2009年 10月 4日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉234 八重嶋勲 学資金なく困っているだろう

 ■307半紙 明治42年5月11日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
               日松館内
発 岩手縣紫波郡彦部村
前畧学資金ノ為メ定メテ困リ居ナラン、今回村長選挙ノ状況目下大混戰ナリ、手前ノ派ハ、議員十二ノ内六人、佐藤善次郎、佐藤市平、橋本松蔵、野村長四郎、作山吉太郎、作山廉太郎等ナリ、此六人ノ内作山廉太郎ハ長男久次郎ヲ有続トシテ村長ノ野心アリ、然レ共賛成壱人モナシ、五人ハ再選派ナリ、故ニ当□トセハ六人トナリ、名譽職トセハ作山ハ棄権、即チ選挙場出テサル方針ナリ、一方即チ阿部定吉ヲ名譽職ノ村長トシテ候補者ニ立テ同意スルモノ近谷菊治、佐藤倉治、佐藤治郎、佐藤松蔵、小野浅吉、阿部定吉ノ六人ナリ、之レカ当□トセバ阿部定吉知事ノ認可ニナルモノニアラサル故、当□ヲ否認スル方ナリ、此状形ナル故拙者ハ再選ヲ断念シ、譲歩上運動シツゝアリ、例ノ役場騒キ其動気ノ主人公トナルハ実ニ気ノ毒一層断念スルコトニ致候、茲二三年彼等ノヤリ方ヲ見物セントス、右用事迄、早々
    五月十一日      野 村
     長一殿
(下部に)
「将来ノ学資如何セン心配ナリ」
 
  【解説】「前略、学資金がなくなりきっと困っていることだろう。今回の村長選挙の状況は、目下大混戦である。手前の派は、議員12人の内6人、佐藤善次郎、佐藤市平、橋本松蔵、野村長四郎、作山吉太郎、作山廉太郎らである。この6人の内、作山廉太郎は長男久次郎を村長にとの野心があるが、賛成する者が1人もない。5人は再選派である。故に当方は6人となり、名誉職とすれば作山は棄権、即ち選挙場へ出ない方針である。一方即ち阿部定吉を名誉職の村長として候補者に立て同意するものは近谷菊治、佐藤倉治、佐藤治郎、佐藤松蔵、小野浅吉、阿部定吉の6人である。これが当方とすれば阿部定吉が知事の認可にならないため、当方を否認する方である。このような形であるので、我は再選を断念し、譲歩上運動しているのであり、例の役場騒ぎその動気の主人公となるのは実に気の毒。一層断念することにした。ここ2、3年彼等のやり方を見物しようと思う。右用事迄、早々

  (下部に追伸)

  「将来の学資をどのようにしたらよいか心配である」という内容。

  村長選挙の混戦で、進退を迫られており、苦衷を述べている。村長職を断念すれば、即ち、長一に対する学費の送金に困難することが目に見えているのである。

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