2009年 5月 26日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉19 望月善次 六月のこの草原に

 六月のこの草原に立ちたれば足の底
  よりかゆき心地す
 
  〔現代語訳〕六月のこの草原に立ってみると、足の底が痒(かゆ)い気持ちがするのです。

  〔評釈〕「六月草原篇」十首〔『アザリア会雑誌』第一号(盛岡高等農林アザリア会、大正六年七月一日)〕の二首め。初句から二句にかけての「六月のこの草原」は、前に置かれた「六月のこの草原の草々はギヤマン色す、笑ひたくなる」の出だしと重なっている。連作たる所以であり、既に(旧制)中学校時代から、膨大と言ってよいほどの短歌を作り続けてきた嘉内には、「連作」などお手のものでもあった。また、この出だしの重複は、「六月草原篇」という表題にも相応しい。「かゆし」は、「皮膚がむずむずして掻きたく感じる。」〔『岩波古語辞典』〕が原義だが、その「かゆき心地」が話者の、どうした感情を意味するかは、この作品の範囲では、冒頭歌と同じく定め難い。しかし、評者としては、この感じを肯定的なものだと受けとめた。長い北国の冬を潜って、やっと迎えた春から初夏の季節の心地よさ、そんな思いが宿った「かゆき心地」ではないかと、勝手に思うこととした。

(盛岡大学長)

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