盛岡タイムス Web News 2011年 5月 8日 (日)

       

■ イコモス「登録」を勧告 「平泉」世界遺産へ近づく

 世界遺産登録を目指す「平泉の文化遺産」について、国際記念物遺跡会議(イコモス・本部フランス・パリ)は日本時間の7日早朝、世界遺産への登録が適当と国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した。ただ、六つの構成資産のうち「柳之御所遺跡」は登録から除外するよう条件を付した。登録の最終的な可否は来月、パリで開催される第35回世界遺産委員会で決定されるが、登録の勧告が同委員会で覆された例はほとんどなく、「世界遺産・平泉」誕生が、ほぼ確実な情勢となった。東日本大震災津波で未曽有の被害を受け、復興へ踏み出そうとしている本県にとって大きな希望となる。

 日本とフランスは時差が7時間。勧告は7日午前4時過ぎ、ユネスコ世界遺産センターからユネスコ日本政府代表部、外務省、文化庁を通して県と平泉町に伝えられた。08年の「登録延期」から3年越しの朗報。関係者は安どの表情を浮かべ、「世界遺産登録を復興の光に」と気持ちを引き締めた。

  県庁で夜通し勧告を待った県教委の中村英俊文化財・世界遺産課長は「ありがとうございました」と目を潤ませ、「柳之御所を除外するという条件付きで複雑な思いはあるが、確実に一歩を踏み出すことができた。岩手にとって明るいニュース」と語った。

  午前10時から記者会見した菅野洋樹県教育長は「平泉の価値を世界が認めてくれた」と喜び、「勧告は一つの関門。6月の世界遺産委員会まで気を引き締め、登録を達成できるよう対応していきたい」と述べた。

  達増知事は「震災津波から復興に向けて共に歩みを進めている中、大変励みになる報告」と県民や関係者の協力に感謝。世界遺産委員会への自らの出席にも意欲を示し「平泉の価値を世界に発信し、震災津波に対する各国からの支援に対してもお礼ができれば」と話した。

  地元平泉町の菅原正義町長は「大きな山を一つ越えた。安どの気持ちでいっぱい。今後も国、県としっかり連携していきたい。『復興の光を平泉から』との思いで、町民や応援してくださる皆様と登録の日を迎えたい」との談話を発表した。

  ■イコモスの評価

  イコモスは、世界の文化財や遺跡の専門家が遺産の価値を評価するユネスコの諮問機関。勧告は▽登録▽情報照会▽登録延期▽不登録|の4段階で示され、世界遺産委員会での決定に大きな影響を与える。これまで「登録」の勧告を受けて、世界遺産委員会で登録決議に至らなかったケースは、紛争地帯の遺産などを除いて例はなく、平泉の世界遺産登録は、ほぼ確実とみられる。登録が実現すれば、国内では15件目の世界遺産となる。

  日本政府が提出している推薦書は「平泉|仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」。構成資産は▽中尊寺▽毛越寺▽観自在王院跡▽無量光院跡▽金鶏山▽柳之御所遺跡|の六つで、建築・庭園といった浄土世界を現世に再現する上で関連の深い文化遺産に絞っている。

  前回は浄土思想を基調とする文化的景観をコンセプトに9資産の構成で臨んだが、思想と景観との関連性、海外との比較の弱さなどが指摘され「登録延期」と判断された。

  文化庁によると、今回の推薦書に対するイコモスの主な指摘事項は▽柳之御所遺跡を資産から除外▽「平泉の文化遺産」は歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、景観を代表する顕著な見本を示している文化遺産には当たらない▽推薦書名から「考古学的遺跡群」を外し「平泉|仏国土(浄土)を表す建築・庭園」とすべき|の3点。

  柳之御所遺跡は、奥州藤原氏が平泉の造営を進める上で重要な起点となっただけでなく、浄土を空間的に表現する建築・庭園とも緊密な位置関係にある。推薦書では「主題を説明する上で欠かせない遺跡」と説明したが、浄土思想との関連性が薄いと判断されたようだ。

  さらに、平泉の寺院と浄土庭園は、アジアの仏教と日本独特の自然信仰、神道が相まった作庭技術が日本独特の庭園意匠となって顕著な事例になったと認められたが、柳之御所遺跡については、どのように寄与したのか証明されていないと指摘された。

  県教委は今後、勧告内容を詳しく分析した上で、柳之御所遺跡の取り扱いなど世界遺産委員会での登録決議を確実にするための方策について文化庁や平泉町、推薦書作成委員会の専門家らと協議したいとしている。来週にも文化庁の担当者と打ち合わせる。

  「平泉」の登録可否を正式に決定する第35回世界遺産委員会は6月19日〜29日にパリで開催される。

  ■小笠原諸島も世界遺産に「登録」の勧告

  平泉の文化遺産と同じく第35回世界遺産委員会に推薦されている、自然遺産の小笠原諸島は、国際自然保護連合(IUCN)から登録の勧告があった。日本の国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品|近代建築運動への顕著な貢献」(文化遺産)については後日、勧告が行われる。

  近藤誠一文化庁長官は「平泉、小笠原諸島が世界遺産としてふさわしい旨の評価を受けられたことは大変喜ばしい。遺産の価値が理解されるよう引き続き努力する」との談話を発表した。

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