2010年 2月 28日 (土)

       

■ 岩手談合事件審決の影響は 東京商工リサーチ支店永田氏に聞く

 県営工事入札での受注調整があったとして県内建築A級業者に審決が出た場合の影響について、東京商工リサーチ県南支店の永田宗部長に聞いた。県が1年間の指名停止をした場合、公共工事から排除されることにより県内経済への影響は広範囲、長期間に及ぶと見ている。

  ―審決の対象になっている76社(当初は91社)の従業員は約4千人ということだが、この意味するものは。

  永田 建設業に関係する就業者数は05年度国勢調査によると男性が6万8437人、女性が8560人いる。その前の2000年調査と比較すると男性は5年で約2万人、女性は約3千人減った。総務省の事業所企業統計調査で見ると06年の建設業者の事業所数は6505社、96年が7160社あった。だんだん減っている。

  この推移から行くと全体の従事者数は現在5万人を割って4万人台になっているだろう。談合の発覚時は就業者数が6万人で約6千人くらいの雇用に影響が出ると言われていた。現時点で全体を4万人程度と見れば1割の4千人に影響が出るというのは変わっていないと思う。

  ―取引先1万4千社が意味するものは。具体的にどれだけの業種との取引があり、どのような業種が最も影響を被るか。

  永田 1万4千の社数は出るが、業種ごとには出せない。仕入先は継続的取引業者だけをピックアップした。スポット取引に関しては入れる場合と入れない場合とある。スポットまで加味すれば1万4千社をはるかに超え、倍までいくかどうか。建設資材、事務機器、車両、燃料関連など建設業に関わる業種への影響は避けられないだろう。

  ―指名停止となった場合、どのようなことが起きると考えられるか。企業倒産は増えるか。事業を縮小した場合、どれだけの人員整理が起きるのか。

  永田 前例を見ると2000年に大船渡で土木C級12社の談合事件があったとき、指名停止で倒産したのは1社だった。それ以外は指名停止の期間満了まで倒産は出なかった。ところが期間満了をして処罰を受けて解除になったあと、ことごとく体力が低下していて、その中から倒産した会社が出てきた前例がある。過去の事例を見ると、指名停止開始から終了までに倒産するケースはそれほど多くない。処分に際して事前に資金準備がなされていたこと、指名停止になるまでの期間中に工事を受注していたことが要因だろう。

  満了したあとは、今回もそうだと思うが76社は1年間辛抱するので、のどが乾いてちょっとした水でも手を出したくなる。満了したあと受注が思うように取れず、資金が枯渇してしまうケース、体力が低下して回復できず小規模化していくケースが想定される。

  人員整理に関しては各社を訪問していると現状のまま行ってみたい、どうしてもという場合は検討しなければならないが、できるだけ雇用を維持していきたい社長もいるし、半分くらいリストラせざるをえないと考えている社長もいる。各社の資金体力によっても異なってくる。資金力があればできるだけ乗り切りたいという会社もある。

  ―建設業界の構造として大企業、中小企業、下請けのどこにしわ寄せが及ぶか。

  永田 76社はもちろん、その会社の仕事を下請けしている業者への影響は避けられない。76社は公共工事に関しての受注は受けられない。一般住宅や民間に営業の矛先を向けてくるだろう。一般住宅に流れた場合は今まで手がけてきた地元中小工務店にしわ寄せが来る可能性がある。一般住宅やハウジングにシフトしてもある程度、社名が通っているところが営業展開を積極的にした場合、少人数でやっている工務店関係にしわ寄せが来る。ただでさえ着工数が減少している。そこに新たに業者が営業に出れば価格競争に拍車がかかる。収益の後退につながりかねない。

  ―A級業者が県営工事に参加できなくなるとゼネコンが参入する動きが強まるのでは。

  永田 首都圏の大口の工事や昨今のダム工事中止に伴い、地方に雪崩現象が起きている。地方の工事物件に手を伸ばしてきていることからすれば油断できない。

  ―経営破たんの業者が増えた場合、不良債権の増加による金融業界への影響は。

  永田 倒産となれば不良債権が発生する。この点は各金融機関とも保全を重視した対応をしているので極度の不安につながるものではない。不安材料とすれば金融機関より建設業全体へのイメージ、業界全体への見方によって対応がどうなるのかにあるのでは。

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