2019年7月の天窓


 2019年  7月  22日  ― 八百万のマンション ―
 盛岡市の住吉神社の夏祭りに行った。今月は天満宮、次に川留稲荷、9月は八幡宮と家の近所の鎮守の祭りが続く。
▼盛岡の下町の子であれば、八幡宮の縁日で見世物小屋とお化け屋敷をのぞくのは1年間のメーンイベントだった。草いきれの中で見上げた、おどろおどろしい看板の絵が、今でも悪い夢に出てきて懐かしい。
▼かつて天満宮の祭りも上ノ橋町まで沿道が華やいだ。それが昭和の終わりにはずいぶん寂しくなり、平成の初めは境内に夜店がちらほら。伝統の文墨展がある例大祭なのに、このまま廃れてしまうのかと残念だったが、10年ほど前から再び活気づいている。今は夜店も人出もなかなか。近くに大きなマンションが建ち並び、県内外から大勢の親子が移り住んできたからだ。
▼そのためか祭りで境内を歩いても盛岡弁はあまり聞こえない。今はここらもみんなそうだと言われるかもしれないが、はしゃいでいるのは東京の子の会話。都会から来ると縁日がとても珍しいのか。転勤族で何年か住むだけであっても、鎮守の森を忘れないでほしい。
▼盛岡でも超高層が林立し、どこもセキュリティーは厳重。なかなか住民の顔は見えにくいがマンションの子が、かしわ手パチパチ八百万(やおよろず)の神様に、学業成就の御利益に預かるよう願います。

 2019年  7月  21日  ― アニメ制作会社への放火事件 ―
 現住建造物等放火罪の刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役と定められている。殺人罪と同等に重刑なことはよく言われることだ
▼京都市伏見区のアニメ制作会社の第1スタジオが41歳の男によって放火された。出火当時、建物には多くのスタッフらがいてこれまで死者34人を出す大惨事となった。埼玉在住の男は、ガソリンを用意して放火したということで凶行には計画性があったと認められる
▼京都アニメーションはヒット作を次々と生み出し、日本を代表するアニメ制作会社。アニメのキャラクターには同社のカラーが出ており、多くのファンがいる。海外でも人気が高い
▼男は「小説を盗んだから放火した」と話したという。制作会社にとっては事実誤認どころか言いがかりになるだろうが、このような事態に関係者や遺族は悲哀とともに不条理極まりない思いをしているだろう
▼男が近隣への迷惑行為を頻繁に起こし、コンビニ強盗事件で服役した経歴や近況も明らかにされている。精神障害があり国が支援する「特別調整」の対象になっていたという。小説や漫画、映画やドラマの世界は、登場などとの心理、感情的な感応を味わうのが楽しみの一つ。男も何かのアニメに感応したのかもしれない。が、それを自分の創作したものというなら飛躍のしすぎだ。

 2019年  7月  20日  ― アポロの昔語り ―
 1969年7月20日のアポロ11号の月面着陸からきょうで50年。「人類月に立つ」は当時の日本でも大センセーションで、男の子はみんなロケットに憧れた。
▼小学生の頃、当時の三陸町に気象ロケット観測所があると聞き、わくわく発射を見に行った。ところがテレビで見るアポロの偉容と比べてがっかり。人間も乗れず、日米の差に興ざめ。叔父の車の中でうとうとしていたら、ごう音と共にいきなり打ち上がり、飛び上がって目が覚めた。
▼火星、木星、土星と米ソ競って人類はすぐ太陽系を制覇し、宇宙は狭くなると誰もが思った。しかし72年にローマクラブが「成長の限界」を唱え、オイルショックで世界は低成長時代へ。軍事面の背景も変化し、超大国さえ金食い虫のアポロ計画は尻すぼみ。スペースシャトルが地球の周りをうろうろするだけになった。
▼しかしこれは日本に有利に働いた。人類がもし宇宙のかなたに未来を夢見て、重厚長大の科学技術を発展させていたら、日本は追随できなかった。宇宙のロマンより現世の実利。燃費の良い自動車、小型の家電、時計カメラなど、箱庭的な世界に深く市場を掘り下げたからこそ、日本人のハイテクは花開いた。小惑星探査機「はやぶさ」の成功はその応用である。
▼さてそろそろ星空の昔語りは、どんとハレー。

 2019年  7月  19日  ― トランプ氏に米下院が非難決議 ―
 北朝鮮の金委員長との電撃会談にはツイッターの即効性を実感したが、こちらも反応が速かった。トランプ氏が政治性はないと弁明してもツイッター発言は大国の大統領の考え、政治問題として受け止められるのは当然であろう。その効果を計算して発言していると思われる節もある
▼今回は野党・民主党の非白人の女性議員らを念頭に「もともといた国に帰ったらどうだ」という14日のツイート。米下院は16日、トランプ氏の発言は「人種差別だ」と非難決議を賛成多数で可決した。共和党も4人が賛成。与党議員の賛成に驚くべきか、4人しか賛成しなかったというべきか。各国首脳も非難していることを考えると「4人しか」との印象を持つのだが
▼トランプ氏の排他的な移民政策の方針は揺るぎないことを示した。だが、人種差別と多くに受け止められる今回の発言は、トランプ氏の移民政策に最初から批判していた勢力からは、政策が人種差別と映っているだろう
▼発言に対する安倍首相の受け止めはいかがか。日韓関係がさらに冷え込んでいきそうな気配で両国国民が過剰に批判し合う事態も懸念される。特に影響力の大きい政治家の事実を曲げたり偏らせたりした発言が、両国民の感情をたかぶらせかねない。トランプ氏は批判にも「多くが支持している」とのこと。

 2019年  7月  18日  ― 連峰の共闘 ―
 「週刊ダイヤモンド」にベルジョイスやユニバースが加わるアークスの横山清社長のインタビューが載っていた。
▼かつて盛岡市のジョイスと八戸市のユニバースはライバル。一緒にグループ化した時点で、県内はイオン系とアークス系が再編して並び立つとみていたら、やはりそうなった。アークスは北日本の中堅スーパーの連合体で「八ケ岳連峰」なる経営理念。
▼以前、取材で「八ケ岳に行ったことがないので、どうも分かりにくい。ただの連峰型という書き方ではだめですか」とアークスの担当者に聞いた。すると「だめです。八ケ岳は八ケ岳です」ときっぱり。何となくもやもやしつつ「八ケ岳連峰型の」と書いたが、山梨県まで行って登る体力も根性もございません。
▼そこで八ケ岳のことを調べると、鳥海山を超す高い山々で、富士と背比べをして勝ったら蹴飛ばされ、八つの山になった伝説がある。イオンやイトーヨーカ堂に、連峰の共闘で張り合う気かと納得した。
▼そのイトーヨーカ堂も今は苦境とか。イオンの攻勢に対しアークスは昨年末、岐阜県のバローホールディングス、山口県のリテールパートナーズと資本業務提携し「新日本スーパーマーケット同盟」を結成した。なかなか油断ならない業界。他紙がスッパ抜かないよう注意深く見守ろう。

 2019年  7月  17日  ― カラスの苦労 ―
 先日、中津川の富士見橋たもとの交差点で面白いものを見た。カラスが木の実をついばんで空から落とし、車のタイヤに踏ませて割ろうとしている。その習性は聞いていたので、本当にできるか見物した。
▼意外に難しい。タイヤは幅20aくらい。街中だからレールを敷いたように車列が続き、道のセンターや路肩に落としても車は踏まない。くちばしで少しずらしても、細いタイヤの前には転がせない。やり直すたび路上に舞い降り、車にひかれそうになる。
▼十数台目かが、やっと踏みつぶした。じーっと見て思わず応援していたが、すぐにがっかり。軽自動車のタイヤが踏んだくらいで堅い実は割れなかった。諦めたカラス慌てて拾い、かなたに飛んでった。大きな車に踏ませようと国道に行ったのか。
▼大槌町の東大大気海洋研究所は2年前まで、春に「カラス侵入禁止」の張り紙を出して撃退していた。カラスは字が読めなくても、張り紙の周囲の人の動きで敵意を察知し、警戒して近寄らなくなるらしい。
▼盛岡市でも数年前にカラスのふん害が深刻化し、東北電力は電柱の巣の撤去に苦労している。集積所のごみを散らかし、かわいくない。山野よりちまたを好む、すれっからしのようだが人知れぬ苦労あり。高い知能を逆手に取り、駆らす方法もあるのか。

 2019年  7月  15日  ― 丸木舟で台湾から与那国 ―
 探検家関野吉晴さんの1993年から始まった「グレートジャーニー」はテレビ番組となり、高い関心を持って見ていた。人類発祥の地アフリカ大陸からの移動拡散をたどる旅は乗り物もカヤックや自転車など人力で動かすものなどに限られた
▼南米チリを出発した旅は2002年、アフリカ大陸のタンザニアに到着。約5万3千`をたどる旅を終えた。逆ルートの旅は現代から太古を目指す時空の旅となり、原初的な営みや野生に触れた
▼壮大な旅を経験した関野さんは日本を強く意識。先祖が日本列島にたどり着いた旅のルートをなぞる。海のルートでは丸木から舟を製作。太古の技術を用い、帆を立てた丸木舟でインドネシアから日本までの航海に挑んだ。時代が下って遣唐使らの乗った船にとうてい及ばない船体での大海原の航海は、どれだけの人を海に沈めたか想像も付かない
▼国立博物館などのチームが何度か挑戦してきた、日本人の祖先が台湾からどうやって渡来したかを探る丸木舟の航海実験が、先日ついに成功した。競技ボートのような丸木をくり抜いただけの細い船体(全長約7・6b)を数人の手こぎで太古と同様、海図やコンパスを頼らず200`を渡った。地球上は20世紀以降も大きく変化したが、天空の星座は3万年前とあまり大差ないはずだ。

 2019年  7月  14日  ― かんぽ生命の不適切販売 ―
 かんぽ生命の不適切な販売が明るみに出て、かんぽ生命と日本郵便は保険商品の営業を当面自粛するという。不利益をこうむった保険契約者への対応を優先させるためだ。優先順位は当然だろう
▼金融庁の協議機関による大臣の「受け取り拒否」となった報告書で年金への不安が国民に広がった。年金は多くの国民にとって老後の生活の保険≠ニいう存在だが、年金生活に元から不安がなかったわけではない。ゆえに貯蓄や財テク、保険など、現役時代から将来のために手を打ってきた。保険も正直、契約内容を隅々まで読んで把握するのは困難。保険外交員や銀行員らのかみ砕いた説明によって契約し、支払いや貯蓄をしている方が多いと思われる
▼かんぽ生命は日本郵政グループ。通信手段が多様化し、郵便配達料はたびたび引き上げられている。業務見直しも進められているが、郵便業務の大幅な縮小は何としても避けてもらいたい。グループの金融、保険業務は郵便業務を支えるものでもあり、明るみに出た不適切な保険販売が悪影響を与えないか心配だ
▼とはいえ、契約者への背信行為とも映る二重支払いや無保険状態は許されるものではない。かんぽ生命への信頼は揺らいでいるかもしれない。国民に安心を与える存在であるために今回の対応を誤ってほしくない。

 2019年  7月  13日  ― 仮囲いにかっこいい絵 ―
 花巻市のヘラルボニーによる「全日本仮囲いアートプロジェクト」のニュースがあった。建設現場に張り巡らす仮囲いの塀をカンバスに見立て、自由に絵を描き展示する。障害者の美術を含む多様な作者を受け入れ、社会と文化の橋渡しをする。
▼ちょっと前、クリストの「梱包芸術」なるものがあった。歴史的建造物をまるごとシートで包んでみたり、正直言って「なんだこりゃ」。こちらの頭が悪くて難解な現代美術を分からないのかもしれないが、現実の工事現場にしか見えない。クリストが日本で制作したら撤去作業中に事故で死者が出た。
▼仮囲いアートは一部の独善的な作品でなく、現場の工事成績評点に加点したり、企業の社会貢献の福祉になる。既に東京渋谷の現場で3月からスタートし、本県では7月中に矢巾町に第1号が設置され、現場は野外美術館となる。
▼盛岡市でさる高名な芸術家が講演し、「実は名のある建築家の設計を押し出した美術館は、われわれ使いにくいんです。やりやすいのはもっぱらゼネコンで建てた美術館。だからここはいい」と言ったのを聞き、うなった。
▼いくら建築家が偉くても、ハコモノ自体の主張が強いと美術の創作や搬入展示を妨げてしまうのか。それくらいなら仮囲いにかっこいい絵を飾った方がずっとアートだろう。
  

 2019年  7月  12日  ― 高校野球岩手大会が開幕 ―
 第101回という次なる時代へと刻み歩み始めた全国高校野球の岩手大会が11日、幕を開けた
▼開会式の選手宣誓では「令和という新しい時代になり、戦争や自然災害など、多くの困難を乗り越え、100年受け継がれてきた選手権大会という伝統は、今大会で2世紀目を迎えた」と始まった。令和最初の大会でもある。宣誓は創部120年の盛岡一の千葉浩気主将。明治から4番目の元号そして3世紀目という伝統を持つ野球部だ
▼野球が日本に伝来し、全国でも参加校の少なかった時代から、戦争などによる中断を経て重ねてきた大会。国内屈指の高校人気スポーツとなって久しい
▼だが、スポーツの人気は分散、今世紀には少子化が顕著になり連合校で出場する球児がいる。学校は違えど同じ野球を好きな仲間だ。対戦チームの選手とて、好きな野球に打ち込んできたことは同じ。相手への敬意、周囲への感謝を心に留め、悔いのないプレーをと願う
▼千葉主将は「今、岩手のスポーツ界は世界で活躍するアスリートが次々と生まれ注目の的となっている」ことに触れた。野球に限ることなく昨今の県人の活躍は、東日本大震災からの復興半ばに勇気と希望を与えている。同時に高校生らが何かに打ち込む姿がいつの時代も見る者に感動をもたらしてきたことも間違いない。

 2019年  7月  11日  ― 8年ぶりの知事選へ ―
 参院選のさなか元県議の及川敦さんが知事選に立候補を表明した。現職の達増拓也さんと対決し、前回の無投票から一転8年ぶりの選挙戦となる。
▼といっても「達増VS及川」のカードは2003年、05年の衆院1区でもあった。ただし一騎打ちではなかった。及川さんが最初出たとき36歳、当時、現職の達増さんは39歳。
▼小選挙区制3回目だったが、巷間(こうかん)まだ中選挙区時代のヘビー級の先生方の影がちらついていた。有権者の声を拾うため、お年寄りに「30代対決では、物足りなくないですか」と聞いたことがある。すると「そんたなごどもないんでねが」。
▼「エリートとやんちゃ坊主がガヅガヅやり合うのも1区ではいいんだ」と言われ、やはり政界の世代交代を期待していたのだなと感じた。やんちゃ坊主と呼ばれたように県議時代の及川さん、なかなかの選挙巧者で痛快な動きが多かった。しばらく鳴りを潜めていたと思ったら、やはりまだ野心を捨ててはいなかったのだ。
▼若い若いと言われていた2人も知命を越え、知事選になれば50代対決だ。衆院1区は盛岡市と紫波郡だけの戦いだったが、今度は全県。令和最初の県政のかじ取りを県民が的確に判断できるよう、双方しっかりヘビー級の公約を。ひさびさに立つぞとなれば論、熱し。

 2019年  7月  10日  ― 赤字と黒字の色鉛筆 ―
 盛岡市内の大きな文具店が10年程前に閉店した。小学生の頃からなじみの店のおばさんに「ぼくも残念です」と取材した。「百均」に押されて文具店が苦しい時勢をひとしきり嘆き、細腕繁盛記の感傷。
▼「たれそれ君はいつも友達に囲まれながら店に来て、やっぱり政治家に」「〇〇ちゃんは絵描きになって」「立派な車で送り迎えのあの子も今は社長」。レジの奥から顧客の子らをよく見てた。そして、「あんたも昔は優秀な子だったんだけどねえ…」。ため息まじりに言われてしまい、記者は二の句が継げませんでした。
▼盛岡市図工研究会の「盛岡親と子の写生大会」が今年の46回で閉幕した。昨年まで協賛の大手文具メーカーが支援できなくなって。全国的に文具店が少なくなり、筆記具のブランドになる社も大変なのか。
▼最後の大会では親子約200人が描いた。それほど人気があり、2代にわたる参加者もいたのに。図工部員の減少など研究会の人手の問題も大きく、スポンサー付きの写生会も増え、役割を終えて閉幕するという。
▼毎年、初夏になると城跡や中津川に画材を広げる親子の姿が市民の絵心をくすぐった。たとえ赤字がちのイベントでも、色鉛筆セットに1本、黒字のデッサンペンを足してやるように、手を差し伸べるところがあれば良かったが。

 2019年  7月  9日  ― 声をからして訴える選挙 ―
 池田晶子さんは「政治家がスローガンを絶叫する時代は、よくない時代だ」という。「政治家の本来は、複雑な利害関係の調整以外ではないのだから、スローガンの絶叫により切り捨てられるものが、多々あるに違いない」からと理由を続ける(「知ることより考えること」)
▼参院選のさなかだが、政党候補と陣営は演説で時に絶叫しながら党の公約や候補の政策を訴えている。耳に残りやすいワンフレーズを繰り返す演説はよく見かけられる。選挙公報や政策パンフレット、ホームページなどでじっくり比較検討していけばいいのだろうが、耳から入ってくる短いキャッチフレーズ的なものに印象が引っ張られがちだ
▼政治家の短いフレーズといえば、トランプ米大統領によるSNSのツイッターが象徴的。北朝鮮の金委員長との電撃会談はツイッター戦略といえようが、およそアメリカ政府の公式発表ではなくとも大統領のつぶやきは瞬時に拡散する。波及レベルは街頭でのスローガン絶叫とでは次元が違う
▼池田さんは切り捨てられるものに思いが及ばず「当面のわかりやすいスローガンについて行くなら、遠からず破綻するのではなかろうか」と危惧。自らの判断を停止し政治家に世の中をどうにかしてほしいという人々を心配していた。投票は主体的判断によりたい。

 2019年  7月  8日  ― ヒストリーとヒステリー ―
 先日、知り合いの若い人に「日本はアメリカと戦争したが、中国と戦争したのはその前ですか」と聞かれた。常識の範囲内で回答し、「岩手出身の将軍や政治家も深く関わった」と付け加えた。「もう少し勉強したら」と思ったが、その人を責めたり、ばかにする気にはなれなかった。
▼世界どこの国でも若者の多くはそんなもんだ。彼らには遊んだり、恋愛したり、仕事を覚えたり、大事なことはたくさんある。もし近現代史に一家言を持っている若者ばかりの国があったら、かえって気味悪い。
▼中国、韓国の青年だって戦後の自国が他国を侵略し、どんなにひどいことをしたか、都合の悪い話は知るまい。それでも中韓は日本を責め立てる。当事者が90代に達し、「何としても日本人に聞かせて謝らせてやる」と怒っているのも理解できる。大変なことになった徴用工や慰安婦の問題は、その執念が震源だろう。
▼ひとつの解決策として日本から、しかるべき言論人や意識の高い大学生などを左右の立場問わず送り、当事者の話を傾聴させたら。中には真偽定かならぬ告発、逆に日本人に衝撃的な事実が語られるかもしれない。それでも黙って聞く。
▼彼らの気持ちは随分晴れ、経済制裁のような手段より和解の道が開けるのでは。ヒステリーの応酬ではヒストリーが閉ざされる。

 2019年  7月  7日  ― マンホーラー盛岡に ―
 盛岡市制130周年を記念するマンホールのデザインが「さっこちゃん・とふっち」に決まった。4デザインを候補に市内街頭アンケートしたら4割以上の支持があった。
▼他3候補は「啄木短歌と石垣」「盛岡3大めん」「南部家の家紋の向鶴」。みんなすてきな絵柄だが、心配だったのは啄木短歌だと、マンホールの凹凸に一握の砂がたまらないか、3大めんと向鶴は、雨天積雪時つるつる滑りそう。それに殿さまのご紋を踏むのはやはり気が引ける。だから順当な決定だったのでは。
▼デザインマンホールはカラー3枚、黒色127枚を製作し、中心市街地に設置していく。マンホールカードも発行予定。何しろあらゆることにオタクがいる時代。「マンホーラー」と呼ばれ、全国の路面を探しに旅したり、廃物になった物を収集する人もいるとか。
▼LPレコード集めさえ大変な場所ふさぎで難儀しているが、ましてマンホーラーはどこにコレクションするのだろう。そこまでやれない人のためカードがあるのなら、観光にも役立てたい。
▼しかし紫波町では鉄製のふたが多数、盗難にあったという報道も見たし、デザインマンホールをだれだりに持って行かれないよう、道路の保全と交通安全の対策はしっかり。マンホールだけに、いたずらしたら、ふたつけるかもよ。

 2019年  7月  6日  ― スマホ決済の信頼性 ―
 コンビニエンスストアのセブンイレブンで使えるスマートフォン決済7pay(セブンペイ)で開始早々、不正アクセスによる利用者被害が出た。同じ4日、セブンペイを不正使用とした詐欺未遂の疑いで中国籍の男2人が警視庁に逮捕された
▼スマホ決済はじめキャッシュレス決済は中国を筆頭に海外での利用拡大が著しい。日本は特にスマホ決済の普及が中国などに比べ広がっていない。訪日外国人数が上昇一途をたどる中、来年の東京五輪を控え、国だけでなく流通業界などが整備は急務となったのも理解が及ぶ
▼いつの間にかクレジットカードが増え自省したことがある。購入品のひも付きみたいにカードを作らされた末のこと。使ったのは初回だけというのはいかにも無駄と、特典などに惑わされず整理した。スマホ決済もさまざまな企業が参入している。目的・場所別に使い分けても混乱しそうなのでカードと同じてつを踏むつもりはないが、今回のような不正が出ると1種類としても使うリスクを考えざるを得ない
▼それにしても事業開始直後に不正アクセスを許したぜい弱さには、リスク管理意識のぜい弱さが背景にあったのではと思わせられる。スマホ決済に限らずネットを介した不正や犯罪はいたちごっこの様相。参入側には信頼される安全の提供を望む。
  

 2019年  7月  5日  ― カーボンコピーの政治学 ―
 自分が最初に就職した35年ほど前の昭和に、コピー機はかなり普及していたが、「カーボンコピー」という手法の複写があった。2枚の紙の間に黒いカーボン紙を挟み、ボールペンの筆圧で1枚目に書いた字を2枚目に写し取る。指に力を入れないと下の字が薄い。
▼まだ複写伝票には使われているが、世間にカーボンコピーの字面の文書は見なくなったので、とうに生産中止と思っていた。ところが文具店で買い物したら、ありました。懐かしい商品が片隅に。ちゃんと大手メーカー製で10枚600円。しぶとく生き残ってたんですね。
▼参院選が始まった。昔は「さっぱり盛り上がらない」「衆院のカーボンコピーなら要らない」と盛んに無用論が叫ばれた。ところが参院はしぶとく、したたかで、時に総理も倒すから今そんなことを言う人はいない。
▼カーボンコピー論は、衆院の追認だけなら2院制の意味なしということ。本県選出の故・椎名素夫氏も参院改革を提唱した。しかし平成時代の与野党ねじれ国会で、衆参が多数派を違えて対立したらどんなに大変か、皆さん身にしみた。
▼だからカーボンコピーも決して悪くないのだが、選挙結果も衆院と似た方がいいとは申しません。官邸主導の時代、「官房コピー」にならないよう、良識の府の主体性に期待します。

 2019年  7月  4日  ― 参院選がきょう公示 ―
 6月30日の紫波町議会議員選挙で投票率の報告を取材記者から受けたとき、耳を疑い「56・66%?」と数字をなぞって2度も確認した。広域圏でも盛岡市や滝沢市ならいざしらず、紫波町でこの低率とは信じがたかった
▼任期満了に伴う紫波町議選は4年前、定数に過不足ない届け出で無投票当選となった。震災年の2011年以来の選挙戦。有権者が投票を行使する機会、中央部は都市化が進むとはいえ東西は農業地域、代々の町民も多い土地柄から、下がるとしてもこれほど大幅とは予想外。前回より11・54ポイントも下がり、もちろん過去最低となった
▼原因はいろいろと推測される。都市化により土着性が希薄したゆえの地域政治への無関心層の拡大、定数18に対し立候補した19人の有権者に対する訴求不足もひょっとしたらあるかもしれない。だが、根深いのは選挙、政治への参加意識の低下だろう
▼俗に投票率は住民に身近な選挙ほど高く、距離が離れるほど低くなるといわれてきた。県内なら市町村議員選挙が最も身近に当たろう。反転してみれば、きょう公示の参院選は国会議員選挙であり、選挙区も広く、有権者との距離感が最も離れた選挙と捉えられるか
▼岩手選挙区は3人が出馬予定。同数だった3年前の改選時は57・78%。過半数が棄権しないかと懸念される。

 2019年  7月  3日  ― 期待高まる陸上男子短距離陣 ―
 かつて日本の陸上短距離は世界トップレベルに大きく水を開けられていた。日本人の五輪メダルはマラソンにすがるしかなかった。だが、投てきで室伏広治さんが出て、トラック競技でも高野進さん以来、短距離で世界のファイナリストになることが現実となった
▼男子4×100bリレーは北京とリオデジャネイロの五輪で銀メダルを獲得した。バトンワークの技術は称賛されるべきだが、各走者の走力に強豪との差が歴然であればメダルには及ばなかっただろう
▼1年後に東京五輪を控え、日本男子短距離陣の伸長が著しい。福岡で行われた日本選手権100bには9秒台を記録したサニブラウン・ハキーム、桐生祥秀両選手をはじめ、山県亮太選手を除くトップ選手がそろい踏み。10秒02でサニブラウン選手が優勝した。2位から桐生、小池祐貴、飯塚翔太、多田修平選手とおなじみが続き、ケンブリッチ飛鳥選手は8位に甘んじなければならなかった
▼地元五輪で短距離の金を前のめりで期待したくなるが、サニブラウン選手は9秒97でも全米選手権3位というのが現実。桐生選手も9秒台は1度だけ。いつでも9秒台を出せるまでになるのがメダルの絶対条件となろうか。日本人が10秒の壁を破るまで長かった。あと1年で9秒8台で走る選手をとやはり夢見てしまう。

 2019年  7月  2日  ― 超大国の煩悶 ―
 東条さん米内さんのご実家に近い母校に通う軍艦オタクだったので、小学生の頃から毎日考える。「なぜあのとき爆弾と魚雷を何度も取り替えたのだろう」「どうしてあのときレイテ湾に突入しなかったのか」。さすれば歴史は…
▼盛岡で自分ほど米国に敵意を抱いて育った人間もおるまい。なのに生まれてこのかた米国の音楽、映画、テレビに首までどっぷり。だから反感を抱きつつ、どうしても悪く思えない。確かに間違いは多い、人類的な罪も、ひどいこともした。しかし歴史の中では比較的、善政を敷いてきた国ではあるまいか。
▼それでも米国は道義的に責められる。超大国が弱い者いじめしてけしからん。しいたげられた側に立つことこそ知識人の神聖な義務なりと、ベトナム反戦やら何やら、いつも星条旗に石が投げられた。
▼しかし米国に歯向かった側にとて、壮大な過ちと悲劇があった。インテリの皆さんそちらの矛盾は見ないふりして、相も変わらず世界の盟主に守られ暮らしながら、星条旗を引きずり下ろす。こんなんじゃ、とてもやってられない。何で友好国の分までも血を流したのに、身内に悪者扱いされるのか。
▼そんな素直な反問がトランプ大統領の日米安保見直し論に反映したなら、合衆国の煩悶(はんもん)だろうか。板門店での背中を見て思う。

 2019年  7月  1日  ― 日米安保のそもそも論 ―
 大阪G20は米中貿易戦争に水入りで、おおむね丸く収まったようだが、トランプ大統領の日米安保見直し論にはびっくり。同盟の根幹に関わることを、G20に持ち出すものなのか。
▼「戦争になれば米国は生死を懸け、日本はテレビで見物はおかしい」は「そもそも論」で、論議すれば冷戦以前まで行き着く。そもそもの「そ」はソ、「も」は毛ですかい。そんなにさかのぼったらもうきりがない。
▼大統領みたいな不平は1991年の湾岸戦争から米国人が言い始めた。この手の話になると欧米の論調は定見がない。きのう「日本は自分だけ平和で軍事力を行使したがらず、他国の若者を矢面に立たせる」と批判したと思えば、きょうは「日本にいまだ軍国主義が胎動しており、侵略の野望を秘めている。反省させねば」なんて警戒する。
▼吉本興業じゃないけど、岩手県人さえ「どっちやねん」と大阪弁でツッコミたくなる。しかし日本人はそんな安全保障論のジレンマに平成時代を通じ悩まされてきた。大統領の真意は測りかねるが、本当に安保いらないと思っているなら日本の選択肢は昔のように陸海空で自立するか、別の大国と手を組むか。
▼今さら日本人も米国人も見たくない光景だ。G20にトルーマンだのスターリンだの、20世紀のじいさん方の遺恨じゃないでしょう。

2019年6月の天窓へ