盛岡タイムス Web News 2011年 3月 25日 (金)

       

■ 再起へ形にならぬ夢 小本、田老地区の現地をルポ

     
  被災した、たろう観光ホテル  
 
被災した、たろう観光ホテル
 
  23日に岩泉町、宮古市の被災地に入った。大震災から12日目。依然、がれき状態のままになっているところが多い。自衛隊や自治体、民間企業などが復旧へ向けた活動を懸命に続けていた。つぶれた車や倒壊した家屋、アスファルトがめくれたままの道路。津波の生々しい傷跡が残っている。避難所で生活している住民の衣食は足りつつあるが、疲労も高まり、風邪などを引き体調を崩す住民も増えている。過酷な中で被災住民はその境遇に立ち向かっている。再建を考えている経営者もいる。(大森不二夫)

  ■岩泉町小本地区周辺

  沿岸部に位置する小本地区。三陸鉄道の田老駅と小本駅までの線路の復旧作業が続けられている。小本駅から徒歩10分にある小本温泉旅館は、津波で建物の1階部分が壊れたままで営業停止した。周辺の住居地区にはクレーン車など重機が入り、作業が続けらている。

  周辺にある墓地は墓石が倒れたままの状態。同地区の漁師金沢清さん(72)は、倒れた先祖の墓石を元に戻す作業をしていた。「家は高台にあり家族は無事だった。津波を見たとき、高台がのみ込まれると心配した。3隻の船は流された。先行きどうなるのか。この墓には先祖が眠っている」と静かに話した。

  墓地近くには小本漁業協同組合の定置網資材置き場がある。網そのものも10d、4dの網巻き用トラックごと破壊された。同組合の三浦文一理事(69)は「83年に3億円借金して手当てした。少しずつだが返済してきた。しかし、船も2隻流された。何も使用できない。ワンセットの網の修理だけでも最低3千万円以上かかる」と、現場の被災状況をぼうぜんと見詰めていた。

  ■宮古市北部の田老地区

  グリーンピア三陸みやこ(財団法人グリーンピア田老運営)は、避難所として約600人を収容している。食品や衣類などの支援物資は毎日支援センターから数度届く。風邪を引く住民が増えているのに、マスクやうがい薬、風邪薬などが不足している。

  宮古商業高校2年の三浦郁扶紀さん(17)は「震災時に宮古市内のマックにいた。津波が来るぞと言われ近くにいた友人の母親の車で逃げた。家は大丈夫だったが、水も電気も使用できないため家族でここに来た。疲れなのか20日から40度近い熱に。今は少し落ち着いたけど。30日の登校日までに元気になりたい。私だけでなくここにいる全員が早く普通の生活ができるように」と願う。

     
  建屋も網も破損した小本漁業協同組合の定置網の資材置き場  
 
建屋も網も破損した小本漁業協同組合の定置網の資材置き場
 
  グリーンピア田老専務の赤沼正清さん(70)は自ら被災しながら入所者の支援担当者として働いている。「田老漁港付近の住宅地にあるわが家は跡形もない。屋根も車も流された。妻も高台に登って難を逃れた。こうして生きているのだから頑張る」と気合を入れる。

  「今のところ、食べ物や衣類は十分。洗濯機がないため苦慮している。緊急の薬類は少ない。医師には定期検診に来てもらっている。疲れも出ており体のケアと心のケアを考えたい」と話した。

  ■「ホテル再建したい」

  田老漁港周辺には砕け散った堤防のコンクリートの塊がゴロゴロ横たわっていた。津波の威力を物語る。旧田老町は明治29年(1896年)、昭和8年(1933年)の大津波で壊滅的被害を受け、同33年(58年)に世界に例のない津波防潮堤を築いた。その後も増設した。

  しかし今回の大津波は、水門をのみ込み長さ1350b、海抜10・45bの防潮堤も越え、国道45号線、線路、民家にまで甚大な被害を残した。港周辺は依然がれき状態。その惨状の中に「たろう観光ホテル」がある。

  鉄骨6階建てで30室、160人を収容できる。海水浴場の田老海岸があり、湾を望めるホテルとして夏場は毎年、多くの観光客が宿泊する。大津波で4階の一部まで破損したが、ホテル全体の鉄骨と4階から6階までは残った。

  ひとり6階まで駆け上りあやうく難を逃れた同ホテル社長の松本勇毅さん(54)。「津波警報が出てからすぐ15人の従業員をホテルからも港からも避難させた。安否確認に来た1人だけ波をかぶったが全員無事だった」という。

  4階まで津波が押し寄せたときは「これ以上きたら終わり」と覚悟したと松本さん。6階で一夜を明かし、翌日、厨房器具や布団、ソファなどがむき出しになったホテルの悲惨な状況を見詰めた。しばらく立ち尽くした。「言葉が出なかった。ただぼうぜんとした」という。

  それから11日間、グリーンピア三陸みやこで避難生活をしている。「疲れもたまってきたが、最近、ホテルの再建を考え始めている。幸い鉄骨が残っている。再建には相当な金もかかるが、従業員全員をまた雇って、なんとかまた再スタートできないか考えている」と、深いため息混じりで話す。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします