2010年 3月 30日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉137 望月善次 輝きて栄え繁れと

 輝きて栄え繁れと大杉に涙の夜のしみとほりたれ。
 
  〔現代語訳〕(大きな杉よ、せめてお前は)輝き、栄えて繁ってくれよ、涙にくれる夜の自分の思いしみ通るように思うのです。

  〔評釈〕「東京悲哀調」五首〔『アザリア』六号(大正七年六月二十六日)〕中の二首目。
  前回触れた「除名処分」は、嘉内にとって「青天の霹靂(へきれき)」であった。『アザリア』五号の「社会と自分」の一節「ほんとうにでっかい力。力。力。おれは皇帝だ。おれは神様だ。おい、今だ、今だ、帝室をくつがえすの時は、ナイヒリズム。」等がその原因になったの説もあるが、嘉内からすれば到底受け入れ難いものであったろう。広義の社会主義的考えへの共感は嘉内特有のものではなく、例えば同じ『アザリア』五号には、小菅健吉の「かかる人たらむとして苦しんでゐる人は社会主義的人生派の哲学者の間に最も多くみらるる様だ。そして其の傾向が今日の社会の心ある人々の上に一大勢力を潜在的に表して来たのは事実だ。」という言もある。「死ぬる思ひにくらぶれば」八首の中の「何と云ふ事なく 悲しき日なりいまはまた死ぬる思ひにくらぶればまた」等に触れるまでもなく切ない嘉内がいる。
(盛岡大学学長)

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