盛岡タイムス Web News 2011年 12月 3日 (土)

       

■ 〈東日本大震災〉陸前高田・吉田家文書で解読作業再開

     
  吉田家文書の解読を進める、陸前高田古文書研究会のメンバー。前列左端が荻原一也会長  
  吉田家文書の解読を進める、陸前高田古文書研究会のメンバー。前列左端が荻原一也会長  
  陸前高田市の陸前高田古文書研究会(荻原一也会長、会員13人)は、他の古文書研究団体の協力も得て、県指定文化財の古文書「吉田家文書」の解読に励んでいる。「定留(じょうどめ)」と呼ばれる当主の執務記録は、20年以上かけ、全95冊のうち93冊の解読を終えていたが、東日本大震災津波で読み下し文はすべて流失。一からやり直さなければならなくなった。活動拠点だった市立図書館は全壊し、必要な資料を保管する場所もない状態。プレハブの設置や活動費のカンパなど広く支援を求めている。

  吉田家文書は、仙台藩領だった気仙郡で長く大肝入(おおきもいり)を務めた吉田家に伝わる古文書。このうち、1750(寛延3)年から1868(明治元)年までの118年間に出された通達や触れ書きなどを書き留めた「定留」は3カ年分を除いてほぼ完全な形で残り、当時を知る貴重な資料とされる。

  原本は津波で水没した陸前高田市立図書館の重要書庫から見つかり、県立博物館(盛岡市)で修復作業が進む。しかし、読み下し文は完成を目前に流失してしまった。

  中心になって解読を担ってきた陸前高田古文書研究会のメンバーも3人が津波で亡くなった。それでも、地域の歴史を後世に伝えなければと6月から活動を再開。岩手古文書学会(森ノブ会長)や一関・古文書に親しむ会(舞草駿会長)、江刺古文書の会(伊藤博会長)の会員の応援も得て、解読をやり直すことにした。

  解読には、NPO法人地域資料デジタル化研究会(山梨県)などの協力で作成された原本の電子データや県立図書館のマイクロフィルムの写しを利用している。おのおの、割り当てられた部分を自宅に持ち帰り、読み下し文を作成。月4回、陸前高田市竹駒町のコミュニティーセンターに集まって読み合わせし、不明の個所を校正する。方言が混じるなど、仙台藩の古文書や気仙地方の地理歴史に通じていなければ難解なものが多く、根気のいる作業だ。

  荻原会長(84)は陸前高田市史の編さん室長などを歴任。吉田家文書の解読にも深く関わってきた。「ゴールを目の前に、まさか、振り出しに戻されるとは思わなかったが、ここまでやってきたものを放り出す訳にはいかない。地域の歴史を大事にしたい。若い後継者も育てていかなければ」と情熱を注ぐ。

  定留を丁寧にひもといていくと「隣郡の海岸の防御を固めるために兵糧米を供出せよ」とか「双子が生まれた場合にはもみを特別に10俵支給する」といった興味深い記述も出てくるという。研究会副会長の細谷英男さん(78)は「気仙郡の行政だけでなく、隣郡の状況や庶民の暮らしぶりが見えてくる。領民から一方的に徴収するばかりでなく、社会福祉事業に取り組んでいたことも分かる」と語る。

  岩手古文書学会の森会長は「何度も災害に遭っている三陸地方の記録は残りづらかった。吉田家文書は貴重で、盛岡藩雑書と並ぶ価値がある。何とか解読を進め、その土地に、どんな暮らしがあったのか確かめていくべきだ」と話す。

  研究会の目下の悩みは、活動拠点となる場がないことだ。震災津波後、図書館や旧家から貴重な郷土資料や古文書も収集したが、置く場所がなく、会員の自宅に未整理のまま預けている。資料保管庫として利用できるプレハブの設置や研究会の活動費を支援してもらえれば助かるとしている。

  陸前高田古文書研究会への問い合わせ、支援の申し出は事務局の佐藤美智子さん(電話080−1859−1256)へ。
  (馬場恵)


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