盛岡タイムス Web News 2011年 4月 7日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉351 岩橋淳 ぶたにく

     
   
     
  表紙は、穏やかな目をした、1匹の豚。ひらがなで表されたタイトルも何となくユーモラスで、おそらくは豚肉のできるまで、をたどるものになるだろうという予測のもとに読み始めるのですが、ドキュメントタッチで展開されるのは、深夜の出産シーン。

  妊娠期間114日、母豚が生涯産み落とす仔、80匹。このたびの出産では14匹が生まれるものの、2匹が死産。写真とデータ中心で構成ながら、それをつなぐナレーションが感じさせる、温かみ。そして、この世に生を受けたものたちが授かっている、それぞれの時。

  構成の中盤は、ナレーションを排してひたすらに追う、愛くるしい仔豚たちの毎日。そしてかれらは、本能の赴くまま、よく食べ、よく育つ。かれらの餌となるのは、飽食の人間社会から供給される、ありとあらゆる残飯。ここで読者は、幸福そうに育った豚たちの使命と、近づきつつある運命について、思い出さされることになるのです。それは薄々感じていながらも、かれらの姿、とりわけ意外なまでに豊かな表情に接するうちに、どこかで遠ざけようとしていたもの。しかし、現実は決して止まることはありません。

  場面は一転、清潔な工場で「処理」された肉塊。その数、国内で1日6万頭。そしてその片方で、人間の手による交配と出産は、絶えることなく続いている…。

  誕生から出荷までを一貫して担う福祉施設のひとびとがつづった、ある生命の記録です。

  【今週の絵本】『ぶたにく』大西暢夫/写真・文、幻冬舎/刊、1680円、(2010年)。


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします