2010年 2月 11日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉119 望月善次 山の草、鴉のくそと

 山の艸、鴉のくそと石ころにせまり
  出でたる銹色の土
 
  〔現代語訳〕(この天神)山の草のところには、鴉の糞と石ころに迫っている銹(さび)色の土があります。

  〔評釈〕「鴉と空」六首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の三首目の作品。「草」の古字は、「草木の生え始め」を示す象形文字で、草冠になる場合は四画、常用漢字等については三画となることは〔『角川漢和中辞典』〕読者各位も良く知られているところであろう。ところで、「糞」という、ともすれば敬遠されかねないものに対して、「くそ(傍点)」の形をとって、注意を喚起しているところは、評者としては、青年の客気も含め、平凡ではあるまいとする作者の姿も垣間見えると読んだ。また、「草」、「鴉のくそ」、「石ころ(石塊=いしくれ)」、「銹色の土」と並べた語彙を眺めると、嘉内も「農芸化学」を学びつつある「理系人間」の一人だったのだということにも、改めて思いが至った。なお、評者の方に「(農芸)化学」や「自然科学」に関する知識があれば、結句に用いられた「銹色の土」を中核とした展開が可能になると思うが、ここでも「素人の悲しさ」を嘆かざるを得ない。
    (盛岡大学学長)

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