|
「文苑」は4編あり、その一つが農園作業の様子を書いた(2年時)同期の鳥生敬郎君の作品。旧仮名遣いのまま全文紹介しよう。
豆を引く
2年 鳥生敬郎
「オー、今日の作業なんだっけな」
「今日は豆の収穫だと」
「ハハーそこで縄一本づつ持ってこってそったんだな」
或る秋晴れの午後、僕等は上田の大路をこのやうな言葉を交しながら報国作業園に向って歩いてゐた。やがて目指す作業園に到着した。見渡せば、眼前に展開される畑には、我々の育てた大豆が、その黒々とした秋の稔りを一面に横たへてゐた。
「各自一抱へづつ豆を引け」
と言ふ号令で僕等は一斉に片っ端から豆を引き始めた。一本、二本と抜く中に、時折根が固くてなかなか抜けないのがある。両手両足に一ぱいに力をこめて引くと、思ひがけずすっぽりと抜けて、力余ってどしんと尻餅をつく。そのはづみに根についてゐた土を、傍に居た友達の顔にはねかけて、苦情を言はれたりする。
かうして晴々しい秋の日差しを受けながら楽しく作業が出来るのも、南の又北の戦場に御活躍なされてゐる先輩諸兄の御蔭と思へば、一本一本抜いて行く我等の手にも感謝の力がこもる。
やがて、小脇一ぱいになった豆を、各自の持参した縄にからげて、畑の中央にある広い道に整列した。
「出発!」
僕等は大豆がなくなって何だか物足りなくなった畑を後にして帰途についた。
春から夏…秋…と凡そ半年にわたる我等の勤労の結果、今一枝々々の豆となって我等の手に溢れてゐるのだ。
かう考へて来ると、此等の豆に、何とはなしに一種の親しみをさへ感じて来る。
「おいおい、お前たち、豆を落しながら歩いてはだめだぞ。」
とO先生が自転車に乗って過ぎて行かれる。
道端で遊んでゐた子供が物珍しさうに、豆をかついだ中学生の行列を見送っている。
だんだん腕が疲れて来る頃、僕等の目の前には、はや学校の正門が近づいて来る。
「歩調取れ」
週番の號令で僕等は歩調を取りながら、意気も溌剌と御真影奉安庫の前を進んで行った。
◇ ◇
「部活動報告」
柔道部…昭和17年6月25日、2、3年生の、岩中、盛商、盛中3校のリーグ戦あり、われらの2年組は、武田、国枝、鈴木、八角、鳴海、太田、三浦の諸君出場。1勝1敗で2位。神宮大会県予選で飯田、荒谷、小川の諸先輩が岩手中学(藤澤、佐藤、赤坂)に勝って優勝。荒谷さん神宮大会出場。
弓道部…明治節奉祝大会に、同期から村田篤胤、加藤敏昭、千田諄の諸君出場。
体操部…同期では伊藤平一君活躍。
陸上部…神宮大会で金子先輩400メートル2位。
弁論部…西控所での校内大会で、わが2年生は最多の6名、大矢良孝、鈴木辰三、笹川敬介、小田久雄、二宮星郎、向口啓三の諸君が出場し、大矢君2位入賞。
−以上主としてわたしたち同期にかかわる部分のみ紹介した。(資料提供・一ノ渡義巳、記述・佐藤洸)
|