盛岡タイムス Web News 2011年 6月 27日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉25 照井顕 朝倉俊博の超音波熟成装置

 時折、同じメーカーの同じ銘柄の酒であっても、その味や香りの違いを判別できる利き酒の達人が現れる。つい数日前にも僕の好きな友人に連れられて初めて来店した北上市出身の男性もその一人だった。

  「いつも同じウイスキー飲んでるけど、このウイスキー、何かうまいなあ〜、何でだろう」そう言ってストレートを何度かおかわりをした。僕もその違いを感じてくれた人にだけ、その種明かしをして来た。

  実は店で出す酒類のほとんどは、ボトルごと超音波熟成させたものをお客様に出しているのだ。この装置を研究開発したのは、著名な写真家で文筆家でもあった朝倉俊博氏である。彼は2004年4月22日、62歳で故人となったが、1980年代初頭に、それまでの定説を覆す「振るほど酒はうまくなる」ことを発見し、その後の20年余りを、愛飲家に福音をもたらす、その研究に身を投げ、遂に家庭用、営業用、醸造用、超音波熟成機器を特許開発し「超音波熟成酒」なるものを世に送り出した。

  酒は年数を過すほどまろやかになる。それは水とアルコール分子が細かく均一化し、よく混じった状態になっている。そこに着目して、瓶をよく振ってから飲むと別物のようにおいしくなることに気付き、その状態が元に戻らない安定した状態になるまで、微弱な振動を加えて熟成させる方法を発明したのだ。

  「香りよく(古くない)味は古酒」に変身するのである。そして何よりも、体内に入ってからの分解が早くなるため体への負担が軽減し、結果、多少の深酒でも二日酔いにならない。あの昔人の知恵「航海熟成」の現代版なのだ。

  酒とピース、音楽と真空管アンプを好み、ゾクッとするほど美しい声がするステレオ再生音の極限まで常に挑んでいた人だった。「生きてることは、様々なことを感じ、感動することですよ。感動の元はアナログ。感動こそが生きてる喜びでしょう」が、彼の信条だった。

  2011年6月24日付東海新報に「無事だった幻の銘酒」の記事。大船渡市の民宿・海楽荘の主人吉田豊繁さんは酔仙の米焼酎「古古」を1年間海中に釣るして波に揺らし、10年に値するまろやかさを生みだしていたという。
(開運橋のジョニー店主)



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