2009年 6月 16日 (火)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉46 竹原明秀 歴史文化施設と観光施設

     
  ヒマラヤシーダ15本が先行伐採された盛岡市内丸の旧県立図書館前  
 
ヒマラヤシーダ15本が先行伐採された
盛岡市内丸の旧県立図書館前
 

 昨今、旧県立図書館前にあるヒマラヤスギの伐採が問題視されている。盛岡市では旧県立図書館を歴史文化施設に改修するとともに、施設利用の促進のためには開放的な周辺環境を創出する必要があるとしている。そのために樹齢40年の並木をすべて伐採しなければならず、既に決定していることとして処理するはずであった。

  しかし、多くの方々から慣れ親しんだ景観が破壊されるという理由で反対が起こり、最小限の伐採となり、今後の検討課題とされた。

  さて、ここで問題となることは伐採そのものであるが、実際にはこれまで行われてきた樹木管理が適切であったのか、事前に情報が公開され、議論を経たのかなど、幾つかあると思う。

  そもそも人間が植えた樹木は十分な管理が必要であり、植えっぱなしが一番、問題である。毎年のように生じる落葉落枝の処理は、経費や手間が掛かり、予想以上に大変な苦労である。

  しかし、将来、どのような樹形に仕立てていくのか、枝打ちをどのようにしていかねばならないのか、明確な考え方はあったのだろうか。

  これまで、都市の樹木に関する伐採や剪定(せんてい)にまつわる話題が幾つもあった。開運橋橋詰のメタセコイヤ、岩手大学のユリノキ、飯岡のエゾエノキ、あるいは仙台市青葉通りのケヤキ並木など、シンボルとされる樹木や並木ほど、注目度が高く、また行く末が心配されてきた。

  仙台市青葉通りケヤキ並木の場合、市営地下鉄東西線の建設工事のためにイチョウ1本、ヒマラヤスギ18本とともにケヤキ77本を撤去することが2002年に決定した。

  ここでも多くの市民を巻き込み議論が展開し、早急、仙台市は「青葉通ケヤキ並木などに関する市民意識調査」を市民1万人強に対して実施し、その結果をホームページ(仙台市建設局百年の杜推進部百年の杜推進課)で公表した。

  それによると回収率は全体で60.1%と高く、関心が高いことが伺える。回答内容はケヤキ並木へは58.5%が「一部移植・一部伐採」、22.7%が「すべて移植」であった。これらを受け、さらなる議論結果、最終的に17本を移植し、27本を伐採することになった。

  この際、移植費用の負担問題にまで議論が進み、多額の移植経費に対して議会や市民からの賛同が得られず、市費で7本の移植となった。市当局と市民の痛み分けという結果で、2007年に決着した。

  このような議論を盛岡でも行う必要があったのでないか。

  さらに視点を変えて改修される施設を考えてみたい。盛岡市は歴史文化施設=観光施設と考えているようで、南部家の宝→歴史文化施設→大型観光バスの乗り入れ→観光客の増加→観光施設→経済的に潤う、という図式がありきか。

  果たして歴史文化施設が観光施設になりうるのであろうか。盛岡市には南部家の貴重な資料が保管されている。これまでに公開されなかったものも多いと聞くが、歴史・文化の公開が観光(客の増加)につながるという話は短絡しすぎていないのか。

  これからの観光は大型観光バスではなく、脚や銀輪でめぐる地元発信型「まち歩き」といえる。そこには箱物の前に行わなければならないことがたくさんある。ヒマラヤスギの管理もまたしかりである。

  (岩手大学人文社会科学部教授=環境生物学教室)


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