2006年 10月 2日 (月) 

       

■  〈盛岡百景〉84 神子田の朝市

     
  近年、客足を盛り返しにぎわいを見せる神子田の朝市  
 
近年、客足を盛り返しにぎわいを見せる神子田の朝市
 

 「おはよがんす」、「寒なっす」。もし、石川啄木が現代に里帰りしたら、なまりの飛び交う神子田の朝市を訪れるに違いない。朝市のおじちゃん、おばちゃんたちは懐かしいなまりで温かく迎えてくれるだろう。

  朝5時ごろ、市に出店する近郊の生産者や業者が荷を積んで集まってくる。市は午前5時ごろ店の多くがそろい同8時半ごろまで開かれている。客入りのピークは6時から6時30分ごろだという。土曜、日曜は特ににぎわいが増す。

  朝市が現在地に開設されたのは1977年6月。週1日や週末など、開設する日が限られている市と違い、休みは原則月曜だけ。1年を通じ約300日も開く。このような常設市は神子田だけと、運営する盛岡地区生産者立売組合の菊地司郎事務長は説明する。

  神子田の朝市の起源はかつて南大通2丁目にあった市中央卸売市場の外郭で、生産農家が営んでいた直売所。68年の市場移転で立ち退きを迫られ、有志が同組合を設立し、南大通3丁目に場所を確保して朝市を始めた。生産農家が引いてきたリヤカーに荷を積んだまま脇に立っての商売。立売の名はここから来ている。

  ところが、車社会の進展でリヤカーから軽トラックへと転換と予想を超える来客で、売り場と駐車場の不足という課題を抱えた。初代組合長の故藤村松治さんは神子田町内会に粘り強く掛け合い、77年に現在地を確保した。当初はなんでこんな離れた所にと不満も聞かれたが、今日ではよくこんな街中にと感心されるという。

  市は規模も大きい。115区画に200以上の生産者、約30業者のほか自由売り場がある。年間20〜21万人の集客だが、すべて順調だったわけではない。8〜10年前は大型スーパーやコンビニの相次ぐ出店の影響で、客足が減少する苦しい一時期があった。それが今では、市民の台所としてだけではなく旅行客が訪れる観光スポットの顔も持ちつつある。

  市に出すようになって10数年という1人のおばあちゃんは毎日、午前2時半ごろに起きて商品の準備をしてくるという。利益はあまりなくても朝市に来て仲間や客と話すのが楽しく「体の続く限りやり続けます」と笑う。そんなおばちゃん、おじちゃんとの対話も客を引きつける要素。買う食材を生かした調理法も親切に教えてくれる。ファストフード店が「スマイル0円」なら、朝市は「人情は無料、世間話もタダ」で売る。
  (井上忠晴記者)

 


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