2019年8月の天窓


 2019年  8月  25日  ― 盛岡市長選、市議選投票日 ―
 きょうは盛岡市長選、同市議選の投票日。有権者の投票行動で当落が決まる。選挙は18日告示され、市長選には現職新人3氏、市議選には44人が立候補。きのうまで合わせて47人の候補者が暑中の盛岡を駆け巡った。人事を尽くして天命を待つの境地だろうか
▼いつの時代にも地方自治体に課題のないことはない。候補者は選挙で課題を市民に訴え、それによって市民は課題への認識を深める。課題自体は極端に候補によって違わないが、重要度に差が出る。課題へのアプローチや方向性に違いが出る。本紙の市長選に関する電話調査でも投票判断に最も重視するのは「政策」が群を抜いて多かった。今回は44人中38人が議席を得る市議選は、市長選より選択肢が多くて迷い、悩む有権者も多いのではないか。当選した議員個々の活動は市民にはつぶさには見えにくい。だが、市民の投票結果によって市議会全体の土台、カタチがまず決まる。ならば土台、カタチは市民の総意にできるだけ近づけたい
▼きょう知事選が投票日の埼玉は低投票率が深刻な危機感から、埼玉を自虐した漫画で映画がヒットした「翔(と)んで埼玉」とコラボし投票を喚起した。盛岡も4年前、同日選になりながら市長選は51・45%と予想外に上がらなかった。上昇に転じて総意に近づいてほしいと願う。
  

 2019年  8月  24日  ― ポスターのトロイカ ―
 盛岡市長選の掲示板のポスターを眺めて「おや」と思った。今回は内舘茂、谷藤裕明、福井誠司の3候補とも画面にかしこまっている。市議選に比べ市長選は候補の顔が小さめだ。
▼試しにポスターの面積に対して候補の顔の広さが占める割合を計測した。3氏の比率は10・4〜13・7%の範囲に収まった。いつもの市長選に比べてこじんまり。なぜか。
▼今年ちまたに盛んに張り出された連番ポスターと関係あるのでは。3氏を含め政治家の皆さんツーショットでいろんな人と写っていた。あれ見た市民は「これからのリーダーは強力なワンマンより、パートナーシップでやっていきたいのか」と感じたろう。そのせいか選挙ポスターもご本人の顔は控えめだ。
▼横に「盛岡に新しい風を」(内舘氏)、「これまでも、これからも」(谷藤氏)、「あたらしい盛岡」(福井氏)とフレーズがある。余白にいるべきパートナーは市民一人ひとりであってほしい。だから今回は3氏がトロイカで政策論を交わす意義深い選挙だ。
▼おっと「トロイカ体制」なんて政治用語は今の人にはちと古いか。集団指導制のたとえ。民主党政権に使われて以来とんと聞かない。解説するとまたドキュメント20世紀みたいな話になるからやめときますが、トロとイカとタイのすし折りじゃないんです。

 2019年  8月  23日  ― 知事選一騎打ちは16年ぶり ―
 知事選がきのう告示された。現職達増拓也氏、元県議の新人及川敦氏が立候補。共に無所属だが順当な政党推薦で国政与野党対決の様相だ
▼盛岡市民には25日投開票の盛岡市長選・市議選期間中の告示で、3選挙が並走する最中だが、全県的には旗幟(きし)鮮明の知事選と30日に告示を控える県議選との連動によって県政界の主導権争いもかかる。県議選は16選挙区のうち6選挙区で無投票が濃厚のため、知事選序盤は無投票が見込まれる選挙区での活動が活発と予想される。盛岡はまずは市長・市議選と、知事選の盛岡での運動は控えめかもしれない
▼棋士の羽生善治さんは2人の対局である将棋では「相手との駆け引きの中で自分を表現していく」と著書に記している。その特徴ゆえに「相手は敵であると同時に作品の共同制作者であり、自分の個性を引き出してくれる人ともいえる」と続ける。将棋に限らず一騎打ちの魅力であり財産ともいえはしまいか
▼達増氏は知事選4度目にして初の一騎打ち。無投票の前回以外は5人、4人と多数候補の選挙戦。岩手では増田寛也氏と共産候補の03年以来の知事選一騎打ちとなる。相手との駆け引きの中で自分を表現していけば有権者には相違がより分かりやすくなる。そして選挙は今後の県政への共同制作の過程ともなろうか。
  

 2019年  8月  22日  ― 焼き付いた空に ―
 「もりおか時めぐり」の連載で、米軍撮影の1945(昭和20)年6月29日の航空写真を見た年配者が、「なしてこったにどごだりバヅバヅ撮られでだえん」と驚いた。
▼思わず「盛岡に高射砲はながったのすか」と問い返したくなったが、それはよそう。撮影したのは戦略爆撃機「B29」改造の偵察機「F―13」。こちらが必死に撃墜していたら戦況は幾分変わったかもしれないが、重要な写真は残らなかった。乗組員も長い戦に疲れ、帰りたかったろう。
▼「トウキョウ・ローズ」の別称で呼ばれ広島、長崎を含む全国の都市を撮影した。生産は母体と同様ボーイング社で、B29は原爆の記憶に骨がらみの魔鳥。東京大空襲と同じ日に盛岡駅前も焼き払った。
▼ただそれは非人道的な作戦を決めた人間と爆弾が悪いので、機体そのものに罪はない。B29の技術は戦後の旅客機に発展し、ジェットの翼は地球を覆った。そこでボーイングの機影は、また県民の脳裏に焼き付く。71年の雫石事故で自衛隊機と接触、墜落した全日空機がボーイング「727」だった。
▼今は民間機に力を入れ、米国の象徴的企業だが、新型「737MAX」の事故が相次ぎ失墜、低迷している。多くの命を守る信頼回復なくしては、まさにブーイングやまない。平和な空のシンボルに早くよみがえれ。

 2019年  8月  21日  ― ラグビーW杯開幕まで30日 ―
 7連覇を成し遂げた新日鉄釜石ラグビー部で連覇中に主将、監督も務め中心選手だった森重隆さん。ラグビーW杯日本大会を控え日本協会の会長に就任した。ヒゲの森さんのトレードマークは白くなっても健在だ
▼その森さんの現役時代、2歳下の明治大の後輩松尾雄治さんとのバックスラインは釜石の武器の一つだった。バックスのセンターだった森さんは、臨機応変で直感力に優れたスタンドオフ松尾さんの対戦相手も味方も予期せぬような意表を突くキックやカットインのプレーを感じ取って動き出したと、現役を退いて直後に振り返っていた
▼1チーム15人でゲームするラグビーはスクラムを組むなど体格を生かしたプレーが多いフォワードとパスなどで展開することが多いバックスに大別される。しかし、フォワードに脚力が求められたり、バックスには相手を封じるタックルの力が求められるようになっている。データ解析が高度になり、より連係が磨かれる中ではあるが、局面での個々のプレーが重要なことは言うまでもない
▼日本は自国開催に9大会連続出場となり初の8強入りを目指す。それには世界の強豪に勝たなければならない。日本代表には献身的なプレー、チームプレーに加え、松尾さんと森さんの直感力が融合したようなプレーも期待したい。

 2019年  8月  20日  ― お墓は郷土の守り ―
 僚友の初盆に霊園を訪れた。生前はお互い、あたりが片付かない大ざっぱな性格だったので、お墓まわりをきれいにしてやろうと。
▼行ってみれば美しい墓碑で、深緑のもと安らか。花を供え水をやり、「大丈夫。机の上はきちんと片付けるから」と合掌したら、「それは自分のことだろう!」と天から声して、つっこまれた。みまかりて偉さの分かる友ありし。
▼先日のデーリー東北にこんな記事が。「墓所保存策を思案 八戸藩主大都会に眠る」。八戸藩16代当主の南部光隆さん(46)が、歴代藩主の墓存続に危機感を募らせている。都内の勝林寺金地禅院に340年前の建立当時のまま、震災や戦災を越えてきたが、管理しきれぬほど風化し、「いつまで維持できるか」と考えあぐねているらしい。
▼盛岡の南部家の墓は聖寿禅寺にあり、市民が清掃奉仕している。もっと地元の人がお参りできる環境を整えたい。先人の街なのに、大慈寺の原敬はともかく他の顔ぶれの墓は所在が分かりにくい。市内の各寺院で、遺族の了解のもと境内に案内板を設置していけば、墓を守り祖先を尊ぶ土地柄になる。
▼少子高齢化時代。寺に、「墓じまい」の問題が出始めた。酷暑の盆だったが、いつまでもぼんやりしていたら、「墓ーっと生きてんじゃねえよ」と、ご先祖さまに叱られる。

 2019年  8月  19日  ― 市長・市議同日選の盛岡 ―
 盛岡市長と市議の任期満了に伴う選挙がきのう告示された。18日の盛岡は最高気温が33・3度と真夏の陽気。最低気温20・4度も暑さを実感する高さ。陣営の第一声が行われた午前9時前後には、容赦ない夏の日差しが注ぎ、集まった支援者の中には途中で体調を崩す人もいらっしゃった
▼まさに夏の陣=B市長選は03年以来の三つどもえの構図となり、市議選は前回より立候補が3人増えたうえ新人が6人も多い14人と選勢の極めて読みにくい様相を呈している
▼盛岡市では、1979年に市長の任期途中辞職により市長選が春の統一地方選から8月に移った。市議選は統一地方選の日程で執行されてきた。地元の地域紙としては日程分散により、これ幸いに、それぞれの時期の選挙に集中して取材、報道ができた。しかし、11年の東日本大震災で統一地方選による任期満了がずれる特例となり、前回15年に続いて同日選になった。単独選挙に比べてそれぞれに紙面を割けないことをご理解いただきたい
▼盛岡市長は戦後の直接選挙開始以来、故太田大三氏の4期と並び現職が最長で初の5選となるか新人のどちらかが初当選なるか。いずれにせよ激しい戦いを繰り広げている。市議選も大ベテランから20代までなどと幅広い候補となり、一有権者としても検討しがいがある。

 2019年  8月  18日  ― 古関裕而の応援歌・行進曲 ―
 甲子園では高校野球選手権の熱戦がたけなわ。8月18日は前身の全国中等学校優勝野球大会第1回が開幕した日だという。夏の大会歌となっている「栄冠は君に輝く」は耳にするだけで甲子園球場が思い浮かぶ
▼きょうは30年前80歳で亡くなった作曲家古関裕而の命日でもある。戦前からヒットメーカーだった彼は数々の応援歌も作った。早慶をはじめ大学、プロ野球球団の応援歌など高揚感と一体感を誘う名曲が残る。「栄冠は君に輝く」は公募作が採用された加賀大介の詞と古関の曲で1948年に発表された。70年以上たっても高校野球関係者やファンの心を躍らせる
▼古関は戦前、コロムビア専属として流行歌を作曲し、岩手ゆかりの高橋掬太郎作詞の「船頭可愛や」がヒットするなど活躍し、戦時中は哀調ある曲で国民に寄り添った。そんな時代を経て「栄冠は君に輝く」が誕生する。戦争の傷跡深く国民生活も窮乏していた中、報われる未来を想像させた人々もいたのではないか
▼16年後、アジアで初のオリンピックが東京で開かれた。行進曲に使われたのは古関作曲の「オリンピック・マーチ」。思えばこの時の五輪も、焼土となった日本の首都の戦後復興かつ平和の祭典開催の意義を海外に訴えた。古関の郷里は福島。来年は途上の震災復興を見てもらうことになる。

 2019年  8月  17日  ― 令和最初の短歌甲子園 ―
 14回目を迎えた全国高校生短歌大会がきのう盛岡市で開幕した。前回の優勝、準優勝校を含む21校21チームが予選を経て本大会に進んだ。岩手からの出場は4校だが、最多は第1回から連続出場の宮城一となる
▼今年は石川啄木を縁に盛岡と東京文京区が2月に友好都市提携を結んだ記念大会の冠が付き、文京区にある都立工芸が初出場となった。現代短歌に大きな影響を及ぼした啄木は、題材や形式の革新性もさることながら、青春のにおいが湧き立ち色あせない。ゆかりの大会が高校生対象なのも意義深い
▼一方、日本人の心、和の心をつないできたのが短い定型詩の和歌・短歌、俳諧(はいかい)・俳句。5月1日の改元で新元号となった令和が、現存するわが国最古の歌集「万葉集」からの出典となった。国書由来の元号は248番目にして初で、新元号発表とともに「万葉集」が注目された。天皇から東人のような一般市民まで身分に関係なく和歌が収められている。その編集方針に共感する現代人も多いのではないか
▼「万葉集」編集者として有名な大伴家持は天皇側近の武門を担った名門大伴氏の一族。地方任官も多かった。越中守の赴任地で多くの歌を詠んだ。エミシ征討の責任者として多賀城で亡くなったとされる。今年の短歌甲子園は万葉のにおいもするや。

 2019年  8月  16日  ― 「故郷とは捨てるもの」 ―
 私は何でも「捨てる」のが好きである、とは寺山修司の言。「少年時代には親を捨てて、一人で出奔(しゅっぽん)の汽車に乗ったし、長じては故郷を捨て」た
▼きょうが送り盆で18日まで休暇というのも多いようだが、Uターンラッシュと重なり、台風10号が縦断した西日本を中心に大きな影響が出た
▼岩手は台風の直撃は免れそうだが、帰省や旅行の人は台風により、のんびり気分が幾分削がれたと思う。帰省は年末年始とお盆が定番。中でもお盆は墓参があり、古里をより実感する時期になる
▼八幡平市のふるさと納税の返礼品をめぐってこの時期に受託法人の代表理事らが誤認表示容疑で逮捕されたのは残念だ。背景には故郷愛による納税という制度の本旨が、返礼品競争により薄まってきたこともあるのではないか
▼寺山は書く。故郷というものは「捨てる」ときにはじめて、意味を持ってくるという性質のものらしい。だから一生故郷を捨てないものには、「故郷」が存在としては感じがたいだけのことなのである│と。物理的に離れあるいは逃げることで捨てて現れた存在が、自己確認にもなる。生地や親元を離れて暮らし「捨てる」ことになっても「見捨てない」でと故郷の側は願っている。人口減少が顕著な地域は第二の故郷と思ってくれる応援団も増えてほしい。
  

 2019年  8月  15日  ― 不気味な全体主義の足音 ―
 愛知県の「表現の不自由展」中止の問題で、仕掛け人の津田大介氏が神戸市で予定していたシンポも抗議で中止になった。津田氏のことは知らないが、名前が自分と1字違いで心配になる。
▼確かに日韓関係これほど大変な時期に、あまりに論議ある慰安婦テーマの作品を不用意に置いたり、昭和天皇への冒とく的な映像など、県営的な美術展としては左翼的に偏向していた。初めから政治リスク覚悟なら役所の予算は使わず、自腹を切る方が潔い。しかし無関係の神戸の催しにまで抗議殺到し、主催者が中止とは異様だ。
▼日本だけでなく世界に、SNSだか何やらを通じて「自分が不満なのはこの世の仕組みが悪い」「帰属する社会に私が正当に評価されないのは誰か不正している」「異論は徹底して排除すべし」などと鬼火が充満している。これは歴史に対して怨念めいた美術を作った側にも言える。
▼「軍靴の響きよみがえる」という陳腐な常とう句より、未知の不気味な姿の全体主義の足音が迫っているのではないか。不自由展について達増知事は開催の意義を一定、評価したようだが、西の方では名古屋と神戸の話に大阪が割って入り、知事、市長同士ののしり合いになっているという。
▼ここは京都あたりが「不自由展なに言うてん?」と仲裁しておくれやす。

 2019年  8月  14日  ― スパイと国の失敗 ―
 スパイ活動と言えばなぞめく。冷戦時代の例え話。ある国の海岸に上陸作戦を競い、3国が砂浜の地形を詳しく調査した。
▼米国は超音速機や人工衛星から高性能のカメラで撮影、分析した。ロシアは月のない深夜、潜水艇で忍び、工作員を上げて測量した。中国は白昼100人の視察団を堂々と送り込み、海水浴や釣りをしてスナップ写真を撮らせ、口頭の報告をまとめた。最後に北京が笑う。
▼ソ連時代の政治的ジョークのたぐいと思うが、情報技術の覇権を巡る米中新冷戦を見れば、うなずけるものがある。岩手県人で情報活動と言えば、日露戦争中の軍事探偵の横川省三が思い浮かぶ。もう1人は旧前沢町出身の小野寺信(1897│1987)。陸軍の元将官として昭和の末まで生き、晩年の貴重な証言がテレビ、評伝、小説などで広く知られるようになった。
▼第2次大戦中の欧州に情報網を巡らし、日本に同情的なポーランド人の協力で、ソ連参戦の密約を探知して東京に送った。枢軸国、中立国ときに連合国側の人間とも、テロやあくどい細工はせず、誠実に付き合って和平に奔走した。
▼だから決して闇の軍人ではなく、奥州市では郷土の先人として市民劇にもなった。あのとき小野寺のスパイ活動は成功していたのだが、それを生かせぬ国は失敗した。

 2019年  8月  12日  ― ふるさと納税盆に返らず ―
 八幡平市のふるさと納税の返礼品のマツタケが産地偽装の疑いで、委託先の陸前高田市の法人代表ら2人が逮捕された。数十件も発送されてしまったという。八幡平市の事業自体どうなるのか。
▼ふるさと納税はとても良い制度だと思うが、省庁によってまだ懐疑的な声がくすぶっている。総務省は高額な返礼品で射幸心をあおると批判し価格は寄付額の上限3割に抑えよとガイドラインを出し、何とか手綱を締めようとした。
▼しかし財政的に自治体を縛り付けてきた国が地方の自律性を嫌っているようにしか見えないのか、各地で言うことを聞かない首長が出た。市町村にとって返礼品の負担分は、地元の良い企業を使えば産業振興になる。
▼その波及も織り込んで始まった制度なのだから、おかしな事業者は入れないよう厳格に調べるべし。花巻市でもエアガンは返礼品にふさわしくないと取り下げる騒ぎに。きちんと品物をそろえねば、それ見たことかとまた国に下達の口実を与えてしまい、制度の根幹を揺るがす。
▼せっかく故郷、岩手の香りを楽しめると受け取った側も産地偽装となれば怒る。そちらに陳謝し、再発防止に理解を願うことも大切。全国的な話題になって、折しも帰省の時期の愛郷心に水を差したのではないか。これじゃ「覆水盆に返らず」ですよ。

 2019年  8月  11日  ― 2番手の戦い ―
 フォーラム盛岡で上映の「アルキメデスの大戦」は、北上市出身の劇画家の三田紀房さん原作で面白い。
▼「大和」の映画だが、戦艦12隻で実際に活躍したのは中途半端な戦力と化していた「金剛」だ「伊勢」だと軍艦オタク話をしても仕方ないので、映画で山本五十六役の主演の舘ひろしさんについて。
▼「終わった人」で盛岡を全国にPRし、国際映画祭受賞のスターには申し訳ない書きぶりだが、あんな中途半端なところからスタートして今のスタンスをよく築き上げたと思う。舘さんデビューのバンド「クールス」はどう見ても「キャロル」の弟分だったし、ソロになってもやはり矢沢さんの2番手。
▼しかし往々にして1番手は神棚に祭られ、退屈なカリスマになる。2番手は1番手の失敗や、できないことを見て成長し、いつの間にか追い越していたりする。銀幕の提督ぶりを見ると舘さんまさにそれ。配役により緩急自在の名優だ。
▼海の話に戻れば、ペルシャ湾の商船護衛に艦艇の参加を求められている。何しろ世界は「日本いまだ軍国主義」と非難しつつ「大国なりもっと海外に自衛隊を」と迫り、さほど矛盾も感じない。そんな半端なインテリジェンスの国際世論には悩まされる。徴用工問題に有志連合。トランプさんのお話は中東、半端じゃすまぬのか…。
  

 2019年  8月  10日  ― 花巻東が初戦で涙 ―
 夏の甲子園大会で岩手代表の花巻東は9日、1回戦で敗れ姿を消した。徳島代表の鳴門と対戦。両チーム10安打と並んだが、序盤の失点が響いた。敗れたが、逆転の花巻東の片りんを終盤に見ることができた
▼鳴門の西野知輝投手は先発完投で154球を投げた。県大会から完投を続ける。花巻東は県大会同様の継投。両校とも県大会からのチーム本来の姿で戦った
▼岩手大会の佐々木朗希投手(大船渡)の起用法をめぐり投手の球数制限がクローズアップされた。甲子園にPL学園で5回出場した桑田真澄さんは昨年の時点で投球過多や球数制限への問題提起をしていた。佐々木投手の決勝での登板回避で賛否が盛んに出ているが、新潟県高野連が先んじて制限しようとするなど、問題意識は以前から出ている。過去にも感動の一方でエース1人が投げ続けたことへの批判も少なくなかった
▼花巻東も菊池雄星投手がエースだった時代、故障をおして登板し「投げるのが最後になってもいい」と号泣し語っていた。他にも力のある投手がいて登板を分けていたが、トーナメントでの目の前の試合に懸ける高校球児の思いは特別なものと理解する
▼今年の選手権は第101回。部員の丸刈り義務をやめた花巻東の選手を見つつ、継承と発展に変わる姿勢は必要なこととつくづく思う。
  

 2019年  8月  9日  ― 美術の力 ―
 愛知県の「表現の不自由展」に出品されていた慰安婦の少女像に抗議が殺到し、中止に追い込まれた。
▼暴力的なまでの脅迫は、いかなる作品にもあってはならない。確かに韓国人があちこち置きたがるあの人形に歴史の真実は疑わしい。だから反発したのだろうが、ならば「政治性むきだしの駄作」とか、まともに美術批評すべきだ。
▼かつて戦争画というジャンルがあり、紫波町出身の橋本八百二も「ニューギニア戦線」「サイパン島大津部隊の奮戦」などの大作を描いた。劇画家の小林よしのり氏が単行本の表紙絵にあしらった。戦意高揚の狙いにもかかわらず、血みどろの死闘が悲壮なリアリズムで迫ってくる。
▼八百二の関係者からこんな話を聞いた。ご覧になった昭和天皇が「橋本君の絵はもう少し何とかならんかなあ」と漏らしたという。表向き報国の作品をもて八百二は「戦局これほど凄惨(せいさん)になっております」と、お上をいさめたのかもしれない。天皇をして「この戦争は何とかせねば」と嘆かせたなら、八百二の画力おそるべし。
▼美術の力とは本来そういうものだろう。同展には昭和天皇の写真が燃える動画もあったそうだが今回の騒動、思想的にひずんだ反戦と野蛮な愛国のいさかいでは、令和の御代と思われない。8月の霊に画伯を思う。

 2019年  8月  8日  ― 盛岡市長選でビジョンの違いを ―
 お盆を含め10日から長い夏休みとなる方も多いと思うが、盛岡は18日に市長選と市議選が始まる。告示まで10日だ。ただ、盆期間中の活動は人によっては悪い印象を与えかねず、さじ加減の難しい時期だ
▼今市長選は5選を目指す谷藤裕明氏と前回に続く挑戦となる内舘茂氏、県議から転身を図る福井誠司氏という現新の三つどもえが確実となっている。3人以上の争いは谷藤氏初当選時以来となる。今年は7月の参院通常選挙と重なりこの間、活動は控えられたが、終了と同時に活発化。東日本大震災後は市議選と同日執行の日程となったため、連動も一部に見られる
▼盛岡市内を歩けば、例の政治ポスターがあちこちに掲示されている。複数の顔写真入りのデザインが多いが、はたして何の選挙に出る人なのかを知らない市民も多いようだ。22日に知事選、30日に県議選の告示が控え日程が続くため、市民が正確に把握していない要因となっている
▼ポスターの混在は市民の混乱を誘発しそうだが、政策・ビジョンの違いが明瞭でなければ、候補者による違いが市民に見えてこない。市長選の3人は無所属で出馬するようで似通った政策・ビジョンとなりはしないかと懸念する。観念的なキャッチフレーズではなく、具体的重点政策項目と展開論の違いを積極的に示してほしい。

 2019年  8月  7日  ― ヒツジとオオカミ ―
 新聞社に入って絶対に口にすまいと心に決めていた言葉がある。「記者なんてやくざな稼業さ」。
▼そんなきざなせりふで孤狼を気取りブン屋風吹かすより、ヒツジの群れのサラリーマンでいた方がずっと誇らしい。あの人たち大嫌い。そんな態度があからさまに顔に出ていたのか一度、取材現場で組の皆さんに取り囲まれ、恐ろしい思いをしたものだ。
▼かつて盛岡市内でその筋の一味の凶悪事件があり、公判を取材して彼らの卑小な論理と空しい人生にげんなりした。若い頃、いわゆる「半グレ」の男に言われた。「本当はヒツジの方が強いのよ。普通にやってるやつが一番怖い。おれたちにはその普通ができない。弱いんだ…」。
▼吉本騒動では反社会勢力が特殊詐欺集団であったことも明るみに出た。最近のオレオレの手口の複雑な巧妙化を見れば、義理が重たい仁義がすたると渡世人なりの顕教が、今はITや経済を悪用する密教に転じている。極道のカルト化だ。
▼「たとえ暴力団が武装していても、警察や軍隊とは根本的に違う。暴力団は全て金のためにだけ動くから」と聞いたことがある。暴対法以来、彼らは追い詰められ潜行し出している。だから「どんな狂ったことでもやる。もうかるとなったらゆすりたかる」と、カルト集団にならないよう警戒すべし。

 2019年  8月  6日  ― 核兵器の脅威増すのか ―
 8月6日は犠牲者を悼み惨劇を後世に引き継ぐ広島平和記念日として、記念式典が行われる。広島、長崎へ1945年に原爆が落とされた。終戦後から核兵器のない世界の実現が訴えられてきたが、被爆者らの願いはかなっていない
▼米国のオバマ前大統領が在職時に広島を訪問したが、トランプ大統領は不公平という認識からロシアの条約違反を理由に中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を通告し今月2日に米ロ2国間の条約は失効した。世界の核兵器保有国は核不拡散条約(NPT)で認められた英、仏、中を含む5カ国以外にインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルが保有しているとみられている。アジアに多く、日本は囲まれている感がある
▼INF調印の87年当時、米ロは二大核保有国であったが、おそらく両国が抜き出ている状況は変わらない。ただ、技術があれば保有数はいくらでも増やせるだろう。ゆえに国際的な約束事で制御が求められる。米国は特に中国の軍事力に神経をとがらせており同じ枠組みに引き込みたいようだ。だが、INF廃棄条約の失効で中国はますます乗りにくくなった。米ロの核増大が現実的になったことは大きい
▼広島の原爆死没者名簿には昨年の風通し時から5393人が足された。軍縮の世界は風通し悪く視界不良となったか。

 2019年  8月  5日  ― 仲間割れに笑う者 ―
 今年は第2次大戦勃発から80年。米英仏ソ中の連合国側と独伊日の枢軸国側に分かれて戦ったが、この中で英仏が身内でやり合った史実はあまり知られていない。
▼フランスが敗れたのは日本が米内内閣の頃の1940年6月。ドイツの侵攻にあっさり手を上げた盟邦に、肩を組んでいた英国は不信と侮蔑を募らせた。枢軸に寝返られるならいっそと、敗残の仏艦隊に英海軍が突然襲いかかった。これにはフランスも憤激し、メルセルケビル海戦などが起きた。
▼のち英国は日本軍がマダガスカルに上陸すると思い込んだ。当時はフランス領で、すぐまた放り出すに決まっている。それなら自分で守りたい。取られれば日本は次アフリカを狙うと恐れ、マダガスカルを勝手に攻めて仏軍と戦った。
▼米国相手に生きるか死ぬかの日本に、そんな余裕あるわけないのに。あまりに無意味な戦で死んだ英仏の兵隊が気の毒だ。敵陣の裏切りの流血を、ヒトラーとムソリーニはあざけり笑い眺めていた。歴史的に英仏はライバルで何度か戦っているにせよ、このときはドイツそっちのけで何をやっていたのか。
▼現代も同じ。日韓が対立し続ければ喜ぶのはどこかの2人の独裁者だろう。緊迫が増す一方の世界でいつまでも仲間割れでは、他の仲間にも構われなくなってしまう。

 2019年  8月  4日  ― 深まる日韓の関係悪化 ―
 政府は予告通り2日、韓国を「ホワイト国」から除外する政令改正を閣議決定した。28日施行となる見通し
▼日本のみならず主要国は、核兵器など大量破壊兵器拡散防止のため軍事転用可能な製品の輸出を管理している。ホワイト国は拡散の恐れがないという信頼を得ている国が認定される。特に危険な製品の3年分の許可を一括して出すなどの輸出優遇に浴せる。日本の認定は米国など27カ国にすぎない。百数十カ国は個別の輸出審査が必要となっている
▼韓国政府は日本の方針公表後、猛烈に反発を強め、今段階で沸点に達した感がある。文大統領は国民の反日感情をあおるかのような「盗っ人たけだけしい」と第三者から見て品位のない言葉まで使っている。韓国国民に比べ日本国民はこの問題に全般に冷静で、日本政府も努めて粛々と進めている印象だ。だが、言われているように元徴用工問題に対する日本の要請に門前払いのような韓国の対応に、少なくとも現政権への信頼を持てないという認識のあることは疑い得ない
▼両国は親和と嫌悪の度合いが行きつ戻りつしてきた。その中でも地方や民間の交流が盛んになったが、現在の情勢がストップを掛けた。待つのは非難の応酬か歩み寄りの協議か。米中間の経済のように着地点の見えない2カ国対立の行方はいかに。

 2019年  8月  3日  ― ビジネスモデルの限界 ―
 あすから盛岡市の肴町商店街で七夕が始まる。ななっく閉店後初開催。核店舗を欠いてはいても例年に増してにぎわってほしい。
▼ななっくが6月初め閉店したとき、親会社は2、3カ月後には再開発計画の方向性を示すということだった。そろそろどうなっているのか気になる。他の懸案もあるようだが、河南の地域経済をけん引するような構想が欲しい。
▼ななっくの経過を見ると10年ほど前のシティ青山閉店を思い出す。あのときはダイエー破綻後、核店舗が何度か入れ替わったが、やはり左前のイメージが付いて縮小再生産に陥り、難しかった。住民に聞くと、「さすがに天下のスーパーの店舗だったので、よく考えて作っている。しかし30、40代のニューファミリー向けだ。入り口の動く歩道は年寄りが怖くて乗れない。高齢時代向きでない」。
▼社会環境の変化を考えず、最大商圏の滝沢ニュータウン造成当時のロードサイド型で、大きく建て替えたことに原因があったのか。ななっくの場合も中心商店街におけるビジネスモデルが限界に達して立ちゆかなくなったなら、同じような形と規模の施設でなく発想の転換が必要なのであろう。
▼七夕の短冊に再生の願いを書いてみたい。七夕の2文字を透かして見れば「ナナック」と読める。そこに一本、足してあげて。  

 2019年  8月  2日  ― 風刺画とフェイク動画写真 ―
 漫画家、イラストレーター山藤章二さんの「ブラック・アングル」は週刊誌の人気連載で、巻末ページの風刺(パロディー)画は裏の顔≠セけど表の顔のように最初に開く読者が多かったようだ
▼辛口の内容には物議を醸すことも多々あった。だが、対象が権力や有名人、実力者そして悪業≠ェ大半で、一般の人から見れば上の人という感覚。パロディーに共感し、腹立たしく思っていたことを扱った時にはよくぞ描いたと溜飲を下げた。パロディーは表現する側の一方的な発信だが、扱われた側に許容する度量があって成立する。告訴だなどと言い出す政治家は度量が小さいという印象を持ってしまう
▼昨今はデジタルのソフトウエアが日々進歩し加工された動画や写真がネットに流れる。自分の写真に盛る≠フはお遊びだが、他者をおとしめるようなリベンジポルノなどの暴露ものの情報公開は論外の上、悪意をもって加工したフェイクを事実のように伝える投稿が問題になっている。受信側がフェイクと認識せず事実として拡散したことで、使われた側の被害拡大を助長する例も
▼トランプ大統領のフェイクニュース連呼の効果なのか、真偽を疑う姿勢は広がりつつある。事実を装った、うそは困る。反対に真実を突き批判精神のある風刺画は今日こそ再評価されていい。

 2019年  8月  1日  ― 盛岡さんさに街の夢 ―
 10月に本社50周年を迎える企画として、きょうから10月7日まで「もりおかの街の夢作文コンテスト」を募集します。市内の小学高学年と中学生を対象に盛岡の景観、歴史、交通について、夢や理想を書いてみてください。詳しい要項は随時、8面の広告欄に掲載します。夏休みの課題に取り組んでもらえれば幸いです。
▼盛岡さんさが始まる。本紙も祭りを盛り上げるため毎年、特集号に力を入れている。今年は投稿に盛岡市の佐藤圭優さんから素晴らしい文章を寄せられた。仙北地区の伝統さんさで活躍している佐藤さん。保育園の頃から統一さんさが得意だった。
▼小学5年のとき、背伸びして地元の仙北小鷹さんさの門をたたいたが、とどろき渡る群舞におののき、泣いて帰った。何ともかわいらしい。それでもおそるおそる練習に加わり年々上達し、今は立派な一員に。
▼大学生の現在から少年期を振り返り、その距離感のうちに地域の歩みと文化が描かれる。率直で伸びやか、祭りの夏にふさわしい軽やかな文体で、若いっていいなと思う。佐藤さんだけでなく多くの児童や青年が伝統文化に憧れ、岩手の郷土芸能を伝えていく覚悟は素晴らしい。
▼小鷹さんさも地域ぐるみで、老若男女が親子鷹のように芸を磨き、盛岡の魂を代々受け継いでいってください。

2019年7月の天窓へ