2010年 1月 19日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉110 望月善次 本郷の振袖火事の

 本郷の振袖火事の吉三郎、富香がまく
  は麗しき衣、
 
  〔現代語訳〕本郷の「振袖火事」の場の吉三郎よ。富香が巻いているのは艶やかな着物です。

  〔評釈〕「明烏春泡雪」十三首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の七首目(評者の歌舞伎常識のなさを前提にしてのことであるが)。場面は、前回の作品同様、表題である「明烏春泡雪」から離れたものだと読んだ。後半の「富香がまくは麗しき衣」の「富香」が不明なので、以下前半を中心とした評釈を加えたい。「振袖火事」は、「明暦の大火」(一六五七年)の俗称。俗伝では、恋のために若死にした娘の振袖が何人もの娘の手に渡り、その娘たちがいずれも若死にしたところから、丸山町本妙寺の和尚が、その振袖を被せた棺を焼こうとしたところ、その火が飛び火して大火事となる。歌舞伎などもその俗伝を取り入れているが、史実とはかけ離れたものであるというのが現在の定説。「八百屋お七」は、この大火が縁で小姓吉三郎に出会ったお七が、火事になれば、吉三郎に会えるのではと当時の大罪であった放火に至るもの。(その歌舞伎的発展形である「櫓のお七」も著名。)
(盛岡大学学長)


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