2009年 12月 24日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉289 岩橋淳 狼森と笊森、盗森

     
   
     
  宮沢賢治生前唯一の童話集『注文の多い料理店』(1924刊行)に収められた9作品のうちのひとつです。「オイノモリトザルモリ、ヌストモリ」という難読タイトルであるにもかかわらず何度か絵本化されていますが、今週ご紹介する片山バージョンは、歴代の、きまじめ、逆にことさらに寓話的に絵本化されてきた賢治作品中、異色作の部類かもしれません。

  岩手山ろく、現在の小岩井農場付近に実在する地名を生かしたこの物語は、厳しい環境への入植を試みた農民たちと、かれらと相対する土地の精とのやりとりを描いています。当初は(世話になる)森へのあいさつや感謝を表していた人々も、時と共にそれを忘れていく。…本作、どこかのんびりとした牧歌的な雰囲気もあるのですが、そのたびに起きる事件が人々を森の奥へ奥へと誘い込む展開は、読みようによってはとても怖ろしくも映る…!

  片山氏の画風は、これも実は見方によってドギツかったり静かに不気味だったりと、読者を不安にさせるような不思議さをたたえてい(る、と思うんですが)ますが、色を幾重にも重ねて描く文字通り森閑、とした森のたたずまいや、圧巻の盗森(の精?)の描写(「ジブリ」っぽい!)など、オリジナル作かのように持ち味を十分に発揮しています(賢治の原文は、そのまま)。

  この「宮沢賢治の絵本」シリーズ、多士済々の画家を招いて、今なお続刊中とのこと。

 【今週の絵本】『狼森と笊森、盗森』宮沢賢治/作、片山健/絵、三起商行/刊、1575円(2008年)。


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