盛岡タイムス Web News 2010年 12月 23日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉339 岩橋淳 手ぶくろを買いに

     
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  皆さんご存じの名作童話です。何人もの画家が絵本に仕立てていますが、今回は、動物らしさを生かしつつも、子ぎつねのふっくら加減が愛らしい牧野版でのご紹介です。

  「東の賢治、西の南吉」と呼ばれた童話作家・新美南吉は、愛知県の出身。教壇に立ちながら創作を続けたこと、若くして世を去ったこと、その死後に作品が評価されるなど、宮澤賢治との共通点が目立つ人。賢治に比べて作品数こそ多くはありませんが、その作品が「現役の童話」として永く親しまれている点、日本児童文学界のスターであることはまちがいありません。本作は、南吉20歳の冬に発表されたもの。

  子ぎつねの無邪気さ、愛らしさが人気のモトであるのは動かぬところですが、繊細な情景描写に加えて「ぬくとい母さんの手」「かあいいぼうや」など、気取らない言葉遣いも作品の味わいのひとつ。人間の恐ろしさを身をもって知りながら我が子を単身町へと赴かせる母さんぎつねの心境が論争を呼んだり、子ぎつねが戸の隙から差し出す手を間違えてヒヤヒヤさせたり、帽子屋の老人の優しさに救われたりするドラマチックな展開も、絵本としては多めな文章を気にさせません。

  そしてもともと擬人化されている物語の流れに負けないだけの動物らしさを出した作画は、親子のほほ笑ましい情愛との相乗効果で、この寒い冬の夜の物語を、内側から温めてくれるのです。

  【今週の絵本】『手ぶくろを買いに』新美南吉/文、牧野鈴子/絵、フレーベル館/刊1260円、(2003年)

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