の刻印」巻頭の書きだし。18年生まれの堀さん81歳の胸中だ
▼「山の獣でも草木も…生と死を分けながら生きているんですよ」と文明に頼った人間からではなく、自然界に死生観を感じ取っていた
▼さまざまな出典の文章に触れられるこの本の中で堀さんの母親が98歳で死去されたと知った。ご長寿となった堀さんには20年前の頃、実は一生の終わりがまだ遠くにあった。達観すら漂わせたが、若輩が目を見張る行動力は決して余生ではなかった
▼画文集掲載の堀さんのスナップやポートレートは81歳でヒマラヤの麓、といっても高地のネパールを取材旅行した折の撮影。カメラマン岩間幸司さんから同行後にパワフルさを力説されてから気になる存在となった。死去直後に話した際、岩間さんは無念の表情だったがSNSでも追悼。「モノを作る人間は都会に住んでは駄目。酸欠になるわよ」と胸に刻むのは堀さんからの教え
▼「冷え枯れた森の草木に老残はない。それぞれの枯姿には、華やいだ色香さえ漂っている。生ま生ましさを洗い落とした、静かな安らぎを見るのである」と堀さん。特にも鳥や草木の絵画に生死を包含した堀さんの思いを探す。

 2019年  2月 17日  ― 合掌土偶の祈り ―
 青森県八戸市の是川(風張まき)遺跡から両手を合わせたポーズの合掌土偶が出土したのは平成元(1989)年のこと。縄文時代後期後半とみられる集落の竪穴(たてあな)住居跡に長く眠っていた
▼縄文時代は由来となる縄文土器が作られた時代だが、信仰心の伝わる土偶が作られた時代でもある。狩猟生活で関わりの深かった動物土偶の写実性に目を見張る一方、ヒト(女性)を原型としたとみられる、いわゆる土偶は体の部位をデフォルメして現代人の想像力を刺激する。縄文ロマンをかきたてる一つが土偶だ
▼土偶は西日本方面から次第に作られなくなり、縄文時代の最後まで作られたのが東北の地となっている。ゆえに造形も時代を重ね成熟していったのだろう。古墳時代の埴輪(はにわ)に比べると凹凸による複雑さに後期の縄文人の執念や執着を思わずにはいられない
▼土偶で最も有名なのは遮光器土偶ではなかろうか。現つがる市の亀ケ岡遺跡出土の遮光器土偶は代表格だが、盛岡市の手代森遺跡出土の遮光器土偶も丈31aでベンガラが塗られていた
▼岩手など4道県の「北海道・北東北の縄文遺跡群」はユネスコの世界文化遺産登録を目指している。国内推薦候補は19年度、同遺跡群のみが審査対象となる見込みとなった。選定へ合掌土偶の祈りの手を借りたい。

 2019年  2月 16日  ― 福祉バンク大市での攻防 ―
 盛岡市民福祉バンクは故・馬場勝彦氏が創設し、市民から寄せられた品物を手入れして販売している。毎年2月の大市で、蔵出しの中古品を一気に放出する。
▼リサイクル業界にとっては初売り。毎年、初日は会場のデパートの入り口にお客さんが開店前から詰め掛けエレベーター、エスカレーター、階段のどれなら売り場に早く到着できるか作戦を練る。会場に着くと古着、雑貨、古本など目当てのコーナーに血相を変え、同好のライバルとし烈な競争だ。
▼ある年、初日がたまたま休みだったので、自分もその列に並び、中古レコードのワゴンに群がった。テレビ局の取材が来た。「すごい勢いでレコードをめくっています!」と実況中継を始めた。「どんな音楽が好きなんですか」などとマイクを向けていたが、皆さんそれどころではない。こういうときは取材も大変。
▼顔見知りのアナウンサーだったので見かねて、「この人たち今、命懸けてるんだから、もうちょっと後で質問したら」とたしなめた。アナはぼうぜんとして聞き返してきた。「どうしてレコードに命を懸けるんですか…」
▼どうしてと聞かれても答えようがない。そうこうしているうち蔵出しの名盤珍盤が次々ライバルの手に…毎年繰り広げられる福祉バンク大市内蔵助の討ち入りの一幕。ななっくで18日まで。
  

 2019年  2月 15日  ― 池江璃花子さんの早期完治望む ―
 プロ野球の横浜、近鉄で投手として活躍した故盛田幸妃さん。現役の28歳で脳腫瘍手術はショッキングだった
▼現役復帰は難しいという最初の医師の見立てにも、不屈の精神でリハビリ。翌99年に奇跡の復活を遂げたときには拍手を送った。01年にはオールスターにファン投票で選出され、近鉄のリーグ優勝に貢献。カムバック賞が贈られた
▼現役日本人女子最強のスイマー池江璃花子さんが自ら白血病を公表したのも衝撃だった。昨年の国際大会での大活躍からさらに成長し来年の東京五輪の競泳エースとして出場する日を疑わなかっただけに第一報に絶句した
▼現役アスリートは大けがの危険性と背中合わせかもしれないが、鍛えた肉体が大病に襲われるのは簡単には想像が付かない。おそらく池江選手もなぜと思っただろう。白血病の発症は年齢に関係ないのが現実だ。でも忘れてならないのは、今や白血病は治療で完治する可能性が高い医療事情。18歳の高校生が診断から短期間で現実を受け止め公表した並々ならぬ精神力に恐れ入る
▼他でもない東京開催の五輪を控え出場をと急く気持ちも出てくるだろう。この公表が病気を克服して競技に復活する姿を見てくれという宣言と言わずして何か。だが、何より完治して女の子の明るい笑顔を見せてくれる日を待ちたい。

 2019年  2月 14日  ― 堺屋文学の弥栄 ―
 立原道造や太宰治を連載すれば、「文学に詳しいんですか」と聞かれる。実は漱石、鴎外、藤村とか、めんどくさくてあまり読んでません。古すぎて退屈だし。
▼昔、愛読したのは「日本沈没」(小松左京)、「ソ連軍日本上陸」(久留島竜夫)、「油断!」(堺屋太一)といった近未来予測小説。よく堺屋さんの「団塊の世代」の文庫本を学生服のポケットに入れ、作品から雑多な知識をこっそり拝借したものだ。その堺屋さんが亡くなった。
▼県立図書館の追悼コーナーに著作がそろっていた。昨年は堺屋さんを書き、「読めば勉強になるが、予測の方はさっぱり」なんて失礼を申し上げた。しかし著作を眺め、改めて分かったのは、当たる当たらぬも八卦の大予言でなく、堺屋さんが偉大な文明論者だったこと。
▼いわゆる全共闘世代の盛衰を描いても、大阪万博を企てた霞が関出身の作家の文体には、少壮に左がかって転んだ思想のかげりはない。純文学にもあらず、その手のインテリは読まなかったろう。しかし堺屋文学は時代物も現代物も常に世の行く末を案じ、三島や高橋和巳などとは趣の違う憂国があった。
▼訃報に接したのは平成最後の建国記念日。堺屋堺屋と繰り返せばそこに弥栄(いやさか)あり。次の時代の日本の復活を予測して逝かれたのなら、それを読みたかった。

 2019年  2月 13日  ― 主従関係変える難しさ ―
 千葉県野田市の小学4年生女児が死亡し、両親が傷害容疑で逮捕された事件は児童相談所の対応が問題視されている。たしかに少女の命を守る手立てが相談所にもあったはずという印象だ
▼DVや虐待から保護され、暴力加害者から隔離されて生活するケースは少なくない。だが、痛ましい事件が幾度となく起きているのが現実。巧妙な虚実を見抜けず、暴力の再発を許し、死亡という最悪の結末を迎えたのが今回の事件だ。DV被害者を守るため加害者に住所を教えず生活の場を設けることや施設への入所措置などを取りながら、居場所を公的機関が加害者に漏らすケースもある
▼親子や夫婦といった家族の心的なつながりの中で生じる暴力は、生活の中心となる家庭内となるため外部に分かりにくい。常態化で主従関係がより強く意識に刷り込まれ、ますます抵抗できなくのではないか。大人と幼子となれば主従関係の逆転は不可能だ
▼救済すべき機関は、できるなら暴力がなく家族一緒に暮らせるようになればという意識があるのだろう。だが、いったん固まった力による服従の構図を改められるのは困難なことは自明のはず。暴力癖≠ェなくなるのも難しいだろう。一度、隔離保護した被害者を返すのは例外中の例外くらいの原則を持たなければならないかもしれぬ。

 2019年  2月 11日  ― 石牟礼道子さん一周忌 ―
 四大公害病をはじめ日本の公害は義務教育で習った。一方で太平洋ベルト地帯という工業地帯も教えられた
▼四大公害病の深刻さを思い知ったのは後年、写真家桑原史成さんの水俣の写真を目にして。遅れて、きのう一周忌だった石牟礼道子さんの「苦海浄土」で水俣の現実を突きつけられた
▼同著には「水俣病の死者たちの大部分が、紀元前二世紀末の漢の、まるで戚夫人が受けたと同じ経緯をたどって、いわれなき非業の死を遂げ、生きのこっているではないか」「私の故郷にいまだに立ち迷っている死霊や生霊の言葉を階級の言語と心得ている私は…近代への呪術師とならねばならぬ」と書かれる。水俣病は最初の患者発見から10年以上たって国に公害病と認定され、抜本治療のない患者が存命の今も続く長期にわたる問題だ
▼東日本大震災直後に人間国宝の染色家志村ふくみさんとの間で始まった往復書簡を元に編まれた本「遺言」に載せられた石牟礼さんの詩「花を奉る」は「春風萌(きざ)すといえども われら人類の劫塵(ごうじん)いまや累(かさ)なりて 三界いわん方なく昏(くら)し」と始まる。原発事故の被害が水俣病と重なった。被害との闘いは長いと予想され、範囲や程度も想定に過ぎないと察知していた。1カ月後、大震災から8年を迎える。

 2019年  2月 10日  ― ポスターのスターダム ―
 若い頃インディーズ系のロックバンドを東京から呼び盛岡でライブさせた。仕事は印刷工だったからポスターは自分のデザインで刷った。レコードを自主制作するたぐいの妙ちくりんな音のバンドが多かったので、ライブのタイトルを「ゲテモノ大行進」なんぞ銘打って。
▼そんなポスターを貼りに街を歩いても、「くだらない」とよく怒られた。そういや自分も大通のチーマー・コギャルがどうこう偉そうに言えません。30数年前の話ですが、変なポスターをどごだり貼ってご迷惑おかけした皆さん、この場を借りておわびします。
▼あるとき気付いた。頑張ってポスターを貼って歩いたときの方が観客の動員が少ない。バンド自体の人気にもよるし、デザインがひどかったのかもしれないが。ただポスター貼りはそれ自体に達成感があり、もう成功した気になってしまう。当日まで必死に前売り券をさばく気がしぼむのだ。
▼ちまたに政治的なポスターが増え、盛岡市の屋外広告物条例との関わりで論議に。自分の昔のあほなポスターと違い、作り手の真剣味が伝わるが、皆さんなかなかイケメンなので、どこかのスターと思って見る人も多い。
▼やはり市民のリーダーを目指すなら決まりに従って。政界のスターダム目指し、ポスターはしかるべきとき貼りましょう。

 2019年  2月  9日  ― 「この道」の啄木と光太郎 ―
 北原白秋と山田耕筰をドラマ化した映画「この道」に、石川啄木と高村光太郎が出てくる。筋の上では端役だが、最近の邦画で、あんないきの良い2人の姿を見ることができるとはちょっと得した気分だ。啄木は近藤フクさん、光太郎は伊嵜允則さん演じる。「北原は希代の女たらしだからねえ」「いーしかわー!」なんてやりとりで、明治のはつらつを描く。
▼「赤い鳥」の鈴木三重吉が白秋・耕筰コンビ生みの親。白秋は紫波町出身「たきび」作詞の巽聖歌の師。耕筰は岩手医大や岩手高、盛岡工高の校歌も作曲し、時代に五線譜を引いた。
▼「お前が安請け負いしてくるから」となじる白秋に、「お前だって頼まれればうれしがるくせに」とやり返す耕筰。いつも感激、ときに衝突しながら詩歌は溶け合っていく。童謡から校歌、社歌、CMソングまで手掛けるうち軍歌の普及など、ずるずる時局に便乗してしまう。
▼白秋は敗戦を待たず病没。相方を失った耕筰は戦後、巨匠にまつり上げられ喪失感に苦しみ、「あのばかが死んでから、私はいい曲を書けていない」と涙に暮れる。
▼恋愛にルーズな才人の白秋と、たたき上げエリートの耕筰が組んつほぐれつ、あまたの国民歌曲を紡ぎ出す。好み違いの2人の奇跡を描いた「この道」。中劇では14日まで上映している。
  

 2019年  2月  8日  ― タブレットは時代の要請? ―
 四半世紀ほど前、学習指導要領改訂でパソコン(PC)が導入される中学校教育の現場を取材した。本格実施前の先行試行の段階、コンピューター演習室には液晶前のディスプレーの大きなPCが1学級の人数分か半数、設置された
▼教える側の教員にそれこそ試行錯誤の苦労があった。教員は知識があり操作できる人材が起用されたが、当時は少数派。操作技術とともに前例≠フ少ないPC教育を生徒にどう教えるか、導入期限の決まっている中で先送りはできない問題だった
▼今や小学校でも児童がPCを操作する。学校のホームページ作成に児童や生徒が関わっている学校も少なくないはずだ。もはやPC操作の基礎を学校で教える必要性すら薄れているかもしれない
▼特別な教科以外の授業は印刷された教科書を使い、ノートに直筆するスタイルは変わらない。だが、先生たちがPCを用いて授業する機会も増えてきた。機能性あるノート型はもちろん、さらに携帯しやすいタブレットも使われている
▼岩手県議会は改革の一環としてタブレット端末導入を2年余り検討の末、改選後の試行的導入の結論が出そうだ
▼課題は当然あるが、まずは使い始めて一つずつ解決していけばいいのでは。国会議員も前例ないと一蹴するのではなく導入の道を開く前向きさが見たい。

 2019年  2月  7日  ― 小林陵侑選手W杯勝利2桁に ―
 女子テニスの大坂なおみ選手ばりの躍進で県民のみならず国内ファンを喜ばせているノルディックジャンプの小林陵侑選手(八幡平市出身)。今季のW杯10勝目に王手をかけてから足踏みしていたが、6戦ぶりの勝利で日本人男子の歴代単独3位になった
▼舞台はドイツ。なじみのラージヒルよりはるかに飛距離が出るフライングヒルのジャンプ台。2本とも不利な追い風の中、2本目は234bの飛距離をマークし勝利をたぐり寄せた。個人戦これまで18戦中6連勝を含む10勝と勝率5割越え。W杯勝利が今季初めてとは思えない急成長。およそ1年前の平昌五輪で日本男子チームで最も成績の良かった小林選手だったが、当時は表彰台に登るのはまだ難しいだろうとみていた
▼今季の飛躍は同じチームのレジェンド葛西紀明選手の指導も大きいと思うが、夏のトレーニングにおける努力が素質の開花につながったのだろう。W杯の歴代1位は葛西選手の17勝。このまま成長し経験を積めば年齢を考えても葛西選手を抜き、さらに更新し続けると期待される
▼進化の先には25歳で巡ってくる22年の北京五輪が楽しみになる。まずは20日にオーストリアで開幕の世界選手権。五輪に次ぐ大舞台に向け10勝目で視界良好≠ニなったか。世界王者にテイクオフしてもらいたい。

 2019年  2月  6日  ― 防犯カメラに姿勢を上げて ―
 盛岡市の大通商店街振興組合が防犯カメラ12台を設置し、治安や交通安全に役立てる。昨年は強盗や看板を壊すなど大通に残念な事件が起きた。今はマナーが良くなったと安心していたのに。
▼20年ほど前いわゆる「チーマー・コギャル」時代から、夜の大通のムードがひどく悪化した。県議会で議員たちが、「県都の目抜き通りがあれでは」と問題視し、当局に対応を求めた。それを取材した原稿をデスクに出したとき、議員の話を「若者がたむろして気勢を上げ」と書き直したので「違う」と言った。議員は「若者がたむろして奇声を上げ」と不快感を示していたから。
▼「エイ!エイ!オー」と気勢を上げるなら青春らしい。しかし通行人を見れば「ひょえ〜」などと奇声を上げて威嚇する怪しい風体がけしからんと。当然、盛岡市民も眉をひそめていた。
▼そんな彼らも不惑の声を聞き、真面目に勤め、人の親になっているなら治安の改善に協力して。どうも最近の盛り場の犯罪は意味不明の落書きをスプレーであちこちとか、当時より気味悪い。
▼防犯カメラなんてないに越したことないが、市民のプライバシーは守られるということだし、奇声を上げず姿勢を上げ、まっとうに歩いていれば気にすることはない。後ろめたさでカメラに、しかめつらしないように。

 2019年  2月  5日  ― 統計不正は伏せとけか ―
 経済担当の頃、ネタに詰まるとやったのが、国や県の統計から岩手県分や盛岡市分を引っ張り、ある項目の年次推移を引用して「何々が5年間で倍増した」「10年間で半減したことが分かった」などと書き出す記事。
▼次にその分野を代表する会社や店に影響を聞き、最後に業界団体の背景や見通しのコメントでまとめる。緊急性がない代わり日持ちする記事なので、新鮮なネタが途切れたら大きく扱うよう取っておく。1日分ストックがあるだけで、かなりストレスが和らいだ。
▼職場のストレスなど所管する厚生労働省が、統計不正問題でたたかれている。責任者は針のむしろだろうが、国の統計がそんないい加減では困る。先のような記事を書いても、前提が間違いなら事実と違う報道をしたことになる。問題の毎月勤労統計を参照した取材はしなかったが。
▼統計数値と実態経済がかけ離れて政策を誤るのは共産主義国によくあったし、誇大なら昔の大本営発表と同じ。食料難の真偽をマッカーサーに詰問された吉田茂が「そんな日本の統計が正確なら、あんた方と戦争しとりゃせん」とやり返したのは有名だが、孫の麻生さん。財務省とか他省庁の統計も大丈夫なんですか。
▼ずいぶん前から「伏せとけ」とやっていたらしい統計不正。何やらみんな、まゆつばになる。

 2019年  2月  4日  ― 名のみの「立春」 ―
 「立春と聞けば忽ちそれらしく」(稲畑汀子)。節分の豆まきも終わり、きょうは二十四節気の一つ「立春」
▼岩手の人は実は、2月の寒さは厳しいと経験則で身にしみているので、立春なんて暦の上だけのことと受け流す。それでも言葉というのは不思議なもので、立春の響きには、まだ先にあるにもかかわらず、来たるべき和らぎの春を思わず想像して何となく心持ちが軽くなる
▼もうすでに始まっているが、2月は受験シーズンの真っただ中。経験浅い10代には、一生を左右するかのような思い込みにも襲われる。だが、1回の受験結果で一生が決まるわけではないと知っている。失敗を補って余りある挑戦の機会は何度もあり、逆に受験の成功が人生の成功を保証するものでもないと、経験を積んだ大人たちは理解している。重要なのは受験までの過程が、1度の成否を問わず等しく後の人生の糧になり得るということではなかろうか
▼そうは言いつつも、10代の目標を持って挑む試練の先には、花咲く春がやって来てほしいと願う。冬の冷たい風や雪の中でも、つぼみが強くたくましく膨らんでいくように力と自信を付け臨んでほしい
▼インフルエンザが流行している。大学受験時にインフルを経験し悔しい思いを味わった。体調管理も受験科目と考えて日々の生活を。

 2019年  2月  3日  ― 日韓カンカン頭冷やそう ―
 これを書くと保守派は怒るかもしれないが、韓国海軍のレーダー照射。理は日本側にあるにせよ、「友好国間でも間違いは起きるから今後は気を付けよう」と、もう頭を冷やしたら。日韓対立で喜ぶのは北朝鮮。水掛け論にげんなりし、互いに国民感情が悪化するばかりで得るものなし。
▼一方の徴用工問題も日本側の正当性について第三者機関に裁定を仰ぐなどは慎重に。残念ながら今の国際世論に、朝鮮半島における日本の戦後処理という地味なテーマを的確に理解する力と余裕はない。欧米の相当な知識人でも東アジアの近代史など疎いから、「ともかく侵略した日本が謝れば」だろう。そこに韓国が先手を打つかも。
▼逆に韓国や日本のリベラルの人たちにも申し上げたいが、この手の話をすぐ、「ドイツの首相はひざまずいて謝ったのに日本は」式のせりふで済ませてはならない。
▼論点の日韓基本条約は、かつて岩手県選出の椎名悦三郎外相と韓国の李東元外相、朴正煕大統領が政治生命を賭して結んだ。確かに積み残しはあったが、日韓が共存共栄で経済発展できたのは彼らのおかげ。理想だけでなく現実政治を見よう。
▼ただし今回、朴父子の政権を政治的に否定したい思惑も絡むなら、本質は日韓より韓韓問題。だから日本は一歩引いて、あまりカンカンにならず。

 2019年  2月  2日  ― 産業スパイと情報漏えい ―
 中国通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)CFOのカナダでの拘束は米国の司法省がCFOらを起訴するに至っている。イランとの違法な金融取引や米国企業からの技術情報窃取などの罪状を示し、カナダに孟CFOの米国送還を求めた。中国側やファーウェイは嫌疑を否定し、国レベルで真っ向から対立している
▼小説の世界では、日本はスパイ天国との捉え方にしばしば出合う。スパイ対策が甘く活動しやすいというのだ。実態は知るよしもないが、多くの国々が諜報機関を持ち情報収集に当たっているのは疑い得ない。スパイは戦争中や大戦後の東西冷戦下での政治的背景の印象が強い。だが、今日は全てをスパイというかはともかく、先端技術・研究をはじめ経済・産業での情報収集に力が入れられ、違法もいとわぬ行為に走るケースもあるのだろう
▼「網の目をくぐる」とは容疑者が捜査や監視の目を切り抜け逃亡する言い回しに使われる。一方で法律の盲点を突いて悪事を働きながら違法を問われない行為を指す意味にもなる。今や網の目をくぐるのではなく網を伝って情報の流れるインターネット時代。金になる情報の収められる宝庫≠探して不正にアクセスするサイバー犯罪が横行する
▼日進月歩の情報技術。常に完璧などないと心しておきたい。  

 2019年  2月  1日  ― 岩手経済同友会の50年 ―
 岩手経済同友会は今年50回目の新年会だった。1969年は初の岩手国体の前年。経済3団体に北の一角を占めて、昭和と平成の激動を越え、新時代を迎える。会誌の「いわて経済同友」は600号に達し、年頭に節目が重なった。
▼高橋真裕代表幹事の新春インタビューは今年のキーワードを「変化」と断じる。県内製造業をけん引するトヨタについて、「脱系列、あるいは車種の半減、カーシェアリングへの参入といったことが行われるということですけれども、トヨタでさえもそういった大胆な革新をしていかなければ新たな参入者によって自分たちの地位が脅かされかねないという危機感の表れ」と受け止め、地元の経営陣に改革を促す。
▼そこで重要になるのは同友会の岩手経済戦略会議。岩手が新たな価値を生み、持続的に発展する方向性を国内トップ経営者と探るため開かれ、毎年、活発な討論が交わされる。
▼本県経済には財務、国交、厚労など各省の出先があり、その予算と権限が自治体に入り組み、経産省、国税庁、中小企業庁などの系列機関があり、施策推進の重心点が分かりにくい。
▼戦略会議にはそんな国や県をボトムアップで動かすよう、岩手経済の参謀本部として強力に具申してほしい。この課題になら「どう言うか」と県民から広く深く吸い上げて。

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