2009年 8月 22日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉53 望月善次 出る雲は沸騰皿の

 出る雲は沸騰皿の沈殿の白さに似たり
  まっさをのなかに
 
  〔現代語訳〕(もくもくと湧いて)出る雲は、沸騰皿(蒸発皿)の沈殿物の白さに似ています。真っ青の(青空)の中に。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の二十六首目。一連の作品としての〔現代語訳〕をつけておいた。すなわち、抽出歌を、直前に置かれた「七月の雲はもくもく渦まけり、沸騰皿の沈殿の雲、」に続く作品であることを前面に出して解釈したことになる。(もちろん、こうした「連作」によらない解釈を否定しようというのではない。)直前歌が「雲はもくもく渦まけり」であったから、「出る雲」を「(もくもくと湧いて)出る雲」とした。また、「沸騰皿」は、「蒸発皿」のことであるとする解釈にも変更を加えずに、「沸騰皿の沈殿」は、「水分を蒸発させて固体の試験体を得るための浅い皿。」〔『広辞苑』〕により「沈殿」は、「固体の試験体」になぞらえているのだとした。その沈殿物の白さは、青い空とコントラストをなすのである。あの「白鳥はかなし(哀し)からずや」の若山牧水歌さながらに。
(盛岡大学学長)

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