2009年 6月 11日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉25 望月善次 広き野に羊を飼える

 広き野に羊を飼へる人を見る、細き羊
  の毛が飛ぶが見ゆ
 
  〔現代語訳〕広い野原に、羊を飼っている人を見ます。細い羊の毛が飛んでいるのが見えるのです。

  〔評釈〕「六月草原篇」十首〔『アザリア会雑誌』第一号(盛岡高等農林アザリア会、大正六年七月一日)〕の八首め。「羊(ヒツジ)」は、御承知の代表的家畜。「毛用種」、「肉用種」、「毛肉兼用種」、「乳用種」、「毛皮用種」とあるそうだが、「毛」への着目があることを考慮すると、「毛用種」、「毛肉兼用種」を考えればよいのだろうか。「メンヨウ(緬羊)」を指す前者では「メリノー種」が、後者では「コリデール種」が有名らしいが〔『マイペディア』〕、(前々回のTaraxacum Vulgareほどではないにしても)いずれも、評者のよく知るところではない。作品の上からすれば、「羊を飼へる人」という一般的な見方から、「細き羊の毛が飛ぶ」という、より詳細な部分への着眼が着目すべき第一。また、第三句の「〜を見る」と「〜が見ゆ」のリフレインと変化とが、もう一つの着目点。その切り込み方には物足らぬ点が残るが、こうしたテクニックを使いこなせる力量はあったことは指摘しておこう。

(盛岡大学長)


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