盛岡タイムス Web News 2011年 9月 6日 (火)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉289 八木淳一郎 月への誘い

     
  岩洞湖の湖面を照らし出す月  
 
岩洞湖の湖面を照らし出す月
 
  季節の移り変わり、そして1年の経過のなんと早いことでしょう。私どもを乗せた地球は、一周およそ10億`bという長さの太陽を巡る軌道の上を、時速10万`という、新幹線の300倍もの猛スピードで休むことなく動き続けています。直径1万2千キロの地球が24時間かけて自転する間、地球を追いかけるようにして、地球から38万`のところを月が回り、潮の満ちひきを起こして生命を育んでいます。

  普段、私たちは、月は地球の付属物であると考えてはいても、その月に運命を左右されているなどとは思ってもみません。

  しかし、天文学、生物学などの知見によれば、太古の地球上に生き物が誕生するためには月の存在が欠かせなかったとされます。

  人類には、地球や津波、火山の噴火、あるいは異常気象といった災難が次から次へとふりかかってきますが、それでも今の地球は、人類や他の生き物にとって、広大な宇宙の中ではオアシスとも言うべき大切な星です。しかし、それもこれも月があったればこその話です。

  ところで、アポロが月に反射鏡を置いてきたことをご存じない方は多いのではないでしょうか。ある米国の天文台では、月面上の鏡に向けてレーザー光線を発射し、これの反射を観測することで、月と地球の距離を精密に測定しています。それによって、月は日に日に3aずつ遠ざかっていることがわかりました。計算では、月はこれから数十億年の間遠ざかっていき、その後また地球に近づいてくるとされています。「月がとっても青いから…」とか、「月が鏡であったなら…」などと歌われたり、また花鳥風月という言葉にもあるように、月は人の心をなごませてくれる大事な存在です。

  皆既日食で美しいコロナの光を見せてくれるのも、小さくても月が太陽と同じ位の大きさに見える距離にある上に、時々ちょうどに太陽の光を遮ることで起こる現象です。

  偶然とは申せ、大自然が生み出したこんなにも絶妙な位置と大きさを持つ月が、人類にどんなに豊かな歴史をもたらしてくれたことでしょう。

  月が遠ざかり小さくなってしまうことは、単に寂しいといった問題ではありません。月の距離が今よりも1割ほど遠くなった頃、月、太陽、地球の3つの間での重力のバランスの変化が地球の地軸の傾きを大きく乱し、その結果、気候のとてつもない変動が起こり、人類をはじめ生物の多くは存亡の危機にさらされることになるのです。

  直径が地球の4分の1という月。これは、衛星としては桁外れに大きな存在です。月との出会いで生命が芽生え、月との別離が生命の終わりをもたらす-こうしたさだめを思いながら、いま一度月を想い、愛で、慈しむ気持ちで見つめてみたいものです。9月12日は中秋の名月です。
(盛岡天文同好会会員)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします