2010年 3月 23日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉134 望月善次 雪の夜の電信バシラの

 雪の夜の電信バシラのおののきにふる
  ひて吠える犬がありたり、
 
  〔現代語訳〕雪の夜の電信柱の戦きに、震え上がって吠える犬がおります。

  〔評釈〕「冷鴎 熱鴎 愛鴎」十三首〔『アザリア』第五号(大正七年二月二十日)〕の十二首目。歌意を表現そのままに止めるか否かの好例になる一首だと読んだ。表現そのままに読めば、「電信柱の震えに驚いて吠えた犬がいた。」ということで一件落着するであろう。ただし、対象は、あの「電信柱」である。賢治にも「よりそひて/あかきうで木をつらねたる/青草山の/でんしんばしら。」〔「大正六年七月より」、「歌稿〔B〕578」〕やご存じの童話「月夜のでんしんばしら」、詩「グランド電柱」もある。一方嘉内にもスケッチブックに電信柱の絵〔大正三年〕があり、「『電信柱』は嘉内と賢治にとって二人の友情を表す象徴」の言もある〔『(韮崎市制五十五周年記念誌)花園農村の理想をかかげて』(二〇〇九)p.六〕。また、深読みの一つとして「電信バシラのおののき」の「おののき」を擬人的な結合比喩(ゆ)なのだとすることも可能である。いずれを採るにしても、その根拠の明示が求められよう。
    (盛岡大学学長)

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