盛岡タイムス Web News 2011年 12月 21日 (水)

       

■ がん悪性化の仕組み解明 岩手医大薬学部の寺島助教ら

     
  がん悪性化のメカニズムを研究する寺島助教  
 
がん悪性化のメカニズムを研究する寺島助教
 
  岩手医大薬学部薬物代謝動態学講座の小澤正吾教授と寺島潤助教が「がん細胞の悪性化に関する新しいメカニズム」と題する論文を11月の日本薬物動態学会で発表した。がんの悪性化の原因を、薬物代謝酵素の関わりから説明。がん転移の抑制につながる研究として注目されている。寺島助教は英国のエジンバラ大で昆虫を研究し、医学への応用を思いついた。がん細胞と共通する遺伝子の発現パターンの解明が、メカニズムの発見につながったという。

  がん細胞は増殖、悪性化すると、細胞塊内に血管ができ、浸潤や転移しやすくなることが知られている。小澤教授、寺島助教は悪性化の過程で、薬物代謝酵素がある作用をしていることを発見した。

  寺島助教は「がんが転移する準備段階で何が起きているか、どういう準備をしているかはっきりした。がん細胞は血管を自分の方に引き込み、その過程で新しい血管ができる。自分でも血管を作れと指令を出し、新しい血管をがん細胞の有利なところに作っていく。血管が来ることにより栄養や酸素を自分の方に取り込めるし、その血管を通じてほかの臓器にもがん細胞が移動できる。これが転移のメカニズム」と説明する。

  がん治療の有力な糸口として期待される。寺島助教は、「がん細胞が血管を作る指令を出すメカニズムをつぶせば、がん細胞には血管を作る能力がなくなる。血管が来なければ、転移もある程度防げるし、がん細胞に栄養や酸素を供給する手段も失われる。このメカニズムを抑えることにより、がん細胞そのものをつぶすことはできないが、転移したり悪性化を防ぐことで、治療に時間的余裕ができる」と話す。肝臓がんの細胞で実験した。

  寺島助教は金沢大学から英国のエジンバラ大に進み、細胞分子生物研究所で昆虫の研究に取り組んだ。英国から帰国後、東北大学で医学への応用を模索した。

  寺島助教は「昆虫が栄養ストレスの状態になったとき、どういう応答をして生き残っていくか研究した。こちらに来るとき研究対象を昆虫からがん細胞に変え、その研究を使えないかと思った。昆虫のストレス応答に重要な分子の候補をいくつか挙げて調べた結果、共通している部分がひとつあり、それをきっかけに経路が見つかった」と話す。

  「餌が少なくなったとき昆虫がどういう対処を示すか研究した。ある遺伝子が栄養ストレスの応答に重要なことが分かった。栄養ストレスに抵抗するため必要だった。東北大で感染ストレスをやったら、その遺伝子が重要ではという結果が得られ、遺伝子を活性化する大元をたどると、薬物代謝酵素に行き着いた。これをがん細胞の栄養飢餓状態で試したところ、この遺伝子が反応していることが分かった」。

  薬学部の中で研究を発展させ、将来のがん治療に役立てたいという。「その薬をどこをターゲットにして作るかと言えば、分子の流れがはっきりした方が作りやすい。まずはっきりさせる。薬を作るためのターゲットを明確にする」と、狙いを定めている。


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