盛岡タイムス Web News 2011年 9月 26日 (月)

       

■ 〈幸遊記〉38 照井顕 後藤誠一の夢の音楽療法

 大学時代からジャズに魅せられて以来40年間、これまでに2万8千枚以上のレコードやCDなどの音楽ソフトを聴いてきた、ジャズ評論家で医師の後藤誠一氏(63)。医療法人・後藤クリニックの院長は、今だジャズに興奮し続けている。

  聴こえない音、無意識で聴いてる音は体の中に入って行って細胞に影響を与える。良い音で聴く、いい音楽。演奏家のいのちの音を聴く時、神が降りて来る瞬間があり、鳥肌が立つ時さえあるのだという。

  「この音楽を聴かずに、一生を終えることは、人生最高の幸せを失うことと同じだ」とは、アート・ブレイキー(ジャズドラマー)の言葉だが、「ジャズがあるから人生を豊かに暮らせる、予測のつかない興奮が待ち構えてる音楽は人生の醍醐味(だいごみ)ですね」と言う後藤氏。

  その後藤クリニックの音楽療法室の名は「夢の街」。その名が示すように部屋はまさに夢の中。世界中のミュージシャンをお抱えしているといってもいいレコードやCDの群山。息を飲み込むほどのハイエンド・オーディオシステム群。そして何よりも、出てくる音の美しさとおいしさには、思わず手を合わせてしまう。

  素材のソフトは同じであっても、その音の通過する機器やその使い方などによっても音は千変万化するものだが、後藤氏の音は全てが巨大なのに、なぜか気持ちがいいのだ。生演奏時、下手な奏者ほど音がうるさく聴こえ、達人になればなるほど、音が大きくなっても心地がいいのと一緒!彼のオーディオを聴いて感じさせられた。全ては心・技・体の持つ三つの耳のバランスの問題なのだ。

  脳科学者・茂木健一郎氏の考えを借りれば「ミラーニューロンという神経細胞の高度な情報処理で、音を聴くと演奏者が現れる」ということになるのだろうと言う彼。「音は単に鼓膜で聴くだけではなく、五感を駆使して、時には第六感も取り入れた全身で聴くものであると実感できる音。音は一瞬で消えてゆく儚(はかな)いものだ。だからこそ儚いのもほど大切にしたいという慈しみが湧き上がる。磨き上げられた音への慈愛こそ、私のジャズ・オーディオ」と言う彼。「その趣味を徹底的に追求すればするほど、仕事を一生懸命に成し遂げる必要がある表裏一体のものなのだ」とも。
(開運橋のジョニー店主)


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