2006年 5月 7日 (日) 

       

■  〈盛岡百景〉63 東北農試の桜並木 

 
     
  正門道路を覆わんばかりに枝を広げる桜並木  
 
正門道路を覆わんばかりに枝を広げる桜並木
 
盛岡市下厨川の東北農業研究センター(旧東北農業試験場)は4月下旬から5月初旬、国道4号からでも見事な桜色が目に入る。正門を入ってすぐから連なる桜並木が春爛漫(らんまん)を迎える時期だ。樹齢は100年近いとみられ、太いが老いを感じさせる幹から伸びた枝には今でも毎春、若々しく見事な花が咲く。

  並木の道路側はソメイヨシノの老木。後ろ側には比較的若い桜の木が植えられている。並木の間に見える本所前まで、ざっと60本ほどの桜が並ぶ。

  老木のソメイヨシノはどのような経緯で植えられたか。この場所に試験場が設置されたのは1950年。以前は岩手種馬所(のちに岩手種畜牧場厨川厩=うまや)があり、国道4号を少し北上した現家畜改良センター岩手牧場の場所へ1896(明治29)年に開設された岩手種馬所が、業務転換で種馬育成所となったためこの場所に移転してきた。1907年のことで、推定樹齢から移転開設のころ桜並木が整備されたと考えていいだろう。

  桜並木は盛岡百景に選ばれたころ、もう少し長かった。選定されたころから、場内の整備計画が立てられていて、いざ実行に移ろうかという段階で、桜やアカマツの一部が犠牲になると、職員の中からも伐採反対の声が上がったという。結局、現在の施設配置になったが、並木の一部は伐採を免れ得なかった。

  並木は正門から本所までの直線部分だけになったが、本所の裏手の辺りを散策すると、所々でソメイヨシノの老木に出合う。100年まで行かない樹齢の木も交じっているが、かつての並木を想像する手がかりを与えてくれる。

  職員らが広い敷地の中に桜を植え、愛してきたのだと実感させられる。裏手の桜は並木と呼べる環境ではないが、花期には春の若草の緑に点在する桜色が映え、開放性のある空間にすがすがしさを覚える。

  そうした景観の中に歴史を感じさせる建物の存在が目に入る。旧試験場は開設当時、移譲された施設を活用した。今日、その大半が姿を消している。しかし、旧覆馬場1棟が今も残り、農機具庫として現役だ。木造の床面積923平方メートルという広さ。試験場開場の式典会場に使われたこの建物は1908年の建設で、桜並木の老木と同期と言っていい。毎年、春に桜の花が咲くのとともに、場内の変化を見詰めてきた。
(井上忠晴記者)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします