盛岡タイムス Web News 2010年 12月 8日 (水)

       

■ 岩手医大機能生化学講座、ATP酵素の仕組みを解明

     
  岩手医大薬学部の關谷瑞樹助教  
 
岩手医大薬学部の關谷瑞樹助教
 
  岩手医大薬学部機能生化学講座の二井將光教授、關谷瑞樹助教らと米バージニア大学医学部の研究チームは生物が体内でエネルギーとして使う「アデノシン三リン酸(ATP)」をつくるATP合成酵素のメカニズムを分子レベルで明らかにした。ATP合成酵素はATPをつくり出す一方、ATPを加水分解する逆反応も起こす。酵素単体の動きを詳しく観察したところ、活動と休止を繰り返し、エネルギーの無駄づかいとも言えるATPの加水分解を抑制していることが分かった。さらに、酵素の特定の構成部位が休止時間を延ばす機能を持つことを突き止めた。ATPはすべての生物のエネルギーの保存や利用に関与している物質で、その基礎的なメカニズムが解明されることは、ガン細胞や病原菌の増殖を抑える新しい医薬品の開発にもつながる。

  ATPはミトコンドリアなどの細胞内器官でATP合成酵素によって作られ、アデノシン二リン酸とリン酸に分解されるとエネルギーを放出する。

  ATP合成酵素は水素イオンを輸送することによって回転する「分子モーター」であることが知られていて、120度回転するごとに1分子のATPを合成する。一方、ATPを加水分解して逆向きに回転し、水素イオンを輸送することもできるが、エネルギーの無駄使いになるため、酵素はATPの分解を抑制する仕組みを持っているという。

  研究チームは、この仕組みを明らかにするため、最先端の暗視野レーザー顕微鏡と高性能CCDカメラで酵素の動きを観察。10万分の1_の酵素に、金粒子を付けて目に見える状態にし、レーザーの反射光をCCDカメラで高速撮影する方法で、ATPを分解するときの回転を1分子ごとに観察した。

  その結果、ATP合成酵素は1秒間に500回転もの高速で回転し、約1秒間ごとに回転と休止を繰り返していることが判明。さらに、酵素の(イプシロン)サブユニットと呼ばれる構成部位が休む時間を延ばす機能を持つことを明らかにした。

  研究成果は医学生物学分野では論文の引用回数が最も多く、権威のある米生化学・分子生物学会誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」へも掲載された。

  關谷助教は「休んでいる状態はエネルギーの無駄使いを抑える上で重要な仕組みと考えられる。加水分解だけでなく、酵素の本来の機能であるATPの合成についても研究を深めたい」と意欲を燃やす。

  二井教授は「多分子の観察では分からなかったことが明らかになった。酵素1分子ごとに活動や休止の時間が異なることは大変、面白い結果。将来的にはがんの転移を防ぐような薬の開発にもつなげていければ」と話していた。

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