2005年 4月 5日 (火)        

■  日本一の村に投じた一石 滝沢村前助役の熊坂伸子さんに聞く

     
  退任した滝沢村の熊坂伸子助役(在職時に撮影)  
 
退任した滝沢村の熊坂伸子助役(在職時に撮影)
 

 熊坂伸子さんが滝沢村の助役を退任した。夫は熊坂義裕宮古市長。村初の民間出身として異例の大抜てきを受け03年5月に就任した。任期中の昨年3月には東北大大学院で博士号を取得した。助役として第5次総合計画や男女共同参画基本計画策定に積極的に携わった。柳村純一村長が提唱する「小さな政府」実現のため任期途中で去ったが、村議会や当局に一石を投じた。

 −退任の心境は。
  熊坂 2年間楽しく仕事をさせてもらったので、やれるだけのことはやったと思います。正直もう少しやりたいこともありました。いろいろありましたけど滝沢村を去るのはとても寂しい。

  −やりたいことというのは。
  熊坂 総合計画は計画ができましたけど、まだ評価、システムが構築されていないので、その部分、自分の専門のところをやってみたかった。これから村外の(政策形成)パートナーを募集するかもしれないので、そのときは加えてもらいたい。

  −柳村村政で評価するところ、課題は何か。
  熊坂 評価するところは、役場内部の意識改革はすごいなと。課長投票制もだから実現できたのかなと。課題は逆に外部に対して働きかけとか、意識改革が内部改革に比べて弱いと思いました。

  −退任会見で「宇宙人」と自称されたが、その意味は。
  熊坂 わたし自身は悪い意味とかじゃなくて、役場の中にいて自分では常識的な発言や行動をしているつもりでしたけれど、一部の人からは宇宙人のように見えたのではないかと。違うように見えたのではないかと思います。

  −行政の現場で働いてみて最も感じたことは何か。
  熊坂 一番思ったのは、理論と実際以上に、役場の論理と住民の感覚にはやっぱり乖(かい)離があるなと感じました。

  −具体的に言うと。
  熊坂 住民が期待する公務員像と公務員が目指す公務員像とは違うかなと思ったり。大切に思う価値観、住民のためにと思っていろいろやっている真しな態度は分かるけれども、それが的を射ていないと思うこともあったりして。それが一致すれば乖離はないと思う。いつもではないけど、そういう場合もあると素直に思った。

  −政治家柳村純一村長をどう評価するか。
  熊坂 大変個性が強く、信念とリーダーシップにあふれている。ぐいぐいとみんなを引っ張っていく。カリスマ性が強い。議員をされるよりトップになる方が力を発揮される。

  −新総合計画策定に携わって、示された将来像に基づく10年後の滝沢村はどうなっていると思うか。
  熊坂 1年後も2年後も想像が難しい時代ですから10年後ははっきりいって分からない。けれど、この計画は住民と一緒にNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)やPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の考えに基づいて作った。今までのように固定した将来像に向かってというより住民の変化に合わせて非常に柔軟性がある。

  一歩ずつ住民と行政が力を合わせて計画を推進させていく。今まで以上に村は住民に近い自治体を目指している。より住民に近い村、良い方向に変わっていくと期待している。

  −総合計画にある豊かさ、幸せとは何か。
  熊坂 豊かさや幸せの尺度が今までGNPやGDPの経済尺度だけでしたけれども、総合的な尺度が必要だと思う。今のところ共通尺度がないですが経済指標プラス環境尺度だったり、福祉尺度だったり。いろいろな暮らしやすさ尺度だったり、総合的な尺度で発展を図る。このごろ持続可能性と言うのはそれでしょう。

  同じ産業振興でも利益はAが10で、Bが9だったとして、雇用や環境の負荷を低減することはBが5で、Aが1だとすると、経済振興のうえでやや劣っていたとしても、総合的にはBを選択するんじゃないか。わたしはそうするべきだと思う。

  それが豊かさとか発展の度合い。自治体はその意味で競争するべきで経済だけで競争する時代ではない。

  −他の自治体から助役などの就任要請があったら。
  熊坂 必要と言ってくれるところがあれば、特段の支障がない限り、原則前向きに考えるのが基本的な主義。県外は総合評価しないと。家族の思いもあるので。

  −助役の発言をめぐって村長からの講演禁止命令や村議会の対応は、女性だったからだと村内外から声が寄せられた。どう思うか。

  熊坂 役場にそういう声は寄せられていない。そういう声が寄せられたということに驚いた。女性だったからとは思っていなかった。昨年来の一連の問題は、このごろ合併論議の中ですごくクローズアップされてきていると思う。今後、継続的に地方議会の在り方というのは論議されるのかなと思っている。

  −助役にとって滝沢村議会とはどういう存在だったか。
  熊坂 議員一人ひとりはまじめで立派な方たちと思っています。議会という組織としては、わたしにとってはすごくどう対応していいか難しかった。

  −村当局や村議会が新しいもの、批判を受け入れられない風土があるとの声もあった。どう思うか。
  熊坂 新しい風土を受け入れないというのはわたしはないと思う。わたしを受け入れてくださった。議会にも就任を認めていただいた。わたしがいること自体が受け入れてもらったと思っている。批判を受け入れないというより、異なる見方とか意見を受け入れにくい風土が一部にあるのかもしれないとは思います。

  −将来、「議会は必要なくなる」と思うか。
  熊坂 形はもちろん変わるかもしれません。でも住民が全員参加して地域を経営するとか運営するとか可能な地域があれば別ですけれども。全員参加の地域運営ができないなら代表機関は必要だと思います。
(敬称略)


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