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松本竣介「街(自転車)」1940年、72・2×91センチ(岩手県立美術館蔵) |
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雨の日が続いていたが、珍しく雲の切れ間から青空が覗(のぞ)いた日に、自転車で岩手県立美術館に出かけた。福井良之介孔版画展をもう一度観(み)るためだ。福井は一関に疎開していたこともあり、県立美術館もコレクションに力を入れている。地味ではあるけれど、とてもいい展覧会だ。図録(これも充実している)に寄せられた宮崎進画伯の〈回想〉に、「(福井が)自転車でやって来た」という文章を見つけて思わず微笑した。
二階の常設展に行くと、松本竣介の「街」に自転車が描かれている。都会の雰囲気を出すうえで、洒落(しゃれ)た帽子をかぶった女性などと共に自転車が必要だと竣介は考えたのだ。
美術館を出ると、今にも雨が降りだしそうな雲行きになっていた。サディスティック・ミカ・バンドの「サイクリング・ブギ」を口ずさみながら家路を急いだ。美術作品には自転車がよく登場する。
サイクリングの途中で休憩する情景を独特のスタイルで描いたレジェは、ツール・ド・フランスの選手をめざした時期もあったそうだ。ヴラマンクは作品の中に自転車を描きこそしなかったが、画家として認められるまでは自転車レースの賞金で糊口(ここう)をしのいでいた。動きのある風景画に、自転車レースの疾走感が反映されていると私は思う。モンドリアンも作品のなかに自転車は登場させていないが、自転車に乗ってスケッチ旅行に出かけていた。自転車にまたがったモンドリアンがスケッチをしているところを仲間の画家が描いたスケッチが残っている。
口ずさむ曲が高田渡の「自転車に乗って」に変わる。
文藝春秋社のロビーに色鮮やかな壁画が描かれている。これを描いた加藤一も若いころは自転車競技の選手だった。画家としてパリを拠点に活動する一方、日本競輪選手会の設立に参加して常務理事を務めるなど自転車競技普及と発展のために国際的に活躍された。自転車乗りが感じる風の雰囲気を加藤一ほど的確に描いた画家は他にいないだろう。
池田満寿夫もよく自転車を描いたが、健康的なイメージではなく、エロチックなものとして捉えられている。
美術とは関係がないが、キューリー夫人の新婚旅行は、夫ピエールと二人でフランスの田園地帯を自転車で巡るサイクリングだった。
また曲が変わって、あんべ光俊と飛行船の「遠野物語」を歌っているうちに家に着いた。タイトルに「自転車」は入っていないが、これは自転車で遠野のまちを巡る歌だ。
部屋のドアをあけるのと同時に雨が降りはじめた。
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