2010年 8月 5日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉319 岩橋淳 アリからみると

     
   
     
  夏です。野に、山に、道ばたに庭先に、朝といわず夜といわず、さまざまな虫たちの姿を見かけます。学校が休みに入り、日ごろから鵜の目鷹の目で動くものを片っ端から「ゲット」してしまう悪童どもは、いまや本気で一日の大半をかれらの捕獲に充てる態勢をとり、地上地中水中の小動物たちにとっては、受難の季節のはじまりであります。

  今週のおすすめは、ニンゲンが普段は見下ろしている視線を虫に合わせるとどのように見えるか? という試みの写真絵本です。

  地をはうアリの視線〈虫瞰〉で分け入れば、ただの草むらもそこはジャングル。―と、いきなり出くわすのはトノサマバッタ。巨大な後肢、その基部の関節、密生する大小のトゲには規則的なカラーリング、ラバー製かとみまがう皮膚…。まるで機関車を思わせるそのディテールは、実に精巧で、しかも美しい。

  かれら昆虫については、その容姿がための好悪についてはいろいろとありましょうが、おそらく、究極の合理性に裏打ちされているであろう機能美ということについては、どなたにも異論はないのではないでしょうか?

  アマガエルやトンボやカマキリ、クワガタ、カブトムシ、カミキリムシ…。人間界では、道を歩いてもこれほどいろいろなカオにお目にかかることはありません。翻って、価値観の多様性、それを受容することについて、ニンゲンは修業が足りないなぁ、と思わされます。

  【今週の絵本】『アリから みると』桑原隆一/文、栗林慧/写真、福音館書店/刊、880円、(2001年)。


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