2009年 6月 16日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉27 望月善次 農場の農婦は

 農場の農婦は草の上に寝る、毛虫一匹顔にかかれど
 
  〔現代語訳〕農場の農婦は草の上に寝ています。毛虫が一匹、その顔にかかっていますのに。

  〔評釈〕「六月草原篇」十首〔『アザリア会雑誌』第一号(盛岡高等農林アザリア会、大正六年七月一日)〕の十首目。顔に毛虫がかかっているのに、眠りをやめない農婦の姿は、それ自身が、話者にとって注目するものであったと同時に、農婦の持つ逞(たくま)しさも想定させる。「六月草原篇」十首の締めくくりに、こうした素材を選んだところは、嘉内らしいと言えば嘉内らしいところ。後年には、嘉内自身も、一般的農民と自身との落差を痛感させられることにもなるのだが、それでも、「農婦」の一つの姿に着目する姿勢は、多くが恵まれた家庭環境にあった当時の学生としては、注意しておいて良いことだろう。〔「恵まれた家庭環境」について言えば、盛岡高等農林学校の学生たちもその例外ではなく、『友への手紙』にも「当時盛岡まで子弟を遊学させる程の金があったのは、かなり裕福な階級のようで地主階級が多く、高農生のフトコロはかなり暖かったらしい。」(同、p一九九)の記述がある。〕
(盛岡大学長)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします