2010年 2月 23日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉248 八木淳一郎 冬の夜空の華

     
   
     
  冬の夜空の華(はな)|おおいぬ座のシリウスをそう呼ぶ人がいます。なるほど言われてみれば、マイナス1・5等星のシリウスは四季を通じて全天でもっとも明るく輝く星です。

  冬は季節風が吹き荒れ、大気の汚れやほこりが払われて空の透明度が増しています。すると星々の光が一層鋭く研ぎすまされたように際立ちます。

  激しい大気の流れによって星の光のまたたきもまた激しくなっています。もともとは青白い色をしたシリウスですが、赤や緑などさまざまな色の変化やにじみに見る者は目を奪われます。

  すぐ近くを雲が次々と流れていく場合など、シリウスの方が反対に動いていくように錯覚することさえあります。こうなってきますと、普段見慣れない人にとっては「UFOだ!」と本気で思ってしまうのも無理のないことかもしれません。

  シリウスという呼び名は、まじめな、とか、重大な、とかの意味の英語のシリアスseriousと関係あるのかと思ってしまいますが、シリウスSiriusとは「焼きこがす」という意味のギリシャ語セイリオスに由来します。

  夏が暑くて作物が枯れてしまったり、病気がはやるのは夏の時期におおいぬ座のシリウスが太陽と一緒に上ってくるためだ、と大昔の人々は考えたのでした。

  このため、西欧では今でも真の時期をdog day犬の日と呼びますし、古代エジプトではナイル川のはんらんを告げる意味で「ナイルの星」と呼んでいます。

  シリアスな話ですが、もちろん地球から8、7光年という距離にあるシリウスの熱が伝わってくることはありませんが、もし、仮にシリウスを太陽の位置に置いたとしたらどうでしょうか。

  シリウスは直径が太陽の約2倍あって表面の温度も太陽の6千度に対して1万度もあります。こう聞けばやっぱり暑すぎる、となるのですが、これだけならばまだましです。それは、シリウスには伴星(ばんせい)といって小さなお供の星があるのです。

  何だ、小さいなら惑星みたいなものだし別にいいじゃないか、となるのですが、おっとどっこい、これが実に大変なしろもの。白色矮星(はくしょくわいせい)という種類のこの伴星、直径が太陽の30分の1なのに、マッチ箱1つ分の重さが1dもあるような高密度の星なのです。

  この小さな星とシリウスは共通の重心の周りを50年の周期で回っていて、そのためシリウスはふらふらとゆれ動いています。この不思議な動きから1844年にドイツのベッセルが伴星の存在を予知しました。しかし伴星は約9等という暗い星で、何より明るすぎるシリウスの光に幻惑されることが発見を困難なものにしていました。この2つの星の距離が近ければなおさらです。

  しかしやがて発見の時が訪れました。1862年のことです。アメリカの海軍天文台に納める口径65aの屈折望遠鏡を製作したクラーク親子は、そのテストのためにシリウスにレンズを向けたのでした。そしてベッセルが予言した位置に、ついに伴星を発見したのです。
(盛岡天文同好会会員)


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