2024年
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平成にバブル2度、令和は不調 「小沢本」の経済学 主役に一郎101冊 礼賛の嵐、批判は少し、だが…

2024-03-26

小沢本を背景に立つ「いっちゃん人形」

 県人の衆院議員、小沢一郎氏にまつわる本のタイトルが、昨年末で101冊に達した。「小沢経済」が出版界にあった。発行年を区分すると、平成2度の大きなバブルがあり、令和に入り低迷している。内容は、「礼賛もの」「畏怖もの」「策士もの」が9割を占め、「批判もの」は11冊だけだった。論壇の過大評価が政治家の重心をふらつかせ、党派に腰が定まらず、ついに総理の椅子を逃した感がある。壮観に並んだ「小沢本」の背表紙に、未完の改革と、幻の政権を見て取れる。(鎌田大介)

 発行点数の推移を見ると、自民党幹事長時代から世の耳目を集め、党を割った1993(平成5)年に最初のヤマを迎える。

 1995(平成7)年が1冊だったのは阪神大震災とオウム真理教事件の影響で、出版界のトピックスが一時、移ったからだろう。翌年また跳ね上がる。

 新進党が退潮、解体して自由党になると、一気に注目を失う。その期間5年間の点数は3冊。自由党が民主党に合併するや、再び急騰する。民主党代表期の2006(平成18)年は8冊。2009(平成21)年には宿願の2大政党制による政権交代を果たした。

 民主党時代のヤマが頂点に達したのは、2010(平成22)年の陸山会事件の頃。タイトルには、「禁断」「怨念」「完全無罪」「超権力者」「小沢革命」など扇情的な惹句が躍り、頼朝に追われる義経さながらの判官びいきにペンが走った。

 その一方で、小沢シンパだった西部邁氏が「ゴロツキ」呼ばわりに転じ、批判本に加わった。

 発行点数と裏腹に党内には「壊し屋小沢」への警戒が募り、事件の波紋で国民の共感は減じていった。平成最後の政変劇の民主離党の際、10冊の大台に乗る。しかし、少数野党となった平成末から令和時代へ、長期の低迷におちいる。

 著者で最多は大下英治氏の12冊、2位は板垣英憲氏の8冊、3位は平野貞夫氏の6冊だった。

 新生党から民主党に至るまで、ドキュメンタリー作家の大下氏とジャーナリスト出身の板垣氏が忠誠合戦を繰り広げた。

 大下氏の側には講談社、徳間、河出書房新社、KKベストセラーズなど大手が付き、執筆期間の長さにおいても軍配が上がった。

 元参院議員の平野貞夫氏は、政界裏面史から小沢弁護の論陣を張った。自民党から生活の党まで、一貫して小沢政治の理解者であり続けた。

 昨年は「小沢本」が2冊刊行され、1冊は小沢氏の政治改革を歴史的に回顧し、1冊はなおも小沢氏による政権交代をあおる大下著だった。

 政局の風がまだ「小沢本」のページをめくるのか、あるいは偉人伝に祭り上げられるのか、「剛腕伝説」の終章はいかに。



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