2010年 2月 2日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉115 望月善次 しんなりと白き突窪に

 しんなりと白き突窪にうつりたる金糸
  刺繍のきみがはん襟
 
  〔現代語訳〕たおやかに白い突窪に映っている金糸の刺繍(ししゅう)のあなたの半襟(の美しさ)よ。

  〔評釈〕「明烏春泡雪」十三首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の十二首め。場面特定の困難さは相変わらずの「素人の悲しさ」。しかも、「突窪」のように、『新校本宮澤賢治全集』でも「ママ」相当の符号が付されている疑問の箇所もあり、「素人の悲しさ」をさらに増幅させる。「しんなり」は、「軟らかくしなやかなさま。たおやかなさま。」〔『広辞苑』〕とあるが、ここでは「(身のこなしが)いかにもやわらかで優美なさま」〔『岩波古語辞典』の「たをやか」の項〕に通じる後者の例。「しんなりともたれかかる」〔『広辞苑』〕はそうした点からも適例だろう。「金糸」は、「金色の金属の箔を和紙に張り、これを細長く裁断して綿糸、絹糸などに巻きつけたもの。『金襴緞子』などに用いる。」〔『マイペディア』〕。いずれにしても、高級なものであることを含意する。「半襟」は、衿にかぶせるもので、襟元の汚れを防ぐと同時に飾りの用途があり、抽出歌の場合は、後者に重点があろう。
  (盛岡大学学長)


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