2010年 2月 15日 (月)

       

■ 産業遺産のファモールトラクター 県立産業技術短大学生がエンジン復活に挑む

     
  トラクターの復元に取り組む(左から)千葉恵利加さん、藤原太一さん、斉藤理技術指導員  
  トラクターの復元に取り組む(左から)千葉恵利加さん、藤原太一さん、斉藤理技術指導員  
  80年前に活躍していたファモールトラクターの復元に矢巾町の県立産業技術短期大学校と雫石町の小岩井農場まきば園が連携して取り組んでいる。トラクターは80年前にアメリカから輸入した同農場の歴史を伝える産業遺産とも呼べるもの。はるか昔に広大な牧野に響いたエンジン音を現代によみがえらせようと2人の学生が挑戦している。

 作業に取り組んでいるのは同短大メカトロニクス技術科2年の藤原太一さん(20)、千葉恵利加さん(20)。今春卒業を迎える2人は卒業研究として昨年の9月からトラクター復元に携わってきた。卒業研究発表会の開かれる16日までにエンジンの始動を目指している。

  同短大に運ばれたトラクターのエンジンは冷却装置が長年の使用で汚れていたほかは、80年前のものと思えないほど状態が良かった。それでも復元作業は苦労の連続だった。機械を固定するボルトはさび、その上から塗装を塗っているために外す作業は大変で力づくでとろうとしてボルトが折れることもあった。

  中でも最も苦労した部分が高圧磁石発電機(高圧マグネット方式)と呼ばれるパーツ。電圧を高めるイグニッションコイル、電気を各気筒のプラグに分配するディストリビューター、発電機の三つの機能を一つで担う装置は現在の自動車ではそれぞれの機能が別々のパーツになっている見たこともないものだった。

  トラクターに関する資料は当然なく、農機具を扱う店舗に聞きにいったりもしたが、この形式のトラクターは扱ったことがなかった。作業は手探り状態。最初はどの機能を果たしているか分からず、一つ一つ分解しながらどのパーツがどの機能を果たしているのかを見極めていった。

  こうして部品の働きを理解しながら、動かなくなった高圧磁石発電機の修復を試みた。結果的には当時の部品がなく、少し昔の自動車の部品を使って再現することになったが2人にとって80年前の機械に触れたことは大きな経験になった。

  授業の卒業研究に当てられた時間のほか、放課後も復元作業に費やした。毎日の作業を記した2人のノートには、分解して再び復元するためにボルトや部品の一つ一つにふった番号や作業の工程がびっしりと書き込まれていった。外国製のためボルトなどの単位もミリではなくインチで工具選びにも苦労した。

  実際自動車のエンジンや発電機に触れたことがなく、すべてが初めての経験だった藤原さん。「80年前のトラクターということで人生の中で1度しかない貴重な体験なので取り組もうと思った。高圧マグネット方式は1カ月以上かかりとても苦労したが、勉強になった」と作業を振り返った。

  自動車販売店へ就職する千葉さんは「メカトロニクスでは自動車関係は詳しくやっていないので実際にトラクターを分解し、エンジンについての知識を深めることができた。ファモールトラクターは日本に1台しかないので普通だったら触ることもできない。とても貴重なことだと思う」と話した。

  2人を指導した斉藤理技術指導員(36)は「直接技術的な部分につながらなくても教材としてはすごく勉強になる。小岩井との共同研究ということで自分が誰かのために役立っていること、達成感を味わえたのでは」と2人の成長を実感していた。

  ファモールトラクターは1924年から32年までアメリカで生産された初期のガソリンエンジントラクター。同農場まきば園の斉藤政宏担当部長によると1938年ころに同農場に導入され、トウモロコシ畑の草刈り作業や伝動ベルトを使う機会の動力源として活躍したという。

  それまでの馬による農作業から、トラクターなど機械化が進んでいく過渡期に導入されたトラクターは同農場にとっても当時を知る貴重な資料。以前は農機具展示場に展示はされていたもののあまり多くの人の目に触れる機会はなかった。

  来年120周年を迎える同農場。その企画の一つとしてファモールトラクターのエンジン復元プロジェクトの成果を発表したいと考えている。斉藤部長は「小岩井農場としてもただ置物として飾っているだけでなく産業文化遺産として大事にしていくことが先を見ても役に立つと思う」と話す。

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