2009年 6月 10日 (水)

       

■ 〈盛岡市内の秘境駅探訪〉下 和井内和夫 廃止されたスイッチバック

     
  浅岸駅から宮古方面を望む。左が線路。右のアクセス道路はスイッチバック当時の線路跡と思われる。当時の駅舎は、廃止されたスイッチバック線路に設けられ、この先200メートルほど宮古寄りにあったようだ  
 
浅岸駅から宮古方面を望む。左が線路。右のアクセス道路はスイッチバック当時の線路跡と思われる。当時の駅舎は、廃止されたスイッチバック線路に設けられ、この先200メートルほど宮古寄りにあったようだ
 
  大志田駅では近くの民家の人、また浅岸駅ではたまたま空家になっている旧宅を見回りに来ていた人から聞いたことである。

  その人たちといろいろ話をしているなかで「前の駅はあの辺で、今の駅はこの辺」という言葉を聞いたのである。

  駅の位置が以前と今では違っているということである。両駅が無人化されたことは知っていたが、場所が動いたことは初めて聞いた。確かめて分かったのであるが、それはスイッチバックのためであった。

  両駅のスイッチバックの構造であるが、盛岡方面から駅に入る下り列車は、現在の待合室があるホームとは別の、進行方向に向かって右の大分宮古寄りにあったホームに入っていた。

  ホーム自体が宮古寄りであるばかりでなく、当時の蒸気機関車牽(けん)引の旅客列車は相当長いのでそのホームも長い。したがって駅の構造全体が大分宮古寄りにあったのである。

  今のホーム上の待合室を駅と考えると、駅は確かに大分盛岡側に移ったことになるわけである。

  現在両駅ともアクセス道路が妙に長い。その訳がこれで分かったが、実際に新旧両駅を利用したことのある人でなければ気がつかないことである。

  大志田駅・浅岸駅とも、旧駅舎があった位置は現在のホーム上の待合室よりは200メートルほども盛岡から遠い。鉄道営業距離としてはどうなっているのであろうか。

  ■秘境の電話事情 秘境度?の高さを示すためにこの地域の電話事情に触れてみたい。

  現在大志田駅周辺の集落には、上米内から民家が点在する米内川林道沿いに電話ケーブルが延びている。一方、浅岸駅周辺の電話は南の国道106号沿いの飛鳥から電話ケーブルが延びて来ている。したがって当然のことであるが市内局番はそれぞれ別である。

  昭和36年ごろ、当時電話のなかった浅岸地区(小学校があった時期であるので数十戸の民家があった)に公衆電話、いわゆる赤電話をつけてくれという要望があった。当時は駅前に公衆電話を設置するにふさわしい商店があったのである。

     
  浅岸駅のかつて駅のホームだったと思われる石組み。道路から沢をわたってすぐのところにあった。現在は草の中に埋もれている  
 
浅岸駅のかつて駅のホームだったと思われる石組み。道路から沢をわたってすぐのところにあった。現在は草の中に埋もれている
 
  盛岡電話局から電話線が来ている西の銭掛方面からにしろ、南の飛鳥方面からにしろ相当の距離があり、技術的にも予算上も問題であった。

  何とか要望に応えなければと考えた結果妙案が浮かんだ。それはJR、当時の国鉄の鉄道電話のケーブルを借りる方法である。

  飛鳥地区の第一飛鳥トンネルの南口で電電公社線と国鉄のケーブルを接続し、浅岸駅までもってくる方法である。

  あまり例のない遠距離加入であるので通話品質を心配したが、特に問題はなかったそうである。

  読者が想像されるとおり、この公衆電話は今は廃止されている。

  ■山林都市

  田園都市というと自然の豊かさを感じさせるが、今回見た盛岡市の東部地域にぴったりの言葉を探すと山林都市である。

  ただし、この地域では自然は豊かさと同時に厳しさも教えてくれているようである。それは冬になるとなおさらのことであろう。

  この地域は急傾斜の山が多く耕作に適する土地は少ない。戦前は炭焼きが主な産業であったようである。

  大志田と浅岸の集落を取り囲む山林の多くは私有林であり、戦後始まった県行造林事業によって植林が盛んに行われたそうである。この地域の林道が無名の枝線を含め整備水準はともかく路線の数が多いのはそのためであろう。

  道路沿線の人の話では、それらの林道では春から秋にかけてはオフロード車やバイクで走る若者たちが目につくそうで、たまにであるが、道路から外れて動けなくなったり、沢に転落してロードサービスのお世話になるのがあるそうだ。林道は期待されていなかった新しいものを提供しているようである。

  この地域の山々の木は、今見事に育っている。素人目には伐採適期になっているようであるが、国産材の不人気が言われておりこれからどうなるのであろうか。

  大志田・浅岸の両駅は秘境=過疎の問題ばかりではなく、岩手の持ついろいろな課題を表しているように思えるのである。

(和井内和夫)

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