2007年 9月 4日 (火) 

       

■  〈美術〉重さが解き放たれるとき パリ在住の宇津宮さんが個展

 盛岡市出身で現在はパリ在住の宇津宮功さんの個展「渡仏40年−パリで紡がれる神話世界」が1日、岩手町の石神の丘美術館で開幕した。1970年代から2005年までの絵画やデッサンなど63点を展示している。初日は作家による講演会「自作を語る」が開かれた。

 宇津宮さんは美大でアカデミズムの教育を受けながら平面絵画の可能性を疑い、卒業と同時に渡仏。サム・フランシスらの作品に触れることで「まだ可能性がある」と感じた。

     
  自作について講演する宇津宮功さん  
 
自作について講演する宇津宮功さん
 
  実際の制作ではアカデミズムの重圧に苦しみ、そこから逃れるための手段を模索。物の重さを描くようにと習った大学時代。だが「空中に浮くようなものでなければいけないのでは」と思った。それを徹底したのが「干渉」。「自分を捨てて思うままに描くと自然に重さが抜けると考え実行に移した」という作品だ。

  無機物同士が干渉し合いながら有機物のような新しい形が生まれる。「折りたたまれた人間達」シリーズは無機物が重なって人間の形になったもの。社会の重圧に苦しむ自分たちの姿を表現した。

  「黄色い河」シリーズは鉱毒水で汚れていたころの北上川がモチーフ。自然体で、どこを切っても水である川。自由の原点を川の流れに例えている。

  「生物圏保護区」シリーズのテーマは森林破壊。森林が破壊されて生命、生物、種が絶滅していく。見たものしか描くことはできないが、滅んだ種は見ることができない。それは残念で、やってはいけないこと。種はイメージに通じ、その絶滅を止めるという意味でタイトルをつけたという。

  生物圏保護区は気ままに生きられる場と想定して描いたが、社会に生きている限り自由な場を与えても必ず闘争が起きる。画面にも拒絶を示すようなものが多く現れた。「もう少し平和な闘争のない世界がいい」と「非・場」が登場。同シリーズには日本人でありながら、外国に長く住んでいることで「ひらめくことも心配することもある」という自身の現状も重ねている。

   45年生まれ。67年武蔵野美術大学卒業と同時に渡仏。68年グランプリ・ド・パーク賞受賞。71年ベルギー、オスタンド市美術館主催のビエンナーレ「ヨーロッパ賞」で銀賞受賞。81年フォンダション・ヴィトリー賞受賞。このほか、国内外で個展多数開催。

  10月8日まで。午前9時から午後5時。会期中は無休。入館料は一般300円、高校、大学生200円、中学生以下は無料。

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