2010年 1月 16日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉109 望月善次 桐一葉、桜狩場に

 桐一葉、桜狩場に小団次の仮面奴の
  成政はしも
 
  〔現代語訳〕(坪内逍遙作、新歌舞伎)「桐一葉」の(吉野山)桜狩の場、(市川)小団次が演ずる仮面をつけた奴は(佐々)成政なのです。

  〔評釈〕「明烏春泡雪」十三首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の六首目。場面は、坪内逍遙が作った、いわゆる「新歌舞伎」。関ヶ原の戦いの後の、追い込まれた豊臣家の忠臣片桐且元の苦衷を描いた作品での「桐一葉」である。しっかりとした筋書きや人物の内面にまで迫るせりふによってドラマ性が高いことが「新歌舞伎」たるゆえん。抽出歌の背景は、おそらく第二幕の「吉野山桜狩の場」。武悪(大きな眼は下がり目で口を妙に食いしばった、滑稽(こっけい)味のある鬼・閻魔の面)の面をつけ奴に化けた佐々成政が、豊臣秀吉を暗殺しようとする場。(暗殺したと思った相手は何と石田三成であり、実は、秀吉は、もう一人の武悪の面をつけた奴だったと話は展開する。)話者は、多くを語っていない。具体的事実についても、それほど丁寧に叙述しているわけではない。ただただ、この「桜狩」の場が、武悪の面をつけた(佐々)成政が、それを演ずる(市川)小団次に見とれているのである。
  (盛岡大学学長)

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