2024年
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胡堂の若き時代を書簡から読み解く 紫波町の八重嶋勲さん 「学友からの手紙」出版 約120人510通に青春譜

2024-03-28

「学友からの手紙 野村胡堂の青春を育んだ書簡群」を出版した八重嶋勲さん

 紫波町大巻の八重嶋勲さん(85)は、同町出身の作家・音楽評論家の野村胡堂(1882~1963)の青春時代を書簡から読み解いた「学友からの手紙 野村胡堂の青春を育んだ書簡群」を出版した。胡堂をめぐる120人の510通の手紙を解説付きで収録。盛岡中学(現盛岡一高)時代の友人や文学仲間、親しい人からの手紙が中心で、「10代から20代の野村胡堂の青春像、人間形成の様子が見えてくる」と話す。

 本書は、野村長一(胡堂)16~19歳の「盛岡中学時代(紫波尋常高等小学校時代を含む)」(1898~1902、明治31~35年)に始まり、「浪人時代」(1902~04、明治35~37年)、「東京第一高等学校時代」(1904~07、明治37~40年)、「東京帝国大学時代」(1907~10、明治40~43年)の4章で構成。

 胡堂とハナ夫人ら親族が大切に保管し、現在は野村胡堂・あらえびす記念館(紫波町)に保管されている2078通の中から、金田一京助ら学友が胡堂に宛てた手紙を収録。同館の許可を得て、盛岡タイムスに掲載(2010年11月~17年5月)した連載をまとめた。

 1902(明治35)年4月18日に、猪川浩が、盛岡中学を卒業して進学のため上京した長一(胡堂)に宛てた手紙は、石川啄木のカンニング事件のてん末を書いた貴重な記録。啄木がけん責の処分を受けたことを記し、「其を高慢らしくふれ歩行くのもまけおしみとは知れども気障(きざ)で気障で仕様がない」とつづっている。

 「学友たちの本音が出ているところも面白い。胡堂の面倒見の良さ、誰からも好かれる人柄が伝わってくる」と、私信である手紙ならではの魅力を語る。

 八重嶋さんは1999(平成11)年に盛岡市役所を退職後、野村胡堂書簡の解読・整理作業にあたり、「野村胡堂・あらえびす来簡集」(2004年、紫波町発行)の編集に携わった。NPO法人野村胡堂・あらえびす記念館協力会の副理事長。

 本著「学友からの手紙」は、野村胡堂没後60周年記念として出版。同館の協力で胡堂とゆかりの人々の写真や一部の資料も収録した。

 千葉茉那学芸員は「研究の基礎資料として活用させていただきたい」と話している。

 本書はA5判、651㌻、録繙堂出版、税込み3500円、県内の主な書店で扱っている。



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